黒剣の魔王
第30話/アールグーノ帝国
こういうのを待ってたんです。現代風大都会な感じに変わり果てた鎖国歴のある国なんかよりも、この、『これぞ中世』って感じのこの雰囲気!
レンガ造りの道路にレンガ造りの建物。目に映るものはレンガレンガレンガ。レンガだらけの街並み。ここはアールグーノ帝国の一番南にある壁内都市『オルグメラ』だ。
アールグーノ帝国の領内は五つほどの地方に分かれており、その地方ひとつずつに壁内都市が設置されている。そこを中心にして各街が出来ていくわけだ。
壁内都市と言う大きな街にすぐ近いことから、都市近郊で農業を営んでいる人の農作物を育てること以外の苦労は少ないと思われる。
あまり魚を見ないことから、この国は魚を多く消費する国ではないのかと思ったが、この国は各壁内都市によって特色が異なるというので、海に面している東の壁内都市『ナルブグラ』は案外魚が主食の生活をしているのかもしれない。
北の壁内都市『アムセファ』はかなりの豪雪地帯のようで、多くの人が冬季には街を離れて南下してくるらしく、既にその南下は一部で開始されているようだ。
西の壁内都市『メドクベド』は、かつて伝染病が流行った時に医療が大きく発達した医療都市らしい。
そしてなんと言っても中央の壁内都市であり王都の『エストレル』。『エストレル』は世界一発展した都市と言われており、その様相は街がまるまる1つの城と一体化しているように見えるとかなんとか。
ちなみにこの情報は全てスキル『異世界転移者』の力で調べあげました。すごいだろ? え? お前じゃなくてスキルがだって? それを使いこなしてる俺が一番すごいのさ。
そんなことを考えながらふと街の大通りの方に目をやってみると、行き来するのはやはり普通の人間だけという王国とは違って、帝国は魔族たちが街中を歩いていた。
蜥蜴人族、猫妖精族、人狼などの魔族たちが街中を歩いている姿は、俺に久々にファンタジーというものを実感させる。
そうだよ、これこそファンタジーなんだよ!
俺は現代人の力で発展した異世界人の文明が見たかったんじゃないの! こういう中世ファンタジー的な世界を見たかったんだよ!
いずれさる世界だとはわかっているからこそ、一度は見てみたいと思ったこの景色。はいもうこの世界に悔いはございません。早く現代日本に帰りましょう、RPGしたくなってきたから。
ていうかたくさんの人に王都行く道中をジロジロ見られてるのって恥ずかしいんだよね。見世物じゃあないからあんまりジロジロ見ないでほしいよね。
こうして俺が、キラキラとした純粋無垢なこの瞳で町中を眺めつつ、自分が目立ってしまっていることに軽く絶望しながら歩いてると、横からステラが声をかけてきた。
「アホ丸出しの顔であるかないでくれる?」
失礼な……俺はあんな風に中途半端に上を向いて口を開け続けるハゲのような顔はしていないと自覚しているのだけれど!? ま、まぁ、ここは上司としての余裕をかましてやろう。
「ハイハイわかりましたよ、雑魚勇者殿」
はっはっはっ、どうだ。図星を突かれて手も足も出まい!
