努力という名の才能を手に異世界を生き抜く〜異世界チート?そんなのは必要ない!〜
救世主
あの日から数日が経った朝、
「そう言えばギル」
「なんですか父さん」
朝食を家族全員でとっていると突然親父に話しかけられる。
「5日後なんだが貴族のパーティに参加することになってるんだ。だから行くぞ」
俺は食事をしていた手を止める。
「…突然すぎませんか?」
「まあギルの反応を見る限りめんどくさいとでも思ってるんだろ」
「すごいですね。なんでわかったんですか?」
「あからさまに嫌な顔をしてるからな」
「そうですかね」
俺は自分の頰をさする。
「フフフ。ギル、パーティもそんな悪いものじゃないわよ。最初はちょっと場違いじゃないかなんて思うけど慣れると楽しいものよ」
「そういうものですかね?」
まあそれならいいのかな?と思っていると親父から衝撃の一言を言い渡される。
「あ、言っておくが今回のパーティは俺とシエルは他の仕事で参加することができないからギル1人だぞ」
「…マジですか?」
「ああ、ジュンスとレイナはまだ幼いからパーティは参加できないしミアは貴族じゃないから参加できないからな」
「うん。私は家でジュンス君とレイナちゃんのお世話することになったんだ」
ミアは嬉しそうにニコッと笑う。
かわいいが俺にとっては死刑宣告と同じくらい辛い。
初めての場所に誰も頼れる人がいないのはどれだけの孤独感があるか…
「参加しないってことは…」
「不参加はできないぞ。15歳になる貴族は必ず参加しなきゃいけないんだ」
うーん…参ったな。
どうしようかと困っていると家のドアがノックされる。
「エーギールー君!あーそーぼー!」
この場違いに陽気な声は…
「…ちょっと見てきます」
「あ、ああ…」
俺は席を立ち上がり玄関へ向かう。
「エーギールー君!あーそーブォ!?」
俺はドアを思いっきり開け外のやつを吹き飛ばす。
「…ランス。どうした?じゃがいも頭のガキンチョみたいな訪ね方しやがって」
「あ、やあおはようエギル君」
ランスはプルプルと立ち上がる。
そのランスをアドラが支える。
「だから言ったであろうが。そんなことしたらこやつは絶対に怒ると」
「いや〜なんかやってみたくなったんだよね。だってほら僕今までみんなしかいなかったからさ」
「はう…ま、マスター…そんな悲しいことを言うでない」
アドラはランスの言葉を聞いて口を手で押さえて目から涙をこぼす。
ああ、みんなってゾンビたちのことか。
「それにしてもお前…その格好はどうしたんだ?」
「え?普通じゃない?」
ランスは自分の格好を見て首をかしげる。
「いや普通じゃないだろ。なんでヘソ出してるんだよ」
そう、ランスはなぜかヘソ出しの短い服を着ているのだ。
それに加えジーパンのようなパンツによりボーイッシュな女の子に見えなくもない。
男のくせに、しかしランスが着るとなかなかに破壊力がある。…その、男とわかっていてもかわいいと思える格好だ。
「あー、これね。いやー今日は日が強いから男らしく焼こうと思ってね!…でもね〜全然焼けないんだよ」
ランスはほら全然でしょ?と言って色白な肌を見せてくる。
「わかったから近づくな。…で何しに来たんだ?」
「実はね〜…」
「お?なんだギル。お前ミアちゃんという子がいながら浮気か?」
「…なんですか父さん」
後ろから声が聞こえ振り向くとニヤニヤしながら親父が向かってくる。
「いや〜その気持ちよくわかるぞギル。俺も時々飲みに行くとか言って女の子の店に行ってるからな」
「だそうですよ母さん」
「へ?母さん?」
親父が振り向くとそこには般若の顔をした母さんが腕を組んで仁王立ちをしている。
「…あなた。ちょっとこっち来なさい」
「あひゃあ!?ち、違うんだシエル!落ち着いてくれ!」
「その話をちゃんと聞きたいからこっちに来てくださいと言ってるんですよ…ギル、その子を家に上がらせなさい。…この人の後にしっかり話を聞きますからねギル」
「い、いやだー!」
親父はいつものように母さんに引きずられ奥へと消えて行く。
なんか最後に変な勘違いされなかったか?
