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大和戦争 - Die was War -

葉之和駆刃

『神力と仏力』

 どうも最初から変だと思った。頭に怪我を負った光河の全身が、いきなり深海魚のように光り出したのだ。そして光が治った時、傷が跡形もなく消えていた。これはどういう事か、雪太はアメノーシに質問した。しかし、アメノーシは何故だか答えようとしない。

 それほどまでに、知られてはまずい事でもあるのだろうか。だが、何もしていないのに、光河の傷が治ったのは事実だ。それだけは、どうしても解明したかった。その場に居合わせた、雪太以外のメンバーも、知りたいという眼差しを、アメノーシの方に向ける。

 ついに折れたのか、アメノーシは雪太達を、ツキヨミの部屋に案内すると言い出した。なるほど、ツキヨミに許可を得ず、勝手に話すことはできないという事だろう。


 部屋の前に行くと、アメノーシはノックし、扉を開けた。そして、中に雪太達を案内した。実際、ツキヨミの部屋に入るのは初めてのため、皆は緊張に襲われた。見ると、中には机が置いてあり、その脇にはランプ台が置いてある。まるで、太陽の光を拒んでいるかのように、カーテンは閉められている。

 ツキヨミは、雪太達の前に立つと言った。

「何の用だ」

 そして、アメノーシが事の経緯を説明する。

「……事情は分かった。君達が見たもの、それは仏力ぶつりきと呼ばれる力だ」

 仏力とは何か、と質問してみたところ、ツキヨミは答えた。
 仏力は、簡単に言うとその人の潜在能力と似ており、訓練や戦闘を積む事によって解放される。つまり、経験値に比例するということだ。また個人差があり、一つの仏力を得るのに、少しの訓練で解放される者もいれば、数ヶ月かかる者もいるという。

 種類は、戦闘における補助的な能力のものが多く、その中でも「自動治癒」、「他動治癒」が主流だと言われる。因みに、光河が最初に修得したのは「自動治癒」と呼ばれる能力だ。それは、自らの怪我や病気を、自力で治す能力だという。
 もう一つの「他動治癒」は、他人の怪我を治すことができる。「自動治癒」はほとんどの人間が修得できるが、「他動治癒」は一部の人間にのみ解放される。

 と、前置きはここまでだ。ツキヨミは、ゆっくりと口を開き、本題に入る。

 皆が気になっている能力、つまり敵に攻撃を与える能力のことを、ツキヨミは話した。これは、敵との戦闘において最も重要なスキルだ。

 それは大和帝國において、「神力しんりき」と呼ばれている。神力は、この国の地下にある「神域」と呼ばれる場所で得られるのだという。
 種類は主に五種類あり、氷を操る「氷人」、火を操る「火人」、光を操る「光人」、自然を操る「緑人」、そして天気を操る「天人」だ。

 その話を聞かされ、春也が怪訝そうにツキヨミに言う。

「そんな大事な話、もっと早くに言ってくださいよ〜」

 それに同調したように、他のメンバーも次々に不満の声を上げる。それもそのはずだ。普通なら、全員が目を覚ましたあの日に言うべきだろう。それなのに、今日に来て初めて聞いた。皆、能力なしに戦うしかないのかと、絶望すらしている。
 雪太も、それには憤りを覚えた。

「なんで……、言ってくれなかったんですか」

 雪太は怒りを堪え、拳を握り締める。ツキヨミと、二人きりで言葉を交わした日から、雪太はこの国のために戦う決心をした。しかし、それを一瞬して裏切られたような、そんな気持ちになった。だが、ツキヨミは至って冷静で、雪太達を見ている。

「本当に、理由もなく君達に伝えなかったと思っているのか」

 雪太は、顔を上げた。ツキヨミの言う「理由」というのが、何を示しているのか咄嗟には分からなかった。そして、ツキヨミは話を続けた。

 神力を得るためには、まず「神域」へ行かなければならない。そこで、神を呼ぶ儀式を行うのだという。しかし、それだけではない。

 地下に埋まっている、石油や石炭といった資源を要するのだ。地中から資源を吸い上げ、それを人間の体内に流し込むことで、神の力を手に入れることができる。その資源は毎日、地中で少しずつ生成されていくため、一人に神力を与えるには何の問題もない。

