記憶共有的異世界物語
第101話:決意or殺意
2人の間に沈黙が走る。
ミレイ・ノルヴァを殺す。
今の僕なら出来るだろう。
相手は無防備だ。簡単に殺せてしまうだろう。
ミレイ・ノルヴァが背負っていた【怠惰】の宿罪。
ティアラ家が7人兄弟ではなく、【怠惰】だけが欠けていた理由も分かった。
マヨイ・ヴァレンは逃げ出した訳でも無かった。
概ねミレイ・ノルヴァの分家に入ろうとしたのもそれが理由だろう。
ミレイ・ノルヴァさえいれば、ティアラ家は【完全】になれる。
罪は揃う。
しかし、ミレイ・ノルヴァはそれを避けたがった。
何とかしてでもそれだけは避けなくてはという強い意志を感じた。
ならば....。
「なぁ、仮にミレイを殺したとして、その宿罪は何処に行くんだ?」
「別の神か、不幸な人間が【怠惰】を背負うことになるでしょうね」
「それじゃぁ怠惰の宿罪は消えてないじゃないか....」
「私に【怠惰】の宿罪があるのが問題なの。心配なら次の宿罪を背負った人間の面倒を貴方が見てあげればいい。それぐらいの力はもう既に貴方にあるはずよ」
ミレイ・ノルヴァの冷たく落ち着いた目が僕を諭す。
「どうしてそこまでしてティアラ家を【不完全】なままにしたがるんだ?」
「完成したら不味いのよ。少なくとも私はノルヴァ家の長女だった女。生まれつき力には恵まれてたの」
「ティアラ家は皆それぞれバランスの取れた神々だった....でも私が入ってバランスを崩しでもしたら向こうはあっという間に【怠惰】の家になってしまう」
「大罪一家を潰しかねないのよ」
「ん?待て。マヨイ・ヴァレンとお前ってどっちが先に誕生してるんだ?」
「え?私だけど」
ミレイ・ノルヴァの発言に困惑する。
「マヨイって【大罪】を司る女神だろ?なんで生まれても無い罪を背負った神々の強さが分かったんだ?」
「神のほとんどは生まれる前からその能力が分かってるの。どんな子が生まれるかは分からないけどね。特にティアラ家は大罪を背負ってるだけあって皆生まれた瞬間に神になる」
「どんな子が生まれるかまでは分からないけど、その力加減は分かる。だから私は【アンバランス】だって考えたのよ」
「だからこそ私が【怠惰】を背負って生まれてくる事はみんな知ってた。でも私は生まれた時からちょっと特殊だったのよ」
「特殊?」
「【怠惰】を持って生まれたのにもかかわらず、私は【怠惰】を司る神にはならなかった」
「ノルヴァ家はそれで大騒ぎよ、ただでさえ【怠惰】の娘が生まれたって言うのにそれが神にもならない【でくのぼう】だってね」
「まぁ後にそれはマヨイって言う【大罪】を管理する神がまだ生まれていなかったのが原因だって分かるんだけど、それを知らないノルヴァ家はもうカンカン。それでさっきの話に繋がるって訳」
ミレイ・ノルヴァは怒り混じりに説明した。
心の底から憤怒している訳では無いようだったが、それでもどこかやるせない気持ちがあったのは確かだろう。
「だから私はティアラ家を【不完全】なモノにしたし、それを私は【自身の宿命なんだ】と思った」
「だからそれを僕に終わらせろと....」
「そうね」
ミレイ・ノルヴァの覚悟に揺らぐ様は一切見えなかった。
地面が揺れる。
爆発的な光が世界を包んだ。
空間の歪みがあちこちに生まれ、世界が【バグった】。
「始まったみたいね」
「だな」
遠く彼方に大きな空間の歪みが見える。
それはブラックホールの様に大きく、強大だった。
「行くか」
「えぇ。」
僕の覚悟も大分定まった。
ミレイ・ノルヴァの何百年分の覚悟にはまだ程遠いのだろうが、その受け皿としての覚悟は定まったように思う。