「…あれ?もしかして僕が来たの迷惑だった?」
「この状況を見たらわかるだろ」
「はあ、すまないなエギル。明日でも良いだろうと妾が言ったのだがどうしてもと聞かなくてな…もうマスターの世話は疲れた…」
アドラは疲れたようにため息をつく。
この1日で一体何がアドラの精神をここまで削ったのだろうか。
「まあ来ちまったのは仕方ないだろ。上がっていいぞ」
「お邪魔しまーす!」
「邪魔するぞ」
俺はランスとアドラをミアたちのいる部屋へと案内する。
「ハロハロ〜。ミアちゃん」
「昨日ぶりじゃなミアよ」
「ランス、アドラ。どうしてここに?」
「ちょっと言いたいことがあってエギル君家寄ったんだけど家に上がらせてもらってね」
ランス達が部屋に入るとジュンスとレイナがランスとアドラに近づく。
「姉ちゃん達誰だ?」
「エギル兄様のお知り合いですか?」
「はは、可愛らしい子達だね。そうだよ。僕はランス。エギル君のお友達さ」
ランスは腰を下ろし2人の頭を撫でる。
「よろしく!ランス姉ちゃん!」
「よろしくお願いします。ランス様」
「んー。女じゃないんだけどなー。ま、いっか」
「妾も挨拶しておこうか。アドラというものだ」
2人はアドラの手を掴む。
「よろしく!わー、手冷てーな!」
「…ひんやり」
「はっはっは。それはなんて言ったって妾は屍人…じゃからの」
「しびとってなんだ?うまいのか!?」
「おいしいの?」
「はっはっは!面白いことを言う子供だな」
それからジュンスのおねだりでアドラはジュンスを肩車しランスはレイナのために絵本を読むことになった。
「悪いな。俺が代わりにやっても良かったんだが…」
「スッゲー!高っけー!」
「ふっ、気にするでない。お主より妾の方が背が少し高いんじゃから妾がやった方がジュンスも喜ぶだあろう」
ジュンスは足をバタバタさせているがそれが毎回アドラの胸にバウンドして跳ね返っている。
くそっ!羨ましい!
「…勇者は無事姫を救い出し勇者と姫は永遠に結ばれました。めでたしめでたし」
「もう一回…」
「えー…わ、ごめんごめん!読むから泣かないでね〜」
 
「すまないランス」
「あはは、まさかこんなことでエギル君に申し訳がられるとはね〜。大丈夫だよ。僕兄弟いないからこんなことやって見たいなって思ってたから」
ランスはそう言うともう一度同じ絵本を声に出して読みだす。
すると同時に部屋の扉が開き魂が抜かれたかのように呆然としている親父と満足そうな母さんが入って来た。
「ギルお待たせ…さあ話をしましょうか」
「いや、母さん誤解なんだって。こいつはランスって言って男なんだよ」
母さんは般若の顔を元の顔に戻す。
どうなってんだろうか母さんの顔は
「あら?そうなの?」
「ええ、僕はランス・アダドーロ。正真正銘男ですよ」
ランスはいつものような陽気な感じではなく少し堅苦しくなる。
ランスも人見知りなのだろうか?
