ゼロ魔力の劣等種族
第十九話 PK可能な狩猟大会
今日は日曜日だが、寮生会議があるという事で、前にも行ったオルニス寮の会議室へと足を向ける。
内容は新人戦について。
既に学院長とは会ったので新人戦に出る理由も無くなったが、勝てばそれなりのポイントを得られるので出る予定だ。
学院にいれば恐らく、学院長の言っていた裏切り者とやらの大元に関する情報が手に入りやすいだろう。なのでできれば退学は避けておきたい。
欠伸を噛み殺しつつ会議室へ入ると、前と同じ位置にエクレが座っていたので俺も前と同じ場所に座る。
「あ……」
「よう」
「おはようクロヤ」
軽く挨拶を済ますと、寮監のエミリー先生が入って来る。
「やーやーみんなおはよ~」
前と同じようにのんびりとした口調で挨拶をすると、エミリー先生は黒板に新人戦と書いた。
「はいは~い。じゃあ今日は、来週の日曜に開かれる新人戦について軽い説明をするね~」
生徒に向き直り言うと、先生はまた色々と黒板に書きだす。
「新人戦は簡単に言えば魔物の狩猟大会だね~。知らない人はいないと思うけど、魔物っていうのは魔力が活性化して凶暴化した生物、魔力生物の事ね~」
魔物は世界の到るところに存在する。形状は動物型であったり、植物型であったり、物質型であったりと様々だが、魔力と何らかの要因で発生し、遭遇したら襲ってくるという以外、詳しい事は分かっていない。
それだけに生徒たちは不安らしく、ひそひそと話し合ったり目を合わせたりし始める。
「魔物って言ってもそんなに強いのはいないから大丈夫だよ~。それに結界も貼ってあるから命に拘わる事は無いからそこは安心してねー」
エミリー先生も雰囲気を察したのかつけたすと、生徒たちの顔に安堵の色が戻る。
「それで、魔物を倒したら魔鉱石を落とすのは知ってるよねー? 大きさは魔物によって様々だけど、最終的に魔鉱石を一杯集めて一番重かった人が勝利だよ~」
エミリー先生が言うと、生徒達はまたお互い同士話し始める。意気込んでいたり、勝負しようと言っていたりと様々な声だ。中には協力しようと言い出す人までいる。
配分が面倒かもしれないが、確かに協力した方が案外効率よく行くのかもしれない。
「ああそういえば一つ言い忘れてたよ~」
不意に先生が言うと、生徒達も静かになる。
先生は全員が口が閉じるのを待つと、やがて挑戦的な笑みを浮かべ、言う。
「チームを組んでもいいけど、裏切られないようにね? 何せ略奪、PKも、ありだから」
鋭く放たれた言葉に周りから固唾をのんだ音が聞こえた気がした。
「日時は来週の日曜日、場所は裏山の第五演習場。それじゃあ今日はかいさ~ん」
エミリー先生はにこやかに言うと、会議室を後にした。
対人有りの狩猟大会。狩猟だけでも十分実力は試せると思うが、対人までさせるとはこの学院も容赦ない。
ただそれだと余計に徒党を組みそうなものだけど本当にいいのだろうか? 一応エミリー先生は裏切りについては釘を刺してたみたいだけど、同じ学院の生徒同士、お互い目の届く範囲にいるわけだからそうそう裏切らないと思う。
まぁ戦いにおいて個人の力も大事だがチームワークが大事な場面もある。学院側としては実力を試すのならどちらでもいいのかもしれない。
さて部屋に戻ろうかと腰を上げるが、やらなくてはならない事があったの思い出したのでエクレに目を向ける。
「なぁエクレ、これからちょっと時間あるか?」
「無い」
あまりにきっぱり言われたので若干傷ついていると、エクレは少し頬を染めつつ目を逸らしてくる。
「事も無い……」
無い事も無いって事はあるんだよな……? それなら普通にあると言ってくれたら、一瞬でもダメージを負わなくても済んだのに。
まぁでもあるならそれでいいか。片足を突っ込んだ以上、エクレとフラミィについて少しは手助けしてやるのが義理というものだ。
「なら良かった。とりあえず学内のカフェにでも行くか」
言うと、エクレも立ち上がるのでカフェへと向かった。
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