記憶共有的異世界物語
第83話:残酷世界の【レアケース】
「「え?」」
皆揃って同じ反応をした。
そりゃそうだろう、ミレイ・ノルヴァでさえも知らない事実を目の当たりにさせられたのだから。
僕等は硬直した。
理解不能に硬直した。
「ティアラ家は完全に崩壊寸前だった...娘はみんなグレちゃうし、他の家からの非難もすごいことになってるし...アイツら私達がバランスを保つのにどんな役割してるか知らないからあんなこと言えるのよ!」
「そこで私は純粋な【強さ】が欲しかったの」
「武力でも、知力でもない...純粋な生命に対する【パワー】」
「んで、バーミアの世界をふと覗いたらナエラちゃんが瀕死になってた。彼女の生に対する【しがみつき】が強いかったワケ」
「更に隣にミレイちゃんがいたからこの娘のパワーならと思ってね」
「彼女の死後、彼女の魂を私が取り込んだの」
ここまで聞くと同時に、僕の内心は複雑な気持ちだった。
怒り...なのだろうか?
それとも安心と表現すべきなのだろうか?
話だけ聞くと、パワーが欲しかったから死んだナエラの魂を自分の中に閉じ込めたと言った不愉快極まりない話なのだが、【取り込んだ】という事は、詰まるところ純也の【逆バージョン】みたいなコトなわけで...。
「でも彼女の生へのしがみつきはトンデモナイものだった」
「私の思想、思考、精神。ほとんど書き換えられたわ」
「夢から覚めたような気分だった」
「て事は今のお前はナエラの....何?」
途中まで答えがでかかったが何かにかき消された。
「何って言われると難しいんだけど、簡単に説明するなら、【ナエラ】ベースの【マヨイ・ヴァレン】が私って感じかしら....」
「じゃなきゃノルヴァ家との和解なんて死んでも考えないわよ」
彼女のその一言を聞いて、ミレイ・ノルヴァが「あーなるほど」と言いたそうな表情を見せた。
ミレイ・ノルヴァのスッキリした顔をみて、僕は何とも言えない感傷の様なモノに浸るのだが、それよりナエラベースのマヨイというのがどうも理解できない。
「つまりマヨイ...お前の考え方とかってのは【ナエラ】がベースって事か?」
「えぇ、その他にも記憶から何から何まで、基本的な事はナエラがベースよ。久しぶり、奈恵」
話を振られた奈恵は困惑しきった表情をしているのだが、記憶共有で奈恵の記憶を持った状態のナエラを取り込んでいるのだから、マヨイは奈恵の記憶も持っているのだろうか?
「なんか納得できないって顔ね」
「あぁ、話の半分以上理解できない」
「さぁ!話は終わった?そろそろ行くよ」
パッセが話を遮るように割り込んできた。
きっと彼女にとってマヨイ・ヴァレンの正体なんてのは微塵も興味がないのだろう、長話にうんざりだと言わんばかりの表情をしている。
まぁ実際問題ナエラのその後についてあーだこうだ言っていても始まらない...のだが。
「じゃぁこれだけ確認させてくれ、本当に死んだ人間を生き返らせることは出来ないんだな?」
「昔人を生き返らせるために神にまで上り詰めようとした人間が居たの」
パッセの目が冷たく僕を睨む。
「その人間は地球で問題を起こして神の逆鱗に触れた....。そしてその神は殺処分を部下に命じたんだけれども、こともあろうにその人間はその部下を【言いくるめた】」
「そしてその人間は天界に足を踏み入れ、【生命】を司る神を通じてある”人間”を生き返らせた」
「当然【生命】を司る神は反対したのだけど、その反対さえも言葉で言いくるめた」
「その点その人間は神よりも優れていたのだけれども、それ以上に恐ろしかったのは、彼女が生き返らせた人間なの...」
パッセが思い出を語る様に話し始めた。
僕はパッセのその発言に妙な違和感を覚えつつも、とりあえずそれを聞いた。
「生き返った人間の名前は【純也】。俊介?貴方なら...いえ、ここに居るみんな知ってるでしょう?あの純也よ」
「彼は生き返った数秒後、死んだ」
「運命には逆らえないの。【死んだ】という結果は変えられない。一度その判定が出たらどれだけ保護してもすぐに【死ぬ】の」
「そして彼女は再び純也を生き返らせた。完全に生き返らせる方法を探るために何度も何度も純也を殺した」
「彼は思考する暇をも持たなかったはずよ、なにせ生き返っても数秒で死ぬのだから」
「でも彼は考え抜いた」
「生命を司る【神】が何度も生き返らせてるってだけあって、彼自身に相当神聖な【力】が溜まっていた」
「彼は自身の存在さえ消してしまえばこれは終わると考えたの」
「その強い願いから彼は【ステンエギジス】を手に入れた」
「そしてステンエギジスを使って自身を消したの」
「生命を司る神も、純也を生き返らせようとした女も、どちらも純也の事を完全に忘れた」
「その話が当時の【存在を司る神】に伝わって、その後彼は次の【存在を司る神】にさせられるんだけど、純也のそれは本当に【レアケース】」
「生き返らせては殺してを繰り返す【非人道的】な行為が人間の貴方にできるの?」
「思考できる間も与えずに、ただ苦しみに耐え続ける拷問を味あわせる事ができるの?」
パッセは冷たく深い死んだ目で僕を睨んできた。
生き返らせてもすぐに死ぬ...か。
純也の過去にも驚きを隠せないが、それ以上に命の重さを再確認させられた。
死んだら【終わり】。
それで失敗すれば【死んで尚殺される】。
それがこの世界。
残酷すぎる。
皆揃って同じ反応をした。
そりゃそうだろう、ミレイ・ノルヴァでさえも知らない事実を目の当たりにさせられたのだから。
僕等は硬直した。
理解不能に硬直した。
「ティアラ家は完全に崩壊寸前だった...娘はみんなグレちゃうし、他の家からの非難もすごいことになってるし...アイツら私達がバランスを保つのにどんな役割してるか知らないからあんなこと言えるのよ!」
「そこで私は純粋な【強さ】が欲しかったの」
「武力でも、知力でもない...純粋な生命に対する【パワー】」
「んで、バーミアの世界をふと覗いたらナエラちゃんが瀕死になってた。彼女の生に対する【しがみつき】が強いかったワケ」
「更に隣にミレイちゃんがいたからこの娘のパワーならと思ってね」
「彼女の死後、彼女の魂を私が取り込んだの」
ここまで聞くと同時に、僕の内心は複雑な気持ちだった。
怒り...なのだろうか?