闘士が僕の覚悟をより揺るぎないものへと変える。
【ウッドソード】
僕は空間の歪みの一つをシュンの作り出したブラックホールと同じものにした。
そのブラックホールは僕等を飲み込み、静かにその場にただすんだ。
o0O○O0o0O○O0o0O○O0o0O○O0o0O○O0o0O○O0o
何も無い【無の空間】。
シュンが作り出したこの空間。
恐らく彼には僕が来たことが伝わっているだろう。
問題はここからだ。
僕がもう一度シュンと戦ったところでまた同じことの繰り返しだ。
ならば僕はミレイ・ノルヴァを殺さなくてはならないだろう。
僕の決意は。
固まっている。
バキッ...メシッ....ゴキッというえげつない亀裂音と共に、無の空間にヒビが入った。
その亀裂はものすごい勢いで辺りを吸収し、僕等は飲み込まれた。
━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…
地面に体を強打し、痛みをこらえながら上を向くと、そこには僕等と不敵な笑みを浮かべるシュンがいた。
あぁ、最悪の状況になった。
「僕...?どうして?」
ミレイ・ノルヴァが顔を合わせると、過去のミレイ・ノルヴァは鼻で笑ってニヤリと笑った。
「私の背負ってたものを再確認させられたわ」
「それは良かった」
ミレイ・ノルヴァ同士の会話に、マヨイ・ヴァレンが首をかしげる。
空間の歪みが生まれ、そこから天界に行っていたみんなが降ってきた。
「俊介が....2人?」
奈恵が不思議そうな表情でこちらを見る。
まぁ、普通はそう言うリアクションになるわな。
「さぁ!時間さえも滅茶苦茶になる破壊ショーの始まりさぁ!」
シュンの声が無の空間に響く。
その不快な高笑いを聞いて、僕の決意が【殺意】に変わった。
許す訳には行かない。
ミレイ・ノルヴァを殺す。
今の僕なら出来るだろう。
相手は無防備だ。簡単に殺せてしまうだろう。
ミレイ・ノルヴァが背負っていた【怠惰】の宿罪。
ティアラ家が7人兄弟ではなく、【怠惰】だけが欠けていた理由も分かった。
マヨイ・ヴァレンは逃げ出した訳でも無かった。
概ねミレイ・ノルヴァの分家に入ろうとしたのもそれが理由だろう。
ミレイ・ノルヴァさえいれば、ティアラ家は【完全】になれる。
罪は揃う。
しかし、ミレイ・ノルヴァはそれを避けたがった。
何とかしてでもそれだけは避けなくてはという強い意志を感じた。
ならば....。
「なぁ、仮にミレイを殺したとして、その宿罪は何処に行くんだ?」
「別の神か、不幸な人間が【怠惰】を背負うことになるでしょうね」
「それじゃぁ怠惰の宿罪は消えてないじゃないか....」
「私に【怠惰】の宿罪があるのが問題なの。心配なら次の宿罪を背負った人間の面倒を貴方が見てあげればいい。それぐらいの力はもう既に貴方にあるはずよ」
ミレイ・ノルヴァの冷たく落ち着いた目が僕を諭す。
「どうしてそこまでしてティアラ家を【不完全】なままにしたがるんだ?」
「完成したら不味いのよ。少なくとも私はノルヴァ家の長女だった女。生まれつき力には恵まれてたの」
「ティアラ家は皆それぞれバランスの取れた神々だった....でも私が入ってバランスを崩しでもしたら向こうはあっという間に【怠惰】の家になってしまう」
「大罪一家を潰しかねないのよ」
「ん?待て。マヨイ・ヴァレンとお前ってどっちが先に誕生してるんだ?」
「え?私だけど」
ミレイ・ノルヴァの発言に困惑する。
「マヨイって【大罪】を司る女神だろ?なんで生まれても無い罪を背負った神々の強さが分かったんだ?」