「誰が雑魚勇者よ、クソ魔王!」
くっ、俺のことをクソ扱いするとは……父さん以来だぞ、この野郎。
「多少剣技を覚えたくらいでいい気になってる勇者の呼び名は雑魚勇者でいいだろ」
ちょっとイラッときたのでさらに攻撃。
「そもそも私が選ばれた理由は素質があるからで、特に訓練とかされたわけじゃないんだから当たり前でしょ!?」
「いやいや、強い勇者なら天性のセンスでどんな敵でも軽々と倒せるって」
「それを言ったらまともな魔王なら敵にアドバイスを送って逃がすような真似はしないでしょうね」
戦ってもいない奴に兎や角言われたくないが、逃がしてしまったのは事実。しかし、次ヤツと戦うことになった場合でも負けることはないだろう。
「まさか! あの程度のヤツが多少アドバイスしたところで強くなるとは思わないし、弱いものをいたぶるのは強者じゃなくて狂者だろう?」
「呼んだ?」
「姉ちゃんは呼んでない」
全く別の人が反応し会話に入ってこようとしたことで、ヒートアップしていた俺とステラの脳は静まった。あれ? 姉ちゃんこれ狙ってたんじゃ?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『オルグメラ』を越え、そのまま中央の壁内王都『エストレル』に向かう。
『オルグメラ』を出る時に入る時にはなかった検問に引っかかったが、理由がわかれば妥当だった。
何でもつい先日に大罪に第二王子を殺害されたらしく、大罪の足取りを国をあげておっているという。
『オルグメラ』より南に奴らが潜伏できそうな場所はないため、そのまま王都から別の都市へ向かったか王都に潜伏しているかしか考えられないらしい。
別の三大陸に行くための船は、あいにく現在聖国と魔帝国が二国会議をしている為に入国禁止制限がされており、ギルド自治区にも立ち入りできないために立ち入ることが出来ないので船は出ていないし、そのような状況で出てくる人間もいないので来ることもない。
そんな中で起こった事件なのだから聖国にいることはほぼ確定なのだろう。
これは上手く帝国に取りいれば、俺達が探している滞在の情報も何かしらつかめるかもしれない。
使えるものはなんでも使って、この世界を面白おかしく正してやる。その上で何事も無かったかのようにこの世界を去っていくのがベスト。
どんな事情があれ、知り合ったヤツらに忘れられるのは悲しいからな。俺がこれから生きていく長い人生の中で一度ここに立ち寄ったということを、世界の歴史に刻んでやる!
そう強く決心し、転移魔法を使って呼び出したヘリコプターに乗り込んだ。
……やっぱりこれ異世界感無いよね。ヘリ十台の縦列飛行、現実でもなかなか見ることはないけれどさ。
レンガ造りの道路にレンガ造りの建物。目に映るものはレンガレンガレンガ。レンガだらけの街並み。ここはアールグーノ帝国の一番南にある壁内都市『オルグメラ』だ。
アールグーノ帝国の領内は五つほどの地方に分かれており、その地方ひとつずつに壁内都市が設置されている。そこを中心にして各街が出来ていくわけだ。
壁内都市と言う大きな街にすぐ近いことから、都市近郊で農業を営んでいる人の農作物を育てること以外の苦労は少ないと思われる。
あまり魚を見ないことから、この国は魚を多く消費する国ではないのかと思ったが、この国は各壁内都市によって特色が異なるというので、海に面している東の壁内都市『ナルブグラ』は案外魚が主食の生活をしているのかもしれない。
北の壁内都市『アムセファ』はかなりの豪雪地帯のようで、多くの人が冬季には街を離れて南下してくるらしく、既にその南下は一部で開始されているようだ。
西の壁内都市『メドクベド』は、かつて伝染病が流行った時に医療が大きく発達した医療都市らしい。
そしてなんと言っても中央の壁内都市であり王都の『エストレル』。『エストレル』は世界一発展した都市と言われており、その様相は街がまるまる1つの城と一体化しているように見えるとかなんとか。
ちなみにこの情報は全てスキル『異世界転移者』の力で調べあげました。すごいだろ? え? お前じゃなくてスキルがだって? それを使いこなしてる俺が一番すごいのさ。
そんなことを考えながらふと街の大通りの方に目をやってみると、行き来するのはやはり普通の人間だけという王国とは違って、帝国は魔族たちが街中を歩いていた。
蜥蜴人族、猫妖精族、人狼などの魔族たちが街中を歩いている姿は、俺に久々にファンタジーというものを実感させる。
そうだよ、これこそファンタジーなんだよ!
