れいぶる~自宅警備隊~
おわるせかい①
「ん、んん? あれおかしいなあ」
絵里香が通信デバイスを睨みつけてボタンを押したり叩いたりしている。
それを横目に目を細めて見つめているカケル。
「おおおい。 何をやってるんだ?通信デバイスを壊そうとしているのか?」
「どう見たら破壊しているように見えるのよ」
「どう見ても壊しているようにしか見えないんだよ」
絵里香は顔を膨らましてカケルを馬鹿にしたような素振りを見せてた。
「この前仲良くなった可憐ちゃんや双子の早坂さん達に連絡を取ろうかと思ったのに通信デバイスが上手く起動しないのよね」
その言葉に反応し自分の通信デバイスを確認してみるカケル。
「ーー僕のも起動しない」
「何かおかしいわよね?」
カケルもいろんなボタンを押したり電源を入れたり切ったりしてみるが起動しない。
「どうなってるんだ? 今もし敵に攻めて来られたら応戦出来ないぞ」
「スマホで千夏に連絡してみる」
「頼むよ」
起動しない通信デバイスを首を傾げながらカケルは見つめていたーー
☆
日が昇り始めた昼下がり、久しぶりの陽射しを眩しそうに浴びる千夏。
鏡面世界に太陽は無かったーー
カケルの家に行く前に差し入れを必ず持ってから行くのが彼女の日課である。
同じアパートに住んでいるのにわざわざと思われるかも知れないが手ぶらで人の家に上り込むのは彼女の性格からしてあり得ないのだ。
コンビニから出ると丁度目の前に柊が現れた。
「おう、ちなっちゃん今から神崎さんのトコに行くの?一緒に行こうよ」
笑顔で頭を下げる千夏。
「ちょっと待っててーー」
柊は慌ててコンビニの中に消えて行った。
その時ーー千夏のスマホからポップなメロディーが流れた。
スマホを手に取ると、
「ーー絵里香ちゃん?」
「はい。千夏です、どうしましたか?」
コンビニの中で買い物をしている柊が外でスマホを耳にやる千夏に気付いた。
「ーー分かりました。すぐ柊くんとそちらに向かいます」
「誰から?」
缶コーヒー片手にコンビニから出てきた柊は千夏に尋ねる。
「あっ、絵里香ちゃんです。何やら通信デバイスに異常があるみたいで・・・」
「マジかあ。神崎さんの所に早めに合流した方が良さそうだな」
「うん」
☆
コンビニからはほぼ真っ直ぐに十分程歩けばカケル達の住むアパートがある。
この日珍しく千夏から柊に声をかけたーー
「ねえ、柊くん・・・」
立ち止まる千夏ーーそれに気づいた柊が振り返る
「ーー何スか、ちなっちゃん?」
「柊くんはなぜ本当は頭が良いのに悪いフリをしてるの?空気読んで計算してるよね?」
「何のことっスか?急に、ちなっちゃんどうしたっスか?」
「その口調もチャラい態度も空気読めないフリも全て計算してる」
「ーー俺から言わせたらちなっちゃんは何者なんスか?その洞察力・観察力は常人じゃないっスよね」
「私は昔から人間観察してきたから、いつもイジメられないように目立たないように人の顔ばかり伺いながら生きてきたから」
「そんなら俺もっスよ。この口調もチャラい態度もみんなと歩調を合わせるためっスよ。何かしら人は素の自分を偽って生きてるっス。ご機嫌を伺いながら顔色ばかり見てこの人ならここまで言って良いとか、この人は本当の事は言っては駄目だとか、この人の前ではちゃんとしなくちゃとかね」
柊は髪の毛をくちゃくちゃにして髪をかき上げた。
「もうそう言うのに懲り懲りだったんだよ。どこにいても人の顔色ばかり伺って。家でも学校でもバイト先でも・・・。俺自信の人格を否定されてるとしか思えなかった。俺はいつどこで本当の自分を出せるの?息が詰まりそうだった」
「みんなそれぞれいろんな悩みを抱えて生きているのねーー」
「悩みや不安とか抱えていない人間なんていないっスよ。絶対何かどうか人に言えない事だってあると思うっス。自分が立ち止まったり迷ったりした時に相談出来る相手、助言してくれる人がいるかどうかでその人の不安がどれだけ解消出来るかどうかだけだと思うっスよ。少なからず、自宅警備員になった人間は何かしらのコンプレックスを持ってるって事っスね」