「神のほとんどは生まれる前からその能力が分かってるの。どんな子が生まれるかは分からないけどね。特にティアラ家は大罪を背負ってるだけあって皆生まれた瞬間に神になる」
「どんな子が生まれるかまでは分からないけど、その力加減は分かる。だから私は【アンバランス】だって考えたのよ」
「だからこそ私が【怠惰】を背負って生まれてくる事はみんな知ってた。でも私は生まれた時からちょっと特殊だったのよ」
「特殊?」
「【怠惰】を持って生まれたのにもかかわらず、私は【怠惰】を司る神にはならなかった」
「ノルヴァ家はそれで大騒ぎよ、ただでさえ【怠惰】の娘が生まれたって言うのにそれが神にもならない【でくのぼう】だってね」
「まぁ後にそれはマヨイって言う【大罪】を管理する神がまだ生まれていなかったのが原因だって分かるんだけど、それを知らないノルヴァ家はもうカンカン。それでさっきの話に繋がるって訳」
ミレイ・ノルヴァは怒り混じりに説明した。
心の底から憤怒している訳では無いようだったが、それでもどこかやるせない気持ちがあったのは確かだろう。
「だから私はティアラ家を【不完全】なモノにしたし、それを私は【自身の宿命なんだ】と思った」
「だからそれを僕に終わらせろと....」
「そうね」
ミレイ・ノルヴァの覚悟に揺らぐ様は一切見えなかった。
地面が揺れる。
爆発的な光が世界を包んだ。
空間の歪みがあちこちに生まれ、世界が【バグった】。
「始まったみたいね」
「だな」
遠く彼方に大きな空間の歪みが見える。
それはブラックホールの様に大きく、強大だった。
「行くか」
「えぇ。」
僕の覚悟も大分定まった。
ミレイ・ノルヴァの何百年分の覚悟にはまだ程遠いのだろうが、その受け皿としての覚悟は定まったように思う。
闘士が僕の覚悟をより揺るぎないものへと変える。
【ウッドソード】
僕は空間の歪みの一つをシュンの作り出したブラックホールと同じものにした。
そのブラックホールは僕等を飲み込み、静かにその場にただすんだ。
o0O○O0o0O○O0o0O○O0o0O○O0o0O○O0o0O○O0o
何も無い【無の空間】。
シュンが作り出したこの空間。
恐らく彼には僕が来たことが伝わっているだろう。
問題はここからだ。
僕がもう一度シュンと戦ったところでまた同じことの繰り返しだ。
ならば僕はミレイ・ノルヴァを殺さなくてはならないだろう。
僕の決意は。
固まっている。
バキッ...メシッ....ゴキッというえげつない亀裂音と共に、無の空間にヒビが入った。
その亀裂はものすごい勢いで辺りを吸収し、僕等は飲み込まれた。
━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…
地面に体を強打し、痛みをこらえながら上を向くと、そこには僕等と不敵な笑みを浮かべるシュンがいた。
あぁ、最悪の状況になった。
「僕...?どうして?」
ミレイ・ノルヴァが顔を合わせると、過去のミレイ・ノルヴァは鼻で笑ってニヤリと笑った。
「私の背負ってたものを再確認させられたわ」
「それは良かった」
ミレイ・ノルヴァ同士の会話に、マヨイ・ヴァレンが首をかしげる。
空間の歪みが生まれ、そこから天界に行っていたみんなが降ってきた。
「俊介が....2人?」
奈恵が不思議そうな表情でこちらを見る。
まぁ、普通はそう言うリアクションになるわな。
「さぁ!時間さえも滅茶苦茶になる破壊ショーの始まりさぁ!」
シュンの声が無の空間に響く。
その不快な高笑いを聞いて、僕の決意が【殺意】に変わった。
許す訳には行かない。
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