異世界転移!~俺は金(マネー)で強くなる!~
二十五話:マネー男と狙われる覚悟
ステータスをいじくるのは後にして、組織の男に会ったその翌日スメンの言う通り今度は彼の部屋に呼ばれた。
それは非公式の場所で、秘密の話し合いをするのに一番な場所。
ちなみに、あの場でのリハーサルをしたのも、この部屋だ。
スメンはスメン達で色々相談し、後は俺が意見を出すだけのようだ。
「ケンキ殿、貴方は―――狙われる覚悟があるかね?」
そこまで大きくはない机にきれいに装飾されたソファーが二方面に置かれている。ラフェエニルと俺とレージストとルーフェが片方に。
スメンとアーシアがもう片方に座っている。
双方険しい表情をしているが、俺だけ余裕の表情を浮かべている。
「ああ。ありますよ。ひとつ教えましょう。俺のステータスは―――金さえあれば好きに弄れるんですよ。勝つことを疑っていませんから」
「そうか。そんな重要なものを私に教えてしまっていいのかな? 貴殿の友人たちは慌てているようだが……」
「いいですよ。どのみちいつか言う必要のある事です」
スメンの言う通りラフェエニルは「何を言っているの!?」という表情をしているが、俺としてはこれくらいいいと思っている。
金さえあればいい、というのだから国が攻めてきても負ける気がしない。
もし国が攻めてくるのなら―――その状況もスメンに会った時点で想定済みだ。
「ですから、恐れる必要は無いと思います。それに俺は金を愛しすぎているので、それ以外のことにも興味を持ちたいのですよ」
「成程。その初めての他のことへの興味が、国家機密組織に関わる事だと言いたいのかね? 貴殿は誠に……どうしようもないな」
はぁ、とため息をついて微笑むスメンの顔は、俺を興味深そうに見つめる青年に被った。俺が若返らせたのかな?
アーシアは久しぶりに青年に帰った父を見て、また俺を興味深く見つめる。
「お父様がここまで若返って下さったのは久しぶりです。今までは忙しく、大人びていましたから何だか嬉しいです」
「ありがとうございます、アーシア姫」
「アーシア姫なんて堅苦しいですね、アーシアさんとでもアーシアとでもお呼びください」
此処もまたラノベとは違う。いきなり呼び捨てではなく、さんを付ける選択肢が残されている。アーシアが微笑むと、俺の表情も緩む。
この姫様は何だろう、不思議と人を引き付けるような雰囲気を纏っている。
「じゃあ、アーシアさん。スメン様。俺は―――国家機密組織についてのみ、貴方様方の言う通りに行動いたしましょう」
「ちょっと健樹君!? 後先を考えているの!?」
「ああ考えているよ、ラフェニ。今は、俺は、この選択をえらぶ」
だてに二十年以上生きていないのだから、自分の能力でどこまでできるかなんて分かったもんだ。大口叩いて笑われる―――。
そんな未来を回避する方法は、幾度となく探し続けてきたのだから。
結局、その時は金を選んだのだが。
ラフェエニルは如何やら王と姫の目の前に居ても動じていないようで、あの時俺を注意したのは全面的に俺のためだろう。
思ってくれるのもなかなか悪くはないな、と思ってしまう。
『残忍の姫君』
外を一日中で歩いていれば、きっと一度は聞く有名なこの称号。今までのふんわりとした態度からは考えつかないが、これはアーシアのもの。
今まで国が戦争に勝ち続けてきた原因のひとつが、アーシアだ。
戦闘の時に敵へ向ける残忍で冷酷な目は、どの国も怖がり震える代物だ。
人名と多量の出血もいとわず、しかし殺すか殺さないかの目前でその刃を止める。
最後に彼女は必ず聞く。
―――その命をもってして私の仲間になってはくれないか。
と。
