異世界転移!~俺は金(マネー)で強くなる!~
七話:マネー男と雑魚い喧嘩
「あーうめぇ」
「水なんかで満足するなんて、ちょっとありえないわ……」
朝起きるとフレンチトーストとサラダ、ただの水が用意されていた。材料は出したものだが、フレンチトーストを作る過程はちゃんとラフェエニルがやっている。
俺が最初に目を付けたのはフレンチトーストでもサラダでもなく、水だった。
水をがぶ飲みする俺を見てラフェエニルはため息をついている。仕方がないではないか、水が俺の愛好なのだから。
「だってよ、金はいつも節約してきたんだぜ? そんな俺にゃ水は一番の飲みもんだったよ。結構の間ご飯を食おうとしないくらい水にがっついてたしな」
「健樹君の水に対する愛情は全く分からないわ。……それよりも、ステータスのことよ。完全に私を超えてしまってAランクの実力はあるわ」
「うん、そうだな」
「知名度も高くなっているわね。世界最速ダンジョンクリアと世界最速ランクアップ……冒険者っていうのはちょっと喧嘩が多いのも昨日の視線で分かったでしょ?」
「まああれはきつかったよ、威圧の訓練とかしたいなって思った」
「そうね。それで、喧嘩を吹っ掛けてくる輩もいると思うから、どういえばいいかわからないけれど……やりすぎちゃだめよ? まずギルドでは喧嘩は禁止だからね」
「先に手を出したら負けってことか。気を付けるわ」
昨日、視線だけで終わったのはきっと原因がひとつある。
俺達のひとつ隣のギルド職員が特別に設置した高級そうな机といすがその原因だ。
全国のギルドの中で今俺達がいるギルドは三大ギルド呼ばれるギルドの内のひとつ、そんなギルドの中で三人いるSランクの一人。
そのSランクの女性が俺達のひとつ隣に座っていたのだ。
彼女は冒険者同士の喧嘩を嫌い、ライバル心というものが大好きというので睨むだけならむしろ歓迎されるのだろう。どうしてなのかは知らないが。
彼女がいたからこそ、俺に手を出すものはいなかった。
しかし、彼女だってSランクなので忙しい、いつでもそこにいるわけではない。昨日だって依頼を終えて一瞬休みに来ただけなのだ。
ということは、もしかしたら今日手を出されるかもしれないということ。
「自分の心配じゃなくて相手の心配とか、俺もチートになったもんだな」
「あら、最初からチートよ、じゃあ今日も依頼をこなしましょ」
フレンチトーストの最後のひとかけらを食べ、俺とラフェエニルは冒険者ギルドへ足を進める。
別にそのSランクが気になるわけではない。しかし噂を聞いたのだ。
彼女が第二のMランクになるかもしれない一番の候補者だということを。
SSランクでもないのに贔屓される彼女が俺は気に入っていなかったのだ。
「俺さぁ……あのSランクと勝負してみたい」
「健樹君じゃまだまだよ、あちらのステータスは百万を超えているもの。まああの大賢者様には遠く及ばないけれどねえ……」
「どんだけすげえんだよその大賢者ってやつ」
「そうね。ステータスが無限に増え続けているのよ、カンストするほどにね。あのSランクちゃんが挑んでも恐らく指先一本で殺されるでしょうね」
「うげえ……SSランクとかいねえのか?」
「このギルドだったら、一人しかいないわね。唯一のSSランク……彼女のステータスは千万を超えているわ。これもサテラから聞いてきたんだけれどね」
情報漏洩じゃないのか、と聞くと女神特例と適当にたぶらかされた。聖魔法で洗脳して言わせてるんじゃないかとも思ったが、仲間を疑うのは良くない。
しばらく無言で歩くと、ギルドの門に手をかけた。
「えっとサテラどこだ?」
「今日はいないようね、違う受付に行きましょう」
「おいこら待て!!」
ラフェエニルと俺の声ではない声が会話に混ざった。こうなることも予想していたがこんなに早く来るとは思わなかった。
ラフェエニルはこめかみを指で押さえ、ため息をつく。
「俺様はDランク冒険者だ! 同じDランクとしててめえのゲスなやり手は許さねえ!!」
「つーか証拠ねえだろ、適当に擦り付けんじゃねえ」
ラフェエニルから聞かされていたことがある。俺が金を使ってランクを上げているのではないかという噂があるのだ。
金金と叫んでいるのだから、それも無理ないが……。
金の存在を汚しているようで、気に入らなかった。
そんなものを擦り付けてくる男に、俺は純粋に魔力を半分ほどのせて威圧をした。人生で一番成功した威圧だったと思う。魔術って便利ー。
「はっ」
ここ最近叩き込まれた剣技を力任せに男の脇腹にぶち込む。一人だけの乗り込みで助かる、挟み撃ちでもされたらそれこそ対応できなくなるかもしれない。
「い、け、お前らぁ……」
