れいぶる~自宅警備隊~
Be exposed
ーーもう目を背けるしかなかった。
「ああああぁぁぁぁぁぁぁッーー!!」
柊の体に何度も何度も何度もナイフが突き刺さる。その度に声を荒げる柊。
それはまさに拷問だった。
冷酷で無表情にそれを繰り返す新種のクリーチャー。
エリカと千夏は耳を塞ぎ地面を見てただ泣き崩れるしかなった。
いつかのカイトの言葉を思い出したーー
『奴らは試してるんだ。耐えきれる人間か耐えれない人間か。実験している』
「・・・ひいらぎ・・・カケちゃん、カケちゃん・・・お願い来てよおお」
エリカが地面に塞ぎこんでいるとゆっくりと近づく足音が聞こえたーー
それは一歩、一歩力強くそして、怒りにもみた足音だった。
ゆっくりとエリカが顔を上げたそこには希望が立っていたーー
「ーーカケちゃん」
止めどなく溢れ涙を止める事は出来なかった。どれほど待っていたか、どれほど心配したか信じていても不安のが多かった。
「ーー千夏と下がってろ」
その声は今まで聞いたことないほど冷たく感情が全くなかった。
言われるがまま泣き崩れていた千夏を引っ張り上げ、物陰に身をひそめるエリカ。
余りの迫力と感情を今にも爆発する寸前のカケルにただ従うだけだった。
「他の支部に見られたくなくて隠しておきたかったけど悪いけど使わせてもらう!!
お前だけは何があっても生かしておけねえよ!!」
殺気にもみた魔導が第三支部の時空を歪ませる。
「・・・かん・・・ざきさん?」
柊の虚ろな目に映ったのは怒り身を任せた鬼神の姿だったーー
「チルドレンコード零【 レイブル 】発動」
鏡面世界が震えるほどの膨大な魔導量ーー
空間が振動する。
新種のクリーチャーは直ぐさま標的を柊から切り替える。
「俺の仲間を傷つけて泣かせてただで済むと思うなよ!!」
魔導弾を練り上げながら何もない空間から銃を取り出す。
銃を見た瞬間に新種のクリーチャーは接近戦に持ち込もうと間合いを詰めてナイフで攻撃を仕掛ける。ーーが、
練り上げた魔導から魔剣を創り出し回避しそのまま斬り返す。
「毎度そのパターンしかないのかよ。まるでロボットだな」
新種のクリーチャーは得意のノーモーションからの無演唱の魔導弾を連射して応戦してくるが左手にある魔剣でいとも容易く全て切り裂く。魔導力を吸収して創り出す魔剣は【レイブル】発動状態で創り上げた今は最強の剣である。
新種のクリーチャーは、今度はスピードならばと接近戦で連続して波状攻撃を仕掛けてくるが左手にある魔剣で全て受け止め、右手の銃口で打突を腹部に入れ吹き飛ばしたーー
「真面目にやれよ!その程度か?」
光輝く銃口を倒れた新種のクリーチャーに向け上から鋭い目付きで見下す。
「お前が何のために造られてどんな目的でやって来たかは知らねえけど俺の仲間を傷つけて泣かせるなら俺は何度でもお前らの前に立って命を懸けて仲間を守るだけだ!!」
魔導量が膨れ上がる。七色のオーラが全身を包み込み銃口に集まっていくーー
「永久に彷徨う此の世ならざる者よ 浄化の力により消え去りたまえ 《魔弾ラグナ・リボルバー》ーー消えろ!!」
銃口より放たれた光の閃光が新種のクリーチャーに直撃しその姿形を跡形も無く消し去ったーー
「カケちゃんーー」
エリカが目を真っ赤に腫らし抱き付いてきた。
「遅くなって悪かったな、ちなっちゃんもすまない」
エリカの頭を撫でながら千夏に謝る。
千夏は首を横に振ったーー
「柊、無理させたな・・・すまん」
倒れて動けない柊に肩を貸して立たせる。
「大丈夫っスよ。イテテ、みんな無事で良かったっス」
