記憶共有的異世界物語
第89話:【文字】を超えるモノ
神が無意識下で発動させている【能力】。
それをシュンが使えるのだとしたら、これは本当にトンデモナイ。
【概念】と化して初めて使える恐ろしく強大な能力を、自身の意思でコントロールされてしまったらもうこの世界は終わりだ。
全てが思いのまま。
滅茶苦茶すぎる。
「わしの話はここまでですじゃ....これ以上の情報は何も...」
「わしの仲間もついには運命通り滅びましたですじゃ...どうぞこの死にぞこないの老人の命も終わらせてくださいませですじゃ....」
老いたエルフの表情からは覚悟が見られた。
何も自分の種族が滅びたからといって自身まで死ぬ必要は無いと言うのに、この老人のこの覚悟はとても美しかった。
ミレイ・ノルヴァも、この老人の覚悟を見て自身の覚悟を決めたらしく、老いたエルフを見据える。
腕を上げる。手刀が鋭くピシッと締まる。
しかしミレイ・ノルヴァがその手刀を振り下ろす前に、老人は【消えた】。
正しい表現は【溶けた】なのだろうか?
地面に液状になった老いたエルフは蒸発し、【消えた】。
コツ....コツ....と靴の音が何も無いこの空間に響く。
何も見えない深く暗い【無の空間】から、シュンが現れた。
彼は一歩一歩正確に、着実にこちらに近づいて来る。
「どうだぃ...?俺の世界は気に入って貰えたかなぁ...?」
「悪趣味だな、お前」
「俺は君さぁ、君に俺がそう見えるなら、それは君もそうって事さぁ...?」
「ケッ、くだらねぇ。少なくとも僕は生き物の最後の願いを踏みにじる様な真似はしねぇよ」
「どうかなぁ~?」
シュンの煽り口調が僕を逆撫でる。
この不快な発言を、彼は精神攻撃としてやっている訳ではない。
ただ単に【煽る】事を、【楽しんで】いるのだ。
突然無の世界に強い光がこぼれ、そこから【壊】の一文字が飛んできた。
シュンはそれをジャンプで回避していたが、地面についた【壊】の文字は、物凄い轟音と共に消滅した。
「不意打ちでもだめさね....」
「重力で速度上げてもこれだもんね....」
ヴィクセンとグリシアが無の世界にやってきた。
どうやってこの世界に入ったのかは謎だが、恐らくシュンはあのブラックホールの様なものを消さなかったのだろう。
だとしたら間が抜けている。
しかしこの2人が来てくれたのは本当に嬉しかった。
ミレイ・ノルヴァもマヨイ・ヴァレンも、基本的には【司令塔】側の神であって、恐らく実践経験は少ない。それに対して彼女等は常に最前線を進むような神々だ。
これは本当に心強い。
「君はぁ....あれかぁ....」
シュンがグリシアに向かって飛ぶ。
目で追えない程の速度で走ってきているが、グリシアは重力の能力を使ってシュンを地面に叩きつけた。
「ヴィクセン!」
「ほいさね」
ヴィクセンが両手を広げ、とても大きな【死】の文字を作り上げた。
その文字はゆっくりと空間を歪ませながらシュンへと近づいていく。
「フフ....子供は知らないうちに成長するって言うけど、それは従者も一緒なのね」
マヨイ・ヴァレンが指を鳴らすと、シュンの周り360°に【死】の文字が形成された。
シュンは【死】の文字に囲まれていたが、グリシアの重力にたじろいでいた。
その光景を見て、正直僕はゾッとした。
僕がヴィクセンと戦っていた時にあれをされたら流石に生きていなかった。
神に舐めプされることに苛立ちを覚えていたが、これを見せられては舐めプしてくれてありがとうと言わざるを得ない。
【死】の文字は刻一刻とシュンに近づき、シュンに着弾した。
ドォォン....と鈍く広い音が辺りに轟く。
同時に空間の歪みが文字通り歪みながら消滅した。
━…━…━…━…
シュンに負傷させられた神々の回復を一通り終わらせ、私は安堵の溜息をついた。
天界は神聖な場所と言うだけあって、そこにいるだけで【パワー】が湧いて来た。
しかし精神的気だるさが洗われる事は無く、私の心の中でずっと俊介達の事がくすぶっていた。
彼等は大丈夫なのだろうか?
