黒剣の魔王
第18話/覚醒1
『さぁ! 第三試合の始まりだァ!
第三試合を戦うのは、三年前、王国に【死の夜】をもたらした【憂鬱】製のオーパーツ《リムラ》!
対するは歴代勇者の中で最強と名高い姫騎士、ステラだぁ!
ステラ選手は隠れファン、基大きなお友達がたくさん応援に来てくれています! みなさん、今日の心境は!?』
『うちのステラちゃんが負けるわけないでぶふぃ!』
『機会ごときに負けるわけないドプフォォ!』
『ステラちゃんは俺達が立てたフラグもおってくれるはずフォカヌポウ!』
『相変わらず独特な言葉遣いの【ステライバー】の皆さんですが、ステラ選手を応援しようという気持ちは誰にも負けていません!
さぁ! そろそろ両選手の準備が整ったようです!
では、カウント入ります!
3!
2!
1!
スタート!』
ステライバーとはなんなのかというツッコミをさせるスキもなしに司会が試合を開始した。
……あいつ、俺の扱い方を覚えてきやがったな?
さて、また真剣に試合を見ることにしますか。泣いても笑ってもここで勝ったやつが俺と当たることになるんだから。
ステラだったら一撃だろうな、多分。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なんなの、この圧倒的な気配……
気圧されて近づくことが出来ない……
『あなたがこの国の現勇者か。ならば話は早いな。元老院から始末の命令が下っている。ここで精神体を破壊し、現実でまともな生活を送れないようにしてやろう』
あんな馬鹿げた威圧放つ奴にどうやって勝てばいいって言うのよ!
くっ、相変わらずあの魔王のやつはニヤニヤしてるし……
……本当は使わない気でいたんだけどなぁ!
「暗黒魔法【壊滅陣】!」
はぁ、勇者なのに使っちゃったよ、暗黒魔法。
【憂鬱】の眷属は憂鬱の対属性【燐光】を与えられてる。
だから暗黒魔法には弱いんだけど、勇者の力を暗黒魔法に使うことにはかなりの抵抗がある。
まぁ、魔王に味方をしている時点でその忌避感は意味の無いものなのかもしれないけれど。
「くらえっ!」
と、右手に浮かんだ壊滅陣の紋章をリムラに向ける。するとリムらの身体が宙に浮いた。
使い勝手がいいのはいいんだけど、戦闘スタイルがもう完全に勇者じゃないわね、私。
右手で紋章を握るとリムラの全身の関節がひしゃげた。
……うわぁ、流石にこれはこたえるわ……
結構きつい。いくら人形とは言えど、人の形をしているものが、バキバキと音を立てながらひしゃげる姿は見ていて気持ちが悪い。
『この程度か。口程にもない。こんな底辺の勇者にやられたとは、アルノーツェス家も落ちぶれたようだな』
……!?
うわぁ、あの状況でまだ喋るの!? いやいや、普通に気持ち悪いんだけど。と言うか怖い。
あれにはかかわらない方がいいと本能が言っている。
しかし、ここで負けると後であの大ゴブリンが調子乗ってくるからなぁ。
アイツが調子乗って、『フハハハ! 貴様も負けておるではないか! あの? 人形もどきに!? 人と戦ったこちらの方がまだマシだなァ! 王国勇者も大したことないではないか!』とか言ってきそうなので、そんな事言われたらプライドの塊である私にとっては赤面ものだろう。
……そんなことはさせない。私には私のプライドがあるし、自我がある。
王国勇者の称号が私にとって、誇りではあっても奢りではないということを証明してやる!
そんなことを考えているあいだにもリムラからの口撃はつづく。
あれだけ喋って、いったい何がしたいのだろうか。
「おいっ、ステラっ! そいつが喋ってるのは詠唱だ!」
ステージ外からヤジが飛んできたと思ったら、なんだ。うちの大将か。
詠唱だ? あんな自然に話している中に詠唱を混ぜられるはずがない。クトゥルフ魔導師でも出来ないことが、人形ごときに出来るはずがないじゃないか。
そう思って、私は紋章を握っている右手に、さらに力を込めた。
やつの体を粉々に砕いて圧勝し、自身の誇りを守るために。そして、未だに姉のことを世界最強の人間だと慕う弟のために。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
……俺の言葉はステラには届かなかった。
ここがこの世界の人間と、俺達転移した人間達の違いだろう。
俺たちはロボットが強い、ロボットはすごい。みたいなイメージが生活しているうちに根付く。
それこそニチアサ番組に登場するロボットであったり、国民的猫型ロボット出会ったり。
それに対してこちらの世界の人間にとっては、リムラはどこまで行っても『人形』だ。
日本のような近代文化につい数ヶ月前に近づいたようなこの国の国民やこの世界の人々が、ロボットの凄さなど知るはずがない。
彼らにとってはリムラは、幼少期に遊び時に使ったおもちゃ、という程度の認識なのだ。
それはステラでも同じこと。
これは非常にまずいことになった。自分の陣営の力を過信しすぎていた。
魔王国を作る上で必要なのは、魔王の陣営の強さを見せつけることで国の安全を保証し、周辺国民や自国民からの信頼を得る必要があると俺は考えている。
一宮君が負けてしまったのは仕方なかったとしても、ステラには、ことリムラには勝ってもらわないと困る……
人形に負けた陣営の国。そんなレッテルが貼られてしまっては、一般気を翻されてもおかしくないではないか。
……願掛けすることしか出来ないのか。勝ってくれよ、ステラ。お前のその肩に俺たちの今後が乗っかってるんだ。
俺たち、転移した人間が元の世界に帰ることができるかどうかが。
第三試合を戦うのは、三年前、王国に【死の夜】をもたらした【憂鬱】製のオーパーツ《リムラ》!
