黒剣の魔王
第34話/ハスター
帝国での一件が片付いてすぐにテレポートで魔王国に戻ると、魔王国がめちゃくちゃ大都市に進化していた。
と言っても、実際の居住区は洞窟であり、外の建物たちはすべてダミー。大きな建物が立ち並ぶビル群の一室一室には王国製の『自動魔弾式機関銃』とかいう厨二病が付けたであろうマシンガンが大量に配置されており、俺たち魔王という魔力無限機関から魔力が随時補給され続けるため、半永久期間になっている。
この魔弾がまたものすごい威力で、あーさんですら全弾を防ぐことは不可能だったというお墨付きの品物だ。彼がいつその魔弾を食らいに行ったのかは知らないけれど。
他にも、ここの地下に作られた超大型発電所(もちろんおじいちゃんお手製)にトールさんや鵺達の能力で雷落としまくって無限に電気を回してる訳なんだけど、その電気で自動追尾式のレーザーガンとか、敵が来た時に起動する機獣と呼ばれる機械たちが用意されているらしい。用意周到すぎるよね。俺ここまで頼んでないよ?
ん? トールさん達に人権をやれって? 大丈夫だよ、彼達全然自分達が呼び出されないってしょげてたから役割あげたらすごく嬉しそうにしてたし。神様だろうと妖怪だろうと呼んであげたのは俺なんだもの
とりあえずそんなことは置いといて、そんな強力な魔弾や光線などを浴びても建物が全く崩れることがないのは、秀吉おじいちゃんの『一夜城』の特殊効果である。
どんな攻撃を食らっても傷一つすらつかないという素晴らしいその効果。生かせる所があってほんと良かったよね。マジで壊れない建物とか建て替えるとかも無理だから邪魔にしかならないもんね。これから反映していく国からしたら。
いや、でもそれはそれでいいのか。壊れないってことは老朽化しないってことだろうし、そう考えればどうしてか今までおじいちゃんが使われてこなかったのかが疑問だ。
それにしてもこれはまた随分とすごいものを作ってくれたもんだ。ウルト〇怪獣とでも一戦交えるつもりかね、それとも人型兵器と一緒に迫り来る化け物たちと戦うつもりかね。
いずれにしてもオーバーな兵器たちだ。数少ない人間達と魔物達を守るためだけに国の90%以上の土地に配備されているのだから最早中心にある洞窟を取り囲む超巨大防衛陣が作られていると言っても過言じゃないと思う。
こんな両配備していなくても事足りるとは思うんだけどね。本当に過剰防衛だよね。これじゃあ日本だと正当防衛取れないよ。
色々言いつつも、極論を言えばなんでもいいからとにかく自分たちが守れればいいんだけどね……だとしてもと思うところはあるのだけどね。異世界感がね……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おいおい、嘘だろ……」
その男は目の前に立ち並ぶビル群を見てそう呟いた。
男が元の世界にいた時は何度も見たような光景。
ビルだけ経っているので風景としては異様だが、電柱や信号機がなくとも、道路に一台も車が通っていなくとも今の彼には関係がなかった。
何度も何度も帰りたいと思ったかつての故郷と似通った景色がここにある。
一体誰がこんなものを作り上げたんだ、そんな疑問がふと頭に浮かび、街の中に入ろうとゆっくり徒歩を進めた時、前方からとてつもない爆音が鳴り響いた。
「な、何だっ!?」
男はこの時知る由もないが、彼が聞いたのは魔弾とレーザーの射出音だった。
なんの防御もしていなかった彼の体に、魔弾やレーザーは容赦なく降り注ぐ。
男は確実に攻撃を浴び、死んでしまったかと思われたがしかし、男の体が黄色に輝いたかと思うと光の中から身長が100メートル近い巨人が現れた。
巨人の名前は『イタカ』。「風に乗りて歩むもの」「歩む死」「大いなる白き沈黙の神」「トーテムに印とてなき神」という数々の異名を持つその巨人は、クトゥルフ神話の代表的な旧支配者4体のうちの1体、『ハスター』の息子であるとされている。
彼は大気を象徴する神である。
人の形をした巨体、人を模した様な顔、鮮紅色に燃え上がる2つの目、足には水かきという異様な風体のその巨人は、カナダの先住民の間で、氷雪の夜に森林地帯を歩き回り、まるで風のような早さで現れては、人間をさらって行くと言われる精霊とも言われ、運悪く彼にあってしまった人間は彼によって空に巻き上げられ、生贄として死ぬ事なく永きに渡って地球外の遠い地を引き回される。
その後帰ってきた人間は、地面に叩きつけられ死に至る。
しかし、この神の真の恐ろしい点はそこではない。
その巨躯は動くだけで周囲に災害級の被害を及ぼし、人間の兵を圧倒的な力で蹂躙する。
それこそ一体いるだけで国ひとつをすぐに沈めることも出来たであろう。
そうしなかったのは彼の主が望んだのが人を支配することであり、虐殺ではなかったからだと言える。
虐殺自体を行わなかった訳では無いだろうが、それでも犠牲は最小限。彼自体が望んで国家ほどの大きな集まりを潰そうとすることは無かったのだ。
そんな彼がどうしてあの男の体から現れたのか。その疑問はすぐに解消されることとなる。
「よくやった。このまま盾となって進軍しろ。俺は魔王とやらがいる洞窟を目指す」
【強欲】の大罪、ハスター。この男が眷属としてその身に宿していたイタカを、自身の魔力を消費して現界させたのだ。
「さぁ、待っていろ魔王。俺が真の強さってものを見せてやるよ。この世で一番強いのは俺だって分別をつけさせてやらァ……」
この世で最も死を恐れる男は、これから自身に歩み寄る死の影に気付かず、ただ自分の影が薄くなっていく方向に歩いていくことしか出来なかった。
と言っても、実際の居住区は洞窟であり、外の建物たちはすべてダミー。大きな建物が立ち並ぶビル群の一室一室には王国製の『自動魔弾式機関銃』とかいう厨二病が付けたであろうマシンガンが大量に配置されており、俺たち魔王という魔力無限機関から魔力が随時補給され続けるため、半永久期間になっている。
この魔弾がまたものすごい威力で、あーさんですら全弾を防ぐことは不可能だったというお墨付きの品物だ。彼がいつその魔弾を食らいに行ったのかは知らないけれど。
他にも、ここの地下に作られた超大型発電所(もちろんおじいちゃんお手製)にトールさんや鵺達の能力で雷落としまくって無限に電気を回してる訳なんだけど、その電気で自動追尾式のレーザーガンとか、敵が来た時に起動する機獣と呼ばれる機械たちが用意されているらしい。用意周到すぎるよね。俺ここまで頼んでないよ?
