異世界転移!~俺は金(マネー)で強くなる!~
一話:マネー男と始まり
大きく広い世界、何が何処で起こっているのか、全て把握できないほど大きな世界。
その中でひとつ、舞台となる場所。
そこまで大きくない建物で、そこまで有名でもない会社。そこに、彼らはいた。
「おい健樹、こっち」
「はい先輩!!」
「あ、柴田さん、ちょっとこっちもお願いします~」
「了解!!」
先輩から渡されたダンボールを倉庫まで運び、自分の席にて一息つこうと思ったが、職場の後輩から声をかけられ、今度はコンピュータ作業を任せられた。
ごく普通の社員であった俺、芝田健樹。唯一普通ではないと言われて語り継がれているのは異常なほど金に執着念があるというところだ。
金という言葉を聞くと何もかもを忘れて食いつくという一面がある。
「おし、完成だ」
「ありがとうございます。はい、どうぞ」
「おう!」
この仕事を任せられるというのはいじめでも何でもない。俺が他人の仕事を引き受けているのは終わったあとに報酬がもらえるからだ、給料とは別に。
会社ではこういうのが違反だというルールは無いため社長も見て見ぬふりだ。
くれる報酬は皆自分で考えていて、とんでもなく安い時もある。
しかし、皆社会人である。やってもらったことへの礼の代わりであるためそれに合った報酬を出されるのが一般的。今日俺が給料以外で稼いだのは六千円だ。
「おっと。そろそろか。んじゃ俺先に出ますねー」
「おう! 今日もありがとうな!」
先輩が爽やかな笑顔を向けて俺に手を振る。
モテるんだよな、この先輩。
帰りはいつも俺が一番早いので今渡り廊下には誰もいない。それなりに護身術も身につけていたために不審者が来たらとかいう過度な心配はしたことがない。
それでも、何かが起きても誰も見ていないということは事実。
「おい……ドッキリにしてももうちょい金掛けずにやれよ……もったいねえだろ」
足の下にはCGよりも美しい丸い円。円の中には五角形。それに重なるようにもうひとつ六角形がある。五角形と六角形が重ならないところには読めない文字が書いてある。
そこはやはり金に執着している俺だ、気にかけるのは命でも何でもなく、金だ。
「つーかドッキリじゃないんじゃね?」
普段のドッキリならば「ドッキリ」とターゲットが口に出した時点できりをつけてカメラやらなんやらが出てくるはずなのだ。
割とそういう番組が好きだった俺は何か変だということに気が付いた。
「あー、異世界なんちゃら? どうでもいいさ、金がありゃ」
危険だのなんだの、俺が真っ先に気にかけたのはやはり金だった。
と、丸い円の中に書かれていた六角形が動き、俺の体は徐々に沈んでいく感覚がする。
意識が消え去る中、俺が思い浮かんだのはまたまた金だった。
「起きなさい金バカ」
「うわぁ……! つーか金バカってなんだよ間違ってねえけど!! 待て、それくれ」
頭を何かで叩かれて俺は強制的に意識を戻された。
そこは先程の景色とは全く違う、真っ白な空間に俺はいた。ふと俺は気づく。俺を叩いたのは金であると。「金バカ」と俺のことを言った女性の手には確かに一本(百万円)ほどあったのだ。
手を伸ばすともう一度叩かれる。金で叩かれるなんて幸せだ。
「まあふざけるのはそこまでにして、異世界転移してもらうわ」
「聞いてねえっつーの金くれ」
「ふざけるのはそこまでって言ったでしょう? 真剣に聞きなさい」
「だからお前手に金持ってる時点でふざけてるだろうが」
おっと、と言って女性は手に力を入れた。するとあれだけあった金がどこかに消え、何もなかったかのように女性が突っ立っていた。
口をぽかんと開けて女性を見る俺。彼女の言葉が間違っていないと証明されたからだ。
異世界転移なんて子供か中二病が憧れるかのようなイメージがあるが、冒険者ギルドというところだけは惹かれていた。
依頼をこなした分だけ金がもらえるとか最高だろう、という意見だ。
「それで貴方は異世界転移するのよ、私と共に!!」
「あぁ!?」
「そんな健樹君にぴったりなユニークスキルも用意しておいたわよ」
「おう。そうか、それよりも金が欲しいんだが」
「……そんな健樹君にぴったりというのだから関係あるに決まってるじゃないの」
女性の顔はなかなかである。
水色の腰までの髪に紫の瞳と整った顔立ち。俺から金という要素を抜いたら惚れていたかもしれないがあいにく俺は美女より金だ。
そんな俺にぴったりで関係があるというのなら、異世界に行ってやってもいいかもしれない。コワイは怖い。命の危険もあるかもしれない。しかし金があれば。
