記憶共有的異世界物語
第50話:杞憂
「なぁ俊介、俺の事割ってくれねぇか?どこかの飲食バカが強く吐いたもんだから【再憑依】出来ないんだよ」
「あ、あぁ。今割るよ」
僕と純也のやり取りに、ライリーの表情が曇った。
「え?貴方純也に無理やり憑かれてた訳じゃないの?」
「いや、実際僕だって彼の力を乱用しているわけだし、普通に了承の上だよ」
そう言ってウッドソードで作ったハンマーで純也の陶器人形を割った。
突然視界が明るくなり、頭にキーンという耳鳴りに似た甲高い音が鳴り響いた。
視界の色が反転し戻りを繰り返し、酔いそうになった。
これでこの感覚も2度目だが、正直こればっかりは慣れない。
しかしまぁ、この暴食さんのおかげで純也との結び付きがまた0に戻った。
この状態でグリシアレベルの追っ手が現れたら死ぬ。
少し慎重になることにしよう。
「にしてもその能力おっかないな。どこまで飲み込めるの?それ」
ライリーは待ってましたと言わんばかりの生き生きとした表情をしていた。
「私の食欲が尽きない限りどこまでも」
「なにそれこわい」
そんな会話をしながら、僕はコーヒーを飲み干した。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
「んでトウ。エルフが消えた事についてなんか新しく掴んだ事とかってあるか?」
「全然」
トウの即答に、ズコーとずっこけそうになったが、このラフさは本当に素晴らしい。
これからの不安を全て吹き飛ばすこのラフさがいいのだ。
「そうか、じゃぁまずは調べるところからだな...」
「ライリー以外の全員はバーミアの土地勘あるよな?」
僕がそう言うとみな首を縦に振ったが、ライリーだけは面白くなさそうな顔をしていた。
「ならよかった。各自でエルフに関する情報集めをしよう。情報が何処にあるかわからない以上、一緒に行動していては非効率だ。ライリーは奈恵と一緒に行動してくれ」
ライリーから不満の表情は消え、若干笑顔になった。
その思った事がすぐ顔に出ている様をみて、なんというか【面白いな】と思った。
……━━……━━……━━……━━……━━……━━
バーミアの土地勘はシュンヤの記憶のおかげで完璧だ。
全く歩いたことのない土地なのに何度も通った事のあるこの感覚は、不思議でこそあるが最高に楽しい。
エルフのチュラル村に行ってみることにしよう。
何か手がかりがあるかもしれない。
....と思ったが、全くと言っていいほどに何も無かった。
しかしトウの言った通り、エルフがこの集落から【消えた】のだなという事は理解できた。
ザク...ザク...と足音が聞こえ、僕はその方向を振り向いた。
その瞬間。僕の眉間に人差し指が置かれた。
「はい、ドーン」
感情のこもってないその言葉が耳に入り脳に伝わるより早く、僕の体を何かが駆け巡った。
急に視界が明るくなり、体が極端に軽くなった。
それどころか純也との結び付きが過去にないほどに濃くなった。
「初めまして、私はミガレヤ・ヴァレン。【感情を司る女神】」
また神か...と内心困惑するのと同時に、彼女の心のこもってない喋り方に恐怖を覚えた。
感情を司る女神と名乗っておきながら、その喋り方に感情が微塵も感じられない。
まるで【生気】が失われているかのようなその喋り方は、さながら最初に会った時のミレイ・ノルヴァを彷彿とさせた。
「私が貴方の能力を最大値まで引き上げた。これが私の能力...【オペレーター】...そしてこれが私の本当の能...」
そこまで言って僕の意識は切れた。
薄く濁り、ぼかしがかかった様にスッと消えていった。
░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░
俊介に各自で情報を集めろと言われたけども、正直私一人でそんなビックな情報を掴める気がしない。
まぁ、ライリーがいるから一人ではないんだろうけど...。
「ねぇライリー。貴方の家...大罪一家ってノルヴァ家の分家なのよね?私たちと同じく」
「えぇ」
「ミレイ・ノルヴァと仲が良さそうだけど、どういう関係なの?」
嘘だ。
私から見れば仲良くは見えなかった。
ただ彼女がミレイ・ノルヴァを溺愛している事は見て分かる。
お世辞ではあるが、仲良さそうと言った方が正直色々楽なのだ。
「えぇ?仲良さそうに見える?」
やはり喰いついて来た。
ライリーの笑顔はなんというか分かりやすくて可愛かった。
「大した関係じゃないわ、私ね。昔一回ミレイちゃん殺しているの」
!!?
