『愛してるゲーム』に負けたらキスするなんて先輩のバカ!
3 取材に協力してくれるとか、こんなの絶対期待しちゃうよね!?
「それって脈アリなんじゃん?」
瑠美ちゃんは、そう言ってマックポテトをかじった。
「ええ!? やっぱりそうかなあ? 瑠美ちゃんもそう思う? 取材に協力してくれるとか、こんなの絶対期待しちゃうよね!?」
どきどきとする心臓。あたしは両手でほっぺたを包んだ。上気してほっぺたが熱い。
すると、対面に座って黙って聞いていた瞳ちゃんが口を開いた。
「でもあの先輩チャラそうじゃん。大丈夫なの?」
うう。確かに、奏多先輩はプリンの無い綺麗な金髪をしていて、お世辞にも真面目そうとは言い難い。
「でも、奏多先輩が女泣かせたって話は聞いたことないよ」
瑠美ちゃんが助け舟を出してくれた。
「そうなの! 奏多先輩は、女友達もたくさんいてモテるけど、二股したとかって話は聞いたことないの! あんな見た目だけど、意外と文学の造形も深いし、単位も残り少ないって言ってたし! 抑えるとこは抑えてる、ちゃんとした人だと思うの!」
あたしが身を乗り出して言うと、瑠美ちゃんと瞳ちゃんは、口から砂を吐くような顔をして半眼であたしを見やった。
「さようですかー。よかったねー」
「ベタ惚れだねー。んじゃ、何の問題もないじゃん。しかも、脈アリっぽいんでしょ? 告白して付き合っちゃいなよ。何を迷うことがあるの?」
瞳ちゃんに問われて、あたしはシュンとうなだれた。
「でもー……。やっぱりあたしなんかが奏多先輩に釣り合う訳ないっていうか。あたしなんてモテないし……。やっぱり脈アリなんて嘘だよ。相手にされてない気がする! からかわれてるだけのお笑い要員なのに、思い上がって告白して振られたら笑い者だよー!」
あたしが頭を抱えてのたうち回っていると、
「やめ!」
瑠美ちゃんに怒られた。
「梨花、ネガ思考やめなよ。あんた元は良いんだから、少しは努力したら? メガネにデニムじゃ男も恋愛に興味ないと思って遠慮しちゃうよ。あいつらは、ゆるふわに着飾ったぶりっ子女に目がないんだから」
うう。瑠美ちゃんのおっしゃる通りです。
「じゃあさ、今から奏多先輩のデートまでに、梨花をモテ女子に大改造しちゃうってのはどう!?」
「ええ!? あたしをモテ女子に!? 無理だよ!」
あたしは慌てて瞳ちゃんを止めに入ったのだけど、
「いいね、それ! 梨花も大学生にもなって化粧ひとつ出来ないんじゃもったいないと思ってたのよ。ウチら二人で梨花を奏多先輩をぎゃふんと言わせる美人にイメチェンさせよう!」
と瑠美ちゃんも賛同してしまい。二人結託して、あたしの方をによによ見てる!
残りわずかとなっていたポテトを口に放り込むと、瑠美ちゃんは立ち上がった。
「さ、じゃあ、さっそく眼科に行くよ! まずはその近眼メガネをコンタクトに変えるところから始めよう!」
「えええ!?」
あたしは、さすがにそこまで付き合わせるのは悪いので、丁重にお引取り願い、その代わり、眼科には自分一人で行くことを約束した。
♡ ♡ ♡
その日から、瑠美ちゃん瞳ちゃんの厳しい指導による、あたしのモテ女子イメチェン大作戦が始まった。
まずは、メガネをコンタクトに変えるところからスタート。
今まであたしは高校生の時と変わらず、すっぴんに日焼け止めとリップクリームだけ塗って大学にも通ってたんだけど、それは禁止を言い渡された。
朝起きて、洗顔の後、「これで完璧! 初心者のための基本メイク」ってファッション誌のメイク特集本を横目に見ながら、日焼け止めを塗り、化粧下地を塗り、リキッドファンデーションを塗り、フェイスパウダーをはたく。
眉毛はあの日マックで整えられていたけど、アイブロウペンシルで眉尻を描いて、アイブロウマスカラで整える。これは、一本でペンシルとマスカラがついてるのをこれを買えと指定されたものだ。
眉毛の次は目。まずはビューラーでまつ毛を持ち上げる。ここで失敗して瞼をはさんで痛い思いをすること数回。なんとかまつ毛に上を向いてもらう。
そして、肌色のアイシャドウをアイホールの全体に、薄いブラウンのアイシャドウを中間に、締め色の濃いブラウンを目の際に重ねる。これの塗り方にもコツがいるみたいで、薄くてもダメだし、濃すぎてもダメ。アイラインは目尻から少しずつひいていくものらしい。目に入りそうでかなり怖いけど、やるとやらないとじゃ出来栄えに歴然とした差が出るの。
それが終わったらマスカラでまつ毛のボリュームアップと長さを伸ばす。
うわあ。目が大きくなった! って、感心してる場合じゃない。このままだと、顔のバランスがおかしくなっちゃうから、チークを塗らなきゃ。チークは、協議の結果、サーモンピンクになった。それを、頬骨の上にのせる。
