れいぶる~自宅警備隊~
おわるせかい③
「どうなってるんだ? はっ? 意味が分からない」
僕は、今図書館で二、三日前の新聞を広げて読んでいるーー
幸いにも何者にも襲われる事なく絵里香と二人で辿り着くことが出来た。
「ーーカケちゃんここに書かれていることは本当なの? 私、何が何だか分からないよ」
「そんな事あるかよ! 僕達は何のために命懸けで戦ってクリーチャーや社会ゾンビからこの新トーキョーを守ってきたんだよ」
「ーーそれも全部幻?幻覚だったってこと?もしかしたら今この瞬間も・・・」
悲しそうな目をして僕を見つめる絵里香、まるでこの今のひとときでさえ嘘じゃなかと疑っているようだ。
「ーーそんな訳ないじゃないか、だって今僕はここにいる」
何かを確かめるように絵里香の手を握りしめる。
「これでも幻かい?」
首を横に振り笑顔を見せる絵里香。
「ーー幻じゃない」
僕は新聞を元に戻し絵里香と図書館を後にする。
「カケちゃんどこに行くの?」
「セントラルコントロールに向かってみようと思う。この目で確かめるまで信じられないんだ」
図書館の入り口の脇にある鏡を何気無く見つめて僕は気づいたーー
「ーーえ、絵里香・・・映って・・・ない」
「えっ?」
その声の方向に振り返った時には絵里香はその場に居なかった。
「絵里香! 絵里香あああ」
僕は叫んでその周辺を隈無く探したが絵里香の姿は無かった。
絵里香・・・
☆ ☆ ☆
第九地区に到着し、得た情報から大学と大学の間にある公園で目撃情報があると聞いていた。
翔太は辺りを見回しながら歩いている。
ここは第九地区でも居住区になっていて第九ステーションにも近いこともあり人は多い。
いろんな人とすれ違いながら歩いていると何やら騒がしく人集りが出来ていた。
「ーーどうしたんですか?事件ですか?」
「ああ、何でも自宅警備隊シンドロームの患者らしく暴れまわって奇声を発しているらしい」
「自宅警備隊・・・まさか!」
翔太は人混みをかき分け前に出るとそこには、女の子が三人固まり暴れまわっていた。
翔太はその女の子の一人の顔を見るなり涙を浮かべたーー
「ーー可憐・・・やっと会えた・・・」
翔太が一歩ずつ、また一歩ずつゆっくりと近づいて行く。
「こら、あなた近づいたら危ないよ!!下がってーー」
警察官が翔太を制止するよう促すが、
「大丈夫です。あの子は僕の知り合いの子なんです。ずっと探していたんです」
翔太は更に近づくーー
「可憐・・・また少し痩せたね。可憐・・・ごめん、やっと会えたね」
可憐の目の前で手を伸ばす翔太。
可憐と翔太の目と目が合うーー
沈黙が流れてるーー
「あなた誰?」
「ーー可憐なんで」
ーー呆然と固まる翔太
「ほら、下がって。知り合いだったかも知れないけど彼女たちの思考や記憶は改ざんされたり麻痺している可能性があるんだよ」
保護にあたる警察官が答えた。
「記憶の改ざんーー本当に?」
「ああ、かなり強いマインドコントロールや脳の実験をさらていた可能性があるんだ。元々精神的に不安定な人間を選んでいたようだからこの女の子たちも何らかの影響があってもおかしくない。だから保護して精神病院で心のケアをしていく」
「ーー僕も一緒に行っていいですか?この子のチカラになりたいんです。もしかしたら何か思い出してくれるかも」
「それは勝手にしてくれ。とにかく仕事の邪魔だから下がってーー」
翔太は言われるがまま下がり可憐をいつまでも見つめていた。
☆ ☆ ☆
新トーキョーに闇が訪れるーー
大都会に華やかなネオンが灯り、昼間とは違う表情を魅せる。
アパートの部屋に電気を灯すのも忘れる程に僕は、呆然と今の状況がまだ分からなかった。
本当に新聞の記事が語ることが本当なのか?
僕達は架空の職業に就きマインドコントロールされ人体実験をされていたのか?
じゃあ、僕達は何と戦っていたのか?
「ーー訳がわかんねえよ・・・絵里香、どこに居んだよ」
リビングの床に塞ぎ込んでいるとスマホがぼんやりと光り出した。
「・・・優梨奈?」
「どうした?」
「お兄ちゃんどこにいるの?」
あれ?おかしいな確か会った時に説明した気がしたんだけど。
「第十二地区のアパートだけど・・・それよりそっちは無事なのか?変わりはないか?」
「・・・・・・」
「優梨奈?」
「・・・うん、大丈夫よ」
「絵里香が居なくなったんだ。何か知らないか?」
「えっ、絵里香さんが? どこで会ったの?」
「どこでって、ずっと一緒だったじゃないか?お前も会っただろ?」
「・・・ああ、そうだったね」
「何か知らないか?」
「お兄ちゃん・・・ニュース観た?」
「観たよ。何が何だか分からないんだ。お前も信じられないだろ?」
「・・・明日暇よね? 会いにいくわ」
「急にどうしたんだよ」
「・・・絵里香さんにも会わせてあげるわ」
「絵里香と一緒なのか? 絵里香は無事なんだな。良かった」
「明日行くから宜しく」
優梨奈は電話を切った。
僕は、絵里香の無事を知れて安堵の気分だったが妹の電話越しの対応に違和感があったのが少し気になったーー
そして、全てを知る明日が訪れたーー
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