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大和戦争 - Die was War -

葉之和駆刃

『線別対抗合戦!』

 ここ数日間、雪太はスノーに稽古をつけてもらっていた。スノーが化物を倒す姿を見て、雪太の「強くなりたい」という思いが更に強くなった。だから自分を鍛えてほしいと伝えたところ、スノーも了承してくれたのだ。
 雪太は訓練を受けながら、スノーから様々な話を聞いた。

 まず、この大和帝國を脅かす存在、ヤマタイ族という種族についてだ。ここに来た頃、ツキヨミからある程度は聞かされていたが、それでもあまりよく知らなかったのだ。それについても、スノーは話してくれた。

 ツキヨミの話では、ヤマタイ族も元々大和帝國の住人だった。しかし、例の事件が原因となり、国から追放されてしまったのだ。スノーによると、それを命じたのは自分の父であるイーザだという。それによって追い出された人々は、イーザを恨み、そしてヤマタイ族と名乗って度々攻めてくるようになったのだ。

 また、怪しげな魔術も身につけ、化物を生成し、この国を襲うようになった。噂によると、ヤマタイ族の後ろには強力な魔術師がいるという。その名は、ヒーミ。ヒーミは魔術を自在に操ることができ、それを使って化物を生成しているらしい。

 それは大和帝國ではとても有名な話で、住民の誰もが知っているのだという。ここ数年、化物達が野や畑を荒らし、作物があまり実らない。いくら討伐隊を派遣しても、恐れをなして逃げ出してくる者ばかりで、一向に解決に向かわないのだ。中には、仲間が化物に食われたと言う者まで現れた。

 少し前に討伐隊を送った時も、帰って来ずに行方不明になった者も多数いた。その話を聞いた兵士達は、化物退治に行きたがらなくなってしまった。それで仕方なく、イーザは神の祠で祈りを捧げ、雪太達を呼んだ。

 この間の神力の話も、人間界に住む人間の欲深さのために、隠していたという話だった。後に、雪太はそれがイーザの思惑によるものだと知った。イーザは、本当にヤマタイ族を倒したいと思っているのだろうか。雪太にとって、疑問に思う毎日だ。

 神力がないことには、ヤマタイ族には勝てない。それは決まりきったことだろう。雪太は、剣術をしながら考えた。どうしたら、神力を与えてもらえるのかと。それを感じたのか、スノーが尋ねてくる。

「で、お前は神力を手に入れたいのか?」
「あぁ。そのために、ここで鍛練に励んでるんだ」
「でも、そう簡単には手に入れられないぞ。まずは、父上に認めてもらう必要があるからな」

 スノーの言う通り、神力は簡単には手に入らない。それだけ、価値のある力だ。しかし、雪太はどうしてもその力を手にしたい。それは、他のクラスメイト達も同じはずだ。

 しばらく、雪太はスノーの前で素振りを続けていた。すると、誰かの呼ぶ声が聞こえてきた。その声は、徐々に近くなってくる。

「お~い、雪太!」

 聞き慣れた声だと思った。振り向くと、手を振りながら春也が駆けてくる。それを見て、雪太は手を止めた。
 春也が雪太の前まで来ると、荒れた息を整えながら、こう告げる。

「みんな、広場に集まってる。雪太も連れて来いってさ」

 春也の話では、数日振りに全部隊に召集がかかったというのだ。最近は、全員を集めて話をされるということはなかった。何かあったのだろうと、雪太は頭の中で推論を立てた。

「よし、じゃあ行こう」

 そう言って、春也が雪太の手を掴んだその時。鋭く尖った刃が、春也の喉仏を突いた。それはギリギリのところで止まり、春也は衝撃で動けなかった。

「お前、誰だ。おいらの奴隷を無断で連れていくとは、いい度胸だな」
「だから奴隷じゃないから。こいつは、友達だ。同じ部隊の仲間だ」

 雪太が説明すると、スノーは刃を引っ込めた。春也は今の出来事に膝をガクガクさせ、何も言おうとしない。

「で、何があったんだ?」
「あ……、うん。ツキヨミさんから召集がかかったから、君も連れてくるように頼まれて」

 春也は怯えながら、二度同じことを話した。すると、その話にスノーが食いつく。

「えっ、姉御に呼ばれたの? じゃ、おいらも行く!」

 スノーは刀を仕舞い、二人を引っ張る。スノーに促され、二人も広場に向けて足を進めた。その途中、雪太は春也に質問した。

「それで、ツキヨミさんは他に何か言ってたか?」
「特に聞いてないね。まぁ、あの様子から察するに何かあったのは間違いないね」
「それって、ヤマタイ族が攻めてきたとかか?」
「いや、違う。それにしては、緊迫感が薄かった。俺の予想では、良き事だと思うよ」
「良き事……」

 春也の話は、いつも信頼性が薄い。しかし、その時は何故か本当のような気がした。

 雪太、春也、スノーは広場に着いた。他のクラスメイト達は全員、すでに集合していた。部隊ごとに一列に整列しており、雪太と春也は第六線の最後列に座った。雪太はふと辺りを見回すと、スノーの姿がどこにもない。どこに消えたのかと考えていると、ツキヨミが来て前に立った。