対するは歴代勇者の中で最強と名高い姫騎士、ステラだぁ!
ステラ選手は隠れファン、基大きなお友達がたくさん応援に来てくれています! みなさん、今日の心境は!?』
『うちのステラちゃんが負けるわけないでぶふぃ!』
『機会ごときに負けるわけないドプフォォ!』
『ステラちゃんは俺達が立てたフラグもおってくれるはずフォカヌポウ!』
『相変わらず独特な言葉遣いの【ステライバー】の皆さんですが、ステラ選手を応援しようという気持ちは誰にも負けていません!
さぁ! そろそろ両選手の準備が整ったようです!
では、カウント入ります!
3!
2!
1!
スタート!』
ステライバーとはなんなのかというツッコミをさせるスキもなしに司会が試合を開始した。
……あいつ、俺の扱い方を覚えてきやがったな?
さて、また真剣に試合を見ることにしますか。泣いても笑ってもここで勝ったやつが俺と当たることになるんだから。
ステラだったら一撃だろうな、多分。
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なんなの、この圧倒的な気配……
気圧されて近づくことが出来ない……
『あなたがこの国の現勇者か。ならば話は早いな。元老院から始末の命令が下っている。ここで精神体を破壊し、現実でまともな生活を送れないようにしてやろう』
あんな馬鹿げた威圧放つ奴にどうやって勝てばいいって言うのよ!
くっ、相変わらずあの魔王のやつはニヤニヤしてるし……
……本当は使わない気でいたんだけどなぁ!
「暗黒魔法【壊滅陣】!」
はぁ、勇者なのに使っちゃったよ、暗黒魔法。
【憂鬱】の眷属は憂鬱の対属性【燐光】を与えられてる。
だから暗黒魔法には弱いんだけど、勇者の力を暗黒魔法に使うことにはかなりの抵抗がある。
まぁ、魔王に味方をしている時点でその忌避感は意味の無いものなのかもしれないけれど。
「くらえっ!」
と、右手に浮かんだ壊滅陣の紋章をリムラに向ける。するとリムらの身体が宙に浮いた。
使い勝手がいいのはいいんだけど、戦闘スタイルがもう完全に勇者じゃないわね、私。
右手で紋章を握るとリムラの全身の関節がひしゃげた。
……うわぁ、流石にこれはこたえるわ……
結構きつい。いくら人形とは言えど、人の形をしているものが、バキバキと音を立てながらひしゃげる姿は見ていて気持ちが悪い。
『この程度か。口程にもない。こんな底辺の勇者にやられたとは、アルノーツェス家も落ちぶれたようだな』
……!?
うわぁ、あの状況でまだ喋るの!? いやいや、普通に気持ち悪いんだけど。と言うか怖い。
あれにはかかわらない方がいいと本能が言っている。
しかし、ここで負けると後であの大ゴブリンが調子乗ってくるからなぁ。
アイツが調子乗って、『フハハハ! 貴様も負けておるではないか! あの? 人形もどきに!? 人と戦ったこちらの方がまだマシだなァ! 王国勇者も大したことないではないか!』とか言ってきそうなので、そんな事言われたらプライドの塊である私にとっては赤面ものだろう。
……そんなことはさせない。私には私のプライドがあるし、自我がある。
王国勇者の称号が私にとって、誇りではあっても奢りではないということを証明してやる!
そんなことを考えているあいだにもリムラからの口撃はつづく。
あれだけ喋って、いったい何がしたいのだろうか。
「おいっ、ステラっ! そいつが喋ってるのは詠唱だ!」
ステージ外からヤジが飛んできたと思ったら、なんだ。うちの大将か。
詠唱だ? あんな自然に話している中に詠唱を混ぜられるはずがない。クトゥルフ魔導師でも出来ないことが、人形ごときに出来るはずがないじゃないか。
そう思って、私は紋章を握っている右手に、さらに力を込めた。
やつの体を粉々に砕いて圧勝し、自身の誇りを守るために。そして、未だに姉のことを世界最強の人間だと慕う弟のために。
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……俺の言葉はステラには届かなかった。
ここがこの世界の人間と、俺達転移した人間達の違いだろう。
俺たちはロボットが強い、ロボットはすごい。みたいなイメージが生活しているうちに根付く。
それこそニチアサ番組に登場するロボットであったり、国民的猫型ロボット出会ったり。
それに対してこちらの世界の人間にとっては、リムラはどこまで行っても『人形』だ。
日本のような近代文化につい数ヶ月前に近づいたようなこの国の国民やこの世界の人々が、ロボットの凄さなど知るはずがない。
彼らにとってはリムラは、幼少期に遊び時に使ったおもちゃ、という程度の認識なのだ。
それはステラでも同じこと。
これは非常にまずいことになった。自分の陣営の力を過信しすぎていた。
魔王国を作る上で必要なのは、魔王の陣営の強さを見せつけることで国の安全を保証し、周辺国民や自国民からの信頼を得る必要があると俺は考えている。
一宮君が負けてしまったのは仕方なかったとしても、ステラには、ことリムラには勝ってもらわないと困る……
人形に負けた陣営の国。そんなレッテルが貼られてしまっては、一般気を翻されてもおかしくないではないか。
……願掛けすることしか出来ないのか。勝ってくれよ、ステラ。お前のその肩に俺たちの今後が乗っかってるんだ。
俺たち、転移した人間が元の世界に帰ることができるかどうかが。
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