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大和戦争 - Die was War -

葉之和駆刃

『.vs 第一線』

 雪太は、外で朝陽を迎えた。目を開けていられないくらいの眩しい光が、雪太の瞳孔を貫いた。昨日、あれからスノーに色々な特訓をつけてもらっていたのだ。いや、正確には雪太の方が付き合わされたといった感じだ。スノーは、「お前は弱いから、おいらの練習相手になれ」という理由で、雪太を自分の練習に付き合わせたのだ。そのおかげで、雪太も自分を鍛えられたのは事実に他ならない。

 それにしても、昼からは第一線との試合があるというのに、瞼が非常に思い。しかし、これに勝てば神力が得られる。雪太は開始時間まで、部屋に戻って休むことにした。そのことをスノーに伝えようとしたら、いつの間にかいなくなっていた。今に始まったことではないが、本当に傍若無人である。

 雪太は部屋に戻ると、部屋には他のメンバーが揃っていた。

「やあ、雪太。特訓の成果は出せそうかい」

 何故、春也が特訓のことを知っているのかと一瞬思ったが、よくよく考えてみれば昨日部屋に戻らなかったことの方が不自然だ。そのくらいは、春也達にも察しがついていたのだろう。

「まぁな……」

 雪太は小声で答えると、ベッドにバフッと倒れ込んだ。そして、すぐに寝息が聞こえる。やはり徹夜だったこともあり、疲れが溜まっていたのだ。皆は起こさないように、小声で話を始める。

「そう言えばさ、第一線との試合、ルール知ってる?」

 まず、由佳が三人に尋ねる。

「多分、直前に教えられるだろうね。でも、これまでとは少し異なるらしいよ。みんな、そう言ってる」

 春也は、すでにいくつかの情報を入手している。一言に今までとは異なると言われても、想像がつかない。

「それで、前線はどうするんだい? この分だと、また雪太か、平城君になるね」
「俺、後ろの方でいいや。またあいつに任せとけば、何とかなると思うし」
「あんた役に立たなすぎ。やればできるんだから、ちゃんとやってよね」

 光河に対し、麻依は呆れ気味に言う。

「まぁまぁ……。そういえばさ、神力の種類って何だっけ」

 由佳が話を変えてきくと、それについても春也は答えた。

「神力の種類は、全部で五種類。まず、体内で氷を生成できる‘氷成ひょうせい’。これを扱える人間を、この国では氷人と呼ぶらしいね。また、敵の体に直接触れて攻撃することが多いそうだよ。だから、遠隔攻撃には不向きな能力だ」
「それって、雪女ってこと?」
「うん。まぁ、女に限ったことじゃないと思うけどね」

 麻依の言葉に、春也は苦笑いする。続いて、

「次に、自分の体から火を生み出せる‘火生かじょう’という能力だ。この神力を持つ人間は火人といって、温度調節のほか、遠隔攻撃に向いている。離れた場所から、狙った相手を焼き尽くしたりね」

 と、春也は説明した。

「次に、光を自在に操ることのできる‘光放こうほう’。これは何とも言えない能力だけど、神力の中では唯一、戦闘向きじゃないんだ。まぁ、強い光を放出して相手の目潰しをするくらいかな。また、暗闇で味方に自分の居場所を伝えることもできる。まぁ、そうすると敵にも気付かれちゃうけどね。因みに、この神力を持つ人のことを、光人っていうんだ。

 次も何とも言い難いんだけど、‘緑心りょくしん’といって、自然を操れる神力だ。枯れかけの木を蘇生したりできる。これもまぁ、戦闘向きではないね。上手く使えば、自然を味方につけられるから、ある意味最強ではあるけどね。また、この能力を持つ人のことを緑人という。

 最後は、‘天操てんそう’。その名の通り、天気を自由に操れる。雨を降らしたり、狙ったところに雷を落とすことも可能さ。まぁ、それなりに練習しないとできないみたいだけど。この神力を持つ人を、天人というらしいよ」

 春也が言い終えると、由佳と麻依は顔を輝かせる。どうしてもそれらの力を手に入れたい、そう言わんばかりの顔をしている。

「そ、それで、誰にどの能力が使えるの?」

 由佳が興味津々に尋ねると、それを宥めるように春也は言った。

「……いや。神力は人によってランダムに生成されるから、個人では選べないんだ。どの力を与えられるかは、まさに神のみぞ知る、ってことだよ」
「そうなんだ……」
「なんか、ドキドキするね」
「その前に、まずは第一線に勝たなくちゃね」