アーシアの契約魔術に逆らえる者はいないので、裏切る心配もない。
「では―――念のため契約をさせていただきますね」
時には残酷な一面を見せる姫君アーシアは、今俺の前に居る。いつどこで何をされるかはわからないし、彼女は元Sランク冒険者だし。
僅か十年でAランクに登り、迷宮『幻想』85階層をクリアしダンジョンコアをその目に取り込んだ。
これの突破によりSランクに登った世界最速、15年のSランク昇格。
ピンクと紫の眼。
ピンクが本来の色だが、ダンジョンコアが取り込まれたことによって深い紫へと色を変えているのだ。
様々な事象を経験していると物語る、王家の証である特殊な目の中にある紋章は刻み付けるように闇と光が交差する。
見ていて俺も気を抜いたら取り込まれるような感じがする。
国の最大戦力―――『残忍の姫君』アーシア。
「ありがとうございます」
「そうですか、では―――『契約・国家機密組織について我が全てに従え』」
ほにゃりと表情を緩めたかと思えば、俺に手を向けてミステリアスな表情で契約魔術を施していく。
瞬間的に見えた全てを切り裂かんとする眼力は、確かにアーシアの称号にふさわしく、残忍そのものだったと俺は振り返る。
「では。これにて密会的なものを終了させていただきますね?」
「ちょ、密会って言わないで下さいよ」
「ふふ」
「アーシアよ。次の会議が控えているぞ」
硬いことを言いながらも、スメンの表情は煌めいていた―――。
『やっぱりそうなりましたかぁ』
全世界の様子が映るモニター画面に手を伸ばし、『机』の上に座った金髪の少女が無表情で健樹を冷酷に見つめていた。
口から出た言葉に感情はこもっていない。
『最初は興味を持っていましたけど……セレナと変わらないようですね』
かつてのポンコツ英雄を思い出す。
ふと思い出してしまった懐かしい思い出を振り払う。
『英雄なんていらないんです』
―――少女は―――
何のために戦っているのか意味を忘れながらも、意志はただ一点を見つめる。
『英雄は、滅ぼすべきです』
その頬から一筋の涙が流れたことに、少女自身も気付いていなかった。
それは非公式の場所で、秘密の話し合いをするのに一番な場所。
ちなみに、あの場でのリハーサルをしたのも、この部屋だ。
スメンはスメン達で色々相談し、後は俺が意見を出すだけのようだ。
「ケンキ殿、貴方は―――狙われる覚悟があるかね?」
そこまで大きくはない机にきれいに装飾されたソファーが二方面に置かれている。ラフェエニルと俺とレージストとルーフェが片方に。
スメンとアーシアがもう片方に座っている。
双方険しい表情をしているが、俺だけ余裕の表情を浮かべている。
「ああ。ありますよ。ひとつ教えましょう。俺のステータスは―――金さえあれば好きに弄れるんですよ。勝つことを疑っていませんから」
「そうか。そんな重要なものを私に教えてしまっていいのかな? 貴殿の友人たちは慌てているようだが……」
「いいですよ。どのみちいつか言う必要のある事です」
スメンの言う通りラフェエニルは「何を言っているの!?」という表情をしているが、俺としてはこれくらいいいと思っている。
金さえあればいい、というのだから国が攻めてきても負ける気がしない。
もし国が攻めてくるのなら―――その状況もスメンに会った時点で想定済みだ。
「ですから、恐れる必要は無いと思います。それに俺は金を愛しすぎているので、それ以外のことにも興味を持ちたいのですよ」
「成程。その初めての他のことへの興味が、国家機密組織に関わる事だと言いたいのかね? 貴殿は誠に……どうしようもないな」
はぁ、とため息をついて微笑むスメンの顔は、俺を興味深そうに見つめる青年に被った。俺が若返らせたのかな?