最後に口紅を塗り、その上にグロスを塗って、うるツヤ唇の完成だ。
慣れないので、これを全部仕上げるのに、30分以上かかる。
まだ家を出てもいないのに、あたしはどっと疲れてしまっていた。しかし、そうも言っていられない。あたしは全身を姿見に映してみる。
今日の服装は、いつものスキニージーンズに、ラベンダーピンクの盛り袖サマーセーター。盛り袖って初めて着るけど、手首のあたりがふんわりと膨らんでいて、チューリップみたいで気に入っている。でも、襟ぐりが深くて、少し緊張するな。
いつものバッグはサマンサベガのトートバッグで、これは入学祝いにお父さんに買ってもらったものなんだけど、瑠美ちゃんと瞳ちゃんの審査を通過した唯一のアイテム。
よし。大丈夫。
あたしは、気合を入れ直すと、家を出た。
靴は、初心者でもギリギリ歩ける6センチのヒール。初夏らしく、つま先の見える濃いベージュのもので、足の爪にもピンクのペディキュアを塗っている。
ちなみにあたしは身長が150センチだから、6センチのヒールを履いても奏多先輩とはまだ20センチくらい身長差がある。
今日は、4限が終わったら、美容院に行って髪を整えることを命じられている。いよいよ、明後日が先輩との取材の日だからだ。ちなみに、美容院でお願いする時には、「芸能人の本田すずみたいにしてください」と言うように厳命されている。
あたしが本田すずみたいになれるとか本気で思ってる訳じゃないんだよ?
でもでも、どうせ真似するなら、可愛いモデルさんやアイドルの人を真似した方がいいとあたしも思うし。奏多先輩も本田すずは好きだと思うんだ。
それにね。今まで自分には関係ないやって思ってたおしゃれやお化粧も、やってみるとなんだかちょっと楽しいみたい。少しくらい、可愛くなったかな? もっと可愛くなれるかな? 先輩は、可愛いって言ってくれるかな?
あー! どきどきする!
取材で、一緒にプラネタリウム見て、で、帰りに公園に寄って告白する。決めた。
お化粧したら、少しだけ勇気が湧いてきたみたい。
いよいよ、明後日だあ!
瑠美ちゃんは、そう言ってマックポテトをかじった。
「ええ!? やっぱりそうかなあ? 瑠美ちゃんもそう思う? 取材に協力してくれるとか、こんなの絶対期待しちゃうよね!?」
どきどきとする心臓。あたしは両手でほっぺたを包んだ。上気してほっぺたが熱い。
すると、対面に座って黙って聞いていた瞳ちゃんが口を開いた。
「でもあの先輩チャラそうじゃん。大丈夫なの?」
うう。確かに、奏多先輩はプリンの無い綺麗な金髪をしていて、お世辞にも真面目そうとは言い難い。
「でも、奏多先輩が女泣かせたって話は聞いたことないよ」
瑠美ちゃんが助け舟を出してくれた。
「そうなの! 奏多先輩は、女友達もたくさんいてモテるけど、二股したとかって話は聞いたことないの! あんな見た目だけど、意外と文学の造形も深いし、単位も残り少ないって言ってたし! 抑えるとこは抑えてる、ちゃんとした人だと思うの!」
あたしが身を乗り出して言うと、瑠美ちゃんと瞳ちゃんは、口から砂を吐くような顔をして半眼であたしを見やった。
「さようですかー。よかったねー」
「ベタ惚れだねー。んじゃ、何の問題もないじゃん。しかも、脈アリっぽいんでしょ? 告白して付き合っちゃいなよ。何を迷うことがあるの?」
瞳ちゃんに問われて、あたしはシュンとうなだれた。
「でもー……。やっぱりあたしなんかが奏多先輩に釣り合う訳ないっていうか。あたしなんてモテないし……。やっぱり脈アリなんて嘘だよ。相手にされてない気がする! からかわれてるだけのお笑い要員なのに、思い上がって告白して振られたら笑い者だよー!」
あたしが頭を抱えてのたうち回っていると、
「やめ!」
瑠美ちゃんに怒られた。
「梨花、ネガ思考やめなよ。あんた元は良いんだから、少しは努力したら? メガネにデニムじゃ男も恋愛に興味ないと思って遠慮しちゃうよ。あいつらは、ゆるふわに着飾ったぶりっ子女に目がないんだから」
うう。瑠美ちゃんのおっしゃる通りです。
「じゃあさ、今から奏多先輩のデートまでに、梨花をモテ女子に大改造しちゃうってのはどう!?」
「ええ!? あたしをモテ女子に!? 無理だよ!」
あたしは慌てて瞳ちゃんを止めに入ったのだけど、
「いいね、それ! 梨花も大学生にもなって化粧ひとつ出来ないんじゃもったいないと思ってたのよ。ウチら二人で梨花を奏多先輩をぎゃふんと言わせる美人にイメチェンさせよう!」
と瑠美ちゃんも賛同してしまい。二人結託して、あたしの方をによによ見てる!
