停導士の引き籠もり譚

山田 武

御呪いを掛けよう



「……それでは、私はこれで」

「あんがとな」

 現在は連れていかれた部屋から、メイドが出て行くシーンだな。
 本当は色々と世話をするとか言っていたけど、自宅警備員に同僚は要らないからな……スキルを試して追い出すことに成功した。

「便利なスキルだな、これ。催眠って結構幅があるしな」

 俺が発動させたのは(催眠魔法)。

 ――相手の意識を改変する魔法である。

 最初は催眠術的なことしかできない魔法だと思っていたのだが、少し違ったみたいだ。
 メイドを相手に試してみたところ、物事への理解力や刺激に対する反応を司る『清明度』。考え方を司る『質』。そして、物事への集中力を司る『広がり』を操作できた。

 例えば『清明度』。それを操ると自分が誰なのか、何をしているのかが分からなくなっていた。
 例えば『質』。それを操ると彼女は俺を主として崇めてくれた。
 例えば『広がり』。それを操ると彼女は俺の言った通りの行動を取った。

 色々と試せたので、とりあえず彼女からは取れるだけの情報を盗った。
 まぁ、盗れた情報の整理は後回しだな。

 メイドさんには無意識に俺の命令を聞きたくなるような状態になって貰った。

「……今更だが、この能力ってどこかの学園のレベル五みたいだな。俺はリモコン無しでもできるけど、アレみたいにどうやったら相手がどうなるかを設定するのも便利かもな」

 さて、説明を続けよう。
 寝溜めができるようになる(過剰睡眠)と意識を遮断する(意識遮断)。
 少し驚いたのは、(意識遮断)が他人にも発動が可能だったところかな?
 唯一スキルに内包されていたスキルは大体こんな感じだ。

 通常スキルの方はそのまんまである。
 こっちの世界の奴らの言葉が分かる(言語理解)と、ステータスが見れる(鑑定)だ。

 そして【停導士】、これにも効果がちゃんと存在していた。
 俺の配下が歩む筈であった運命を、俺の運命へと取り込むスキルらしい。

「……これが全く分からない。そもそも運命なんてものを認識できるワケ無いだろうが。せめて分かるようにログでも残せよ」

 ――なんて、割かし本気でそう言うと。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

>【停導士】発動 『ミル』の運命を導くことに成功しました 

以後ログは自動的に表示されます
(このログは発動者にしか認識できません)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「……ゲームかよ。さっすが異世界ファンタジーだな」

 ミルというのは、メイドの名前だ。

「俺の運命って何なんだろうな? 停が付くぐらいだから停止したナニカなんだろうが、俺の性根でも表してるのか?」

 俺は大体の物へのやる気が無い。
 むしろ、どうして他の奴らがやる気に溢れることができるのか、分からなくなることが多い。

 何もしなくても人は生きていけるのに。
 何もしないならば何も起こらないのに。
 何もしなければ何でもできるのに。

 最後のはちょっと難しいか?
 ま、理解して貰う気も無いから良いんだけどな。

閑話休題

 とにかく、そんな俺の運命って何なんだろうな……餓死か?

「……とりあえず寝溜めするか」

 面倒なことを考えるのは止めだ。
 さっさと寝るとするか。


翌日
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「では、早速向かうぞ!」

『はいっ!』

 いきなりだが、俺達はダンジョンにいる。
 むしろ、これより前の説明がいるか?
 朝食食って、ステータスを見られて、訓練という名のレベリングに駆り出されただけである。

 ……え、ステータス?
 あぁ、そこだけ説明が必要だな。

 朝食を食べた後に、俺達は一人一人呼ばれてステータスを開示させられた。
 呼ばれた個室には女性の(鑑定)のスキル持ちがいて、俺の前に呼ばれた奴のスキルを紙に書き取っていた。