アーシアは久しぶりに青年に帰った父を見て、また俺を興味深く見つめる。
「お父様がここまで若返って下さったのは久しぶりです。今までは忙しく、大人びていましたから何だか嬉しいです」
「ありがとうございます、アーシア姫」
「アーシア姫なんて堅苦しいですね、アーシアさんとでもアーシアとでもお呼びください」
此処もまたラノベとは違う。いきなり呼び捨てではなく、さんを付ける選択肢が残されている。アーシアが微笑むと、俺の表情も緩む。
この姫様は何だろう、不思議と人を引き付けるような雰囲気を纏っている。
「じゃあ、アーシアさん。スメン様。俺は―――国家機密組織についてのみ、貴方様方の言う通りに行動いたしましょう」
「ちょっと健樹君!? 後先を考えているの!?」
「ああ考えているよ、ラフェニ。今は、俺は、この選択をえらぶ」
だてに二十年以上生きていないのだから、自分の能力でどこまでできるかなんて分かったもんだ。大口叩いて笑われる―――。
そんな未来を回避する方法は、幾度となく探し続けてきたのだから。
結局、その時は金を選んだのだが。
ラフェエニルは如何やら王と姫の目の前に居ても動じていないようで、あの時俺を注意したのは全面的に俺のためだろう。
思ってくれるのもなかなか悪くはないな、と思ってしまう。
『残忍の姫君』
外を一日中で歩いていれば、きっと一度は聞く有名なこの称号。今までのふんわりとした態度からは考えつかないが、これはアーシアのもの。
今まで国が戦争に勝ち続けてきた原因のひとつが、アーシアだ。
戦闘の時に敵へ向ける残忍で冷酷な目は、どの国も怖がり震える代物だ。
人名と多量の出血もいとわず、しかし殺すか殺さないかの目前でその刃を止める。
最後に彼女は必ず聞く。
―――その命をもってして私の仲間になってはくれないか。
と。
アーシアの契約魔術に逆らえる者はいないので、裏切る心配もない。
「では―――念のため契約をさせていただきますね」
時には残酷な一面を見せる姫君アーシアは、今俺の前に居る。いつどこで何をされるかはわからないし、彼女は元Sランク冒険者だし。
僅か十年でAランクに登り、迷宮『幻想』85階層をクリアしダンジョンコアをその目に取り込んだ。
これの突破によりSランクに登った世界最速、15年のSランク昇格。
ピンクと紫の眼。
ピンクが本来の色だが、ダンジョンコアが取り込まれたことによって深い紫へと色を変えているのだ。
様々な事象を経験していると物語る、王家の証である特殊な目の中にある紋章は刻み付けるように闇と光が交差する。
見ていて俺も気を抜いたら取り込まれるような感じがする。
国の最大戦力―――『残忍の姫君』アーシア。
「ありがとうございます」
「そうですか、では―――『契約・国家機密組織について我が全てに従え』」
ほにゃりと表情を緩めたかと思えば、俺に手を向けてミステリアスな表情で契約魔術を施していく。
瞬間的に見えた全てを切り裂かんとする眼力は、確かにアーシアの称号にふさわしく、残忍そのものだったと俺は振り返る。
「では。これにて密会的なものを終了させていただきますね?」
「ちょ、密会って言わないで下さいよ」
「ふふ」
「アーシアよ。次の会議が控えているぞ」
硬いことを言いながらも、スメンの表情は煌めいていた―――。
『やっぱりそうなりましたかぁ』
全世界の様子が映るモニター画面に手を伸ばし、『机』の上に座った金髪の少女が無表情で健樹を冷酷に見つめていた。
口から出た言葉に感情はこもっていない。
『最初は興味を持っていましたけど……セレナと変わらないようですね』
かつてのポンコツ英雄を思い出す。
ふと思い出してしまった懐かしい思い出を振り払う。
『英雄なんていらないんです』
―――少女は―――
何のために戦っているのか意味を忘れながらも、意志はただ一点を見つめる。
『英雄は、滅ぼすべきです』
その頬から一筋の涙が流れたことに、少女自身も気付いていなかった。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
15254
-
-
516
-
-
768
-
-
1
-
-
439
-
-
310
-
-
55
-
-
70810
-
-
361
コメント