俺は現代人の力で発展した異世界人の文明が見たかったんじゃないの! こういう中世ファンタジー的な世界を見たかったんだよ!
いずれさる世界だとはわかっているからこそ、一度は見てみたいと思ったこの景色。はいもうこの世界に悔いはございません。早く現代日本に帰りましょう、RPGしたくなってきたから。
ていうかたくさんの人に王都行く道中をジロジロ見られてるのって恥ずかしいんだよね。見世物じゃあないからあんまりジロジロ見ないでほしいよね。
こうして俺が、キラキラとした純粋無垢なこの瞳で町中を眺めつつ、自分が目立ってしまっていることに軽く絶望しながら歩いてると、横からステラが声をかけてきた。
「アホ丸出しの顔であるかないでくれる?」
失礼な……俺はあんな風に中途半端に上を向いて口を開け続けるハゲのような顔はしていないと自覚しているのだけれど!? ま、まぁ、ここは上司としての余裕をかましてやろう。
「ハイハイわかりましたよ、雑魚勇者殿」
はっはっはっ、どうだ。図星を突かれて手も足も出まい!
「誰が雑魚勇者よ、クソ魔王!」
くっ、俺のことをクソ扱いするとは……父さん以来だぞ、この野郎。
「多少剣技を覚えたくらいでいい気になってる勇者の呼び名は雑魚勇者でいいだろ」
ちょっとイラッときたのでさらに攻撃。
「そもそも私が選ばれた理由は素質があるからで、特に訓練とかされたわけじゃないんだから当たり前でしょ!?」
「いやいや、強い勇者なら天性のセンスでどんな敵でも軽々と倒せるって」
「それを言ったらまともな魔王なら敵にアドバイスを送って逃がすような真似はしないでしょうね」
戦ってもいない奴に兎や角言われたくないが、逃がしてしまったのは事実。しかし、次ヤツと戦うことになった場合でも負けることはないだろう。
「まさか! あの程度のヤツが多少アドバイスしたところで強くなるとは思わないし、弱いものをいたぶるのは強者じゃなくて狂者だろう?」
「呼んだ?」
「姉ちゃんは呼んでない」
全く別の人が反応し会話に入ってこようとしたことで、ヒートアップしていた俺とステラの脳は静まった。あれ? 姉ちゃんこれ狙ってたんじゃ?
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『オルグメラ』を越え、そのまま中央の壁内王都『エストレル』に向かう。
『オルグメラ』を出る時に入る時にはなかった検問に引っかかったが、理由がわかれば妥当だった。
何でもつい先日に大罪に第二王子を殺害されたらしく、大罪の足取りを国をあげておっているという。
『オルグメラ』より南に奴らが潜伏できそうな場所はないため、そのまま王都から別の都市へ向かったか王都に潜伏しているかしか考えられないらしい。
別の三大陸に行くための船は、あいにく現在聖国と魔帝国が二国会議をしている為に入国禁止制限がされており、ギルド自治区にも立ち入りできないために立ち入ることが出来ないので船は出ていないし、そのような状況で出てくる人間もいないので来ることもない。
そんな中で起こった事件なのだから聖国にいることはほぼ確定なのだろう。
これは上手く帝国に取りいれば、俺達が探している滞在の情報も何かしらつかめるかもしれない。
使えるものはなんでも使って、この世界を面白おかしく正してやる。その上で何事も無かったかのようにこの世界を去っていくのがベスト。
どんな事情があれ、知り合ったヤツらに忘れられるのは悲しいからな。俺がこれから生きていく長い人生の中で一度ここに立ち寄ったということを、世界の歴史に刻んでやる!
そう強く決心し、転移魔法を使って呼び出したヘリコプターに乗り込んだ。
……やっぱりこれ異世界感無いよね。ヘリ十台の縦列飛行、現実でもなかなか見ることはないけれどさ。
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