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れいぶる~自宅警備隊~

望月まーゆノベルバ引退

優梨奈誘拐事件①


某高層マンションの一室

「ご苦労様、この子が神崎カケルの妹さん?」

「はい間違いないと思います。捕獲する直前に通信デバイスで連絡を取り合っているのを確認しました」

「姫ちゃん、ビンゴだったねえ」
「これなら神崎カケルも簡単には手出し出来ないわよ」
「この子の特異能力が厄介なのよね。チェンジしている時のみなのか?それとも通常でも使えるのか?条件があるのか?無ければ逃げられるてしまう可能性は多いにあるわね」
「どうするの?逃げられたらヤバイよね?」

「私の考えでは、テレポートやら特異能力を使うのに一番必要なことは五感よ。特に視覚が大事だと思う。今いる場所を把握してイメージする。移動したい場所を頭でイメージする。そのための情報を遮断してやればテレポートは使えないと思うわ」

「さすが姫ちゃん」
「早速、目隠ししてあげなさい」
早坂姉妹は隊員に命令し優梨奈に目隠しをする。
優梨奈は目隠しをされ、ロープで手と足を結ばれ更に口にガムテープを貼られている状態だ。

「ねえ、あんた確か遠隔映像ビジョン系の特異能力者だったわよね?」
乙姫が隊員の一人に詰め寄る。
「は、はい」
隊員は酷く怯えている。
「この今の状況を神崎カケルに送りつけなさい!」
「わ、分かりました」

乙姫は不敵な笑みを浮かべていたーー


★  ★  ★

「昨日結局、妹さんから連絡はなかったの?」
「ああ・・・」
無言の通信デバイスを見つめる僕。
妹が約束を破るとは思えない。
「もう一度妹さんに連絡してみたらどお?」
「・・・そうだな。連絡入れてみるか」
前回の履歴から通信デバイスで連絡してみるがーー、
「あれ?電波遮断されてる」
通信デバイスは特殊な回線を使っている為、一般的な回線と違い圏外はあり得ない。
誰かが意図的に電波を妨害または遮断しているとしか思えない。
「・・・意図的としか思えないの」
「何で?第十二支部と同盟結びたくないからなの」
エリカがムッとしている。
「そんなことあるわけないだろ!」
「じゃ、何で電波遮断してるのよ」
「ーーそ、それは」
確信がもてず動揺する僕。
「キーくんに連絡取ってみるの」
千夏はパソコンでメールを送ってみた。
すると、
「あっ!  返事がすぐきたの」

『ちいちゃんへ

ご連絡ありがとうございます。
この前はお返事出来ず申し訳ないです。
自分自身もちいちゃんが思ってるような人間じゃないと思う。
誰を助けたり勇気付けたり出来るような立派な人間じゃないです。
ただ、ちいちゃんが僕の言葉で勇気を持つことが出来たなら嬉しい限りです。
僕もちいちゃんと連絡が取り合っている時間はとても楽しみな時間でした。
僕自身もちいちゃんの言葉に励まされ、ちいちゃんの言葉に勇気付けられました。
何より、ちいちゃんに会いたいとメールでもらった時凄く嬉しかったです。
今度こそは一緒に会ってお話し出来たらと思います。

神崎の件ですが僕も連絡が取れず心配していたところです。
同じように神崎の兄なら連絡が取れるのかと思っていたところでした。
お互い連絡が取れないとなると心配です。
事件や事故の可能性があるかも知れませんね。

別の線で神崎の居場所など捜索してみます。

                                           key』

千夏はメールを読み自然と顔がほころぶ。

「ーーkeyくんも連絡がくれなくて困ってたみたいでカケルくんに連絡をしようと思ってたみたいなの。事件や事故の可能性があるかもと心配してるの」
「ホホホ、かなりの長文じゃない?千夏」
「きゃあぁぁ!!  見ちゃダメなの」
慌ててパソコンを抱き抱える千夏。
「ほれほれ、お姉さんに見せてみなさい」
千夏の服を引っ張るエリカ。
「イヤなの、ダメなの」
首を横に振りながらパソコンを抱き締める千夏。
「コホンっ、優梨奈の捜索に行くぞ!」
僕は二人に聞こえるようにわざと咳払いをした。僕の顔を見るなり二人は苦笑いした。

『どーもこんばんは。第十二支部の諸君!
第九支部の乙姫可憐と申しますわ、以後お見知りおきを』

マンションの部屋の空間に映し出された映画には可愛いらしい少女の映像が映っていた。清楚な育ちの良い雰囲気の少女、それが口調と合っていて違和感は全く感じなかった。
「彼女が乙姫可憐、第九支部のリーダーでランクAーー」
僕は息を呑んで映像を見る。

『ーーさて、これは何でしょう?』
映像が切り替わった瞬間、一気に怒りが込み上げてきて抑えられなくなった。
「ーー!!  貴様らああぁぁぁ!!」
映像に映し出しされたのは目隠しをされ口にガムテープを貼られ手足をロープで縛られた優梨奈の姿だった。
『ふふふふ、返して欲しければ神崎カケル一人で鏡面世界の第九支部の美大と音大の間の公園に一時間後に来なさい。約束を破るとどうなるかは分かるわよね』

ーー映像はそこで消えた。

「クソおおおぉぉぉ!! 待ってろよ優梨奈絶対助けてやるからな」
僕は直ぐさま玄関に向かって歩き出すと、
「カケちゃん罠なんじゃない?」
「私もそう思うの、もう少し慎重にーー」
「罠だろうが何だろうが助けに行くに決まってるだろ?今だって優梨奈は助けを待ってるんだ!」
エリカと千夏は僕を押し退け玄関の前で両手を広げて行く手を阻む。
「罠だって分かってて行かせる訳にはいかないよ」
「エリカちゃんに同じなの。カケルくんは大切な仲間なの。私たちもチカラになりたいの」
二人は必死な表情をして僕を見つめる。
「ーー悪いがお前らじゃ役不足だよ。一人で来いって言われてる。絶対ついて来るなよ!もし付いて来て優梨奈に何かあれば仲間でも許さない」
二人を無理矢理押し退けて部屋を出て行った。
閉まるドアの向こう側からエリカのすすり泣く声が小さく聞こえた。

エリカ、ちなっちゃんゴメン。
どうしても妹を助けたいんだ。
どうしようもない兄が妹の為に唯一できる事それは体を張って命に代えてもたった一人の兄妹を守ってあげたいんだ。

僕は走った助けを待つ妹の元へーー

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