「絶対健樹君喜ぶわよ」
それならいい。と思ったが俺は違和感に気付いた。
「何で俺の事健樹君って呼ぶんだ?」
「え、これからよろしくねっていう感じよ、悪かったわね―――そう言えば名前とか教えていないわね。私は女神ラフェエニル、異世界専門の女神よ」
「あーそういうのいたっけ、俺絶対まだ死んでねえよな」
「えぇそうよ。私が勝手に呼び寄せただけ。で、これから行く世界はリーシアっていう世界で、ピラノスっていう相当権力のある大都市よ。ステータスというものもあるし、勿論魔術もあるわ。剣と魔法のファンタジーって解釈するのが一番ね」
「あー……冒険者ギルドとか魔王とか勇者とかそういうの?」
「えぇ、そうよ。健樹君には勿論チートスキルを与えたわ。次は健樹君にとって大事なこと。金はなんとかマネーって数えるの。1マネー一円と考えてくれればいいわ。モノの価値についてはゆっくり教えるわ。日本との物の違いも後でゆっくり教えてあげる」
ていうかラフェエニルって俺の事分かってすぎだろう。
「ちょっと待てよ。こういう感じの女神って後からディスられる役じゃなかったか? めちゃくちゃ落ちぶれたり女神らしくなくなったり」
「あら、失礼ね。転移専用の女神なのだから力も失われはしないし、しっかり威厳もあるわよ。細かい所は後から説明するわ。転移!!」
「ぎえええええええええええええええええええ!?」
「情けない声を出すんじゃないわよぉおおおおおおおおおおおお!?」
と言いながらも黒い穴に吸い込まれているのはさすがの女神ラフェエニルにも耐えきれなかったのだろう。いくら女神でも転移専用になるとその力はそこまで強くない。
冒険者ギルドは依頼を受ければ受けるだけランクが上がったりする。大体はSが上限なのだが、ラフェエニルの実力はその二段下のBランク辺りだろう。
情けない声を出すな、と言った本人が情けない声を出している情景は面白い。
やっぱりこういう女神ってディスられる役だろ。
「い・せ・かい・だ―――――――――――――――!!」
「ちょっと、うるさいわよ」
着いた先は、恐らくラフェエニルが用意していた家のベッドの上だった。
あぁ、愛しのマネー。
どうか俺の命が消えぬように俺を守ってくれ。
その中でひとつ、舞台となる場所。
そこまで大きくない建物で、そこまで有名でもない会社。そこに、彼らはいた。
「おい健樹、こっち」
「はい先輩!!」
「あ、柴田さん、ちょっとこっちもお願いします~」
「了解!!」
先輩から渡されたダンボールを倉庫まで運び、自分の席にて一息つこうと思ったが、職場の後輩から声をかけられ、今度はコンピュータ作業を任せられた。
ごく普通の社員であった俺、芝田健樹。唯一普通ではないと言われて語り継がれているのは異常なほど金に執着念があるというところだ。
金という言葉を聞くと何もかもを忘れて食いつくという一面がある。
「おし、完成だ」
「ありがとうございます。はい、どうぞ」
「おう!」
この仕事を任せられるというのはいじめでも何でもない。俺が他人の仕事を引き受けているのは終わったあとに報酬がもらえるからだ、給料とは別に。
会社ではこういうのが違反だというルールは無いため社長も見て見ぬふりだ。
くれる報酬は皆自分で考えていて、とんでもなく安い時もある。
しかし、皆社会人である。やってもらったことへの礼の代わりであるためそれに合った報酬を出されるのが一般的。今日俺が給料以外で稼いだのは六千円だ。
「おっと。そろそろか。んじゃ俺先に出ますねー」
「おう! 今日もありがとうな!」
先輩が爽やかな笑顔を向けて俺に手を振る。
モテるんだよな、この先輩。
帰りはいつも俺が一番早いので今渡り廊下には誰もいない。それなりに護身術も身につけていたために不審者が来たらとかいう過度な心配はしたことがない。
それでも、何かが起きても誰も見ていないということは事実。
「おい……ドッキリにしてももうちょい金掛けずにやれよ……もったいねえだろ」
足の下にはCGよりも美しい丸い円。円の中には五角形。それに重なるようにもうひとつ六角形がある。五角形と六角形が重ならないところには読めない文字が書いてある。
そこはやはり金に執着している俺だ、気にかけるのは命でも何でもなく、金だ。
「つーかドッキリじゃないんじゃね?」
普段のドッキリならば「ドッキリ」とターゲットが口に出した時点できりをつけてカメラやらなんやらが出てくるはずなのだ。
