話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

大和戦争 - Die was War -

葉之和駆刃

『決戦前夜』

 試合後、雪太は部屋に戻って仮眠をとった。しばらく眠った後、目を覚ますとすでに日は落ちていた。瞼を擦り、周りを見てみると部屋には自分以外に誰もいない。二試合目は、少し卑怯な勝ち方をしてしまった。確かにルール上、竹刀を二本使って戦ってはならないという規制はなかった。しかし、相手にはどう見えていたのだろう。あの時は、勝つことだけを意識し過ぎていた。それ故に、あのような行動をとってしまったのだろう。

 雪太は座ったまま、本当にあれでよかったのかと自問自答していた。そうしていると、部屋のドアが開いた。

「やあ、雪太。目が覚めたかい?」

 そう言いながら、春也が部屋に入ってきた。これから、また侍女達が料理を振る舞ってくれるのだそうだ。雪太は、あのことはまた後で考えようと、春也と一緒に広間に向かうことにした。

 着くと、すでに大方のクラスメイト達が集まっていた。皆、ここに来たばかりの頃とは違い、明るい笑顔で友達と会話などしている。それを見ると、雪太も何故だか安心できた。その後すぐに、侍女達が料理を運んできた。この日は、やたらと豪勢だった。第一線から第六線まで、同じものが運ばれてくる。最近は、第六線も豪華な料理を食す機会が増えていた。

 すると、ツキヨミが前に出て、

「今日は皆、疲れたことだろう。遠慮なく、好きなだけ食べてくれ」

 と言うので、皆は目の前に置かれた料理を食べ始めた。雪太も食べてみたが、この世界に来て一番美味しいと感じた。因みに、テーブルは部隊ごとに分けられている。やはり、そこはしっかりと区別されているようだ。

「決勝戦っていつだっけ?」

 しばらくして、由佳が麻依にきいた。

「明日のお昼だって。それまでに、自主練は各々でやっておくようにってアメノーシさん言ってたよ」
「そうなんだ。私、体力には自信ないから人一倍頑張らないと」

 皆、それぞれ考えて行動しているのだろう。雪太も二人の会話を聞きながら、自分の今やるべきことは何かと考えていた。すると、由佳が雪太にも話しかけてくるのだった。

「郡山君はいいよね。だって、私達の部隊の中だと、一番スペックが高いんだもん。本来だったら、第一線レベルなんでしょ?」

 そこに、春也もすかさず食い付いてくる。

「でも、確かに雪太は能力は高いけど、致命的欠点があるからね」
「おい、それを言うなよ……」

 雪太にとって、一番聞きたくない言葉だ。しかし、春也はこう言うのだ。

「けど、それから逃げ続けてるわけにもいかないよ。その弱点とどう向き合っていくかが、今後の君の課題なんじゃないかな」
「分かってるけど……」

 雪太も、それは重々理解しているつもりだ。しかし、心のどこかでそのことに対し、背を向け続けている自分がいた。その自分に勝つことこそ、今後の目標と言えるだろう。

 食事がだいぶ進んだ頃、雪太の前に三人の男子生徒が現れた。またしても、二階堂瑛、広陵崇、大淀海という第一線メンバーだった。

「よう。まさか最弱組が、まぐれで勝ち残るなんてな~」

 瑛が言った瞬間、その場の空気が一気に冷えていくように錯覚した。これまで談笑していた他の部隊にいるメンバーも、第六線のテーブルの方に目を向けている。

「お前ら、ここまで勝ち残って調子に乗ってると思うけどよ、所詮は第六線だろ? 俺達に勝てるわけねーもんな!」
「さっすが瑛君! 言うね~!」

 瑛の後ろでは大淀が、更に煽りを入れる。雪太は、ただそれに耐え続けるしかなかった。もはや、反論する気すら起きない。しかし、瑛の発言に反応した者がいた。由佳が、机を強く叩くと立ち上がった。

「ちょっと、そんな言い方しなくてもいいでしょ! 人を馬鹿にして、そんなに楽しい? それから、郡山君はね……」
「もういいよ、磯城野」
「でも……」

 三人は笑いながら、また自分達の席に戻っていくのだった。雪太の能力は、クラスの中では確かに一番高い。しかし今のところ、その事実を知っているのは第六線のメンバーだけだ。由佳はそのことを、瑛達にも教えようとしたのだろう。由佳は座ると、

「何で止めたの?」

 と、きいてきた。

「戦いで気付かせてやればいい。能力だけが、部隊分けに反映されなかったってことを」

 雪太は答えると、再び食べ始める。しばらく黙っていた他の者達も、また話を再開し、その広間は再び賑やかさを取り戻していた。

 食事が終わると、皆それぞれの部屋に戻っていった。雪太も一度戻ったが、どうしても落ち着かず、廊下をウロウロしていた。明日のことを考えれば休むべきだが、瑛の言ったことを思い出すと、どうにも眠れる気がしなかったのだ。
 由佳は反論しようとしてくれたが、その時は何故か止めてしまった。あまり事を荒立てたくなかったのと、事実を教えても無駄だと悟ったからだ。

 しばらく廊下を歩いていくと、ある部屋の前を通りかかった。中から、光が漏れてくる。誰かいるのかと思い、雪太はそっとドアを開けて中を覗いた。薄暗い部屋で、誰かが机に向かって何やら作業をしている。
 合戦の際、仲間と連絡を取り合うための機械を、分解しているように見える。どうやら、雪太のクラスメイトらしい。気になった雪太は、中に入って声をかけることにした。

