話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

こんなふざけた裁判に弁護士なんていらない!

Len Hat

第一章 第4話 【たった一つの言葉】

酒場の客に拘束されてから数時間後
今釜岸椿は裁判所にいる、係官によるともう少しで開廷するらしい。
椿はここに来るまでの一連の行動を振り返った。
まず、酒場の客たちに拘束され、すぐに治安維持局(現在でいうと警察に当たる職)が到着した。それから、数時間の取り調べで無実を訴えだが、その訴えは認められず被告人として裁判を受けることになった。その後、開廷するまで独房に入れられた。独房に入る前に椿は藁にもすがる思いで「弁護士を呼んでくれ」と持っていた名刺を係官に突き付けた。係官はその名刺を受け取り、この場から立ち去った。そして、独房から裁判所に護送され、今に至る。

彼が控え室で待っていると女性が『バン!!』とおもいっきり扉を開けた.彼と目を会わせると彼の方へきた。そして、「あなたね。私を呼んだのは」と問いかけた。
彼は「何のことですか?」と彼女に尋ねると、
「弁護士ですよ。べ・ん・ご・し・です」と答えた。
彼は「はぁ」と彼女の容姿に見ながら、唖然とした。無理もないだろう、なぜなら、彼女の頭にはホワイトブリムがあり、黒いワンピースに白いフリルがついているエプロンを身に付けていたからだ。つまり、彼女はメイド服を着ているということだ。この姿を見て、誰が弁護士だとわかるだろうか。
彼は彼女に「その服装は何ですか?」と率直に尋ねた。彼女は「これはバイトの制服です。いきなり裁判所の人が店に入り込んで、私に召喚状を見せられて、ご同行お願いしますって言われたから、急いでここに来たんです。」怒りをあらわにして言った。
彼女に圧倒された彼は「なんかすみません」と謝った。
彼が謝ったことに驚いた彼女は「えっ!別にいいですよ。依頼人ですからね。では手続きするので、ここで待ってくださいね」とさっきの態度が一変したまま、立ち去った。

立ち去った彼女の姿を見ていると、「ねぇ、少しいいかしら?」と落ち着いた声で囁かれた。
その声に驚いた彼がその声の方へ振り替えると、茶髪の女性が目の前に立っていた。
その女性は「驚いたかしら」と微笑んた。
彼は彼女に「あなたはいったい?」と名前を尋ねる前に彼女が「立ち話も何ですし、向こうで話しませんか?」と誘った。
その提案に彼は頷いた。
二人はベンチに座り、「君はあの弁護士のことどう思う?」と彼女から話を切り出した。
彼はその問いに対して「初めて会ったばかりなので、よくわかりません」と答えた。
彼女は「それはそうでしょうね。彼女にとって,これは弁護士として初めての裁判なんだから」とさらっと呟いた。
彼女の言葉に驚いた彼は「そんな、でもジェッキーさんから貰った名刺には…」と言い切る前に
彼女は「ジェッキーってあの手品師のこと?」と質問した。
彼はその問いに頷いた。彼女は「あの弁護士と手品師は友達なのよ。多分宣伝のために名刺を渡していたのね。その結果があれね。」と弁護士の彼女がいる方に目を向けて言った。
茶髪の彼女の態度にしびれを切らした彼は「さっきからなんですか?こっちはこんな話に付き合うほど余裕はないんですよ。要件は何ですか?」と言い放った
彼女は少し微笑んだあと「そうだったわね。話したいことは単純よ。あなたは誰も殺していないでしょう?」という問いに対し
「もちろんです」と彼は答えた.
その答えに「なら、私のいうことをよく覚えておいて、じゃないとこの裁判で勝てないわ。」ときっぱりと言った.
彼は「なんでそうなるんですか」と口答えするが
「説明は裁判が終わってから話すわ。とりあえず今は聞いて」と話を進めた.
「……わかりました」と納得しないまま,彼女の話を聞いた.
「この裁判は事件発生から数時間で開廷する極めて異例の裁判よ、だから、裁判所側も準備に追われている。もちろん、検察側もね」と含みを持たせて言った.
「まぁ、それはそうですけど、それがどうしたんですか?」と彼女の意図に気づいていなかった.
「君って思ったより鈍いのね。つまり,検察側はちゃんと事件を見ていない可能性があるから、見落としているところがあるということ。これでもわからない?」とあきれながら言った.
「つまりその点を追及すれば勝てるということですか」とようやく彼女の言っていることに気付いた.
「その通りよ.でも,問題がある」と言った.
「何ですか,問題って」と彼女の話に興味を示した.
「君は被告人だから,そもそも発言権を持っていないことかな」と告げた.
「ということはもうあの弁護士に任せるしか...」と不安に言った.
「別に弁護士に全て任せなくても,方法ならあるわ」と彼に希望を持たせた.
「えっ?」と驚く彼を無視して
「開廷して,すぐに裁判長が弁護側にある質問をするわ」と策を講じた.
「質問?」と首を傾げた.
「そうよ.君は誰よりもはやくその質問に『私です』と答えなさい」
「...わたし...です...?」とまたも首を傾げた.
「その通りよ.それで発言権が得られるわ」と微笑みながら言った.
「待ってください.質問ってまさか?」と彼女に質問しようとすると
「被告人!!開廷の時間である.ただちに,法廷に向かうように!!」と近くにいた力強く言った.
「あら,どうやら,私から話せるのは,ここまでのようね」と法廷の方を見つめた。
「そんな」と反応すると
「だけど,これだけは伝えておくわ」と小声で
「...」と耳を近づけ
「彼女は,今日の法廷に《弁護士》としては立つべきではない....もちろん,この話を聞いて,最後に決断するのは,被告人である君だけどね.」と言い残した.
「何をしている.審理放棄とみなし,有罪判決を下されたいのか!!」と被告に言った.
「今向かいます.」と法廷に向かった.