 春也は皆を鼓舞するが、先ほどまで笑っていた由佳の顔が曇る。

「でも、私達……。勝てるのかな……」
「大丈夫、雪太がいるから。俺達にとって頼りになるのは、今は雪太だけだからね」

 雪太は現実世界にいた頃、体育の授業では常に二番だった。それは、どうやっても勝てない男子生徒、大和がいたからだ。雪太自身、運動神経はよい方だ。しかし大和だけには、いつも負けていた。どんなに本気を出しても、大和との差が縮まることはなかった。

 この世界に大和はいない。よって、雪太が一番になるはずだった。しかし、動物の血を見ることができないという弱点が邪魔をしている。雪太もそれを克服したいと思っているが、今のところできていない。

 皆、それを知っているからこそ、雪太を頼りにしているのだ。もしも雪太がいなければ、第一線どころか、一つ上の部隊にも勝てなかっただろう。故に、雪太の存在は予想以上に大きかったのは言うまでもない。


 昼になり、雪太達は指定された広場へと向かった。着くと、すでに第一線の面々がいた。第一線の方が、部屋から近いせいだろう。それはさておき、開始直前、二つの部隊は互いに向かい合った。そして、いつものようにルール説明が行われる。

 舞台となるのは、標高が低い山だ。その頂上には、剣が刺してあるという。それに先に触れた方が、この試合の勝者となる。ツキヨミが大体の説明を終え、全員に竹刀が手渡される。
話によれば、今回は勝ち残り戦ではなく、一度当てられたからといって即退場というわけではないらしい。要は、敵を邪魔するという目的で持たされたのだ。それを聞き、雪太は嫌な予感がした。第一線には瑛に加え、広陵と大淀もいるのだ。彼らが真っ先に雪太の動きを封じに来るのは、目に見えている。

 そして開始の合図が鳴り、皆は山を登り始めた。第六線は予め、一人ひとり別々に行動しようと決めていた。雪太も、竹刀を手に頂上を目指した。登り始めてから数分経たないうちに、予想通りの出来事が起きた。
 目の前には、あの三人がいた。三人は、竹刀を構えながら雪太に近付いてくる。そして、雪太は三人に包囲されてしまった。少しでも、時間稼ぎをしようというのが見て取れる。

「よう。最弱組が決勝戦まで来れたのは、ただのまぐれだよなぁ。第一線の俺達に比べれば、てめぇの力量なんて大したことねーんだよ。ここは、現実の世界とは違うってことを教えてやるよ」

 瑛は、かなり余裕ぶっている様子だ。行き場を塞がれてしまい、後ろに退くこともできない。今、三人同時に攻撃されたら、とてもじゃないが太刀打ちできないだろう。そこで、雪太は一番弱そうな者を探した。

 瑛は、この中ではリーダー格だ。身長が高く、体格もごつい。喧嘩ばかりしてきたこともあり、ただならぬオーラを感じる。

 広陵崇。いつも瑛の側にいて、瑛の舎弟のような存在だ。足が速く、雪太も素早さでは負けているかもしれない。

 大淀海。大淀もまた、いつも二人の側にいる。だが、単体でいるとあまりパッとしない。医者の息子らしいが、クラス順位では下から数えた方が早い。運動神経に関しても、よい印象がない。狙えるとしたら、大淀だけだろう。

 雪太が突然近付いてきたので、驚いたのか大淀は後退りした。それを見逃さず、雪太は竹刀を抜き取ると、大淀に面を食らわす。

「ぎゃんっ!」

 衝撃で、大淀は竹刀を手放し、尻餅をついた。よって、道が開けた。それを見た二人は、

「こいつ!」
「ナメやがって!」

 と、竹刀を振り上げながら雪太のところに走ってきた。しかし雪太は冷静に、自分の竹刀で相手の竹刀を払った。二つの竹刀は宙に舞い上がり、そして数メートル後ろに落ちた。二人は何が起こったのか分からず、ただ呆然としていた。雪太は、すぐにその場を離れることにした。雪太が去っていくのを、大淀も涙目で見ていた。

