黒剣の魔王
第29話/黒いモヤ
俺が飛び立った先には、黒いモヤで全身をおおった人物がそびえていた。
「へぇ、まさか私の風魔法を逆探知してくるとはね」
「生憎ながら、あんなバレバレの魔法をはられたら首筋が痒くて気持ち悪くてね。対処をさせてもらいに来た」
俺が首筋を掻くジェスチャーをしながらそういうと、モヤに包まれた人物は手を振りかざしてこちらに向けた。
「それは悪かったね、ごめんよ。でも、私にも立場というものがあるんでね」
「どんな立場か、吐いてもらおうか……」
目の前のモヤが濃くなると同時に、俺は魔法の発動の準備をする。
「虚無魔法『ディザスター・レイ』」
「空間魔法『地獄の大釜』!」
相手が放ってきた大きな黒い球体を、亜空間に物体を吸い込む魔法で吸い込んで、亜空間へと思い切り吹き飛ばす。
「虚無魔法すらも飲み込む空間魔法か。そんなものがあるんだぁ。面白いね君」
「そりゃどうも。こちらとしては空間魔法のなかでごく初期に覚えた大型を使っただけなんだけどもね」
「……君は少し特殊みたいだね。私と同じで……邪神魔導『虚無神の咆哮』」
何が私と同じで少し特殊だ。自分のことすごいと思ってるの? 厨二病だね。え? お前はどうなのかって? 厨二病だよ。
「バカバカしい。魔導が詠唱だけで発動出来るわけないだろ」
「……ふふ、まぁいいんだけどね、君がそう思うのなら」
モヤの中の相手がそういうと、周囲の空間が広く闇に包まれて俺の足場が消えた。
なぜ自分が立てているのかが不思議で、今にも目眩がしてきそうだ。
「おいおい、嘘だろ!? 方陣もなしに魔道を使いやがるとか」
魔導は普通、魔法陣がなければ発動をすることが出来ない。そんな魔導を詠唱だけで発動させたあいつは何者なのだろうか。
「……君には見えるだろうに、私の書いた方陣が。バカにしているの?」
「モヤに隠れてよく見えなかったよ、すまないが他人の『近づかないでオーラ』の中まで踏み込むほど無粋じゃあないんだ」
なるほど、魔素で方陣を書いたわけか。面白い、真似して仕返ししてやろう! うぇっへっへっ。
「王国の兵士、にしては強いしスペックが良すぎるね。となると君は転移者なのかな?」
あらら、察しが良すぎるようで。いやでも、この国の重役しか転移者のことを知らないはずなんだけどな。大抵の人間は召喚者と勘違いするはずだ。
「残念。転移させられた人間なことに変わりはないけれど、俺は『魔王』だ」
「あの王国と不仲の魔王? 嘘をつかないでくれない? ありえない。ワルプルギスに操られた大臣が王国の内政や外交を牛耳っていたはず。私達ですらあの国にはあまり大きな手を出せないんだから」
「残念ながらその大臣も俺が倒させてもらったよっと。そして済まないな、俺も方陣を貼り終えた」
「戯れ言はそこまでにしてくれない? 他人の魔導に魔導を上書きなどできないわ。そんなことも分からないの? 初心者。魔道はフィールドを魔力で覆うの。つまり地形変動をそう何度も起こそうと出来るものじゃない」
腹立つなぁ、確かに言ってることはあってるけれど条件が少し違うんだよなぁ。
「確かにお前の言ってることはあってるよ、相手とのマナの量が同じ時が条件だとしたらだけどな。相手の方が圧倒的にマナの量が多ければ……」
突如として暗闇に包まれていたこの空間が、白い光に包まれた神秘的な空間に変わっていく。そう、俺の作り出した光魔導『サンシャイン』に空間が置き換わったのだ。
魔導というのは、使用した人間の能力を底上げする能力だ。フィールドに付与される魔導は基本魔導と言う。俺の黒剣もあれは魔導の一部らしく、あれは物に付与される魔導は特殊魔導。
基本よりは特殊の方が質が上だし、闇系統の魔素(闇、反転等の副属性系の魔素)で作られた魔導よりも光系統の魔素(火、光、風等の本属性系の魔素)で作られた魔導の方が効果的に強い。これは魔導を天使族が作ったことに起因しているらしい。
つまり、このような基礎知識の足りないものが馬鹿みたいに魔導を使うと……
「こうなるってわけさ。さぁ、さっきから少しは気になってたけど、お前上から目線だよね。少し格の違いってものを見せつけてあげようか」
はっはっはっ。馬鹿め、ここから先は一方通行だ!