 しかし、それが一日三十人ともなると、莫大な量の資源が必要となる。これでは、国の資源が一日でなくなってしまう。これらの事情から、訓練の成果が認められた人間から順に、少しずつ与えていくつもりだったらしい。

 それでも、話くらいはすると思うが……、と皆思った。無論、それだけではない。

 雪太達はこの国の王、イーザが祠で祈りを捧げた結果、召喚されたということになっている。しかし、それより前に一度、大和帝國から人間界に使者を送っていたのだ。そこで、人間の体質、特徴などを調査し、それをもとに、データ化していたのだという。

 ツキヨミが言うには、その中で「欲望」という項目が、飛び抜けて高かったのだそうだ。それ故に、人間界の住む人間は「欲深い生き物」だと思われてしまった。実際、雪太達も含め、そうなのかもしれない。

 それ故、大和帝國の役人達で話し合い、言わない方向で話を進めたのだ。神力の存在を教えてしまえば、皆その力を得るために、神域を探しに行ってしまうだろう。そうなれば、見つかるのは時間の問題だ。それだけは、どうしても阻止したかったのだという。

 因みに、仏力にも稀に、攻撃する能力が備わることもある。しかし、それらを得られる住民は、国全体の一パーセントにも満たないという。よって、攻撃能力は神力でしか手に入れることはできない。

 成果が認められれば、国から神力を得る許可が下りる。それ故、大和帝國では皆、必死にその力を手に入れようと、訓練に励んでいるのだという。そして、スノーもそのうちの一人だということを、雪太はその時に初めて聞いた。


「……話はそこまでだ。アメノーシ、彼らを連れていってくれ」
「ま、待ってください!」

 そう声を上げたのは、由佳だ。

「みんな、一生懸命やってるんです。なのに、どうして言わないんですか?」
「話しただろう。人間は欲深い生き物だ。教えてしまえば皆、勝手に神域を探しに行ってしまう」

 確かに、ツキヨミの考え自体納得できる。だが、皆、それだけでは納得しないだろう。

「せめて神域だけでも、見せてくれませんかね?」

 春也が、ツキヨミの顔色を伺うように、神域の見学を要求した。

「ダメだ」
「じゃあ、一生言わないつもりですか!?」

 麻依も怒りを露わにしながら、ツキヨミに答えを求める。しかし、ツキヨミはこれ以上、何も言わなかった。

「こらこら、ツキヨミ様にはこれから、大事な事業があるんだから、君達は訓練に戻ってくれ。また、詳しい話は後で話す」

 と、アメノーシは皆を促す。仕方なく、雪太達は元の場所へ戻ることにした。しかし、神力のことが気になって、訓練どころではない。
 やはり、神力を得るためには訓練で結果を出し、認められるしかないらしい。


 廊下を歩きながら、春也が雪太に尋ねた。

「ねぇ。君は、どう思ってる? 今の話」
「どうって……」
「俺、なんか変だと思ってたんだよ。絶対に、あの人達は何か隠してるって」

 それを聞いて、雪太は確信した。
 そう思っていたのは、自分だけではなかった。春也達も、同じ疑惑を抱いていたのだ。それなら、尚更詳しく知っておきたい。この国のことを。そして、神力のことを。
 しかし、それは現状不可能だ。大人しく、毎日の訓練に打ち込むしかない。

 外に出ると、雨が降っている。空が荒れ、雷鳴が聴こえる。ツキヨミが言っていた通り、神域の存在を皆に教えてしまうと、その日のうちにでも探しに向かおうとする。それは、間違いないだろう。

 雪太は尚更、自分が無力に思えた。何もできない、何故この世界に呼ばれたのかも分からない。それでも、今は強くなりたかった。

 何としてでも、強くなってやる。そして、この世界で生き残ってやる。雪太は、心の中で改めて誓ったのだ。数分後、空が再び晴れ、雲の隙間から光が射し込んでいた。

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