剣はわざわざ刀身が男に当たる前に俺が手首を回してマジックではないかというほどの速さで鞘にしまい込んで鞘で気絶させた。
気絶する寸前に忍んでいた仲間を呼び寄せるその意地は。
だてにDランクではないというのを俺は味わった。さすが冒険者だ。
「まあ、今はそこじゃねえか」
前から二人、後ろから二人。四人とも実力はあるように見える。
俺はまだいいが、ラフェエニルは二人をさばけるのかわからない。
「聖雷!!」
「ぐぼぎゃっ」
「ぎげぇっ」
心配は無用だった。
ギルドマスター室から現れたサテラに目で解釈して申し訳なさそうに手を合わせる。すると彼女も分かってくれたようでため息をついてメリアに報告しに行った。
さて、俺は安心してこいつらの相手ができる。
先に手を出したのは向こうだから向こうに罰を与えてくれと目で示していたのだ。
俺は重要人材なため特に処罰はされないと思う。
「それ、ほいっ……それだけかよ、それでDランクかよ? 立てよ、お前らのリーダーのほうがよっぽど立派だぜ? 名前負けしてるだろ、Dランクって称号のさぁ」
「クっそ……が」
「負け犬のほざきにしか聞こえねえんだよ、もっと常識的なことを言え。Dランクともなりゃそれくらいできるはずだろ? ギルドってそんな甘かったか?」
どうやら俺の一言に心を動かしたようで、四人とリーダーさんは顔を俯かせた。ダメージで震える足を懸命につかってリーダーが立ち上がる。
「……すまん、悪かったよ」
その一言だけ残して駆けつけたサテラに連行された。
「ね、言ったでしょう? 今日はもう依頼は受けられないわね。それにしても健樹君、あんな奴らを論するなんて……」
「人間なんだ。変われるんならそれでいい。良い人間が一人でも増えれば、世界のレベルはひとつ上がるんだ」
俺はラフェエニルをリードするように早歩きで歩き始めた。
頭の中で相場灯のように巡るのは過去の、異世界に来る前の残酷な情景。
俺の言葉とその戦いを見て、周囲の冒険者は俺のことを認め始めたのだった。
しかし中心部で、不機嫌そうにコーヒーを飲んでいる女性がひとり。
「フィナ……」
「いいのです、レーキス。わたくしはあんなものには負けたりしません」
かつてMランクに登るかもしれないと言われたこともある、唯一のSSランク、フィナ&レーキスのグループだった。
俺は、とんでもない者達に目を付けられた。
「水なんかで満足するなんて、ちょっとありえないわ……」
朝起きるとフレンチトーストとサラダ、ただの水が用意されていた。材料は出したものだが、フレンチトーストを作る過程はちゃんとラフェエニルがやっている。
俺が最初に目を付けたのはフレンチトーストでもサラダでもなく、水だった。
水をがぶ飲みする俺を見てラフェエニルはため息をついている。仕方がないではないか、水が俺の愛好なのだから。
「だってよ、金はいつも節約してきたんだぜ? そんな俺にゃ水は一番の飲みもんだったよ。結構の間ご飯を食おうとしないくらい水にがっついてたしな」
「健樹君の水に対する愛情は全く分からないわ。……それよりも、ステータスのことよ。完全に私を超えてしまってAランクの実力はあるわ」
「うん、そうだな」
「知名度も高くなっているわね。世界最速ダンジョンクリアと世界最速ランクアップ……冒険者っていうのはちょっと喧嘩が多いのも昨日の視線で分かったでしょ?」
「まああれはきつかったよ、威圧の訓練とかしたいなって思った」
「そうね。それで、喧嘩を吹っ掛けてくる輩もいると思うから、どういえばいいかわからないけれど……やりすぎちゃだめよ? まずギルドでは喧嘩は禁止だからね」
「先に手を出したら負けってことか。気を付けるわ」
昨日、視線だけで終わったのはきっと原因がひとつある。
俺達のひとつ隣のギルド職員が特別に設置した高級そうな机といすがその原因だ。
全国のギルドの中で今俺達がいるギルドは三大ギルド呼ばれるギルドの内のひとつ、そんなギルドの中で三人いるSランクの一人。
そのSランクの女性が俺達のひとつ隣に座っていたのだ。
彼女は冒険者同士の喧嘩を嫌い、ライバル心というものが大好きというので睨むだけならむしろ歓迎されるのだろう。どうしてなのかは知らないが。
彼女がいたからこそ、俺に手を出すものはいなかった。
しかし、彼女だってSランクなので忙しい、いつでもそこにいるわけではない。昨日だって依頼を終えて一瞬休みに来ただけなのだ。
ということは、もしかしたら今日手を出されるかもしれないということ。
「自分の心配じゃなくて相手の心配とか、俺もチートになったもんだな」
「あら、最初からチートよ、じゃあ今日も依頼をこなしましょ」
フレンチトーストの最後のひとかけらを食べ、俺とラフェエニルは冒険者ギルドへ足を進める。