「光魔法『ジャスティスレイン』」
光の雨のような胞子が、空から大量に降り注いでくる。
この魔法は光系統の魔素を固めて作っているため、闇系統の魔素で作られた魔法や魔導を阻害する能力があり、相手のパラメータも大きく下げる。
さすがに分が悪いと感じたのか、モヤに包まれた人物が撤退の準備を始めるかのように、火魔法と風魔法を体に展開し始めた。
いやいや、逃がさないし。邪魔するやつは問答無用でボコしますよ? それが魔王スタイル
「くっ、今日のところはこのくらいにしておくわ!」
「いや、逃がすわけねぇだろ」
「逃げれるわよ? だって私本体じゃないものっ」
そういうとモヤに包まれた人物は、すうっと自分の存在を空気とどうかして見えないようにした。
「クソっ、蜃気楼を使ったか……」
普通の場合は火と風だけでは蜃気楼は作れない。しかし、ここは魔法の世界。魔法として減少が存在していれば、俺たちの世界の科学ではなしえなかったことが出来てしまう。
本当に末恐ろしい世界だ。
そう思いながらやつがまだ潜んでいる可能性を考慮して、こちらもありったけの手を打ってみることにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その後しばらくの間、周囲の空気を魔法でいじってやつがまだ潜んでいないかを把握しようとしたが全く反応はなく。
格好つけて戦ってみた割にはなんの成果もなかったことにがっくりしているわけです。
仕方なく本体の方にテレポートで戻ってみると。(ジャンヌ達を目印にしてテレポート。魔力敵に繋がってるから、モヤのやつをおった時と同じ原理!)
「……俺がいなくなった途端に移動速度早くなってね?」
何でも、あーさんと初代の方のクトゥルフが競い合いってどちらの魔法が多くの人数を素早く統率できるかとか言うのを競っていたらしい。
王様よ、いいんですかい? 目の前で王じゃないやつがあんたの私兵たちの統率をとってるけど。
「いや、いいとかじゃなくて誰ももう私のいうこと聞いてくれな……」
『王! 何をしているのだ、早くゆくぞ!』
「……はい、わかりました、クトゥルフ殿……」
「……なんというか、お疲れさまです」
「過去の偉人や強いものにビクビクしてる王って面目立たない……今回の交渉もうまくいかない気がしてきましたよ……」
そんな自信なさげな王のモチベーションをあげる時間を奪うかのごとく、本体はアールグーノ帝国の領地に足を踏み入れたのだった。
「へぇ、まさか私の風魔法を逆探知してくるとはね」
「生憎ながら、あんなバレバレの魔法をはられたら首筋が痒くて気持ち悪くてね。対処をさせてもらいに来た」
俺が首筋を掻くジェスチャーをしながらそういうと、モヤに包まれた人物は手を振りかざしてこちらに向けた。
「それは悪かったね、ごめんよ。でも、私にも立場というものがあるんでね」
「どんな立場か、吐いてもらおうか……」
目の前のモヤが濃くなると同時に、俺は魔法の発動の準備をする。
「虚無魔法『ディザスター・レイ』」
「空間魔法『地獄の大釜』!」
相手が放ってきた大きな黒い球体を、亜空間に物体を吸い込む魔法で吸い込んで、亜空間へと思い切り吹き飛ばす。
「虚無魔法すらも飲み込む空間魔法か。そんなものがあるんだぁ。面白いね君」
「そりゃどうも。こちらとしては空間魔法のなかでごく初期に覚えた大型を使っただけなんだけどもね」
「……君は少し特殊みたいだね。私と同じで……邪神魔導『虚無神の咆哮』」
何が私と同じで少し特殊だ。自分のことすごいと思ってるの? 厨二病だね。え? お前はどうなのかって? 厨二病だよ。
「バカバカしい。魔導が詠唱だけで発動出来るわけないだろ」
「……ふふ、まぁいいんだけどね、君がそう思うのなら」
モヤの中の相手がそういうと、周囲の空間が広く闇に包まれて俺の足場が消えた。
なぜ自分が立てているのかが不思議で、今にも目眩がしてきそうだ。
「おいおい、嘘だろ!? 方陣もなしに魔道を使いやがるとか」
魔導は普通、魔法陣がなければ発動をすることが出来ない。そんな魔導を詠唱だけで発動させたあいつは何者なのだろうか。
「……君には見えるだろうに、私の書いた方陣が。バカにしているの?」
「モヤに隠れてよく見えなかったよ、すまないが他人の『近づかないでオーラ』の中まで踏み込むほど無粋じゃあないんだ」
なるほど、魔素で方陣を書いたわけか。面白い、真似して仕返ししてやろう! うぇっへっへっ。
「王国の兵士、にしては強いしスペックが良すぎるね。となると君は転移者なのかな?」