 ――勿論、催眠で偽の情報を見せた。

 面白かったのはあれだな。
 もう、その女がクラスメイトのスキルの影響下にあったことだな。

 確か……リュウハン君だっけ? そいつのスキルである(魅了)の影響を受けてたよ。

 いやー、笑えた笑えた。
 俺用のメイドに、俺のステータス鑑定は最後にして貰えるように指示しておいて、他の奴の情報を盗もうと思ってたんだが……まさかソイツが本当にやるとはな。
 R18の小説の主人公かよとも思ったが、あんまり俺が言ってもあんまり意味ないよな。
 結局、その女も情報を盗る為に催眠したんだから。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

>【停導士】発動 『クリス』の運命を導くことに成功しました

>『クリス』には『リュウハン』による(魅了)スキルの影響が確認されました

>影響を無効化しますか?

〔YES〕/〔NO〕
→〔YES〕が選択されました

>『クリス』に確認されるスキルの影響を無効化します……成功しました

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 クラスメイトの名前なんて全然覚えていないが、リュウハン君とは縁がありそうだからな……覚えておこう(どうやって書くんだ?)。
 あ、これが偽装ステータスな――


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ステータス
名前:イム・トショク (男) 
種族:異世界人Lv1 職業:睡眠士 Lv1

 HP:100/100
 MP:100/100 
 AP:100/100

 ATK:50
 DEF:50
 AGI:50
 DEX:50
 INT:50
 MIN:50
 LUC:0

通常スキル
(言語理解)(鑑定)(過剰睡眠)

祝福
(地球神の加護)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ステータス自体は平均値だったから、そのまま書いて貰うことにした。
 それと職業も、この世界ではその職業に関するスキルが上がり易くなるだけであり、必ず唯一スキルになるというワケでは無いことは訊いていたので、こうして適当なものを書かせたぞ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「では第五班、出発だ」

『ハーイ』

 今回のダンジョン攻略は、一班に俺達六人+兵士達二人の計八人配置したグループを五つ作って行われる。
 能力に期待を持たれる順に上の班に選ばれるのだが……当然俺のような雑魚は、弱者達が集まった第五班へ選ばれた。

「よ、よろしくね、イム君」

「あ……あぁ、うん。誰だっけ」

「ヒデオだよ、イム君が人の名前を覚えるのが苦手なことは知ってるから、あんまり気にしないから」

「ふーん、よろしくな。ヒデオ」

「いつまで覚えててくれるんだろうね」

 いや、多分忘れないと思うぞ。
 俺が名前を憶えて無かったのは、覚える理由が分からなかったからであって、お前のような成り上がり候補を忘れる筈が無いじゃないか。

 ――そう、俺に話しかけてきたのは能力値が一だったという苛められっ子であった。
 その能力値から、下の班に回されたのだ。

「だけど、僕みたいな奴でも生き残れるのかな?」

「多分大丈夫だろ。お前、ステータス見て、成り上がり主人公だと思わなかったか?」

「どど、どうしてそれを」

 いやいや、始まる前からニマニマしていた奴がどうしてそれを言うか。
 そうした様子があまりに気持ちが悪かったから、再び苛めっ子に苛められたのをもう忘れたのか(まだ殴られた跡がくっきりとついているんだがな)。

「まぁ、最近の流行としちゃー、お前にも希望があるんだよな。先に言うけど、俺は復讐対象に入れないでくれよ」

「う~ん……イム君は何も庇ってくれなかったからな~。どうしよっかな~?」

 こいつは面倒事を持ってきそうな奴になりそうだな。
 さっさと追い出した方が良いと思うが、無理に追い出して復讐対象に入れられても困るしな~。

「……なら、取引といこう。今のお前には力が足りないんだ。成り上がりのチートを手に入れる前に死なないような御呪いを、一つ授けてやろう」

「……もし、本当に役立ったなら、復讐対象に入れるのは止めておくよ」

「そうか、それで良い。それじゃあ俺の言うことを良く聞けよ――――」


 この後、御呪いを掛けてから、俺達はダンジョン内へと入って行った。


「停導士の引き籠もり譚」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く