割とそういう番組が好きだった俺は何か変だということに気が付いた。
「あー、異世界なんちゃら? どうでもいいさ、金がありゃ」
危険だのなんだの、俺が真っ先に気にかけたのはやはり金だった。
と、丸い円の中に書かれていた六角形が動き、俺の体は徐々に沈んでいく感覚がする。
意識が消え去る中、俺が思い浮かんだのはまたまた金だった。
「起きなさい金バカ」
「うわぁ……! つーか金バカってなんだよ間違ってねえけど!! 待て、それくれ」
頭を何かで叩かれて俺は強制的に意識を戻された。
そこは先程の景色とは全く違う、真っ白な空間に俺はいた。ふと俺は気づく。俺を叩いたのは金であると。「金バカ」と俺のことを言った女性の手には確かに一本(百万円)ほどあったのだ。
手を伸ばすともう一度叩かれる。金で叩かれるなんて幸せだ。
「まあふざけるのはそこまでにして、異世界転移してもらうわ」
「聞いてねえっつーの金くれ」
「ふざけるのはそこまでって言ったでしょう? 真剣に聞きなさい」
「だからお前手に金持ってる時点でふざけてるだろうが」
おっと、と言って女性は手に力を入れた。するとあれだけあった金がどこかに消え、何もなかったかのように女性が突っ立っていた。
口をぽかんと開けて女性を見る俺。彼女の言葉が間違っていないと証明されたからだ。
異世界転移なんて子供か中二病が憧れるかのようなイメージがあるが、冒険者ギルドというところだけは惹かれていた。
依頼をこなした分だけ金がもらえるとか最高だろう、という意見だ。
「それで貴方は異世界転移するのよ、私と共に!!」
「あぁ!?」
「そんな健樹君にぴったりなユニークスキルも用意しておいたわよ」
「おう。そうか、それよりも金が欲しいんだが」
「……そんな健樹君にぴったりというのだから関係あるに決まってるじゃないの」
女性の顔はなかなかである。
水色の腰までの髪に紫の瞳と整った顔立ち。俺から金という要素を抜いたら惚れていたかもしれないがあいにく俺は美女より金だ。
そんな俺にぴったりで関係があるというのなら、異世界に行ってやってもいいかもしれない。コワイは怖い。命の危険もあるかもしれない。しかし金があれば。
「絶対健樹君喜ぶわよ」
それならいい。と思ったが俺は違和感に気付いた。
「何で俺の事健樹君って呼ぶんだ?」
「え、これからよろしくねっていう感じよ、悪かったわね―――そう言えば名前とか教えていないわね。私は女神ラフェエニル、異世界専門の女神よ」
「あーそういうのいたっけ、俺絶対まだ死んでねえよな」
「えぇそうよ。私が勝手に呼び寄せただけ。で、これから行く世界はリーシアっていう世界で、ピラノスっていう相当権力のある大都市よ。ステータスというものもあるし、勿論魔術もあるわ。剣と魔法のファンタジーって解釈するのが一番ね」
「あー……冒険者ギルドとか魔王とか勇者とかそういうの?」
「えぇ、そうよ。健樹君には勿論チートスキルを与えたわ。次は健樹君にとって大事なこと。金はなんとかマネーって数えるの。1マネー一円と考えてくれればいいわ。モノの価値についてはゆっくり教えるわ。日本との物の違いも後でゆっくり教えてあげる」
ていうかラフェエニルって俺の事分かってすぎだろう。
「ちょっと待てよ。こういう感じの女神って後からディスられる役じゃなかったか? めちゃくちゃ落ちぶれたり女神らしくなくなったり」
「あら、失礼ね。転移専用の女神なのだから力も失われはしないし、しっかり威厳もあるわよ。細かい所は後から説明するわ。転移!!」
「ぎえええええええええええええええええええ!?」
「情けない声を出すんじゃないわよぉおおおおおおおおおおおお!?」
と言いながらも黒い穴に吸い込まれているのはさすがの女神ラフェエニルにも耐えきれなかったのだろう。いくら女神でも転移専用になるとその力はそこまで強くない。
冒険者ギルドは依頼を受ければ受けるだけランクが上がったりする。大体はSが上限なのだが、ラフェエニルの実力はその二段下のBランク辺りだろう。
情けない声を出すな、と言った本人が情けない声を出している情景は面白い。
やっぱりこういう女神ってディスられる役だろ。
「い・せ・かい・だ―――――――――――――――!!」
「ちょっと、うるさいわよ」
着いた先は、恐らくラフェエニルが用意していた家のベッドの上だった。
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