 また三人と出くわす前に、頂上に急がねばならない。ふと、第一線には明日香もいるのを思い出した。明日香は、今頃どこにいるのだろう。明日香と出会ったら、どうしようか。同じように、戦わねばならないのだろうか。できれば、最後まで明日香には出会いたくない。そんな思いが、雪太の中にあった。

 そうこうしているうちに、向こうから歩いてくる人影が見えた。味方なら、現状を報告しよう。敵ならば、戦う準備をしなければならない。雪太は、また腰に差さっている竹刀を握りしめた。木々の間から姿を見せたのは、第一線の西京子だった。クラスの中で一人だけ緑色の制服を着ているので、すぐに分かった。京子は鋭い目をし、こちらに向かって歩いてくる。

 相手も雪太の存在に気付いたのか、獲物に狙いを定める蛙のような目をしている。京子との距離が道路の一車線ほどに狭まった時、あちらが先に足を止めた。次いで雪太も立ち止まり、二人は向かい合った。
 雪太は竹刀を抜き、構える。しかし、京子は竹刀を握ったまま構えようとしない。一瞬にして、気まずい空気が漂い始める。勝てないと思っているのだろうか。確かに、相手は女子だ。体格にも差があり、身長も二十センチほどの差はある。

「あのー……、手加減してやるから戦ってもらえるかな」
「は? バカ、そんなんじゃないわよ!」

 京子が強気に言う。それなら、何故構えようとしないのだろうか。雪太は考えていると、京子が竹刀をその場に捨てた。その行為が、一瞬理解できなかった。それは、試合を捨てたようにも見える。更に京子は雪太に対し、次ように伝えた。

「うちの面子、あんなんでしょ? 特に男子。確かに運動神経はいいかもだけど、基本頭悪いから、能力とかもらっても上手く使いこなせないと思うの。だから、道開けてあげる」

 確かにそうかもしれないが、京子は神力が欲しくないのだろうか。もしかすると、雪太が置かれている状況に気付いているのかもしれない。

「早く行きなさいよ、一番になりたいんでしょ? それから、絶対にあいつらよりも先にゴールしてよ。じゃないと、これでぶん殴るから」

 京子は、地面に転がっている竹刀を指さしながら言った。

「……悪いな」

 雪太は京子に言うと、再び歩き始める。雪太が京子の隣を通りすぎようとした時、京子はボソッとまた声を発した。

「あの子には伝えてないから」

 雪太も、すぐにその言葉の意味を理解した。そして頷くと、足を速めて歩いていった。

 頂上を目指し、険しい山道を登っていく。下からは草が伸び、半ズボンだったら怪我をしそうだ。やがて、頂上が見えてくる。そこには、地面に巨大な剣が逆さに刺さってある。見る限り、見つけたのは雪太が最初のようだった。
 雪太がラストスパートをかけようとした時、後ろから声が聞こえる。

「雪ちゃん!」

 その声の主は、振り返らなくても分かる。クラスで雪太のことをそう呼んでいるのは、明日香ただ一人だけだからだ。雪太は、ゆっくりと明日香の方を振り向いた。明日香は、いつもと同じように、優しい笑顔を送ってくる。

「桜井……」
「私、できれば雪ちゃんとは戦いたくない」

 俯いた明日香から、笑みが煙のように消えた。しかし、明日香はまたすぐに顔を上げる。

「あそこまで、競争しよっか」

 そして、再び穏やかな笑顔を見せる。雪太も、その意見に賛成した。雪太も、明日香とは最後まで出会いたくなかった。それは、出会ったら必ず戦わなくてはいけないからだ。それ故に、明日香の言葉は雪太にとっても嬉しかった。剣があるところまで走っていき、どちらが先にそれに触れるかという勝負だ。

 二人はその場に竹刀を置き、同じ位置に立った。そして明日香の「ドン!」という掛声とともに走り出した。坂道を走るとなると、それなりに力を使う。雪太が、明日香よりも一歩分前に出ていた。すると、明日香は焦ったのかバランスを崩した。転んでしまうと、下まで転げ落ちる可能性がある。雪太は咄嗟に手を伸ばし、明日香の腕を掴んだ。それにより、明日香は辛うじて身体を立て直した。

「……ありがとう」

 明日香からそのように礼を言われたので、雪太は恥ずかしくなり、目線を逸らした。その後、二人はゆっくりと山を登り、同時にゴールした。剣の前まで来ると、二人は互いを見た。同時に触れると、おそらく引き分けになる。