あらら、察しが良すぎるようで。いやでも、この国の重役しか転移者のことを知らないはずなんだけどな。大抵の人間は召喚者と勘違いするはずだ。
「残念。転移させられた人間なことに変わりはないけれど、俺は『魔王』だ」
「あの王国と不仲の魔王? 嘘をつかないでくれない? ありえない。ワルプルギスに操られた大臣が王国の内政や外交を牛耳っていたはず。私達ですらあの国にはあまり大きな手を出せないんだから」
「残念ながらその大臣も俺が倒させてもらったよっと。そして済まないな、俺も方陣を貼り終えた」
「戯れ言はそこまでにしてくれない? 他人の魔導に魔導を上書きなどできないわ。そんなことも分からないの? 初心者。魔道はフィールドを魔力で覆うの。つまり地形変動をそう何度も起こそうと出来るものじゃない」
腹立つなぁ、確かに言ってることはあってるけれど条件が少し違うんだよなぁ。
「確かにお前の言ってることはあってるよ、相手とのマナの量が同じ時が条件だとしたらだけどな。相手の方が圧倒的にマナの量が多ければ……」
突如として暗闇に包まれていたこの空間が、白い光に包まれた神秘的な空間に変わっていく。そう、俺の作り出した光魔導『サンシャイン』に空間が置き換わったのだ。
魔導というのは、使用した人間の能力を底上げする能力だ。フィールドに付与される魔導は基本魔導と言う。俺の黒剣もあれは魔導の一部らしく、あれは物に付与される魔導は特殊魔導。
基本よりは特殊の方が質が上だし、闇系統の魔素(闇、反転等の副属性系の魔素)で作られた魔導よりも光系統の魔素(火、光、風等の本属性系の魔素)で作られた魔導の方が効果的に強い。これは魔導を天使族が作ったことに起因しているらしい。
つまり、このような基礎知識の足りないものが馬鹿みたいに魔導を使うと……
「こうなるってわけさ。さぁ、さっきから少しは気になってたけど、お前上から目線だよね。少し格の違いってものを見せつけてあげようか」
はっはっはっ。馬鹿め、ここから先は一方通行だ!
「光魔法『ジャスティスレイン』」
光の雨のような胞子が、空から大量に降り注いでくる。
この魔法は光系統の魔素を固めて作っているため、闇系統の魔素で作られた魔法や魔導を阻害する能力があり、相手のパラメータも大きく下げる。
さすがに分が悪いと感じたのか、モヤに包まれた人物が撤退の準備を始めるかのように、火魔法と風魔法を体に展開し始めた。
いやいや、逃がさないし。邪魔するやつは問答無用でボコしますよ? それが魔王スタイル
「くっ、今日のところはこのくらいにしておくわ!」
「いや、逃がすわけねぇだろ」
「逃げれるわよ? だって私本体じゃないものっ」
そういうとモヤに包まれた人物は、すうっと自分の存在を空気とどうかして見えないようにした。
「クソっ、蜃気楼を使ったか……」
普通の場合は火と風だけでは蜃気楼は作れない。しかし、ここは魔法の世界。魔法として減少が存在していれば、俺たちの世界の科学ではなしえなかったことが出来てしまう。
本当に末恐ろしい世界だ。
そう思いながらやつがまだ潜んでいる可能性を考慮して、こちらもありったけの手を打ってみることにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その後しばらくの間、周囲の空気を魔法でいじってやつがまだ潜んでいないかを把握しようとしたが全く反応はなく。
格好つけて戦ってみた割にはなんの成果もなかったことにがっくりしているわけです。
仕方なく本体の方にテレポートで戻ってみると。(ジャンヌ達を目印にしてテレポート。魔力敵に繋がってるから、モヤのやつをおった時と同じ原理!)
「……俺がいなくなった途端に移動速度早くなってね?」
何でも、あーさんと初代の方のクトゥルフが競い合いってどちらの魔法が多くの人数を素早く統率できるかとか言うのを競っていたらしい。
王様よ、いいんですかい? 目の前で王じゃないやつがあんたの私兵たちの統率をとってるけど。
「いや、いいとかじゃなくて誰ももう私のいうこと聞いてくれな……」
『王! 何をしているのだ、早くゆくぞ!』
「……はい、わかりました、クトゥルフ殿……」
「……なんというか、お疲れさまです」
「過去の偉人や強いものにビクビクしてる王って面目立たない……今回の交渉もうまくいかない気がしてきましたよ……」
そんな自信なさげな王のモチベーションをあげる時間を奪うかのごとく、本体はアールグーノ帝国の領地に足を踏み入れたのだった。
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