【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

記憶の竪琴(23)




「そうね」

 リネラスと共に歩き出そうとしたところで、俺は足を止める。
 そして――。

「何か用か?」

 目の前に現れた男――、エルメキア。
 その男は口を開く。

「――いや、何……、世界の構成が組み変わったのでな……、それで――、ここに来た訳だが……」
「何のことだ?」
「自覚がないのか? 土地神であるエリンフィートを配下と公言した者よ」
「分からないな。エルメキア、それでどうしてお前が姿を現した? ユリーシャの中に居るルーグレンスが脅威じゃなかったのか?」
「……お前は、一体何者なのだ?」
「だから言っただろう? エリンフィートの飼い主であり魔王だと――」

 男はかぶりを振る。

「魔王にそのような力はない。魔王の能力は、あくまでも魔力を利用した破壊魔法と魔法により生み出された魔物を使役する力のみ。だが――、貴様は……、人の精神に干渉し世界を作りだし、組み替えている。これは、本来ならば神たる4神でも行えないこと」
「何を言っている? ここはイノンとユリーシャの精神世界だろう?」
「違うな。人間というのは夢という物を見て自分自身の世界を心の中――、内側に持つことは出来るが、そこに人たる者が足を踏み入れることなぞ本来はできない。魔法に祝福された者か、人々の信仰により生み出された神――、ユリーシャやイノンのように魂の波長が近い者だけが干渉しうる。だが――、貴様は……」
「いや――、なら俺の場合は魔法に祝福されたってことでいいんじゃないのか?」

 肩を竦めながら言葉を返す。
 正直、自分が魔法とやらに祝福されているか何て知りようもない。
 第一、俺の魔法は物理系に属する魔法ばかりだ。
 それは幼い頃から知識としてある異世界の知識を利用した物に過ぎない。
 それがたまたま上手く魔法に適合しているだけで、俺が魔法に祝福されているのか? と言うとそれは違うと断定きる。

「なるほど……、つまり自覚はないということか――」
「自覚も何も、俺が魔王である事に代わりはないからな」
「――では、話を変えよう。どうして、貴様は――、他人の精神世界の中に入ってくるだけでなく魔法を扱うことができた?」
「何となく?」

 たしかにリネラスの精神世界に入った時には、魔法を扱う事は出来なかった。
 そこを認めよう。
 
 ――だが、何時の間にか使えるようになっていたからな。
 
 深くは考えることはしなかったが……。

「なんと……なく?」

 呆然と呟くゼルスことエルメキアに俺は頷く。
 
「まぁ、そういうこともあるんじゃないのか? ほら、俺――、最強の魔法師だし」
「ユウマ……」

 横で俺とエルメキアの話を聞いていたリネラスの表情が、突っ込みをしたい! と言う表情を見せていたが後にしてほしい。
 こういうシリアスな場面で突っ込みを入れるのは、相手の精神を逆なでしかねないからな。





コメント

  • ノベルバユーザー314077

    主人公鈍感すぎ。ストーリー展開のこじつけ感が凄い。肝心なシーンでのセリフ間違え、誤字等多くて読む気失せた。

    0
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