「皆、急に呼び出してすまない。今日は、皆に大事な話があるんだ」

 それを聞いて、雪太はまさかと息を呑んだ。すると案の定、ツキヨミはこう切り出したのだ。

「皆、仏力の話はそれぞれ担当の者から聞いているだろう。日々の訓練により、ほとんどの生徒が何かしらの仏力を解放させたことと思う。しかしこの国において、その力とは全く区別される能力が存在するのだ。今日は、その話について話そうと思う」

 そしてまた、生徒達は互いに囁き合う。「神力」の存在について、第六線のメンバー以外は何も聞いていなかったのだから、無理もない。そして、ツキヨミは雪太達に教えたことを、そのまま他の生徒にも話した。

 話し終えると、ツキヨミは言った。

「……と、いうわけだ。黙っていたことは、本当に申し訳ないと思っている。しかし、君達のためにしたことだ。どうか、許してくれ」

 ツキヨミは、皆に頭を下げる。それを聞いて、声を上げる者は一人もいない。今ここでツキヨミ達を責めても、どうにもならないことを自覚していたのかもしれない。

「それで、実はもう一つ大事な話がある」

 ツキヨミは顔を上げ、皆に告げた。

「今言ったように、全員同時に神力を与えることは不可能だ。だから、試合を行おうと思う」
「試合……?」
「二つの部隊を、ある条件で戦わせる。そこで勝ち上がり、優勝した部隊にのみ、神力を得ることを許可する」

 これは雪太のいる第六線にとって、最も不利な条件だ。雪太は別として、集まっているのは皆、他の生徒達よりも資質の値が低かった者ばかりだ。それならば、最初から結果は目に見えている。それには皆も気づいたのか、反発の声が上がる。

「それって、第一線が勝つに決まってんじゃん」
「そこまでして、位付けしたいの?」

 第二線の北と高田が、そう声を発する。その発言を聞き、他の生徒も何人か頷いている。しかし、ツキヨミもそれを読んでいたのか、至って冷静だった。

「大丈夫だ、それぞれの持ち味を生かせるよう、プログラムを組む。初戦は一週間後だ。それまで皆、再び訓練に励んでくれ」

 それでも、皆は顔を引きつらせ、納得していない様子だ。すると、誰かが立ち上がった。

「待ってください」
「君は……」
「第一線の、桜井です」

 それは、明日香だった。クラスメイトの視線は、一気に明日香の方に集まる。それでも明日香は、物怖じせずに続けた。

「私も、特別な力が欲しい。それは、ここにいるみんなが思っていることです。どうしても全員同時に与えられないと言うなら、私は今の話に従います」

 これは、明日香なりに導き出した答えなのだろう、と雪太は思った。ツキヨミも、感じ入ったように頷く。しかし、それに水を差すように他のグループから、また声が上がる。

「それって、あんたが第一線にいるから言えるんじゃない?」
「そうよ、自分のことしか考えてないくせに!」

 先程の二人が、不満をぶちまける。それを聞いて、明日香と同じ第一線にいる不良達が黙っているはずもなく、すぐに立ち上がって反論した。

「じゃあ、お前らは俺らに勝てんのかよ!」
「何もできないのはお前らだろうが!」
「そうだ、そうだ!」

 睨み合う不良三人と吹部二人。周りの空気が、急激に冷えていく。緊迫感に包まれ、皆、その中で発言するのは爆弾に触れるようで、気が引けた。しかし、たった一人声を発した者がいる。

「私は賛成」

 それは、北や高田と同じ第二線である、高円だった。

「少しでも可能性があるんだったら、勝てばいい。最初から諦めてたら、絶対に生き残れないと思う」

 しばらく沈黙が流れた後、それに賛同する声が次々と上がる。確かに、誰も上の部隊には勝てないとは言っていない。それならば、勝つことに集中すればいい。先程まで互いに睨み合っていた者達も、今では落ち着きを取り戻していた。

 次第に、先程まで冷えきっていた空気も和らいでいくのが分かった。中には声を出し、気合を入れている者もいる。人間というのは、単純な生き物だということを再確認できるような光景だ。しかしその中に、雪太を含む第六線メンバーの姿はない。

 第六線だけが、後ろの方で座ったまま、その景色を眺めている。由佳と麻依に関しては、顔を上げることすらしない。当然のことだと、雪太は思った。ここにいる者は、話を聞かされた時点で絶望しか味わっていないのだから。


 部屋に戻る時も、誰も口を開きたがらなかった。その時、春也だけが雪太にきいてきた。

「ねぇ、雪太。俺達、他の部隊に勝てると思うか?」
「あぁ……。高円が言ってたみたいに、最初から勝てないって諦めてると、生き残れないと思うから」
「ふ~ん。でも、俺はそう思わないね」
「なんでだ?」
「じゃあ、逆に質問するけど、君はこんなおっとろしいことに巻き込まれて、何とも思わないのかい?」

 雪太は、改めて考えてみることにした。確かに、普通ならあり得ない状況だ。突然よく分からない世界に送り込まれたと思ったら、これまたよく分からない部隊に放り込まれたのだ。それもランク化され、現実世界の理不尽さをそのまま再現しているようだ。

「雪太は別として、この部隊にいる人は、敵との戦争において戦力外と判断されたも同じだ。俺達に……、勝機はないよ」

 春也のその言葉は、雪太の心を正確に射抜いた。悔しさがあまりに大きく、誰を責める気にもなれない。雪太は歯を食いしばり、拳を握りしめた。

 その一方では、間もなく戦いに向けた訓練が始まろうとしていた。

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