「アダドーロさんのとこの子だったのね。変な誤解しちゃってごめんなさいね。ゆっくりしていって」
「ありがとうございます…あ、そうだエギル君に伝えたいことあったんだ」
ランスは思い出したかのように手を合わせる。
「なんだ?」
「僕も5日後のパーティ参加するから一緒に行こうよって言いに来たんだったよ」
「え?」
ランスはそれだけ言うと笑顔でレイナにもう一度絵本を読み聞かせ始める。
おお、救世主よ。
めんどくさそうなやつとかいってすいませんでした。
今日はランスが気づかないうちに俺とランスとの仲が深まった1日となった。
「そう言えばギル」
「なんですか父さん」
朝食を家族全員でとっていると突然親父に話しかけられる。
「5日後なんだが貴族のパーティに参加することになってるんだ。だから行くぞ」
俺は食事をしていた手を止める。
「…突然すぎませんか?」
「まあギルの反応を見る限りめんどくさいとでも思ってるんだろ」
「すごいですね。なんでわかったんですか?」
「あからさまに嫌な顔をしてるからな」
「そうですかね」
俺は自分の頰をさする。
「フフフ。ギル、パーティもそんな悪いものじゃないわよ。最初はちょっと場違いじゃないかなんて思うけど慣れると楽しいものよ」
「そういうものですかね?」
まあそれならいいのかな?と思っていると親父から衝撃の一言を言い渡される。
「あ、言っておくが今回のパーティは俺とシエルは他の仕事で参加することができないからギル1人だぞ」
「…マジですか?」
「ああ、ジュンスとレイナはまだ幼いからパーティは参加できないしミアは貴族じゃないから参加できないからな」
「うん。私は家でジュンス君とレイナちゃんのお世話することになったんだ」
ミアは嬉しそうにニコッと笑う。
かわいいが俺にとっては死刑宣告と同じくらい辛い。
初めての場所に誰も頼れる人がいないのはどれだけの孤独感があるか…
「参加しないってことは…」
「不参加はできないぞ。15歳になる貴族は必ず参加しなきゃいけないんだ」
うーん…参ったな。
どうしようかと困っていると家のドアがノックされる。
「エーギールー君!あーそーぼー!」
この場違いに陽気な声は…
「…ちょっと見てきます」
「あ、ああ…」
俺は席を立ち上がり玄関へ向かう。
「エーギールー君!あーそーブォ!?」
俺はドアを思いっきり開け外のやつを吹き飛ばす。
「…ランス。どうした?じゃがいも頭のガキンチョみたいな訪ね方しやがって」
「あ、やあおはようエギル君」
ランスはプルプルと立ち上がる。
そのランスをアドラが支える。
「だから言ったであろうが。そんなことしたらこやつは絶対に怒ると」
「いや〜なんかやってみたくなったんだよね。だってほら僕今までみんなしかいなかったからさ」
「はう…ま、マスター…そんな悲しいことを言うでない」
アドラはランスの言葉を聞いて口を手で押さえて目から涙をこぼす。
ああ、みんなってゾンビたちのことか。
「それにしてもお前…その格好はどうしたんだ?」
「え?普通じゃない?」
ランスは自分の格好を見て首をかしげる。
「いや普通じゃないだろ。なんでヘソ出してるんだよ」
そう、ランスはなぜかヘソ出しの短い服を着ているのだ。
それに加えジーパンのようなパンツによりボーイッシュな女の子に見えなくもない。
男のくせに、しかしランスが着るとなかなかに破壊力がある。…その、男とわかっていてもかわいいと思える格好だ。
「あー、これね。いやー今日は日が強いから男らしく焼こうと思ってね!…でもね〜全然焼けないんだよ」
ランスはほら全然でしょ?と言って色白な肌を見せてくる。
「わかったから近づくな。…で何しに来たんだ?」
「実はね〜…」
「お?なんだギル。お前ミアちゃんという子がいながら浮気か?」
「…なんですか父さん」
後ろから声が聞こえ振り向くとニヤニヤしながら親父が向かってくる。
「いや〜その気持ちよくわかるぞギル。俺も時々飲みに行くとか言って女の子の店に行ってるからな」
「だそうですよ母さん」
「へ?母さん?」
親父が振り向くとそこには般若の顔をした母さんが腕を組んで仁王立ちをしている。
「…あなた。ちょっとこっち来なさい」
「あひゃあ!?ち、違うんだシエル!落ち着いてくれ!」
「その話をちゃんと聞きたいからこっちに来てくださいと言ってるんですよ…ギル、その子を家に上がらせなさい。…この人の後にしっかり話を聞きますからねギル」
「い、いやだー!」
親父はいつものように母さんに引きずられ奥へと消えて行く。
なんか最後に変な勘違いされなかったか?