ミレイ・ノルヴァにマヨイ・ヴァレンもいるのだから、そう簡単に死ぬということはないだろうけど、なにせ相手が相手だ。
話は聞いていたが正直実感が沸かなかった。
突然俊介が馬場さんとナエラの事を忘れて正直失望を隠し切れない思いだったのだが、それがシュンの影響だった事をニーナから聞かされて、正直私は彼に【恨み】に近い感情を持った。
恨みを持っていたからこそ、彼を【架空の人物】としたかったのかも知れない。
嫌な予感が止まらない...。
━…━…━…━…
シュウゥゥゥ....と煙が立ち込め、その煙が引くと同時に僕等は物凄い悪寒に晒された。
グリシアが後ろに吹き飛ばされ、あっという間に見えなくなった。
無の世界では遮蔽物がないからこそ、力の分だけ後ろに飛ばされた。
シュンは右手を空に上げており、ヴィクセンとマヨイは【理解できない】と言わんばかりの表情をしていた。
「特殊能力ってのはねぇ....神を慢心させるんだァ~?」
「特殊な攻撃も一緒....だからこそぉ?違う人間がその能力の上位互換を見せたときぃ....」
「最っ高の表情を見せてくれるんだよねぇ...?」
シュンは右手をこちらに向けた。
その手のひらには【生】の文字が刻印されていた。
「そんな小さい文字であの数の攻撃を防げるはずないさね...」
ヴィクセンの声が震えている。
目が左右にぶれて、彼女は【恐怖】していた。
「あぁ、その表情...最っ高だねぇ....」
シュンがペロリと舌なめずりをする...。
それをシュンが使えるのだとしたら、これは本当にトンデモナイ。
【概念】と化して初めて使える恐ろしく強大な能力を、自身の意思でコントロールされてしまったらもうこの世界は終わりだ。
全てが思いのまま。
滅茶苦茶すぎる。
「わしの話はここまでですじゃ....これ以上の情報は何も...」
「わしの仲間もついには運命通り滅びましたですじゃ...どうぞこの死にぞこないの老人の命も終わらせてくださいませですじゃ....」
老いたエルフの表情からは覚悟が見られた。
何も自分の種族が滅びたからといって自身まで死ぬ必要は無いと言うのに、この老人のこの覚悟はとても美しかった。
ミレイ・ノルヴァも、この老人の覚悟を見て自身の覚悟を決めたらしく、老いたエルフを見据える。
腕を上げる。手刀が鋭くピシッと締まる。
しかしミレイ・ノルヴァがその手刀を振り下ろす前に、老人は【消えた】。
正しい表現は【溶けた】なのだろうか?