「カケルくんにもコンプレックスなんてあるのかしら?」
「・・・んん、あるんじゃないっスかね。そんな風に見えないっスけど」
「ーーあれ?おかしいな?」
「どうしたんスか?」
千夏は首を傾げてスマホをいじっている。
「閲覧出来ないニュースやたまにアクセス規制が自動的にかかるの」
「閲覧出来ないニュース??」
「二、三日前のニュースなの」
柊は腕を組み少し考えると何かを思い出したように手を叩く、
「二、三日前から急にテレビが見れなくなったっス。何か関係があるっスかね?」
「二、三日前って私たちが第九支部と戦ってた時よね?その時にリアルのこちらの世界で何かあったとしか思えないの」
「なあ、セントラルコントロールって何の監視をしてるんだっけ?」
「えっ?」
「ゾンビやクリーチャーはほとんどリアルの世界に現れなくなった今でも二十四時間監視を続けてる理由は何なんスかね?」
「それは何が一に備えてじゃ?ーーまさかそれって」
「ちなっちゃん、俺はそうだと思うーー」
突然警告音が響き渡るーー
「ーーーー!!」
訳が分からず辺りを見回す柊。
体を小さくし身構え柊の服を握り締める千夏。
突然、空間が歪みはじめ近くの硝子から新種のクリーチャーが現れた。
「ーーやっぱりな、こう言う事か」
「柊くんの言う通りかもなの」
新種のクリーチャーは微動だにせず立っている。
「フォフォフォ、賢いのも問題ですねえ」
鏡から不気味な笑いと共にDr.ドリトルが現れた。
「貴様がやはり黒幕か?全部お前が創り出したシナリオなのか?」
「私たちは踊らされてただけなの?」
「フォフォフォ、知りすぎですよあなた達は想像でも真実に近い発言はアウトです」
「ーーーー!!!!」
「サヨナラ」
数分後、カケルと絵里香、遅れて合流したカイトが来るのが遅い二人を捜しに出て見つけたのは、飲みかけの缶コーヒーと買ったばかりのコンビニの袋に入ったお菓子。
そして、千夏のスマホだけが無残に道端に残されていたーー
その後、二人を見た者は居なかったーー
絵里香が通信デバイスを睨みつけてボタンを押したり叩いたりしている。
それを横目に目を細めて見つめているカケル。
「おおおい。 何をやってるんだ?通信デバイスを壊そうとしているのか?」
「どう見たら破壊しているように見えるのよ」
「どう見ても壊しているようにしか見えないんだよ」
絵里香は顔を膨らましてカケルを馬鹿にしたような素振りを見せてた。
「この前仲良くなった可憐ちゃんや双子の早坂さん達に連絡を取ろうかと思ったのに通信デバイスが上手く起動しないのよね」
その言葉に反応し自分の通信デバイスを確認してみるカケル。
「ーー僕のも起動しない」
「何かおかしいわよね?」
カケルもいろんなボタンを押したり電源を入れたり切ったりしてみるが起動しない。
「どうなってるんだ? 今もし敵に攻めて来られたら応戦出来ないぞ」
「スマホで千夏に連絡してみる」
「頼むよ」
起動しない通信デバイスを首を傾げながらカケルは見つめていたーー
☆
日が昇り始めた昼下がり、久しぶりの陽射しを眩しそうに浴びる千夏。
鏡面世界に太陽は無かったーー
カケルの家に行く前に差し入れを必ず持ってから行くのが彼女の日課である。
同じアパートに住んでいるのにわざわざと思われるかも知れないが手ぶらで人の家に上り込むのは彼女の性格からしてあり得ないのだ。
コンビニから出ると丁度目の前に柊が現れた。
「おう、ちなっちゃん今から神崎さんのトコに行くの?一緒に行こうよ」
笑顔で頭を下げる千夏。
「ちょっと待っててーー」
柊は慌ててコンビニの中に消えて行った。
その時ーー千夏のスマホからポップなメロディーが流れた。
スマホを手に取ると、
「ーー絵里香ちゃん?」
「はい。千夏です、どうしましたか?」
コンビニの中で買い物をしている柊が外でスマホを耳にやる千夏に気付いた。
「ーー分かりました。すぐ柊くんとそちらに向かいます」
「誰から?」
缶コーヒー片手にコンビニから出てきた柊は千夏に尋ねる。
「あっ、絵里香ちゃんです。何やら通信デバイスに異常があるみたいで・・・」