「…あれ?もしかして僕が来たの迷惑だった?」
「この状況を見たらわかるだろ」
「はあ、すまないなエギル。明日でも良いだろうと妾が言ったのだがどうしてもと聞かなくてな…もうマスターの世話は疲れた…」
アドラは疲れたようにため息をつく。
この1日で一体何がアドラの精神をここまで削ったのだろうか。
「まあ来ちまったのは仕方ないだろ。上がっていいぞ」
「お邪魔しまーす!」
「邪魔するぞ」
俺はランスとアドラをミアたちのいる部屋へと案内する。
「ハロハロ〜。ミアちゃん」
「昨日ぶりじゃなミアよ」
「ランス、アドラ。どうしてここに?」
「ちょっと言いたいことがあってエギル君家寄ったんだけど家に上がらせてもらってね」
ランス達が部屋に入るとジュンスとレイナがランスとアドラに近づく。
「姉ちゃん達誰だ?」
「エギル兄様のお知り合いですか?」
「はは、可愛らしい子達だね。そうだよ。僕はランス。エギル君のお友達さ」
ランスは腰を下ろし2人の頭を撫でる。
「よろしく!ランス姉ちゃん!」
「よろしくお願いします。ランス様」
「んー。女じゃないんだけどなー。ま、いっか」
「妾も挨拶しておこうか。アドラというものだ」
2人はアドラの手を掴む。
「よろしく!わー、手冷てーな!」
「…ひんやり」
「はっはっは。それはなんて言ったって妾は屍人…じゃからの」
「しびとってなんだ?うまいのか!?」
「おいしいの?」
「はっはっは!面白いことを言う子供だな」
それからジュンスのおねだりでアドラはジュンスを肩車しランスはレイナのために絵本を読むことになった。
「悪いな。俺が代わりにやっても良かったんだが…」
「スッゲー!高っけー!」
「ふっ、気にするでない。お主より妾の方が背が少し高いんじゃから妾がやった方がジュンスも喜ぶだあろう」
ジュンスは足をバタバタさせているがそれが毎回アドラの胸にバウンドして跳ね返っている。
くそっ!羨ましい!
「…勇者は無事姫を救い出し勇者と姫は永遠に結ばれました。めでたしめでたし」
「もう一回…」
「えー…わ、ごめんごめん!読むから泣かないでね〜」
 
「すまないランス」
「あはは、まさかこんなことでエギル君に申し訳がられるとはね〜。大丈夫だよ。僕兄弟いないからこんなことやって見たいなって思ってたから」
ランスはそう言うともう一度同じ絵本を声に出して読みだす。
すると同時に部屋の扉が開き魂が抜かれたかのように呆然としている親父と満足そうな母さんが入って来た。
「ギルお待たせ…さあ話をしましょうか」
「いや、母さん誤解なんだって。こいつはランスって言って男なんだよ」
母さんは般若の顔を元の顔に戻す。
どうなってんだろうか母さんの顔は
「あら?そうなの?」
「ええ、僕はランス・アダドーロ。正真正銘男ですよ」
ランスはいつものような陽気な感じではなく少し堅苦しくなる。
ランスも人見知りなのだろうか?
「アダドーロさんのとこの子だったのね。変な誤解しちゃってごめんなさいね。ゆっくりしていって」
「ありがとうございます…あ、そうだエギル君に伝えたいことあったんだ」
ランスは思い出したかのように手を合わせる。
「なんだ?」
「僕も5日後のパーティ参加するから一緒に行こうよって言いに来たんだったよ」
「え?」
ランスはそれだけ言うと笑顔でレイナにもう一度絵本を読み聞かせ始める。
おお、救世主よ。
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