黒剣の魔王
第16話/拳で
<a href="//22328.mitemin.net/i257920/" target="_blank"><img src="//22328.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i257920/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
セカンドステージの試合のトーナメント表が公開された。
まじか、個人的にはスカコンティーとカッセルの戦いを見たかったんだが……
『いやぁ、残念です。私的には、カッセル選手の体躯は素晴らしいので、カッセル選手とスカコンティー選手のパワー対決を見たいところだったのですが……まぁ、仕方ないですね! 今回は諦めて来年に期待しましょう!』
……まぁ、そうなるわな。
さぁ、早速第1回戦、一宮君の戦いなわけですが。
「ふっ、絶剣使いのイチミヤか。我が相手として申し分無しっ!」
「なんなんだ、こいつ」
あちゃ、一宮君軽く引いてるじゃありませんか。
カッセル、本当に何者なんだろう?
トーナメント戦、シード枠はいるの狙ってたのになくなっちゃったからな……
「さぁ、このトーナメント戦はお互いに武器の使用が可能になります!」
「もちろん私は武器など使わない」
「ならば何で戦うのでしょうか!? とっても気になります!」
「ふっ、愚問だなぁ! 私が使うものなど分かっておろうに!」
「嫌だからなんだよ」
一宮君の引き具合が増したところで彼は大きく息を吸いこんだ。
「!? 結局何で戦うんでしょうか?」
司会がお決まりの前振りを流したタイミングでカッセルは遠吠えをあげた。
「拳で!」
両手で拳を作り、思い切りぶつけると『スパンッ』と何かを叩いたような心地よい音がした。
地球、さらに狭い範囲にすれば日本で流行っていたとあるネタに似ているがこれに至っては偶然の一致だろう。
彼が鼻眼鏡をつけて付け前歯を装備したことなど誰も突っ込むまい。
「ほう? 年齢は21歳、ってか?」
一宮君!? 乗らなくていいから! 便乗ダメ絶対!
「あの、お二人共そろそろ試合を……」
ほら! ずっと待ってる審判の人が可愛そうだよ! 司会も早く始めてやれよ!
「あー、じゃあ始めましょっか。バトルスタート!」
司会の掛け声とともに大きなゴングの音が会場に響く。
それにしてもこれだけ巨大な空間、王国のどこに作っているんだろう? と、疑問に思っていると、横にいたフードを被った小太りのオーク、ウェスダデラが
「この空間は、実は夢と同じようなものなんですよ」と、語り出した。
なんでもオーク族の中でも上位の魔法が使えるものは、中位魔法士から上位魔法士になるための絶対条件として、永続読心魔法を使うのだという。
一部の者からは批判を受けているが、過去、すべての大陸が一つだった頃からの習わしのようなものだそうで、大半は人の思念を頭で受け取ることに慣れているんだそうだ。
この世界のオーク族、圧倒的に人間よりスペックがいい気がする。
さっきの話ぶりだと、オーク族の殆どが上位魔法士だってことになるからな……
そんなことを考えてもバレてしまう。
「あはは、性能は良くても膂力が足りてないですから」
「いやいや!? この間キレた時地面に足めりこんでたでしょ!? そういう人のことを膂力が足りてないとは言わないからね?」
「で、この空間なんですが」
「マイペースだなおい!」
「魔方陣を踏んだ人間はこの世界で高いステータスを持って、精神体を召喚されます。一般の観衆は席の下に設置された魔法陣により、感覚体を送っていて、どちらも現実の体が欠損したり、また死亡したりすることはありません」
「やけに詳しいな?」
「術式の考案をしたのは先代のオーク族族長、リスタリアですから」
「ほう」
「なので一ついいですか?」
「おう」
「精神体と感覚体は、視覚、聴覚では互いに検知可能ですが、なにゆえあなたは私の触覚、嗅覚にも影響を与えているのですか?」
「知らん」
「……」
俺の精神体は後に、この世界の七不思議に認定された。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
世界最硬度の絶剣をいともたやすくはじき返す黒の拳。
カッセルの黄色の肌からは想像もできない、地球の黒人の人達よりも濃い、まさにブラックホールの様な、光を飲み込んでいくような黒さがカッセルの両肘から両手の指の先までを覆っている。
「俺の絶剣がただの拳に弾かれるなんて……、なにものだ、こいつ……」
カッセルのスピードに対応するのに精一杯で攻守に出られない一宮君はだんだんと劣勢になっていく。
「ふっ、まだまだだな、銀坊」
ん!? ギンボウ? 一宮君の事を知っているのか?
彼の名前を知っているものは国の上層部の人間だけのはずなんだが……
国民には【王国剣士イチミヤ】として知られていたため、下の名前の銀の方は世に出回ることなど全く持ってないはずだ。
一宮君の関係者なんだとしたら、あの男は一体何者なんだろう。
幾ら何でも強すぎる。あの一宮君が負けるとは思いたくないが、この状況を見ていくとそう断言せざるを得ないだろう。
「……今更……面しやがって……って……生した!?」
激しい剣戟(拳戟)の中で時折、一宮君の怒りの声が聞こえる。やはり彼は一宮君の知り合いのようだ。
暫くして決着がついた。結果はカッセルの圧勝。
会場は【王国剣士イチミヤ】の大敗に騒然としつつも、途中から分かりきった結果に驚きはしなかった。
なぜなら、どれだけ一宮君が剣を奮っても、カッセルには一撃もまともに当たることなく全てを防がれてしまっていたからだ。
……こりゃ、とんでもないダークホースが現れちった……あの人俺TUEEEEし過ぎだろ、自重しろよ。
どこかの誰かに聞かせてやりたい言葉だった。
セカンドステージの試合のトーナメント表が公開された。
まじか、個人的にはスカコンティーとカッセルの戦いを見たかったんだが……
『いやぁ、残念です。私的には、カッセル選手の体躯は素晴らしいので、カッセル選手とスカコンティー選手のパワー対決を見たいところだったのですが……まぁ、仕方ないですね! 今回は諦めて来年に期待しましょう!』
……まぁ、そうなるわな。
さぁ、早速第1回戦、一宮君の戦いなわけですが。
「ふっ、絶剣使いのイチミヤか。我が相手として申し分無しっ!」
「なんなんだ、こいつ」
あちゃ、一宮君軽く引いてるじゃありませんか。
カッセル、本当に何者なんだろう?