残りわずかとなっていたポテトを口に放り込むと、瑠美ちゃんは立ち上がった。
「さ、じゃあ、さっそく眼科に行くよ! まずはその近眼メガネをコンタクトに変えるところから始めよう!」
「えええ!?」
あたしは、さすがにそこまで付き合わせるのは悪いので、丁重にお引取り願い、その代わり、眼科には自分一人で行くことを約束した。
♡ ♡ ♡
その日から、瑠美ちゃん瞳ちゃんの厳しい指導による、あたしのモテ女子イメチェン大作戦が始まった。
まずは、メガネをコンタクトに変えるところからスタート。
今まであたしは高校生の時と変わらず、すっぴんに日焼け止めとリップクリームだけ塗って大学にも通ってたんだけど、それは禁止を言い渡された。
朝起きて、洗顔の後、「これで完璧! 初心者のための基本メイク」ってファッション誌のメイク特集本を横目に見ながら、日焼け止めを塗り、化粧下地を塗り、リキッドファンデーションを塗り、フェイスパウダーをはたく。
眉毛はあの日マックで整えられていたけど、アイブロウペンシルで眉尻を描いて、アイブロウマスカラで整える。これは、一本でペンシルとマスカラがついてるのをこれを買えと指定されたものだ。
眉毛の次は目。まずはビューラーでまつ毛を持ち上げる。ここで失敗して瞼をはさんで痛い思いをすること数回。なんとかまつ毛に上を向いてもらう。
そして、肌色のアイシャドウをアイホールの全体に、薄いブラウンのアイシャドウを中間に、締め色の濃いブラウンを目の際に重ねる。これの塗り方にもコツがいるみたいで、薄くてもダメだし、濃すぎてもダメ。アイラインは目尻から少しずつひいていくものらしい。目に入りそうでかなり怖いけど、やるとやらないとじゃ出来栄えに歴然とした差が出るの。
それが終わったらマスカラでまつ毛のボリュームアップと長さを伸ばす。
うわあ。目が大きくなった! って、感心してる場合じゃない。このままだと、顔のバランスがおかしくなっちゃうから、チークを塗らなきゃ。チークは、協議の結果、サーモンピンクになった。それを、頬骨の上にのせる。
最後に口紅を塗り、その上にグロスを塗って、うるツヤ唇の完成だ。
慣れないので、これを全部仕上げるのに、30分以上かかる。
まだ家を出てもいないのに、あたしはどっと疲れてしまっていた。しかし、そうも言っていられない。あたしは全身を姿見に映してみる。
今日の服装は、いつものスキニージーンズに、ラベンダーピンクの盛り袖サマーセーター。盛り袖って初めて着るけど、手首のあたりがふんわりと膨らんでいて、チューリップみたいで気に入っている。でも、襟ぐりが深くて、少し緊張するな。
いつものバッグはサマンサベガのトートバッグで、これは入学祝いにお父さんに買ってもらったものなんだけど、瑠美ちゃんと瞳ちゃんの審査を通過した唯一のアイテム。
よし。大丈夫。
あたしは、気合を入れ直すと、家を出た。
靴は、初心者でもギリギリ歩ける6センチのヒール。初夏らしく、つま先の見える濃いベージュのもので、足の爪にもピンクのペディキュアを塗っている。
ちなみにあたしは身長が150センチだから、6センチのヒールを履いても奏多先輩とはまだ20センチくらい身長差がある。
今日は、4限が終わったら、美容院に行って髪を整えることを命じられている。いよいよ、明後日が先輩との取材の日だからだ。ちなみに、美容院でお願いする時には、「芸能人の本田すずみたいにしてください」と言うように厳命されている。
あたしが本田すずみたいになれるとか本気で思ってる訳じゃないんだよ?
でもでも、どうせ真似するなら、可愛いモデルさんやアイドルの人を真似した方がいいとあたしも思うし。奏多先輩も本田すずは好きだと思うんだ。
それにね。今まで自分には関係ないやって思ってたおしゃれやお化粧も、やってみるとなんだかちょっと楽しいみたい。少しくらい、可愛くなったかな? もっと可愛くなれるかな? 先輩は、可愛いって言ってくれるかな?
あー! どきどきする!
取材で、一緒にプラネタリウム見て、で、帰りに公園に寄って告白する。決めた。
お化粧したら、少しだけ勇気が湧いてきたみたい。
いよいよ、明後日だあ!
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