停導士の引き籠もり譚

山田 武

ダンジョンの夢を見よう



大迷宮 王家の迷宮


 昔ハマってたXで見たことのあるダンジョンの名前を、兵士は俺達に説明してきた。
 説明によると王家が解放したダンジョンだの騎士たちの訓練施設だの言っていたが、正直どうでも良かったな。
 どれだけ言葉を取り繕っても、結局はレベリングスポット兼アイテムポップエリアであることに、変わりは無いんだからさ。

 俺達は現在、ダンジョンに現れた魔物を倒した後の小休憩の真っ最中だ。
 最初は魔物に怯えていたクラスメイトも、今ではすっかり戦える戦士だよ。

「……面倒だな」

「ハァ、ハァ、ハァ」

「ヒ……ヒロシ、そんなに荒い息を吐いてもヒロイン路線は無理だと思うぞ」

「ヒデオだよ、イム君。今の僕のステータスじゃあ、まだここの魔物と戦うのが難しいんだよ」

 俺の隣で戦闘をしていたヒ……ヒデキがそう言ってくる(他の奴らも、それぞれ少し離れた所で会話なんかをしているな)。

「御呪いも掛けてんだから、一応はいつも以上のスペックがあるだろう?」

「それは……確かにね」

 ヒムロに掛けた御呪いは、痛覚遮断と精神状態のコントロールだ。
 キーワードを心で念じると、それらの状態に入れるようにしてある。
 そう、今の彼は痛覚を遮断して精神を少々高揚させている……そうやって火事場の馬鹿力を引き出さないと、彼はかなり不味いと一回目の戦闘で気付いたらしい。

「イム君のスキルは凄いね」

「まだお前にしかやってないスキルなんだからな、これも考慮に入れてくれよ」

「ハハ、分かっているさ。これがあれば色々と便利そうだからね」

「……あ、でも、ストレスも来ないから、あの魔王様は無理だと思うぞ」

「……うん、そこだけが少し悩んでいるんだよ。白髪ってのもカッコイイけど、黒髪のままでも闇に映えて良いと思わないかい?」

 ……ハァ。
 俺は面倒臭いヒ……ヒグチとの会話をしながら、小休憩を過ごした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


王城 自室


「……フゥ、やっと終わったな」

 時は過ぎ、俺は真夜中に独り呟く。
 あの後も快進撃を続けていき、みんなでボスへ挑もうということになった……が、そこでイベントが起こった。

「――初日で成り上がりイベントは、早すぎじゃないだろうかな?」

 "王家の迷宮"は五階層ごとにボスが出現するダンジョンだったのだが、一番最初の階層でそれ・・は起こった……らしい。

「……面倒だし、夢の中で考えるか」

 今回のレベリングで入手したスキルに、結構便利なスキルがあった。
 その中に夢を自在に操れるスキルもあったからな、そこで今回の考察でも行おうか。

「お休み~…………Zzz」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『キャーーー!!』

 かなり便利なスキルだな。
 俺は目の前で起きている惨劇を見ながらそう思う。
 現在の俺はその光景を、上空から半透明な姿で眺めていた。

 部屋は中心に巨大な円、そこに橋が架かり階段へと移動できる形となっている。
 巨大な円からはみ出たものは、死ぬと思われる程に真っ暗な穴が存在していた。

 先程の叫び声は、上層へと続く階段の所で発せられたものだ。
 黒髪の少女が穴に向かって叫ぶ……。

 俺が使ったのは明晰――ならぬ(解晰夢)。
 一度経験した事柄を、夢の中で再解析できるスキルなのだ。
 そして、何を眺めているかというと――

『ヒデ君が、ヒデ君が!!』

『落ち着けアユミ! 彼は……もう、助からない』

『でも! ……でも!!』

 ヒ……ヒグチもクラスにヒロインが居たんだな~。
 俺はこの時半分ぐらい意識が飛んでたからな、あんまり分からなかったんだよ。

 ――俺が見ているのは、彼がボスと共に奈落に落ちた後の映像だ。
 よく覚えて無かったし、色々と識りたかったしな。

 先程から観ていた情報を纏めると、彼は復讐者へのイベントを行えたようだ。
 彼がこの事態を故意で起こしたのかは不明だが、それでも実際にやる奴は中々いないだろうな。

 ……え、もっと前?
 記憶はあるけど特に問題があったワケじゃ無いぞ。
 ……セリフだけ抽出しておいたから、これで予測してみてくれ。


『それじゃあみんな、僕達の力だけで戦えることを証明しようじゃないか!』

『フフ、さすが勇者様だ……む? いつもと様子が違う……不味い、この気配は! ――逃げるんだ! コイツはお前達だけで戦えるような奴じゃ無い!!』

『いいえ。この先に戦うであろう敵は、こんなものではないと思われます。ならば、僕達の力がイレギュラーに対応できるだけのものであることを――今此処で示す!』

『ウォオオオ! "ホーリースラッシュ"!』

『いや、まだだ! お前達、今すぐこちら側に逃げるんだ!!』

 ――そして、さっきの部分に戻るワケだ。
 ヒ……ヒダリ君は一番を最後に橋を渡って逃げようとしていたのだが、橋をクラスメイトの誰かに落とされて、ボスと共に下へと向かっていった。

 ……あぁ、ボスの説明がスッカリ無かったよな。
 兵士はその魔物を見て、『魔りゅうジェルス!』とか言っていたぞ。
 りゅうが竜か龍なのかは分からないが、巨大な体躯と四肢を使って動いている姿を見たし、多分龍の方だと思いたいな。

 焦げ茶色の鱗に覆われた体、鋭い牙と爪を具え、真っ黒な瞳でクラスメイトを威圧してた龍なのだが……最も見ていたのはユウキの方だったな。
 女神から愛されると、弊害でもあるんだろうか?
 これからもアイツの近くにいると、強敵がアイツを襲う為に周りに被害を及ぼすと考えられる。

 あぁ、面倒だな。


「停導士の引き籠もり譚」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く