トーナメント戦、シード枠はいるの狙ってたのになくなっちゃったからな……
「さぁ、このトーナメント戦はお互いに武器の使用が可能になります!」
「もちろん私は武器など使わない」
「ならば何で戦うのでしょうか!? とっても気になります!」
「ふっ、愚問だなぁ! 私が使うものなど分かっておろうに!」
「嫌だからなんだよ」
一宮君の引き具合が増したところで彼は大きく息を吸いこんだ。
「!? 結局何で戦うんでしょうか?」
司会がお決まりの前振りを流したタイミングでカッセルは遠吠えをあげた。
「拳で!」
両手で拳を作り、思い切りぶつけると『スパンッ』と何かを叩いたような心地よい音がした。
地球、さらに狭い範囲にすれば日本で流行っていたとあるネタに似ているがこれに至っては偶然の一致だろう。
彼が鼻眼鏡をつけて付け前歯を装備したことなど誰も突っ込むまい。
「ほう? 年齢は21歳、ってか?」
一宮君!? 乗らなくていいから! 便乗ダメ絶対!
「あの、お二人共そろそろ試合を……」
ほら! ずっと待ってる審判の人が可愛そうだよ! 司会も早く始めてやれよ!
「あー、じゃあ始めましょっか。バトルスタート!」
司会の掛け声とともに大きなゴングの音が会場に響く。
それにしてもこれだけ巨大な空間、王国のどこに作っているんだろう? と、疑問に思っていると、横にいたフードを被った小太りのオーク、ウェスダデラが
「この空間は、実は夢と同じようなものなんですよ」と、語り出した。
なんでもオーク族の中でも上位の魔法が使えるものは、中位魔法士から上位魔法士になるための絶対条件として、永続読心魔法を使うのだという。
一部の者からは批判を受けているが、過去、すべての大陸が一つだった頃からの習わしのようなものだそうで、大半は人の思念を頭で受け取ることに慣れているんだそうだ。
この世界のオーク族、圧倒的に人間よりスペックがいい気がする。
さっきの話ぶりだと、オーク族の殆どが上位魔法士だってことになるからな……
そんなことを考えてもバレてしまう。
「あはは、性能は良くても膂力が足りてないですから」
「いやいや!? この間キレた時地面に足めりこんでたでしょ!? そういう人のことを膂力が足りてないとは言わないからね?」
「で、この空間なんですが」
「マイペースだなおい!」
「魔方陣を踏んだ人間はこの世界で高いステータスを持って、精神体を召喚されます。一般の観衆は席の下に設置された魔法陣により、感覚体を送っていて、どちらも現実の体が欠損したり、また死亡したりすることはありません」
「やけに詳しいな?」
「術式の考案をしたのは先代のオーク族族長、リスタリアですから」
「ほう」
「なので一ついいですか?」
「おう」
「精神体と感覚体は、視覚、聴覚では互いに検知可能ですが、なにゆえあなたは私の触覚、嗅覚にも影響を与えているのですか?」
「知らん」
「……」
俺の精神体は後に、この世界の七不思議に認定された。
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世界最硬度の絶剣をいともたやすくはじき返す黒の拳。
カッセルの黄色の肌からは想像もできない、地球の黒人の人達よりも濃い、まさにブラックホールの様な、光を飲み込んでいくような黒さがカッセルの両肘から両手の指の先までを覆っている。
「俺の絶剣がただの拳に弾かれるなんて……、なにものだ、こいつ……」
カッセルのスピードに対応するのに精一杯で攻守に出られない一宮君はだんだんと劣勢になっていく。
「ふっ、まだまだだな、銀坊」
ん!? ギンボウ? 一宮君の事を知っているのか?
彼の名前を知っているものは国の上層部の人間だけのはずなんだが……
国民には【王国剣士イチミヤ】として知られていたため、下の名前の銀の方は世に出回ることなど全く持ってないはずだ。
一宮君の関係者なんだとしたら、あの男は一体何者なんだろう。
幾ら何でも強すぎる。あの一宮君が負けるとは思いたくないが、この状況を見ていくとそう断言せざるを得ないだろう。
「……今更……面しやがって……って……生した!?」
激しい剣戟(拳戟)の中で時折、一宮君の怒りの声が聞こえる。やはり彼は一宮君の知り合いのようだ。
暫くして決着がついた。結果はカッセルの圧勝。
会場は【王国剣士イチミヤ】の大敗に騒然としつつも、途中から分かりきった結果に驚きはしなかった。
なぜなら、どれだけ一宮君が剣を奮っても、カッセルには一撃もまともに当たることなく全てを防がれてしまっていたからだ。
……こりゃ、とんでもないダークホースが現れちった……あの人俺TUEEEEし過ぎだろ、自重しろよ。
どこかの誰かに聞かせてやりたい言葉だった。
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