勝手知りたる神々の権能

創伽夢勾

肆:全知全能

 目が覚めると、まだ朝日が昇っていなかった。横を見ると、もう一つのベットにリリアナが寝ていた。普通なら女に子と同室とか喜んでいい場面なんだろうけど、今の俺には手を出す甲斐性なんて持ち合わせていなかった。

「痛い」

 上半身を起こすときに手で髪を引っ張ったようだ。まだまだこの髪の長さ、身長にはなれそうもない。声は自分ではあんまりわからないが、少し高くなってるように思う。どうなんだろうか。まぁ性別的には男だし、でもどうしようかな、髪を切る気にはならないしな。
 俺はベットから降りると、机に置いておいた武器を腰につけ、リリアナの布団が乱れているのを直して、宿を後にした。
 まだ、早い時間だ。こんな時間に外に出ている人は少ない。俺は、もっと人通りの少ないところを探し、一つの路地で立ち止まった。

「まぁ、ここならいいだろ」

(ラピス、聞こえてたら俺を回収してくれ)

 少しすると俺の目の前に、水が現れる。水は俺を飲み込んだ。不思議な浮遊感を体感した後、神殿へと戻ってこれた。目の前に俺に跪くラピス。何とも言えない既視感が……

「ラピス、自由に使っていい部屋はあるか?」
「どこでもご自由に使っていただければ?」
「ん、言い方を変えよう。壊しても差し支えない部屋はあるか?」
「……それなら神殿の一番端にある大広間をお使いください。あそこなら、ある程度は耐えれるかと」

 壊すと聞いて、少し間が開いたが、大広間なら確かに大丈夫そうだ。

「じゃあ、そこを使わせてもらうよ。危ないから呼ばない限り近づかないように」
「わかりました」
「あと、俺の声って、どうなの?」
「とてもかわいらしいお声ですよ?」

 俺はその返答を聞いて、何とも言えない感情を抱いて、大広間に向かった。

 俺は、この世界に来て、未だに、権能以外の魔法を使っていない、いや使えないのだ。なんていったって使い方がわからないからだ。そして俺は昨日、地上に降りてから気づいた、ヘパイストスの権能を使った後、相手の武器・防具の詳細がわかるようになったのだ。だから俺はあの神の権能を使おうと思う。
 大広間の真ん中に立ち、権能を使うための言葉を紡ぐ。

『我は神々の遺志を継ぎし者。我、汝に求は神々の権能。全知全能たる天空神よ。汝の名は【ゼウス】』

 そう俺が呼び出したのは全知全能の神。いや? ほら全知全能だったら、魔法の使い方とかも分かりそうじゃん?
 今の俺は、ビリビリと雷を纏っていた。髪の色は、薄い黄色に変わっていた。頭の中には知りたいものの情報が流れていた。今でいうと魔法という概念についてだ。さすが全知全能、知りたい情報はほとんど知ることができた。使用時間は約7分。つまり、再使用に14分かかるのか、もっと効率良く使用できたらなぁ。
 俺はそのまま休憩を挟みながら自分のもといた世界の概念が通用するのか、とかね?もちろん魔法もいろいろ試したよ。おかげで大広間がすごいことになっていたけど。神の魔力はやっぱり壮大でした。これだけ使っても、魔力が切れることはなかった。練習は夜まで続き、そろそろ帰るころにラピスを呼んだが、部屋を見て驚いていた。まぁ治せるらしいから、そこは任せて。俺は地上へと戻った。

 地上に戻ったのは結構遅い時間だった。部屋に戻ると、頬を膨らませた、リリアナが待っていた。彼女曰く俺が帰ってくるのを待っていたらしい。ボソッと「置いていかれたのかと思った」という言葉を俺は聞き逃さなった。そっと彼女の頭を撫でた。俺の方が身長が少し低い、それでも彼女は少し頬を染めてそっぽを向いた。しばらくして、明日は一緒に町を回る約束をして、ベットに潜り込んだ。

◆◇◆

 朝起きると、もうすでにリリアナが起きていた。朝ごはんに呼ばれ、食堂に顔を出す。

「あっ昨日夜ご飯食べなかったでしょ? これ、昨日の夜ご飯のお代」

 受付をしてくれたお姉さんが銅貨3枚を俺に渡そうとしてきた。

「いいよ、俺が頼んどいていなかったのが悪いし、その代わり少し朝ごはんをお目にしてもらえると嬉しいな」
「んーそう? わかったよ」

 リリアナと一緒に机に座って、料理が来るのを待つ。待っている間、ほかの客、特に男からの目線がすごかった。リリアナの方を見ると髪の毛先をくるくるしていた。癖なのかな?
 料理が届くと、昨日夜食べてない分お腹が減っていたため、すぐに食べ終わってしまった。
 リリアナも食べ終わり部屋に戻る。町を回る約束をしていたから、さっさと準備を済ませて、宿を出た。武器はちゃんと携帯している。町を回っている間、リリアナと話をたくさんした。リリアナは攻撃系の魔法が得意ではないらしい。主に回復や支援の方が得意らしい。これや、そもそも魔王になる気がなかった、リリアナは、嫌われていたそうだ。で、ついに反旗を翻した、貴族に殺されかけたときに、俺が現れたそうだ。
 そういった話をしながら回っていると、宿同様、多くの、主に男性の視線を感じた。俺も見た目だけなら、美少女と言っても差し支えないだろう。自分で言っててなんだけど、リリアナも美少女だ。そんな二人が、歩いていたら自然と周りの目を引くのは当然……なのか?
 店を見て回って、昼ご飯を食べて、いろいろしていると、もう遅い時間になっていた。

 明日はいよいよ、入学試験当日だ。夜ご飯を早めに食べ、早々に寝る身につくことにした。



 



コメント

  • 黒音

    出来れば更新してくださいお願いします<(_ _)>〈 ゴン!〕

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