停導士の引き籠もり譚
別の国へと出向しよう
「……ハァ。面倒だなー」
とある森の中、一人の男が気怠げに呟く。
……まぁ、俺なんだけどな。
適当に矢を番え、弓を射る。
放たれた矢が遠くで群れを成していた魔物全てに命中して死に絶える……ずっとこんなことばっかりしているんだ。
そりゃあやる気も失せるワケだ。
「せめて、他の奴らがいてくれれば楽をできたのかもしれないのに」
俺以外のクラスメイトは周囲に存在せず、俺独りのみが狩りを行っている。
そう、ここにクラスメイトは誰一人としていないのだ。
一体どうしてそんな状況になったのか……それは、少し時間を遡ってみればすぐに理解できてしまうことだ。
◆◇◆◇◆
王の間
「勇者殿達には、別の国の守護を頼みたい」
ダンジョン攻略も着々と進み、クラスメイトのスキルも豊富になっていたある日――王様が俺達にそう告げた。
この後も説明が続くのだが、お偉い様の話が長いのは定番なので省かせて貰う。
端的に言えば、防衛を称した戦力の誇示であろうか。
勇者を派遣して、その威光を魅せつける。
そうすれば、この国に逆らえる国はかなり減るだろう。
この国に引き籠りたい奴にとってはありがたいイベントだな。
まぁ、諸国も黙って見過すワケではないだろう。
多分ハニートラップでも仕掛けて、勇者の獲得に励むんじゃないか?
みんな初期に精神操作をされてるから、この国を見捨てることはできないだろうけど。
もしこの国から抜けようとする奴がいるなら、そういった指示を受けた奴か"真理誘導"の影響外の奴か?
前者なら別にどうでも良いのだが……後者は面倒だな。
そういう奴もまた、主人公の器って奴だろうし。
「全員……で、ですか?」
「うむ。皆様全員のお力を、他の国の為に貸して欲しいのです」
「分かりました。僕達にお任せください!」
――と、勝手にユウキが引き受けた為……俺までもが駆り出される羽目になった。
◆◇◆◇◆
「……いやはや、これじゃあこれ以上コピーできなくなるだろうが」
俺が担当している国は、最初に居た国の近くにある国だ(名前は忘れた)。
その国の王から魔物退治の依頼を受けて、俺はちょくちょくそれを行っている。
残念なことに冒険者ギルドと呼ばれる王道の場所には未だに立ち寄れておらず、ギルドカードもランクも持っていないのだが、いつかはそうした登録も行えれば……あ、駄目だな、色々とバレる。
ギルドの本部で周り全てに細工をしてから登録しないと、お偉い方に俺をスキルがバレてしまうじゃない。
ギルドってギルドカードの情報を抽出ができるって設定の話も多かったし、そこら辺もしっかりと確認しておかなければいけない。
「この国のダンジョンの使用許可は貰えてるし、別に良いんだけどな」
マチスの主力(助力の逆)もあり、『王家の迷宮』は既に攻略済みだ。
そこで面白い物を見つけたこともあり、今の俺はダンジョン攻略にだいぶ乗り気だ。
その為、偶々国に幾つかダンジョンがあると聞いて自由な散策の許可を入手済み。
どうやらギルドによって管理されるような浅いダンジョンのようなのだが、手間が掛かるダンジョンに潜る面倒条件をスルーできたのは……正にラッキーと言えるな。
「さて、帰りますか」
矢に貫かれて絶命した大量の魔物の死骸を仕舞い、俺は城へと帰還するのであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
王城2 自室
「さて、今日は何をしようかな~。あ、観てみるのも良いかも」
さすがに一人で孤立無援、俺も対策の一つや二つ行っている。
――その中の一つが、条件を満たした者との視覚共有だ。
本来は従魔としかできない、(召喚魔法)や調教系のスキルから派生するスキルだ。
しかし、催眠ってチートなんだろうな。
世界でも催眠に掛けたのか、従魔以外でも俺と関わった者ならば共有できるようになっているよ。
「一気に観れば、後で纏められるし……やっぱりそうするべきなのか?」
クラスメイトのダンジョンを通して成長したスキルをコピーしていたら、そうした同時処理に必要なスキルが幾つか手に入った。
詳細は面倒なのでまた別の時にするが、一つだけ言えるのは……唯一って、何だったんだろうなってことだな。
まぁ、そんなスキルを手に入れたので、同時に色んな情報を認識できるんだ。
優秀なクラスメイトがいてくれて、俺は嬉しいよ。
お蔭様で、俺はスローライフ(意味深)はより成功に近付いて行っている。
しかも、まだまだそのスキルは成長する可能性を秘めている……まぁ、嬉しいったらありゃしないよ。
自分は努力しなくても、周りが勝手に頑張るだけで俺はスキルをコピーできる。
もっと寄生できたら良かったんだが、今はスキルをそうできるだけで、満足するべきなのか?
「ま、今は寝ることを考えるだけだな」
元の部屋よりは質の劣ったベット……そんな物は片付け、自分の作り上げたベットを取り出して設置する。
いやー、生産系のスキルもコピーして作っちゃったよ。
「んじゃあ、"傍観"と"お休み"」
キーワードを使い、俺は今日一日を終わらせるのであった。
「停導士の引き籠もり譚」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
1,392
-
1,160
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
3万
-
4.9万
-
-
14
-
8
-
-
5,217
-
2.6万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
6,681
-
2.9万
-
-
2,534
-
6,825
-
-
398
-
3,087
-
-
265
-
1,847
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
65
-
390
-
-
213
-
937
-
-
8,191
-
5.5万
-
-
3
-
2
-
-
10
-
46
-
-
29
-
52
-
-
187
-
610
-
-
6,237
-
3.1万
-
-
477
-
3,004
-
-
83
-
250
-
-
86
-
893
-
-
47
-
515
-
-
10
-
72
-
-
3,224
-
1.5万
-
-
6
-
45
-
-
7,474
-
1.5万
-
-
7
-
10
-
-
17
-
14
-
-
9
-
23
-
-
18
-
60
-
-
6,199
-
2.6万
「ファンタジー」の人気作品
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
9,545
-
1.1万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
9,173
-
2.3万
コメント