「どうしよっか……」

 明日香は、悩んでいるようだった。

「桜井、お前が触れよ」

 順当に考えると、第六線よりも第一線が優勝した方が理にかなっている。雪太は、勝ちを明日香に譲ることに決めた。神力は手に入らなくなるが、また次の機会を狙えばよい。チャンスは、また巡ってくるはずだと信じた。しかし、明日香は首を横に振った。

「雪ちゃん、一緒に触ろう。もしかしたら、二つとも優勝ってことになるかもしれないし」

 明日香は雪太の手首を掴むと、剣に近付けた。また、明日香も自分の手を剣に近付ける。二人の手が触れた瞬間、その剣は輝き出し、光を放出した。その光は天へと舞い上がり、一本の直線を描いた。それはまるで、天と地を結んでいるようにも見えた。光が消えると、二人の前にツキヨミが現れた。

「これにて終了だ。山を下りてくれ」
「あ、あの、どちらが優勝なんですか?」
「皆が集合した時に話す」

 ツキヨミは、そう答えると行ってしまった。もしかしたら、引き分けという概念がこの世界にはないのかもしれない。ツキヨミの言い方を聞いて、雪太はそう思うのだった。

 山を下りると、驚いたことに全部隊が集まっていた。おそらく、皆の前で優勝した部隊を発表するのだろう。皆、そわそわした様子で待っている。雪太も、ツキヨミが来るのを待った。そして、ツキヨミは来ると皆の前に立った。その瞬間、周りは一斉に静まった。ツキヨミは、何か口篭もっているようで、なかなか切り出さない。

「すまない。今日のような試合は、私も初めて見た。敵同士であるにも拘わらず、危機を救い、そして同時に剣に触れた。私には、その心理がよく分からない」

 雪太の想像通り、この世界と人間界では考え方が異なるらしい。一度敵と認識した相手を、助けることは有り得ない。そう言いたいのだろう。

「よって、勝敗は私には決められない。許してほしい」

 それでは、当然生徒達が納得するはずはない。

「おい、ふざけんじゃねーよ!」
「どういうことか説明しろよ!」
「言ったじゃん、優勝決めるって言ったじゃん!」

 瑛、広陵、大淀は口々に言う。第一線として、ここは必ず勝たなければいけないのだ。しかし、その気持ちは第六線も同じだった。雪太以外にも、春也、光河、由佳、麻依は顔を見合わせ、不安を共有し合っている。
 他の部隊も、ざわついている。その時、ある声がした。

「それでは皆も納得しないと思うぞ、ツキヨミ」

 そこには、見たこともない人物が立っている。服装からして、高貴な人物であるということは一目瞭然だ。

「はい。申し訳ございません、父上」

 ツキヨミは、その人物に言った。それを聞いた皆は、また声を上げた。その人物こそが、ツキヨミやスノーの父、イーザだったのだ。
 イーザは、後ろへ下がったツキヨミに代わり、皆の前に立った。

「娘も、悪気があったわけではない。どうか、許してやってくれ」

 そして、生徒達を一通り見渡した。

「……そうか、君達が召喚者か。この国を救うために呼ばれた、選ばれし勇者達。どうか、この国を助けてほしい。ヤマタイ族と戦えるのは、君達だけだ。よろしく頼む」

 イーザは、そう言うと頭を下げた。皆、互いに顔を見合わせる。相手は見たこともない、魔物使いだ。それで戦えと言われても、今は無理だと言わざるを得ない。そして、イーザは顔を上げる。

「ところで、勝敗のことだが……。優勝は、第六線とする」

 その言葉を聞いて、当然ながら生徒達から大ブーイングが起きる。それを宥めるように、イーザは説明した。

「実は、君達の合戦をすべて遠くから見させてもらっていた。皆、頑張ってはいたが……、色々な意味で一番努力していたのは、やはり第六線だった。よって、最初の神力贈呈者は第六線としたい。その次に第一線、そして残りの部隊にも、順に神力は与えるつもりだ。だから、そう心配しないでいてくれ」

 イーザは、笑いながら話した。一体、どこから合戦の様子を見ていたのか気になったが、それ以上に大和帝國の王、イーザがここにいることが信じられなかった。まさに何が起きるか分からない、ということを示しているようだった。

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