顔を腫らして血だらけの柊は必死に笑顔を作ってみせた。
「カイトが入り口で迷子の人と待ってる筈よ」
「そっか。柊、歩けるか?カイト呼んできて機械装甲で運んでもらうか?」
「まあ、ゆっくり肩を貸してもらえるなら何とか・・・イテテ」
「お前は強くなったよ!成長したな柊」
「あざーす!神崎さん」
柊の笑顔にみんな救われた。
僕等はゆっくりとカイトの待つ鏡面世界の入り口へと向かって歩いて行ったーー
★ ★ ★
真っ白な空に天使のようなシルエットが二つ。
「へえ、やっぱ神崎カケルつよいじゃん」
「裏コード?別人のような魔導力と身体能力だったわね。それと例の魔弾がやっと見れたわね」
「見れた、見れた。ずっと隠してたワケね」
「新種のクリーチャーに感謝ね。姫ちゃんに報告とこのデータ見せれば喜ぶわよ」
「神崎カケルよりも・・・あの女やっかいかも」
「天才的な空間座標把握能力観測者ね。確かに厄介ね」
通信デバイスが軽快に音を立てるーー
『こちら乙姫。ゆずちゃん、おとちゃん帰ってらっしゃい。お出かけよ』
「こちら柚葉。姫ちゃん了解!データ取れたよん。すぐ帰るねえ」
「じゃあ、帰りましょうか。第四支部は鏡面戦線脱落ね」
ほぼ廃墟と化した第三支部の郊外を見回し乙葉は目を細めた。
「おねえちゃんはやくう、おいてくよん」
柚葉は後ろを振り返りながらフワフワとゆっくり後退している。
「ええ、今行くわ」
柚葉に近付きながらも廃墟をジッと見つめる乙葉。
「どうしたの?ボーッとして?」
「私たちだけじゃなかったみたいね」
「他の支部?!」
「気配を完全に消してたわ。たまたま私たちが飛行出来るから気付けただけで普通なら気付かないレベルよ」
「どこの支部なの?」
「恐らく第十支部。暗部とあの連中は読んでいる偵察部隊よ」
「第十支部・・・ソードブレイカー」
「魔導力は弱いし魔導弾のような攻撃は無いけど接近戦や相手の動きを読む洞察力、観察力に特化した支部よ。姫ちゃんも物凄く警戒している支部の一つよ」
「ーーあまり遅くなると姫ちゃん怖いから急いでかえろおねえちゃん」
「ええ」
天使のような少女たちは第三支部の空から飛び去って行ったーー
☆
「ーー第三支部郊外、暗部より報告。
第三支部郊外上空に第九支部の早坂姉妹の姿確認。神崎カケル及び第十二支部の偵察と思われる」
『暗部偵察記録は?』
「やっと今回神崎カケルの魔弾や裏コードを使ったデータが撮れました。新種クリーチャーが現れてくれたおかげです」
『新種クリーチャーが偶然・・・』
「ーー偵察記録を届けに一度帰還します」
この暗部部隊からの通信を受けた人物は第十支部リーダー、柳 若虎。
魔導力の少ないランクの低い自宅警備員が集まっているこの第十支部をまとめ上げた手腕のリーダーである。
柳自身も魔導力は低くランクもBだ。
他の支部のサブリーダーと変わらない。
しかしーー彼は一人一人のチカラは弱くても組織として仲間と協力する事でそれを補うことができると支部メンバーに唱え、一人一人の役割を徹底して叩き込んだ。
更にフォーメーションなど有りとあらゆる場所を想定しての動きを覚えさせたのだ。
「新種のクリーチャーね。こんなタイミングで現れないでしょ普通。誰かが意図して捜査してるに違いないよ」
羽織袴姿に刀を腰に差している。額にはハチマキを巻き長髪を後ろで一箇所縛っている。
第十支部のメンバーは暗部部隊以外は全員羽織袴姿なのだ。まるでサムライのような集団。
第四支部壊滅により勢力図が変わり始めるーー
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