ライリーの口から飛び出した言葉に困惑の感情で頭を強打した。
大した関係じゃないか!と突っ込みたくなったけど、詳しく聞いていいのか不安だ...。
「私は小腹が空いたから地球の人間の時間をちょこっとだけ食べてたのよ」
話がぶっ飛んでる。
私が置かれてる状況も相当ぶっ飛んでる自信があったのだけど、彼女の口から出る言葉の一つ一つはもっとぶっ飛んでいた。
「ほら、ミレイちゃん【時と運命を司る女神】じゃない?彼女は私が食べた時間をすぐ元に戻したの。そしたら【時間のバイキング】が始まっちゃってさ、私はバカみたいにボカボカその人の時間を食べたわ」
もう嫌な予感しかしない...。
「でもちょっと食べ過ぎちゃってね、その人は寿命を迎えて死んじゃったの。そしたらミレイちゃん、お仕事中だってのに実体付けて私の所まで来てね」
「分かった分かった。ごめん。聞いた私が悪かった。もういいわ」
「えー」
ライリーの割り切れないと言った表情を見て、私のそばに付いているこの女の底の深さに私はドン引いた。
「あ、あぁ。今割るよ」
僕と純也のやり取りに、ライリーの表情が曇った。
「え?貴方純也に無理やり憑かれてた訳じゃないの?」
「いや、実際僕だって彼の力を乱用しているわけだし、普通に了承の上だよ」
そう言ってウッドソードで作ったハンマーで純也の陶器人形を割った。
突然視界が明るくなり、頭にキーンという耳鳴りに似た甲高い音が鳴り響いた。
視界の色が反転し戻りを繰り返し、酔いそうになった。
これでこの感覚も2度目だが、正直こればっかりは慣れない。
しかしまぁ、この暴食さんのおかげで純也との結び付きがまた0に戻った。
この状態でグリシアレベルの追っ手が現れたら死ぬ。
少し慎重になることにしよう。
「にしてもその能力おっかないな。どこまで飲み込めるの?それ」
ライリーは待ってましたと言わんばかりの生き生きとした表情をしていた。
「私の食欲が尽きない限りどこまでも」
「なにそれこわい」
そんな会話をしながら、僕はコーヒーを飲み干した。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
「んでトウ。エルフが消えた事についてなんか新しく掴んだ事とかってあるか?」
「全然」
トウの即答に、ズコーとずっこけそうになったが、このラフさは本当に素晴らしい。
これからの不安を全て吹き飛ばすこのラフさがいいのだ。
「そうか、じゃぁまずは調べるところからだな...」
「ライリー以外の全員はバーミアの土地勘あるよな?」
僕がそう言うとみな首を縦に振ったが、ライリーだけは面白くなさそうな顔をしていた。
「ならよかった。各自でエルフに関する情報集めをしよう。情報が何処にあるかわからない以上、一緒に行動していては非効率だ。ライリーは奈恵と一緒に行動してくれ」
ライリーから不満の表情は消え、若干笑顔になった。
その思った事がすぐ顔に出ている様をみて、なんというか【面白いな】と思った。
……━━……━━……━━……━━……━━……━━
バーミアの土地勘はシュンヤの記憶のおかげで完璧だ。
全く歩いたことのない土地なのに何度も通った事のあるこの感覚は、不思議でこそあるが最高に楽しい。
エルフのチュラル村に行ってみることにしよう。
何か手がかりがあるかもしれない。
....と思ったが、全くと言っていいほどに何も無かった。
しかしトウの言った通り、エルフがこの集落から【消えた】のだなという事は理解できた。
ザク...ザク...と足音が聞こえ、僕はその方向を振り向いた。
その瞬間。僕の眉間に人差し指が置かれた。
「はい、ドーン」
感情のこもってないその言葉が耳に入り脳に伝わるより早く、僕の体を何かが駆け巡った。
急に視界が明るくなり、体が極端に軽くなった。
それどころか純也との結び付きが過去にないほどに濃くなった。
「初めまして、私はミガレヤ・ヴァレン。【感情を司る女神】」
また神か...と内心困惑するのと同時に、彼女の心のこもってない喋り方に恐怖を覚えた。
感情を司る女神と名乗っておきながら、その喋り方に感情が微塵も感じられない。
まるで【生気】が失われているかのようなその喋り方は、さながら最初に会った時のミレイ・ノルヴァを彷彿とさせた。
「私が貴方の能力を最大値まで引き上げた。これが私の能力...【オペレーター】...そしてこれが私の本当の能...」
そこまで言って僕の意識は切れた。
薄く濁り、ぼかしがかかった様にスッと消えていった。
░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░
俊介に各自で情報を集めろと言われたけども、正直私一人でそんなビックな情報を掴める気がしない。
まぁ、ライリーがいるから一人ではないんだろうけど...。
「ねぇライリー。貴方の家...大罪一家ってノルヴァ家の分家なのよね?私たちと同じく」
「えぇ」
「ミレイ・ノルヴァと仲が良さそうだけど、どういう関係なの?」
嘘だ。
私から見れば仲良くは見えなかった。
ただ彼女がミレイ・ノルヴァを溺愛している事は見て分かる。
お世辞ではあるが、仲良さそうと言った方が正直色々楽なのだ。
「えぇ?仲良さそうに見える?」
やはり喰いついて来た。
ライリーの笑顔はなんというか分かりやすくて可愛かった。
「大した関係じゃないわ、私ね。昔一回ミレイちゃん殺しているの」
!!?
ライリーの口から飛び出した言葉に困惑の感情で頭を強打した。
大した関係じゃないか!と突っ込みたくなったけど、詳しく聞いていいのか不安だ...。
「私は小腹が空いたから地球の人間の時間をちょこっとだけ食べてたのよ」
話がぶっ飛んでる。
私が置かれてる状況も相当ぶっ飛んでる自信があったのだけど、彼女の口から出る言葉の一つ一つはもっとぶっ飛んでいた。
「ほら、ミレイちゃん【時と運命を司る女神】じゃない?彼女は私が食べた時間をすぐ元に戻したの。そしたら【時間のバイキング】が始まっちゃってさ、私はバカみたいにボカボカその人の時間を食べたわ」
もう嫌な予感しかしない...。
「でもちょっと食べ過ぎちゃってね、その人は寿命を迎えて死んじゃったの。そしたらミレイちゃん、お仕事中だってのに実体付けて私の所まで来てね」
「分かった分かった。ごめん。聞いた私が悪かった。もういいわ」
「えー」
ライリーの割り切れないと言った表情を見て、私のそばに付いているこの女の底の深さに私はドン引いた。
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