黒剣の魔王
第21話/崩れゆく計画
始まる。
遂に僕の悲願が達成される時が来た。そう思っていた。
今までどれだけ自分の魔力を費やしても、僕は自身の祖先を呼び出すことが出来なかった。
並の人間を圧倒的に超える量の魔力で召喚をしなくてはならない祖先を、国で一番魔力量の多い僕が召喚できないというのならもう手はなかった。
ーーそう、今まではーー
僕は、魔力が無限にあるという魔王を媒介にして祖先のことを召喚するという、傍から見ると非人道的なやり方を思いついた。
古くから、魔王は粗雑で人の心などなく、不完全な力しか持っていないのに魔力量だけが無限だというのだ。そのような存在ならば、王国に友好的になったとていつ寝返るかわからない。それならば、僕のしようとしている初代国家戦略級魔導師を蘇らせるという計画によって、以下に王国の未来は安泰になるか。
それだと言うのに、僕の目の前に初めて現れた魔王は、人の形をして人の心を持っていた。
僕は自分の目を疑った。
目の前にいる魔王、しかも4人は、人の心などない粗雑な怪物などではなく、人の心を持ち、他人を助けることの出来る心を持つものだった。
遠征に行った王国兵士達も、一人地下に潜っていった大罪人が最下層についたと報告を受けた少しあとに、周囲の黒い魔力が濃くなってまともに立っていることすらままならなくなったと聞いた。
立てていたのはアルタイルと一部の将軍級たちだけだったと言う。
詳しく内容を彼らに聞くと、その後、黒い魔力から伝播した視点共有魔法によって、過去のゴブリンが呪われた血の村を襲撃した事件の真実を縛り付けられたイストゥムが語るところを見せられたのだという。
アルタイルは事の顛末を知っていながら、自身の立場により手を出せないもう一人の大臣に恨みを晴らすことよりも、実行犯を殺すことを先決していた。
心の中でイストゥムに対して、どこまでも抑えようのない憎悪を抱えながら。いつか彼に復讐する時を望みながら。
そんな密かな願いを叶えた魔王たちに、感謝こそすれど憎悪など抱き用もない。実行犯のゴブリンはただ制約を守っただけだし、魔王は自分の願いを叶えてくれた。
敵対するものに対してすら、救いの手を差し伸べることのできるような心の澄んだ者達を、僕は本当に、自分の意志だけで自己満足のための生贄にすることが出来るのか?
大罪を止めるのにももっと他の方法はあるのかもしれない。ならばまずそちらを先決すべきだった。
そもそものまず実力が彼らの方が上かもしれない。魔力にものを言わせた圧倒的な力。神から授けられたという別世界の知恵を持つ彼らに、この僕が勝つ術はあるのか?
いったいどうすればいい、先祖を呼び出さなければこの国は大罪に滅ぼされてしまうし、かと言って彼を倒すことも可能かどうかわからず、倒せたとしても魔王サイドにはあと三人魔王がいるのだ。到底勝てるとは思えない。
もっとしっかり考えていれば何とかなったかもしれない。いくら魔力が無尽蔵だからといって、神を召喚しようとすれば命が代償になるはず。あの魔王にそんなことを出来るはずがない。
どうすれば、どうすれば……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ふーん、そういうことか」
髪の能力によって得た読心術を使って、対極のゲートにいるクトゥルフの様子を見てみた。
なんでかって?
なんか様子がおかしかったからだよ。
気になるだろ? これから全力で戦うかもしれないって相手が万全じゃなかったら。
にしても、『大罪』か。
仰々しい名前の奴らもいるもんだな。いかにもじゃん。なんかこの世界のボスっぽくね? そういえばリムラも『憂鬱』とか『ワルプルギス』とか言ってたっけ。憂鬱か。旧大罪にたしかあった気がする。
『憤怒』『嫉妬』『強欲』『怠惰』『色欲』『暴食』『傲慢』が新大罪。何を抜くんだったかは忘れたが、二つ何かが『憂鬱』と『虚飾』に入れ替わると旧大罪になるはずだ。
人数は多そうだけれど、案外そいつら全員倒したら帰還のヒントがつかめるのかもしれない。
うーん、でもなぁ。
ポケモ〇のリーグ戦より人数多いだろうからなぁ。めんどくさいなぁ。
あのゲーム、いつも最後まで行ったことないんだよ。伝説とか一撃で殺しちゃうし。なんだよ、一日の大半は草むらで過ごすゲームだからレベルバンバン上がるに決まってるのに。
レベリングの数値間違えてんだろ、三つ目のジムでLv100だぞこんにゃろー。
おっと、思考が脱線してしまった。
「さて、じゃあやったげますかね」
王国のことを滅ぼそうとしている人間がいて、その王国のことを本気で守ろうとしている人間がいるのなら、そこに一協定を結んだだけの俺たち魔王軍が出る必要は無いし出番もない。
『さぁーさ!
みなさんついにきましたよ!
みんな大好き、私も大好き!
センシタリア王国の希望にして国家戦略級魔導師、私達のあいどるぅっ!