それとも安心と表現すべきなのだろうか?
話だけ聞くと、パワーが欲しかったから死んだナエラの魂を自分の中に閉じ込めたと言った不愉快極まりない話なのだが、【取り込んだ】という事は、詰まるところ純也の【逆バージョン】みたいなコトなわけで...。
「でも彼女の生へのしがみつきはトンデモナイものだった」
「私の思想、思考、精神。ほとんど書き換えられたわ」
「夢から覚めたような気分だった」
「て事は今のお前はナエラの....何?」
途中まで答えがでかかったが何かにかき消された。
「何って言われると難しいんだけど、簡単に説明するなら、【ナエラ】ベースの【マヨイ・ヴァレン】が私って感じかしら....」
「じゃなきゃノルヴァ家との和解なんて死んでも考えないわよ」
彼女のその一言を聞いて、ミレイ・ノルヴァが「あーなるほど」と言いたそうな表情を見せた。
ミレイ・ノルヴァのスッキリした顔をみて、僕は何とも言えない感傷の様なモノに浸るのだが、それよりナエラベースのマヨイというのがどうも理解できない。
「つまりマヨイ...お前の考え方とかってのは【ナエラ】がベースって事か?」
「えぇ、その他にも記憶から何から何まで、基本的な事はナエラがベースよ。久しぶり、奈恵」
話を振られた奈恵は困惑しきった表情をしているのだが、記憶共有で奈恵の記憶を持った状態のナエラを取り込んでいるのだから、マヨイは奈恵の記憶も持っているのだろうか?
「なんか納得できないって顔ね」
「あぁ、話の半分以上理解できない」
「さぁ!話は終わった?そろそろ行くよ」
パッセが話を遮るように割り込んできた。
きっと彼女にとってマヨイ・ヴァレンの正体なんてのは微塵も興味がないのだろう、長話にうんざりだと言わんばかりの表情をしている。
まぁ実際問題ナエラのその後についてあーだこうだ言っていても始まらない...のだが。
「じゃぁこれだけ確認させてくれ、本当に死んだ人間を生き返らせることは出来ないんだな?」
「昔人を生き返らせるために神にまで上り詰めようとした人間が居たの」
パッセの目が冷たく僕を睨む。
「その人間は地球で問題を起こして神の逆鱗に触れた....。そしてその神は殺処分を部下に命じたんだけれども、こともあろうにその人間はその部下を【言いくるめた】」
「そしてその人間は天界に足を踏み入れ、【生命】を司る神を通じてある”人間”を生き返らせた」
「当然【生命】を司る神は反対したのだけど、その反対さえも言葉で言いくるめた」
「その点その人間は神よりも優れていたのだけれども、それ以上に恐ろしかったのは、彼女が生き返らせた人間なの...」
パッセが思い出を語る様に話し始めた。
僕はパッセのその発言に妙な違和感を覚えつつも、とりあえずそれを聞いた。
「生き返った人間の名前は【純也】。俊介?貴方なら...いえ、ここに居るみんな知ってるでしょう?あの純也よ」
「彼は生き返った数秒後、死んだ」
「運命には逆らえないの。【死んだ】という結果は変えられない。一度その判定が出たらどれだけ保護してもすぐに【死ぬ】の」
「そして彼女は再び純也を生き返らせた。完全に生き返らせる方法を探るために何度も何度も純也を殺した」
「彼は思考する暇をも持たなかったはずよ、なにせ生き返っても数秒で死ぬのだから」
「でも彼は考え抜いた」
「生命を司る【神】が何度も生き返らせてるってだけあって、彼自身に相当神聖な【力】が溜まっていた」
「彼は自身の存在さえ消してしまえばこれは終わると考えたの」
「その強い願いから彼は【ステンエギジス】を手に入れた」
「そしてステンエギジスを使って自身を消したの」
「生命を司る神も、純也を生き返らせようとした女も、どちらも純也の事を完全に忘れた」
「その話が当時の【存在を司る神】に伝わって、その後彼は次の【存在を司る神】にさせられるんだけど、純也のそれは本当に【レアケース】」
「生き返らせては殺してを繰り返す【非人道的】な行為が人間の貴方にできるの?」
「思考できる間も与えずに、ただ苦しみに耐え続ける拷問を味あわせる事ができるの?」
パッセは冷たく深い死んだ目で僕を睨んできた。
生き返らせてもすぐに死ぬ...か。
純也の過去にも驚きを隠せないが、それ以上に命の重さを再確認させられた。
死んだら【終わり】。
それで失敗すれば【死んで尚殺される】。
それがこの世界。
残酷すぎる。
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