努力という名の才能を手に異世界を生き抜く〜異世界チート?そんなのは必要ない!〜

かひろ先生(ケダモノ)

貴族はみんな似た者同士

……パーティ当日



「こんな格好しなきゃいけないんですか?」

俺はスーツを着た不自然な格好の自分を見る。

「そりゃあパーティって言うんだからそれくらいは着飾らなきゃダメだろ。仮にもうちは侯爵家だからな」

「そうよ。それにとても似合ってるわよギル」

「そうだぞ。俺の3分の2くらいかっこいいぞ」

親父と母さんは褒めまくるがとてもそんなカッコ良くなんか見えない。
ミアにも聞いて見たがこちらと目も合わせようともせず顔を真っ赤にして部屋に篭ってしまったからな。
…そんなみっともない姿なのだろうか?
そんなことを思っていると玄関のドアがノックされる。

「来たか。じゃあ父さん母さん行ってきます…あ、ミアに2人をしっかり見といてって言っておいてください」

「ふふふ、わかりました。行ってらっしゃい」

「じゃあ俺たちもそろそろ準備しようか」

「そうですね。ギル気をつけていきなさいよ」

「わかってますよ」

俺は家を出る。
家の前には俺が乗るために雇った馬車一台と隣にもう一台馬車が並んでいた。

「ヤッホーエギル君」

その俺のではない馬車の窓からランスが顔を出してくる。

「ああ…アドラはどうしたんだ?」

言ってなかったがアドラは俺の闘気を流したためある程度の距離にいればどこにいるかはわかるようになっている。
しかし馬車の中からアドラの気は感じられない。

「アドラちゃんはちょっと用があってね。僕から離れてるんだ〜」

「ほーあのアドラがマスターのお前から離れるとはな。そんな大事な用なのか?」

「まあね〜」

「おい。いつまで話しているんだランス。そろそろ行かなくては間に合わんぞ」

突然ランスの馬車から聞き覚えのない透き通った凛とした声が聞こえてくる。

「ごめんね父さん。じゃあエギル君そろそろ行こうか」

「そうだな」

俺は馬車に乗り込み馬車を出発させる。
ランスの馬車も横に並び並走していく。
そういえばこの街並みを見るのは何年ぶりだろうか。
あとでミアとでも街の中を見て回りたいな。
街を横目にどんどん馬車は王城へと近づいていく。



……



「ルーカス様着きました」

「ああ、ありがとう。帰りもまた頼む」

「かしこまりました」

俺は馬車から降り王城を見上げる。
とても大きくそびえ立ち威圧感さえも放っているこの王城。
…中にはどんな強い兵たちが護っているのだろうか?
おっといけない、そんなことはどうでもいいんだ。

「どう?おっきいでしょ?この城」

後ろからランスが陽気に声をかける。

「そうだな。悪いところがないくらいに立派な城だ」

「でしょ〜!」

自分の城でもないのにランスはなぜかグイグイくる。

「やっぱりあの人この城に住んでるなんてずるいよな〜」

「あの人?」

俺は気になりランスに聞き返す。
ランスは慌てて自分の口を塞ぐ。

「あ!…なんでもない…よ?」

いやそんな可愛らしく頭を傾けてもお前が男だって知ってるんだからそんな破壊力はないぞ?…そんなにはな

「ランス、何をしている。さっさと中へ入るぞ」

先ほど馬車の中で聞いた声がした。
声のする方を見るとランスと同じ肩まで伸びた綺麗な紫の髪に目つきの鋭い美人な女性が男装したような人がいた。
…もしかして

「わかってるよ父さん。…じゃあエギル君も中に入ろうか」

「あ、ああ」

と、父さんって…やっぱ親と子って似るものだな…
俺はランスに引っ張られ城の中へ入る。
なんかランスの父親にすごい睨まれてる気がするが…気のせいだろうか?

「ようこそアダドーロ男爵様とご子息様…とそちらの方は?」

俺たちは兵士に止められ身分を確認する。
ランスとランス父は何度かきているのだろうから顔を知られている。
兵士は俺の顔を見て少し不信感を乗せた目を向けてくる。

「俺はルーカス侯爵家 長男 エギル・ルーカスだ」

俺が名乗ると兵士は目を見開き少々お待ちくださいと言うと慌てて変な走り方でその場を離れていく。
しばらくして兵士が戻ってくると確認が取れたらしく中へ入れてもらえた。

「ププーあの慌てぶり見た?面白いねえ」

ランスが小馬鹿するように笑い出す。
おいおい兵士に聞こえてるぞ。
兵士は顔だけでなく耳まで真っ赤にさせて恥ずかしそうに顔を下に向ける。

「おいランス人を馬鹿にするような発言はやめなさい。いつか仕返しをされるぞ」

「はいはい、わかったよ父さん」

「いい加減にしろ!」

!??…びっくりしたあ…
ランス父は突然ランスに怒鳴りだす。
ランス自身もなぜ怒鳴られてるのか理解できずに混乱している。

「ど、どうしたの父さん?」

「父さんじゃない!…パパと呼びなさいといつも言ってるでしょうがあ!」

…………ん?
な、なんだ?なんか今の発言すごい親近感がわく言葉だったな。
頭の中に親父の顔が浮かぶ。
ランスはため息を吐く。

「はあ、外では呼ばないっていつも言ってるじゃん…」

「いーやダメだ!許さない!」

ランスパパは子供のように叫ぶ。

「なんでさ!」

「だってこいつのことは君付けで呼んでるじゃないか!だったら私の事も愛称としてパパと呼んでほしい!さあ、リピートアフターミー パパァ?」

ランスパパはランスにベタベタと触れ合いランスはそれを払いのけようと必死になる。

「ちょっ!エ、エギル君!た、助けて!」

「へー…この世界の貴族ってみんな似た者同士なんだな」

俺は腕を組みランスとランスパパの様子を眺めながらそのように思った。

「そんな事どうでもいいから助けてよ〜!」

「ア、アダドーロ男爵様!ど、どうか城内ではお静かに!」

「こちらも困りますゆえ!」

兵士達も集まり大混乱になる。

「ええい!黙れ黙れ!さあランス!リピートアフターミー パパァ?」

「いやー!」

…ランスも苦労してたんだな。
この騒ぎはパーティが始まるギリギリまで続いた。

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