「マジかあ。神崎さんの所に早めに合流した方が良さそうだな」
「うん」
☆
コンビニからはほぼ真っ直ぐに十分程歩けばカケル達の住むアパートがある。
この日珍しく千夏から柊に声をかけたーー
「ねえ、柊くん・・・」
立ち止まる千夏ーーそれに気づいた柊が振り返る
「ーー何スか、ちなっちゃん?」
「柊くんはなぜ本当は頭が良いのに悪いフリをしてるの?空気読んで計算してるよね?」
「何のことっスか?急に、ちなっちゃんどうしたっスか?」
「その口調もチャラい態度も空気読めないフリも全て計算してる」
「ーー俺から言わせたらちなっちゃんは何者なんスか?その洞察力・観察力は常人じゃないっスよね」
「私は昔から人間観察してきたから、いつもイジメられないように目立たないように人の顔ばかり伺いながら生きてきたから」
「そんなら俺もっスよ。この口調もチャラい態度もみんなと歩調を合わせるためっスよ。何かしら人は素の自分を偽って生きてるっス。ご機嫌を伺いながら顔色ばかり見てこの人ならここまで言って良いとか、この人は本当の事は言っては駄目だとか、この人の前ではちゃんとしなくちゃとかね」
柊は髪の毛をくちゃくちゃにして髪をかき上げた。
「もうそう言うのに懲り懲りだったんだよ。どこにいても人の顔色ばかり伺って。家でも学校でもバイト先でも・・・。俺自信の人格を否定されてるとしか思えなかった。俺はいつどこで本当の自分を出せるの?息が詰まりそうだった」
「みんなそれぞれいろんな悩みを抱えて生きているのねーー」
「悩みや不安とか抱えていない人間なんていないっスよ。絶対何かどうか人に言えない事だってあると思うっス。自分が立ち止まったり迷ったりした時に相談出来る相手、助言してくれる人がいるかどうかでその人の不安がどれだけ解消出来るかどうかだけだと思うっスよ。少なからず、自宅警備員になった人間は何かしらのコンプレックスを持ってるって事っスね」
「カケルくんにもコンプレックスなんてあるのかしら?」
「・・・んん、あるんじゃないっスかね。そんな風に見えないっスけど」
「ーーあれ?おかしいな?」
「どうしたんスか?」
千夏は首を傾げてスマホをいじっている。
「閲覧出来ないニュースやたまにアクセス規制が自動的にかかるの」
「閲覧出来ないニュース??」
「二、三日前のニュースなの」
柊は腕を組み少し考えると何かを思い出したように手を叩く、
「二、三日前から急にテレビが見れなくなったっス。何か関係があるっスかね?」
「二、三日前って私たちが第九支部と戦ってた時よね?その時にリアルのこちらの世界で何かあったとしか思えないの」
「なあ、セントラルコントロールって何の監視をしてるんだっけ?」
「えっ?」
「ゾンビやクリーチャーはほとんどリアルの世界に現れなくなった今でも二十四時間監視を続けてる理由は何なんスかね?」
「それは何が一に備えてじゃ?ーーまさかそれって」
「ちなっちゃん、俺はそうだと思うーー」
突然警告音が響き渡るーー
「ーーーー!!」
訳が分からず辺りを見回す柊。
体を小さくし身構え柊の服を握り締める千夏。
突然、空間が歪みはじめ近くの硝子から新種のクリーチャーが現れた。
「ーーやっぱりな、こう言う事か」
「柊くんの言う通りかもなの」
新種のクリーチャーは微動だにせず立っている。
「フォフォフォ、賢いのも問題ですねえ」
鏡から不気味な笑いと共にDr.ドリトルが現れた。
「貴様がやはり黒幕か?全部お前が創り出したシナリオなのか?」
「私たちは踊らされてただけなの?」
「フォフォフォ、知りすぎですよあなた達は想像でも真実に近い発言はアウトです」
「ーーーー!!!!」
「サヨナラ」
数分後、カケルと絵里香、遅れて合流したカイトが来るのが遅い二人を捜しに出て見つけたのは、飲みかけの缶コーヒーと買ったばかりのコンビニの袋に入ったお菓子。
そして、千夏のスマホだけが無残に道端に残されていたーー
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