不思議な助言に背中を押されて、法廷に入っていった。彼が振り向くと、そこに女性はいなかった。法廷に入ると彼は被告席に座った。法廷の中は緊迫した空気で満たされ,今にも押しつぶしてしまうような感覚だった.そんな状況で
「これより開廷を宣言する。両者裁きの場で戦う用意はできているか」と木槌を持った男性が宣言した.
初めに弁護士の彼女が「弁護側準備完了しています」と言い
続いて眼鏡をかけた男性が「検察側も準備完了しております。裁判長閣下」と言った.
裁判長「冒頭弁論の前に弁護側に一つ質問がある」と言った.
弁護士「裁判長閣下なんでしょうか?」と耳を傾けた
裁判長「数刻前に弁護士の変更の申請があったが、間違いないか」と弁護士を見た.
弁護士「はい,私が提出しました」とその質問に答えた.
裁判長「本来ならこのような事件の場合,弁護士は3時間前に決定するのが通例である.これにより改めてこの場ではっきりしておきたい,本法廷において被告人の弁護をするものを誰か。答えていただきたい」と質問した.
裁判が始まって,最初の質問が言い渡された.彼はその質問に対し
・・・茶髪の彼女が言っていた質問はこれのことなのか・・・
・・・そもそも彼女が発言したことを信じていいのか・・・
・・・この質問に答えたらこの先どうなっていくのか・・・
と質問についてどう答えるべきか迷っていた.そんな時に彼の頭にはある言葉が浮かんだ.
・・・『乗りかけた船にはためらわず乗ってしまえ』・・・
この世界に来る前,物事についていつも考えすぎて悩んでいる自分に対し,父親によく言われていた言葉だ.
ロシアの作家が残した言葉らしいが,詳しいことは知らない.ただ,この言葉で彼はあることを決心した.そして,すぐさま行動に出た.
椿「はい,私です」とその質問に誰よりも早く,法廷内に響かせるように大声で吠えた.
裁判所全体が一斉にざわめいた。
裁判長「被告人,今何と言いましたか?」と裁判長もこの状況をうまく飲み込めないようだ.
椿「この裁判で被告人の弁護を担当するのは,この私です!!」と強く主張した.
「えっ」と弁護士の彼女は驚き,検察側はただ呆然としていた.自分でもたった一つの言葉でここまですることができるなんて思ってもみなかった.
裁判長「被告自身が弁護するのですか」と目を見開いて驚いた.
椿「はい」と力強く発言した.
裁判長「うむ、よろしい。本法廷の被告の弁護士は被告自身が行う.それでは被告人,弁護人の席へ」と進めた.
弁護士「ちょっと自分がなにいっているのか、わかってるの?」と小声で彼に怒りをぶつけた.
椿「無実を証明するにはこれしか方法がありません」と話を切りあげると
弁護士「それってどういうこと?」という質問に
椿「あとで説明します」と無視した.
二人がこそこそしている間に
裁判長「では検事、冒頭弁論を」と話を続けた.
検事「はっ,仰せのままに,事件は数時間前に起こった.事件が起こったのは今から6時間前のこと.被害者はサンディー・リグイース,大手金融機関の経営者である.被害者は酒場の席で死体となって発見され,遺体検死記録によると死因は銃弾による失血死,胸の一発が致命傷である.」と何事もなかったかのように説明した.
裁判長「よろしい,これより,審理の開始を宣言する.」とまだ聴衆がざわめいている中,審理が始まった.
検事「了解しました.事件の内容を知るために,事件当時,現場にいた者を参考人として,召喚致します」と係官に審理の準備を進めた.
弁護士「いよいよ始まるわね」と息を呑みながら言った.
本来ならば,彼女にとってこれは弁護士として最初の裁判となるはずだった.だが,いつの間にか被告自身が弁護士として法廷に挑むという前代未聞の裁判となっていた.
椿も覚悟を決め,検察側をにらみつけた.
今まさにこの二人の運命をひっくり返すような裁判が今始まった!!

「こんなふざけた裁判に弁護士なんていらない!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「推理」の人気作品

コメント

コメントを書く