れいぶる~自宅警備隊~
中央事件捜査本部
人間がいきなり消えるーー そんな噂が広まっていた。
失踪したのか?
自殺したのか?
連れ去られたのか?
謎が謎を呼んだ事件が今、頻繁に発生している。
分かっているだけで既に三十件余りの事件が発生している。
警察は、ただの事件ではないと推測し自宅警備隊に別の方面での捜査を協力要請してきた。
自宅警備隊中央本部は、警察の要請を受諾し大規模な招集をかけた。
漏れなくその招集に僕、神崎カケルも呼ばれたのだったーー
★ ★ ★
新トーキョー第六地区 自宅警備中央本部
三階 大会議室
今回、招集をかけられたのは各地区の代表と各地方のスコアリーダー、中央本部の役人など百人近くの人数が集められた。
「ーーで、あるからしてこの事件はただの失踪事件ではないと推測される」
中央本部の役人より今回の事件の詳しい説明があった。
僕としてはどうでも良い話だった・・・
なぜ、こんな事件の捜査会議に呼ばれて参加しなければならないのかよく分からなかった。
他の人達も無理矢理呼ばれたのか、アクビをしたり上の空で聞いているようだったーー
「ーー自宅警備員を地区ごとに単独捜査から小隊規模にし、捜査してもらう。今回呼ばれた者がその地区のリーダーとなり捜査にあたってもらう。 以上だ」
( 何?! 小隊規模? リーダー? )
あちらこちらで、ザワザワと疑問や反論の声が飛び交ったーー
「ーー静粛に! 今回の事件はそんな簡単な事件ではないと思っている。人が何人も消えている。裏にはきっと何かある。一人より大隊で行動した方が効率も上がり万が一の時に対処も可能になる。自宅警備隊の諸君、成果を期待している」
( 中央本部局長、京極政宗だっけ? 流石の迫力と説得力だ・・・)
ざわついていた会議室は静まり返り全員が局長、京極政宗に注目していた。
僕も自然とそちらに目が向き話を聞いていた。
その後、今回の事件の情報などをたっぷり二時間ほど聞かされた。
最後に地区ごとのリーダーが一人一人発表される事になった。
「ーーええ、新トーキョー地区。リーダー第十二支部、神崎カケル」
騒つく大会議室、正面の大画面いっぱいに映し出された顔写真のスライドとプロフィールの欄には適性ランクとトータル討伐スコアが載っていた。
他の自宅警備員を大きく突き放すスコア。
それ以上にインパクトがあったのはやはり適性ランクだった。
「ーー適性ランクA」
「神崎カケル・・・何だ?このトータルスコアは? それに適性ランクA。初めて見たよ」
再び騒つく大会議ーー、皆一同に僕に視線を集めた。
ざわざわと騒めく会議室。
( 未だになぜ僕が適性ランクAなのか分からない)
「静粛に!発表を続けますーー」
★ ★ ★
帰りの道中のタクシーの車内で僕の気持ちは晴れなかった。
それは、小隊部隊のメンバーを集めなければならないからだ。
今までほとんど第十二支部は僕一人で討伐してきて他の人とコミュニケーションなんてした事はなかった。
何名かは、活動をしているのは確認しているのは知っている。
( 小隊部隊なんて僕には無理だ・・・それにメンバーをどうやって募れば )
窓の外は、華やかな大都会でネオンがキラキラと輝いていた。
ネオンの反射でタクシーのウインドに写し出される僕の顔は何とも冴えない顔をしている。
適性ランクA、トータル討伐スコア一位。
そんなものはただの飾りで本当の僕は、結局は引きこもりで内面は何も変わってはいない。
そうだよ。
自分から変わろうとしなきゃ。
自分から行動しないと。
腕時計型のモニターで第十二支部の自宅警備員一人、一人にメール送信した。
『本日、自宅警備隊 第十二支部リーダーに選出された神崎 カケルです。
急なメール申し訳ございません。
明日、18:00に第十二支部自宅警備隊、初のミーティングを開催したいと思います。
今後の第十二支部の活動などを話し合いたいと思いますので是非参加宜しくお願いします。
場所: 新トーキョー第十二支部 コミュニケーションセンター前入り口
時間: 18:00
是非参加お待ちしております』
これで何人の方が参加してくれるだろうか。
自宅のあるマンションの前でタクシーを降りた。
その後の僕の足は鉛を付けたように重かった。
ため息が止まらず憂鬱な気分だ。
なぜ?
今度は、自分一人で自由に行動出来ないから。
人とコミュニケーションするのが嫌だから。
自分がリーダーでまとめるのが嫌だから。
僕は、そういうのから実際逃げて来た。
だから、引きこもった。
なのに何でまた同じようなことをしなくちゃならないんだよ。
逃げたい。
面倒くさい。
投げ出したい。
このまま実家に帰ってまた自分の部屋で・・・
あのときの親の喜ぶ顔が蘇った。
僕が自宅警備員に選ばれた日ーー
泣いて喜んでいた両親のあの顔。
クソっ!
そうだ、もう帰る場所はないんだ。
僕はこの世界で生き抜くしか道はないんだ。
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