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れいぶる~自宅警備隊~

望月まーゆノベルバ引退

失踪事件⑦ 鏡への入り口


鏡面世界への入り口が開かれた。

その情報は、僕たちにしか知らない筈だったのにーー

「何でだよ・・・」

『鏡面世界はーー』

「どうしてーー」

『開かれました』

僕は、千夏のパソコンの画面を凝視する。


「何で、中央本部が発表しちゃうんだよ」

( 僕がレイブルを使っても倒せない程の相手が鏡面世界にはいるのに )

「ーーカケちゃん?」

「鏡面世界への扉が開かれたんだ。俺らも行こう」

「カケルくん?」
「神崎さん?」

僕は、震えていた・・・

何となく想像してしまった。
何も知らない人達が鏡面世界に入って奴らにやられてしまう事をーー

「カケルくん、パソコン見てーー」

『自宅警備隊中央本部よりお知らせです。
全ての自宅警備員に通達致します。

一点目は、本日より活動拠点を鏡面世界に移行致します。
理由は、社会ゾンビ及びクリーチャーは鏡面世界から現れることが明らかになったからです。

二点目は、本日より個人討伐ランキングに加え支部ランキングが追加されました。
支部ランキング上位支部には、武器を支給します。武器は何種類か用意されてる中から選んで下さい。全て術式錬金使用です。

ランキング最下位の支部にはペナルティを受けてもらいます。
ペナルティは支部メンバーの中で一人自宅警備員資格の剥奪です。
剥奪者は、支部メンバー内で話し合って下さい。

以上、自宅警備隊中央本部からのお知らせになりました』

「何なんっすかコレ?中央本部の目的が分からないッスよ」

「クリーチャーやゾンビ討伐が目的なんだよね? これじゃまるで警備員同士で争えって言ってるようなものじゃない」

「ーーチャットの書き込みもみんなと同じ事言ってる。中央本部への抗議も凄いみたいなの」

パソコンの画面に映し出されているチャットのやり取りは凄い速さで更新されて行く。
その内容は、中央本部のやり方や説明不足など様々だが一番はなぜ自宅警備員同士が争わなくてはならないのか?

その疑問だけが残ったーー

中央本部に踊らされているのは分かっていた。
自宅警備員になった時点で僕たちは中央の言いなりだ。
だけど、絶対に心までは支配されない。

「ーーっ、カイトを見つけに行こう」



★  ★  ★


ネオンが華やかなに煌く都会のビル群の合間を目立たない迷彩服で走り抜けて行く。

目的地はあそこしかないーー第十二支部コミュニケーションセンター。
あそこなら確実に鏡面世界へ行けると確信している。

そして、カイトも近くにいる筈だ。


見えた。ーーあの特徴的な建物、この先にカーブミラーがあり曲がった先に正面玄関の自動ドアがある。
そこから鏡面世界に行ける!