地面に液状になった老いたエルフは蒸発し、【消えた】。
コツ....コツ....と靴の音が何も無いこの空間に響く。
何も見えない深く暗い【無の空間】から、シュンが現れた。
彼は一歩一歩正確に、着実にこちらに近づいて来る。
「どうだぃ...?俺の世界は気に入って貰えたかなぁ...?」
「悪趣味だな、お前」
「俺は君さぁ、君に俺がそう見えるなら、それは君もそうって事さぁ...?」
「ケッ、くだらねぇ。少なくとも僕は生き物の最後の願いを踏みにじる様な真似はしねぇよ」
「どうかなぁ~?」
シュンの煽り口調が僕を逆撫でる。
この不快な発言を、彼は精神攻撃としてやっている訳ではない。
ただ単に【煽る】事を、【楽しんで】いるのだ。
突然無の世界に強い光がこぼれ、そこから【壊】の一文字が飛んできた。
シュンはそれをジャンプで回避していたが、地面についた【壊】の文字は、物凄い轟音と共に消滅した。
「不意打ちでもだめさね....」
「重力で速度上げてもこれだもんね....」
ヴィクセンとグリシアが無の世界にやってきた。
どうやってこの世界に入ったのかは謎だが、恐らくシュンはあのブラックホールの様なものを消さなかったのだろう。
だとしたら間が抜けている。
しかしこの2人が来てくれたのは本当に嬉しかった。
ミレイ・ノルヴァもマヨイ・ヴァレンも、基本的には【司令塔】側の神であって、恐らく実践経験は少ない。それに対して彼女等は常に最前線を進むような神々だ。
これは本当に心強い。
「君はぁ....あれかぁ....」
シュンがグリシアに向かって飛ぶ。
目で追えない程の速度で走ってきているが、グリシアは重力の能力を使ってシュンを地面に叩きつけた。
「ヴィクセン!」
「ほいさね」
ヴィクセンが両手を広げ、とても大きな【死】の文字を作り上げた。
その文字はゆっくりと空間を歪ませながらシュンへと近づいていく。
「フフ....子供は知らないうちに成長するって言うけど、それは従者も一緒なのね」
マヨイ・ヴァレンが指を鳴らすと、シュンの周り360°に【死】の文字が形成された。
シュンは【死】の文字に囲まれていたが、グリシアの重力にたじろいでいた。
その光景を見て、正直僕はゾッとした。
僕がヴィクセンと戦っていた時にあれをされたら流石に生きていなかった。
神に舐めプされることに苛立ちを覚えていたが、これを見せられては舐めプしてくれてありがとうと言わざるを得ない。
【死】の文字は刻一刻とシュンに近づき、シュンに着弾した。
ドォォン....と鈍く広い音が辺りに轟く。
同時に空間の歪みが文字通り歪みながら消滅した。
━…━…━…━…
シュンに負傷させられた神々の回復を一通り終わらせ、私は安堵の溜息をついた。
天界は神聖な場所と言うだけあって、そこにいるだけで【パワー】が湧いて来た。
しかし精神的気だるさが洗われる事は無く、私の心の中でずっと俊介達の事がくすぶっていた。
彼等は大丈夫なのだろうか?
ミレイ・ノルヴァにマヨイ・ヴァレンもいるのだから、そう簡単に死ぬということはないだろうけど、なにせ相手が相手だ。
話は聞いていたが正直実感が沸かなかった。
突然俊介が馬場さんとナエラの事を忘れて正直失望を隠し切れない思いだったのだが、それがシュンの影響だった事をニーナから聞かされて、正直私は彼に【恨み】に近い感情を持った。
恨みを持っていたからこそ、彼を【架空の人物】としたかったのかも知れない。
嫌な予感が止まらない...。
━…━…━…━…
シュウゥゥゥ....と煙が立ち込め、その煙が引くと同時に僕等は物凄い悪寒に晒された。
グリシアが後ろに吹き飛ばされ、あっという間に見えなくなった。
無の世界では遮蔽物がないからこそ、力の分だけ後ろに飛ばされた。
シュンは右手を空に上げており、ヴィクセンとマヨイは【理解できない】と言わんばかりの表情をしていた。
「特殊能力ってのはねぇ....神を慢心させるんだァ~?」
「特殊な攻撃も一緒....だからこそぉ?違う人間がその能力の上位互換を見せたときぃ....」
「最っ高の表情を見せてくれるんだよねぇ...?」
シュンは右手をこちらに向けた。
その手のひらには【生】の文字が刻印されていた。
「そんな小さい文字であの数の攻撃を防げるはずないさね...」
ヴィクセンの声が震えている。
目が左右にぶれて、彼女は【恐怖】していた。
「あぁ、その表情...最っ高だねぇ....」
シュンがペロリと舌なめずりをする...。
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