れいぶる~自宅警備隊~

望月まーゆノベルバ引退

おわるせかい②

監視されていたのはクリーチャーではなく僕たち自宅警備員だった。

この結論に至るまでにはそう時間はかからなかった。

千夏が残していったスマホの閲覧中の画面に映っていたのは閲覧禁止画面だった。

それが二、三日前のニュースを調べていたのだと分かった僕たちはすぐにそのニュースが何かを探ろうとした。

しかし、パソコンやスマホ、テレビまで全て規制がかかり探ることが出来なかった。

そこで思いついたのが新聞だった。

2117年現在の今の時代は電子新聞が主流になりほとんどの家庭で新聞は読まれていない。

スマホでニュースが閲覧出来ない事に不思議に思ったカイトが図書館に新聞を見に行くとアパートを出て行ったのが今から三時間前だったーーしかし、その後カイトと音信不通である。



「どうなってるんだ? 何で僕たちのまわりの人間だけが・・・」

「千夏や柊だけじゃなくカイトまでも連絡が取れないなんて」

「ーーカイトを一人で行かせるべきじゃなかったんだ。僕の不注意だ」

「カケちゃんは悪くないわ。それよりも二、三日前のニュースを調べようとしてこの事件に巻き込まれてる気がするわ。二、三日前のニュースって何なのかしら?」

「確かに、それがこの一連の全てを解く鍵になる事は間違いないな」

カケルは座っていたソファーから立ち上がると玄関へと歩み出した。

「カケちゃん? どこに行くの?」

「ーー図書館に行くだ! そこの新聞を調べれば全てが分かるかもしれないし何者かが関わっているなら必ず姿を現わすはずだ!」

靴を履き、玄関を飛び出そうとしている僕に絵里香が、

「ーー待って、私も一緒に行くわ」

玄関のドアの閉まる冷たい音だけを残して僕と絵里香は図書館へと向かったーー



★  ★  ★


大都会新トーキョー、一見聞こえは良いが人はあまり見かけない。

環境汚染と強すぎる紫外線により都会から少し離れた都市に人は集まるようになった。

都心部では、ほぼ人工知能を搭載したロボットがメインに人の代わりに活動して働いている。

そんなロボットを傍らに翔太は数少ない人に片っ端から声をかけ情報を集めていた。


ーー今から数日前、


翔太が出所し久しぶりに賃貸アパートの部屋に帰った時だった。

それは無惨にも何ヶ月も誰も帰った形跡が無いのが一目で分かるものだった。

玄関の新聞受けには大量のハガキやら料金の請求書が山のように放置されていたのだ。

恐る恐る部屋の中に入ってみるとそこはホコリとカビの匂いが充満している状態だった。

明らかに何ヶ月も誰も帰った形跡は無かった。

「ーー可憐は、どこで何をやって生活しているんだ? 彼女は今どこに・・・」

翔太が辺りを見渡してふと目についたのは一枚のチラシだったーー

「ーー自宅警備隊募集中、これを見て可憐は自宅警備員になったのか」

翔太はチラシを力一杯丸めると思いっきり壁に投げつけた。

「クソッッ、俺がもっとちゃんと話を聞いてあげてればこんなことにはならなかったのに」

今さら公開しても何も変わらない。そんな事は分かっていた。しかし、現実を目の前にしてしまったらどうしても悔やんでしまう。

翔太もあの時、あの場面でなぜ自分は彼女の気持ちを理解してあげなかったのか?

そればかりを考えてしまっているーー

「悔やんでいても仕方ない、まずは可憐を捜すことが大事だ。何か手掛かりを探さなきゃ」

こうして翔太は藁を掴む思いで新トーキョー第六地区にやって来たのだ。

ここで手に入れた数少ない情報によると少し前に警察沙汰になる程の事件が第九地区の公園で発生していたとの事だ。

男女数十人が深夜の公園内で奇声を発しているのを目撃していた。

翔太はこの情報をもとに第九地区へ向かってみることにしたーー

第六地区は、表向きはビルが立ち並びビジネスオフィス街に見えるが一歩路地裏に入ると仕事を失ったホームレスなどが多数いる。

彼らは唯一新トーキョーにある仕事斡旋所で仕事を求め列を作っている。

人工知能を搭載したロボット社会で人間に与えられる仕事はほとんどない。

人間を一人雇うよりロボット一台の方が遥かに効率が良い。

ミスは無いし文句も言わない。

人間は自分たちの創り出したモノに仕事を奪われ自分たちの首を絞める格好になってしまったのだーー


そんな彼等を横目に翔太はモノレールに乗り込み第九地区へ向かった。




「あっ、あっ、んんーーああ」

柚葉は必死で声を振り絞って出すが自分で思ったように上手く声にならない。

「はあ、はあ、ゆず逃げなさい!!」

「あっ、あっ、あうあう!!」

「ゆず逃げるのよーー早く!」

首を横に何度も降る柚葉ーー

第九地区の居住区内、人気が決して無い場所でもないのに可憐と早坂姉妹は逃げ惑っていたーー

「乙葉、あなたもよ! ゆずを連れて逃げなさい!」

「姫ちゃんを置いて逃げれるわけないじゃない」

「ゆずを守れるのはあなただけでしょ」

左手首に付けられている通信デバイスを何度も押してみる乙葉ーー

「何でよ!! 何で何も反応しないのよ!お願い動いてーー」

柚葉が可憐の服を引っ張り一緒に逃げるように促す。

「ゆず!!逃げなさい!!早くっ」
柚葉の手を振り払うーー

「フォフォフォ、無駄ですよ。何処に逃げようが無駄です」

ゆっくりと歩み寄る小柄な白髪の老人。

その手には血塗れの少年が引きづられていた。

その光景に肩を震わす乙葉と柚葉ーー

「フォフォフォ、コレですか? この少年は何と言いましたっけ? 神崎カケルさんの地区の少年ですよ」

「ーーカイト・・・さん・・・」

乙葉の目は瞳孔が開き一点をボーッと見つめていた。

「フォフォフォそうです、そうです。カイトさんです!」

「なんて酷いことを・・・」

可憐は真っ直ぐその光景を見つめられず目を逸らす。

「酷い? これからカイトさんは新たな人生を歩めるんですよ。酷いことなんてないのです」

「・・・新たな人生?」

白髪の老人の顔を見上げる可憐。

「ーー脳のみ取り出してパペットに移植させアンドロイドとしての新しい人生です」

白髪の老人の目に輝きは無かった。

ただ、黒目だけが不気味に可憐を見つめて笑っていたーー



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