ん? トールさん達に人権をやれって? 大丈夫だよ、彼達全然自分達が呼び出されないってしょげてたから役割あげたらすごく嬉しそうにしてたし。神様だろうと妖怪だろうと呼んであげたのは俺なんだもの
とりあえずそんなことは置いといて、そんな強力な魔弾や光線などを浴びても建物が全く崩れることがないのは、秀吉おじいちゃんの『一夜城』の特殊効果である。
どんな攻撃を食らっても傷一つすらつかないという素晴らしいその効果。生かせる所があってほんと良かったよね。マジで壊れない建物とか建て替えるとかも無理だから邪魔にしかならないもんね。これから反映していく国からしたら。
いや、でもそれはそれでいいのか。壊れないってことは老朽化しないってことだろうし、そう考えればどうしてか今までおじいちゃんが使われてこなかったのかが疑問だ。
それにしてもこれはまた随分とすごいものを作ってくれたもんだ。ウルト〇怪獣とでも一戦交えるつもりかね、それとも人型兵器と一緒に迫り来る化け物たちと戦うつもりかね。
いずれにしてもオーバーな兵器たちだ。数少ない人間達と魔物達を守るためだけに国の90%以上の土地に配備されているのだから最早中心にある洞窟を取り囲む超巨大防衛陣が作られていると言っても過言じゃないと思う。
こんな両配備していなくても事足りるとは思うんだけどね。本当に過剰防衛だよね。これじゃあ日本だと正当防衛取れないよ。
色々言いつつも、極論を言えばなんでもいいからとにかく自分たちが守れればいいんだけどね……だとしてもと思うところはあるのだけどね。異世界感がね……
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「おいおい、嘘だろ……」
その男は目の前に立ち並ぶビル群を見てそう呟いた。
男が元の世界にいた時は何度も見たような光景。
ビルだけ経っているので風景としては異様だが、電柱や信号機がなくとも、道路に一台も車が通っていなくとも今の彼には関係がなかった。
何度も何度も帰りたいと思ったかつての故郷と似通った景色がここにある。
一体誰がこんなものを作り上げたんだ、そんな疑問がふと頭に浮かび、街の中に入ろうとゆっくり徒歩を進めた時、前方からとてつもない爆音が鳴り響いた。
「な、何だっ!?」
男はこの時知る由もないが、彼が聞いたのは魔弾とレーザーの射出音だった。
なんの防御もしていなかった彼の体に、魔弾やレーザーは容赦なく降り注ぐ。
男は確実に攻撃を浴び、死んでしまったかと思われたがしかし、男の体が黄色に輝いたかと思うと光の中から身長が100メートル近い巨人が現れた。
巨人の名前は『イタカ』。「風に乗りて歩むもの」「歩む死」「大いなる白き沈黙の神」「トーテムに印とてなき神」という数々の異名を持つその巨人は、クトゥルフ神話の代表的な旧支配者4体のうちの1体、『ハスター』の息子であるとされている。
彼は大気を象徴する神である。
人の形をした巨体、人を模した様な顔、鮮紅色に燃え上がる2つの目、足には水かきという異様な風体のその巨人は、カナダの先住民の間で、氷雪の夜に森林地帯を歩き回り、まるで風のような早さで現れては、人間をさらって行くと言われる精霊とも言われ、運悪く彼にあってしまった人間は彼によって空に巻き上げられ、生贄として死ぬ事なく永きに渡って地球外の遠い地を引き回される。
その後帰ってきた人間は、地面に叩きつけられ死に至る。
しかし、この神の真の恐ろしい点はそこではない。
その巨躯は動くだけで周囲に災害級の被害を及ぼし、人間の兵を圧倒的な力で蹂躙する。
それこそ一体いるだけで国ひとつをすぐに沈めることも出来たであろう。
そうしなかったのは彼の主が望んだのが人を支配することであり、虐殺ではなかったからだと言える。
虐殺自体を行わなかった訳では無いだろうが、それでも犠牲は最小限。彼自体が望んで国家ほどの大きな集まりを潰そうとすることは無かったのだ。
そんな彼がどうしてあの男の体から現れたのか。その疑問はすぐに解消されることとなる。
「よくやった。このまま盾となって進軍しろ。俺は魔王とやらがいる洞窟を目指す」
【強欲】の大罪、ハスター。この男が眷属としてその身に宿していたイタカを、自身の魔力を消費して現界させたのだ。
「さぁ、待っていろ魔王。俺が真の強さってものを見せてやるよ。この世で一番強いのは俺だって分別をつけさせてやらァ……」
この世で最も死を恐れる男は、これから自身に歩み寄る死の影に気付かず、ただ自分の影が薄くなっていく方向に歩いていくことしか出来なかった。
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