「カケちゃん、鏡面世界に入ってそのあとこっちに帰って来れるよね?」
眉を八の字にして僕を見つめるエリカ。

「大丈夫、きっとみんなでカイトも連れて帰って来よう。たとえ上手く行かなくてもみんな一緒だ」
エリカの頭にポンと手を乗せると嬉しそうに彼女は笑みを浮かべた。




ゆっくりとコミュニケーションセンターの正面玄関の自動ドアへと歩み寄って行く。

本当に鏡面世界に行けるのだろうか?
不安と期待に胸を躍らせる。
自然と心臓の鼓動が早くなる。

周囲を見回しながらゆっくりと近寄るーー

月明かりが四人の足元を照らす。
闇が広がる中、自動ドアが不気味に見えてきた。

コミュニケーションセンターの玄関の自動ドアの目の前辿り着いた。

いつもと変わらない自動ドアに見える。
ただーー僕たちの姿が映っていない。

「ーー触ってみるよ」
緊張感しながら僕はそっと自動ドアに触れてみた。

「ーーーー!!」
感覚はなく自動ドアの中に腕が消えた。

「うわっ! 神崎さんの腕消えてるっすよ」
「カケちゃん、大丈夫?」

「ああ。ーー入るぞ」
僕は、思い切って自動ドアの中に入った。

「あ・・・神崎さん?」
柊はどうして良いか分からずおろおろとエリカと千夏に助けを求めるように見る。

「ーー私も行く」
エリカも自動ドアの向こう側へと入って行く。

「おっ、お嬢ーー」
「私も」
千夏も躊躇なく中に入って行った。

「えっ? えっ? みんなーー」
暗闇に一人取り残された柊ーー、

「待ってくれよ、俺も行くからさ」



真っ白な空間ーー

建物や道路などは一緒なのに、どことなく真っ白と表現してしまう。

現実世界は夜中だったのに鏡面世界では昼間の様に明るい。

「ーーここが、鏡面世界ッスか?」

一番最後に柊がびくびくしながらやって来た。

「あんた、男のクセに何びくびくしてんのよ。シャキっとしなさいよ」

柊の背中を思いっきり平手打ちするエリカ。

「って、ーースイマセン」
柊は顔を歪めて肩を落としていた。

「エリカ、カイトの位置を確認して」
「分かったわ」

エリカは目を閉じ集中するーー

「空間座標把握、人物反応確認、位置情報距離確認ーーコミュニケーションセンターから西に離れた位置に移動してわよ」

「ーー西? 市街地に戻ったのか」
「そうね。周りに他に人物反応はないわ」
僕は、周りを確認する。ーー鏡の中だからと思ったのだが左右反転しているわけでは無さそうだ。

コミュニケーションセンター施設内には人は一人もいなかった・・・

「本当に人影すらないッスね。同じ街とは思えないッスね」
柊は、キョロキョロと周りを見渡す。

「ーーそもそも、鏡面世界に入れるようになったからって誰かが確かめて入ってくるとは思えないけどな」
僕も誰もいないとは思っては居るがもしかしたらまたローブの新種のクリーチャーが襲ってくるかもしれないと周りを警戒する。

市街地に入ってもとても誰かが生活しているとは思えない程、静まり返っている。

「ーーカケちゃん、カイトあそこの中に居るわよ」
エリカが指差す先にはーー

「バリケート・・・?」

「カイトおお、居るのか?おおおい」
柊は大声で叫んだ。
「止めろ!!馬鹿やろ」
僕はすぐ静止させるーー

「カケちゃん、遅いは生体反応が急に二体現れたわよ。こっちに向かって来る」

「柊の馬鹿やろがーークソっ」
「えっ?えっ?俺ッスか?」
全く状況が読めてない柊。

「柊くん、バリケートが有るってことは敵から身を守る為なの。ーーってことは」

「敵がいるーー」

黒が凄い勢いで向かって来たーー

「ーー第十二小隊、陣形!!」
「「「 了解 」」」

「敵、高魔導反応あり、千夏くるわよ!」

「任せてーーエリアウォール」

黒のライフルから弾丸が向かってくるが千夏の防御障壁が回避する。

「俺の出番ッスね!」
障壁内から勢いよく飛び出して黒に向かって右手に握っているブレードで斬りかかるーー

上段への太刀筋はライフルで伏せがれる、間髪入れずに回転しながら中段に一撃。
そのまま、もう一体に低い姿勢から一気に距離詰め斬撃ーー

「ーー様になってないッスか?俺の剣術」
「全然だよ!攻撃が浅過ぎだ」
僕は、銃に魔導弾丸を詰め込んで黒に狙いを定め構える。

「ちぇっ、ならコレならどおっスか?」
柊はブレードに自分の魔導力を集める。
黒二体と再び距離をとると加速しながら突進して行くーー

黒がライフルで柊を威嚇射撃するが柊は的にならないよう左右に揺さぶりながら更に加速突進するーー

加速・加速・加速ーー残像だけを残し柊はブレードで一閃。

光の一太刀は黒二体を斬り裂いたーー

柊は、片膝を地面についてポーズを決めている。
自分では完璧に倒して決まったと思っているに違いない。

「・・・カケちゃん、一体まだよ」
「分かってるよ。あいつは一回痛い目見なきゃ分からんのか?油断し過ぎだ」

柊の背後から黒の一体が起き上がり柊に襲いかかる。
「ーーげっ!!マヂッスか」

ダン!

銃声音が辺りに響いたと同時に黒は倒れ消滅したーー

柊は僕の右手に持っている銃を見て複雑な表情を浮かべていた。


「神崎さん抜きで倒したかったッス」
「お前は詰めが甘過ぎなんだよ」
僕は、柊の頭をポンと叩いた。

僕達がバリケート前で戯れあっているとバリケートの奥で物音がし視線を感じた。
みんな同時に振り返るとーー


「ーーーーなんで?みんなここに?」

そこには捜し求めていた姿があった。

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