「何してるんだ?」
「うわ、ビックリした! ちょっと、静かに入って来ないでよ!」

 振り向いたのは、やはり同じクラスの王寺という女子だった。王寺は第三線に配属され、二回戦で戦った相手だった。

「ごめん。それで、何をやってるんだ?」
「あぁ、これ? 改造してるんだ。私、こういうの得意だから。ちょっとでも使いやすくならないかなって。無線以外の機能もつけた方が、便利になるかと思って」
「そっか……。でも、こんなところで?」
「部屋だと、みんなうるさくて作業どころじゃないの。ちょっとしたことで、すぐ喧嘩になるからさ。だから、ちょうどいい場所探してたの。そしたら、よさそうな部屋があったから。でも、誰か来たら何て言い訳しようかな……」
「俺が、外で見張っとこうか?」

 雪太は、王寺に良心を向けた。雪太も、特にやることもなく暇を持て余していたのだ。

「いいよ。もうすぐ終わるから。明日、頑張ってね」

 王寺は断わり、机に散らかっていた工具を片付けると、先に部屋を出ていった。ところで、彼女は第六線に負けたことをどう思っているのだろうか。顔には出していなかったが、やはり悔しいのだろう。そう思うと、雪太は複雑な気持ちになった。

 その後も雪太は部屋に帰らず、外を歩いていた。夜の散歩は、現実世界ではあまり経験のないことだ。すると、向こうで竹刀を振っている人影があった。暗いので近くまで行かないと顔は判然としないが、女子らしき影だった。
 近くまで行くと、月明かりによってその人影が照らされる。紺色のブレザーに、赤色のネクタイ。その正体は、紗矢香だったのだ。紗矢香はしばらく雪太に気付かず、素振りを続けていた。
 数秒経った頃、ようやく紗矢香が雪太の存在に気付いて手を止めた。

「何してんのよ」
「いや、ちょっとな……。お前こそ、こんな時間に練習か?」
「べつに、あんたには関係ないでしょ」

 そう言うと、紗矢香はそっぽを向いた。

「そうだ。トミー、ありがとな」
「何が?」
「あの肉団子、美味かった」
「べつに、あの時のお礼しただけだし。で、それが何? あんたに気があるとでも思ってるわけ?」
「いや、そうじゃねーけどさ……」
「それから、あんたにトミーって呼ばれる筋合いないんですけど。ってか、これから気安く話しかけてこないでほしいんですけど。ウザいんで」
「分かったよ、登美」
「だからトミーって……」
「伸ばしてねーよ」

 紗矢香は雪太を一瞥すると、建物の中に入っていってしまった。それを見送ると、雪太も中に入ろうと歩き出した。その時、ある声によって雪太は足を止めた。

「雪ちゃん……?」

 その声に反応し、振り向くと明日香が立っている。明日香は、優しい目で雪太のことを見つめている。明日香は雪太のことを確認すると、歩み寄ってきた。

「どうしたの? こんな時間に」
「あぁ……。ちょっと、散歩……」
「風邪引くよ?」

 明日香は、雪太の頬に自分の手を当ててきた。明日香の手は温かかった。次に明日香は、その手で雪太の手を握る。

「あ、雪ちゃんの手、冷たいね」

 明日香は笑った。明日香は、たまによく分からない行動をする。しかし、雪太は慣れているため、その時も何とも思わなかった。明日香は、じっと雪太を見つめ続けてくる。

「こうして二人で会話するの、久しぶりだね」

 この間も話したが、とついツッコミを入れたくなる。雪太は、苦笑いをして誤魔化した。すると、次第に明日香は寂しそうな表情になっていくのが分かった。まずかっただろうか。雪太は内心、少し焦った。

「明日、決勝戦だね。まさか雪ちゃんと、こんな形で戦わなくちゃならなくなるなんて、思わなかったよ。でも、勝負は勝負だから。お互い、頑張ろうね」

 明日香に、また笑顔が戻った。それを見て雪太は安心したが、何故さっき悲しそうな顔をしたのかがよく分からない。自分と戦うのがそんなに嫌なのだろうかと、雪太は罪悪感を覚えた。

「じゃあ、私は戻るね! 雪ちゃんも、早く来てね」

 明日香は手を振ると、行ってしまった。明日、第一線と戦わなくてはならない。明日香も、第一線なのだ。しかし、手を抜くわけにはいかない。勝てば、神力が手に入る。これさえあれば、本当の戦いにおいてかなり有利になるのは言うまでもない。雪太は、明日の戦いに向け、心を新たにするのだった。
 すると、後ろから誰かに蹴られたような、そんな衝撃を受けた。咄嗟に振り向いた先にはスノーがいた。

「お前、明日あいつらと戦うんだろ?」
「あ、あぁ……」
「だったら、おいらが明日までに鍛えてやるよ。今日は眠らずに特訓だ!」

 スノーが言うと、雪太の手を強く引いた。こうなったら、スノーは聞く耳を持たない。雪太も、そのくらいは学習済みだ。今夜も、スノーに付き合わなければならないのか……。そう思いながらも、雪太はスノーに感謝するのだった。

「大和戦争 - Die was War -」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く