れいぶる~自宅警備隊~

望月まーゆノベルバ引退

失踪事件⑧ 再会


バリケートの上に立ちこちらを見て驚いている青年がいた。

それは紛れもなくずっと僕たちが捜し求めていた姿があった。ーーカイトだ。

「カイトおお」
柊は、嬉しいそうに手を振りながら笑顔で叫んだ。

「ーーっ、なんで来たんだよ?」
その言葉に一同、鳩が豆鉄砲を食らったような表情になった。

「何って?お前を捜しにやっとここまで俺たち来たんだぜ」
両手を広げ苦笑いを浮かべる柊。

「誰が捜してくれって頼んだんだよ?なんでみんな来ちまったんだよ」
バリケートの上に座り込んで両膝を抱え震えているカイト。

「ーーカイトどうした、何があった?お前はどうしてこの世界に来たんだ?」
僕は、ゆっくりとカイトに歩み寄って行った。

「ーー奴等に連れて来られたんだ。みんな奴等に殺られた」
今にも泣き出しそうな声、カイトは顔を塞ぎこんだ。

「ーー奴等?ローブの人物か」
カイトは無言のまま頷いた。

「奴等は、あの時の人物を含めて五体いる。僕は黒に捕まりこの世界に連れて来られた。黒の隙をついて逃げ出しこのバリケートを発見したんだ。バリケートの中には僕の他に二人の自宅警備員がいてかくまってくれたんだ」
カイトの震えは更に酷くなりガチガチと歯が鳴るーー

「他の二人は・・・」
エリカが心配そうに周りを見渡す。


「ーー死んだよ、殺されたんだ。あいつら実験してやがるんだ。魔力に耐え切れる人間か耐え切れない人間か。
耐え切れない人間は殺され、耐え切れる人間はどこかに連れて行かれる。
もしかしたら、社会ゾンビもクリーチャーもローブの人物も全て元は人間じゃないか?
この鏡面世界は巨大な実験施設じゃないか」

震えているカイト、その目は虚ろでどんな悍ましいおぞましいものを見たのだろうか。

「とにかく、お前が無事で良かったよ。早くここから出よう」

「ーー出れないんだよ。どこにも出口何て無かった。ここに閉じ込められたみんなで捜した。何もないんだ、確かに鏡の外は見えて人間は俺を見てるんだけど気付いてくれない。必死で叫んでも声は届かない」

「ーーカイト今度は大丈夫だ。出入り出来るようになったんだ。帰ろう」

僕は、座り込み震えているカイトに手を差し伸べた。

ーーしかし

僕の手を勢いよく払い除ける。

「アンタいい加減にしなさいよ!カケちゃんの手を払い除けるってどういう事?みんな心配してこんなとこまで来たのに、もう勝手にすればーーほっといて行きしょカケちゃん」
エリカが真っ先に噛み付き顔を真っ赤にしている。

「カイトその態度はないぜ。本当、みんなお前の為にーー」

「それが余計のお世話なんだよ!!」
カイトが下を向いたまま大声を張り上げる。

「ーーーー」

「俺のため、俺のためってわざわざこんな危険なことに来てほしくなかった。みんなを危険に巻き込むくらいなら俺一人でこの中で死んでも良かったんだよ」
カイトの目から堪えきれず涙が溢れたーー

「カイト・・・」
エリカは、肩を落とした。

「僕は、仲間のためならどんな危険も顧みず突き進んでしまうんだ。仲間が辛い思いをしていると知ってしまったら助けたいと思うのが本当の仲間だと思う。自分一人安全なとこで仲間が危険なことに巻き込まれて呑気に過ごせるほど無神経な人間はこの第十二支部のメンバーにはいないって事だよ」

「カイト、仲間に迷惑とか思わないでほしい。だって逆の立場ならお前も同じことをするだろ?それと同じことを俺らは、しただけさ」

「出逢って間もないけど私たちは、仲間よ。遠慮なんていらないは助けてほしい時はいつもでも言いなさいよね」

「助け合うのが仲間なの。一人よりみんなのが心強いの」

みんなは笑顔でカイトを見つめる。

「みんな、ありがとう。俺、本当は・・・誰も来てくれないかと思ったんだ。だから、だから、仲間を信じられない俺なんて仲間の資格なんてーー」

「仲間に資格なんてないよ。出逢ってお互いがそう思った時点で仲間だよ。少なくとも僕はカイトを仲間だと思ってるよーーっな、みんな」

メンバー全員が頷く。

「ーーみんな、ごめん。ありがとう」

僕の差し出した手に今度はちゃんと握ってくれたカイト。

第十二支部のメンバーが一つになったような気がした。




この鏡面世界、いつまでも喜んでいられなかったーー





*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

そびえ立つビルの一角からこれまでの全ての流れを見つめていた小さな影が二つーー

「見た? あれが神崎 カケル」

「んんん、何か本当にランクAなの?って感じね。正直拍子抜けって感じ。十二支部のメンバーも大したことないわね」

「とっとと殺っちゃう?」

「だめだめ、奴等に見つかるのは面倒だから一応、あのボロボロの一体は神崎 カケルが殺ったみたいよ」

「マヂ! やっぱ神崎 カケル凄くね?」

「とりあえず一旦、支部に帰って作戦練らなきゃね。姫ちゃんにちゃんと報告するのよ」

「りょうかい。 バイバイ神崎 カケル次は私たちと遊ぼうね」

少女は投げキスをすると、影はビルからビルへと飛び移り常識ではあり得ない跳躍力で飛び跳ねて行った。



鏡面世界に於ける、支部同士のポイントの奪い合いが始まるーー

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