親父は親父だった

「ほら、ギル。ここで魔力を測るのよ」

俺は母さんに抱きかかえられて白くて大きい建物まで連れて行かれた。

「しんえん？」

「ほー、ギル、神殿なんて名前よくわかったな。シエル、うちの子は天才かもしれないぞ〜」

親父は自然な動作で俺の頭を撫でようとする。

「さあるあ！」

俺はその手を仰け反って避ける。

「ギ、ギルに触るなって言われた…シエル、俺はもうダメかもしれない」

「まあまあ、あなた、まだまだこれからじゃないですか。この子だって早すぎる反抗期なだけかもしれませんし」

「それにしても早すぎだろ。俺最近ギルに触ろうとするだけで泣き出すんだぜ」

「とりあえず、この子の魔力測定に行きましょ。この話はまた後で2人で」

「そうだな」

母さんは俺を抱え親父と神殿へ入って行く。
神殿に入ると横幅のでかいおじさんが迎え入れていた。

「ようこそ、お待ちしておりました。ルーカス侯爵様」

こ、ここ侯爵ゥ！？まじかこんな顔だけはいいアホみたいな男が？うち使用人もいないからてっきり男爵あたりだと思ってた。

「息子の魔力を測りにきた。できるか？」

いつにもなく威厳たっぷりでおじさんに話しかける。
お、おい。親父、あまり無理して見栄を張らなくていいんだぞ？いつもみたく鼻垂らして馬鹿みたいに騒いでろよ。な？

「はい、もちろんでございます。こちらへどうぞ」

「よろしく頼むぞ」

俺は親父のあまりの変わりように言葉を失う。いやまだ全然喋れないのだけども
俺はそのまま母さんに抱きかかえられて奥へ進む。

「こちらへご子息を座らせてください」

「ええ、はい、ギルここでじっとしててね」

白い椅子に座らされる。薄着だから椅子の冷たさが伝わる。
おじさんが俺の前に立ち水晶を持ってくる。

「では、ご子息様こちらに手を」

そう言われ俺は水晶に手をのせる。
その様子におじさんが目を見開いて驚く。いや自分でやらせたんじゃん。

「ずいぶん賢い子なのですね」

親父がこれを聞き腕を組みながら胸を張る。

「ああ、自慢の息子だ」

とかっこよく言っているが口がもごもごしてる。にやけるのを我慢しているのだろう。隣で母さんが気づいて笑ってる。

「そうですか。素晴らしいお子様です。では魔力を測らせていただきます。」

すると水晶がほのかに光りだす。

「な、なんと」

おじさんがこれでもかと驚いている。
なんだろうか？

「ルーカス侯爵様、ご子息の魔力ですが」

「どのくらいあった？」

「魔力レベルCです」

それを聞いて俺はピンとこない。
C？いいのか？悪いのか？…普通っぽいな。
親父を見てみる、呆けた顔をしている。
親父がこの顔をしているってことは普通だったのかな？

親父はおじさんに聞き返す。

「…C？」

「はい、Cでございます」

「…え？C？」

「はい、貴族の平均ランク、Cです」

ほらな、でも貴族のってことは一般人の中ではそこそこってことか？

「ま、まじかー」

おい、親父。口調戻ってるぞ。
親父は予想外れで落胆しているが母さんはそれが？みたいな感じで堂々と立っている。
まぁ貴族の平均だしな。そんなやばいってわけでもなくてよかったわ。

「え、えーと。ルーカス侯爵様、大丈夫でしょうか？」

「…ああ、大丈夫だ。では俺たちは帰らせてもらう。神官殿、助かった」

「いえ、滅相もございません。また次の子の時にでもいらしてください」

「ふっ、そうさせてもらおうか」

「ふふふ、神官様はご冗談がお上手ですね」

母さんはそうは言っているが顔が少し赤くなっている。親父は少し前かがみになっている。おい親父、何を想像している。

「ではまたのお越しを」

俺たちは神殿を後にした。
家に帰ると親父は椅子に座り頭に手を乗せ呆けた顔をする。

「まじかー、ギル賢いから絶対魔力レベルAはあると思ったんだけどな」

「すぎたことはいいじゃないですか。しっかり魔力もあったのですから」

「そうだな…よし！ギル！一緒に遊ぼうか！」

「やー」

「ギ、ギルー！」

…うん、今日わかったことは親父は親父だったってことだ。