別にそのSランクが気になるわけではない。しかし噂を聞いたのだ。
彼女が第二のMランクになるかもしれない一番の候補者だということを。
SSランクでもないのに贔屓される彼女が俺は気に入っていなかったのだ。
「俺さぁ……あのSランクと勝負してみたい」
「健樹君じゃまだまだよ、あちらのステータスは百万を超えているもの。まああの大賢者様には遠く及ばないけれどねえ……」
「どんだけすげえんだよその大賢者ってやつ」
「そうね。ステータスが無限に増え続けているのよ、カンストするほどにね。あのSランクちゃんが挑んでも恐らく指先一本で殺されるでしょうね」
「うげえ……SSランクとかいねえのか?」
「このギルドだったら、一人しかいないわね。唯一のSSランク……彼女のステータスは千万を超えているわ。これもサテラから聞いてきたんだけれどね」
情報漏洩じゃないのか、と聞くと女神特例と適当にたぶらかされた。聖魔法で洗脳して言わせてるんじゃないかとも思ったが、仲間を疑うのは良くない。
しばらく無言で歩くと、ギルドの門に手をかけた。
「えっとサテラどこだ?」
「今日はいないようね、違う受付に行きましょう」
「おいこら待て!!」
ラフェエニルと俺の声ではない声が会話に混ざった。こうなることも予想していたがこんなに早く来るとは思わなかった。
ラフェエニルはこめかみを指で押さえ、ため息をつく。
「俺様はDランク冒険者だ! 同じDランクとしててめえのゲスなやり手は許さねえ!!」
「つーか証拠ねえだろ、適当に擦り付けんじゃねえ」
ラフェエニルから聞かされていたことがある。俺が金を使ってランクを上げているのではないかという噂があるのだ。
金金と叫んでいるのだから、それも無理ないが……。
金の存在を汚しているようで、気に入らなかった。
そんなものを擦り付けてくる男に、俺は純粋に魔力を半分ほどのせて威圧をした。人生で一番成功した威圧だったと思う。魔術って便利ー。
「はっ」
ここ最近叩き込まれた剣技を力任せに男の脇腹にぶち込む。一人だけの乗り込みで助かる、挟み撃ちでもされたらそれこそ対応できなくなるかもしれない。
「い、け、お前らぁ……」
剣はわざわざ刀身が男に当たる前に俺が手首を回してマジックではないかというほどの速さで鞘にしまい込んで鞘で気絶させた。
気絶する寸前に忍んでいた仲間を呼び寄せるその意地は。
だてにDランクではないというのを俺は味わった。さすが冒険者だ。
「まあ、今はそこじゃねえか」
前から二人、後ろから二人。四人とも実力はあるように見える。
俺はまだいいが、ラフェエニルは二人をさばけるのかわからない。
「聖雷!!」
「ぐぼぎゃっ」
「ぎげぇっ」
心配は無用だった。
ギルドマスター室から現れたサテラに目で解釈して申し訳なさそうに手を合わせる。すると彼女も分かってくれたようでため息をついてメリアに報告しに行った。
さて、俺は安心してこいつらの相手ができる。
先に手を出したのは向こうだから向こうに罰を与えてくれと目で示していたのだ。
俺は重要人材なため特に処罰はされないと思う。
「それ、ほいっ……それだけかよ、それでDランクかよ? 立てよ、お前らのリーダーのほうがよっぽど立派だぜ? 名前負けしてるだろ、Dランクって称号のさぁ」
「クっそ……が」
「負け犬のほざきにしか聞こえねえんだよ、もっと常識的なことを言え。Dランクともなりゃそれくらいできるはずだろ? ギルドってそんな甘かったか?」
どうやら俺の一言に心を動かしたようで、四人とリーダーさんは顔を俯かせた。ダメージで震える足を懸命につかってリーダーが立ち上がる。
「……すまん、悪かったよ」
その一言だけ残して駆けつけたサテラに連行された。
「ね、言ったでしょう? 今日はもう依頼は受けられないわね。それにしても健樹君、あんな奴らを論するなんて……」
「人間なんだ。変われるんならそれでいい。良い人間が一人でも増えれば、世界のレベルはひとつ上がるんだ」
俺はラフェエニルをリードするように早歩きで歩き始めた。
頭の中で相場灯のように巡るのは過去の、異世界に来る前の残酷な情景。
俺の言葉とその戦いを見て、周囲の冒険者は俺のことを認め始めたのだった。
しかし中心部で、不機嫌そうにコーヒーを飲んでいる女性がひとり。
「フィナ……」
「いいのです、レーキス。わたくしはあんなものには負けたりしません」
かつてMランクに登るかもしれないと言われたこともある、唯一のSSランク、フィナ&レーキスのグループだった。
俺は、とんでもない者達に目を付けられた。
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