クトゥルフ・ルルイエ・オルドワン様です!』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
当事者の覚悟が付かぬままで、王国戦の決勝は始まっていく。
その裏で既に大罪が動いていることも知らずに。
遂に僕の悲願が達成される時が来た。そう思っていた。
今までどれだけ自分の魔力を費やしても、僕は自身の祖先を呼び出すことが出来なかった。
並の人間を圧倒的に超える量の魔力で召喚をしなくてはならない祖先を、国で一番魔力量の多い僕が召喚できないというのならもう手はなかった。
ーーそう、今まではーー
僕は、魔力が無限にあるという魔王を媒介にして祖先のことを召喚するという、傍から見ると非人道的なやり方を思いついた。
古くから、魔王は粗雑で人の心などなく、不完全な力しか持っていないのに魔力量だけが無限だというのだ。そのような存在ならば、王国に友好的になったとていつ寝返るかわからない。それならば、僕のしようとしている初代国家戦略級魔導師を蘇らせるという計画によって、以下に王国の未来は安泰になるか。
それだと言うのに、僕の目の前に初めて現れた魔王は、人の形をして人の心を持っていた。
僕は自分の目を疑った。
目の前にいる魔王、しかも4人は、人の心などない粗雑な怪物などではなく、人の心を持ち、他人を助けることの出来る心を持つものだった。
遠征に行った王国兵士達も、一人地下に潜っていった大罪人が最下層についたと報告を受けた少しあとに、周囲の黒い魔力が濃くなってまともに立っていることすらままならなくなったと聞いた。
立てていたのはアルタイルと一部の将軍級たちだけだったと言う。
詳しく内容を彼らに聞くと、その後、黒い魔力から伝播した視点共有魔法によって、過去のゴブリンが呪われた血の村を襲撃した事件の真実を縛り付けられたイストゥムが語るところを見せられたのだという。
アルタイルは事の顛末を知っていながら、自身の立場により手を出せないもう一人の大臣に恨みを晴らすことよりも、実行犯を殺すことを先決していた。
心の中でイストゥムに対して、どこまでも抑えようのない憎悪を抱えながら。いつか彼に復讐する時を望みながら。
そんな密かな願いを叶えた魔王たちに、感謝こそすれど憎悪など抱き用もない。実行犯のゴブリンはただ制約を守っただけだし、魔王は自分の願いを叶えてくれた。
敵対するものに対してすら、救いの手を差し伸べることのできるような心の澄んだ者達を、僕は本当に、自分の意志だけで自己満足のための生贄にすることが出来るのか?
大罪を止めるのにももっと他の方法はあるのかもしれない。ならばまずそちらを先決すべきだった。
そもそものまず実力が彼らの方が上かもしれない。魔力にものを言わせた圧倒的な力。神から授けられたという別世界の知恵を持つ彼らに、この僕が勝つ術はあるのか?
いったいどうすればいい、先祖を呼び出さなければこの国は大罪に滅ぼされてしまうし、かと言って彼を倒すことも可能かどうかわからず、倒せたとしても魔王サイドにはあと三人魔王がいるのだ。到底勝てるとは思えない。
もっとしっかり考えていれば何とかなったかもしれない。いくら魔力が無尽蔵だからといって、神を召喚しようとすれば命が代償になるはず。あの魔王にそんなことを出来るはずがない。
どうすれば、どうすれば……
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「ふーん、そういうことか」
髪の能力によって得た読心術を使って、対極のゲートにいるクトゥルフの様子を見てみた。
なんでかって?
なんか様子がおかしかったからだよ。
気になるだろ? これから全力で戦うかもしれないって相手が万全じゃなかったら。
にしても、『大罪』か。
仰々しい名前の奴らもいるもんだな。いかにもじゃん。なんかこの世界のボスっぽくね? そういえばリムラも『憂鬱』とか『ワルプルギス』とか言ってたっけ。憂鬱か。旧大罪にたしかあった気がする。
『憤怒』『嫉妬』『強欲』『怠惰』『色欲』『暴食』『傲慢』が新大罪。何を抜くんだったかは忘れたが、二つ何かが『憂鬱』と『虚飾』に入れ替わると旧大罪になるはずだ。
人数は多そうだけれど、案外そいつら全員倒したら帰還のヒントがつかめるのかもしれない。
うーん、でもなぁ。
ポケモ〇のリーグ戦より人数多いだろうからなぁ。めんどくさいなぁ。
あのゲーム、いつも最後まで行ったことないんだよ。伝説とか一撃で殺しちゃうし。なんだよ、一日の大半は草むらで過ごすゲームだからレベルバンバン上がるに決まってるのに。
レベリングの数値間違えてんだろ、三つ目のジムでLv100だぞこんにゃろー。
おっと、思考が脱線してしまった。
「さて、じゃあやったげますかね」
王国のことを滅ぼそうとしている人間がいて、その王国のことを本気で守ろうとしている人間がいるのなら、そこに一協定を結んだだけの俺たち魔王軍が出る必要は無いし出番もない。
『さぁーさ!
みなさんついにきましたよ!
みんな大好き、私も大好き!
センシタリア王国の希望にして国家戦略級魔導師、私達のあいどるぅっ!
クトゥルフ・ルルイエ・オルドワン様です!』
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当事者の覚悟が付かぬままで、王国戦の決勝は始まっていく。
その裏で既に大罪が動いていることも知らずに。
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