【書籍化作品】無名の最強魔法師
絡み合う思想と想い(13)
「まったく……」
俺は椅子から立ち上がる。
するとライルが両手でブロードソードを構えたまま周囲を見渡して仲間であろう男を見る。
やれやれ、逃げられたら面倒だな。
こいつのせいでイノンの精神世界に、どんな影響があるか分からないからな。
冒険者ギルド内で処理しておくのがベストだろう。
ただ、俺の考えとライルと呼ばれていた男の考えは一致していたようだ。
俺が、床に手をついて扉の原子配列を組み替えて周囲の重厚な石壁と扉を同化させたのと同時に、ライルが「おい! こいつを逃げられないように扉を封鎖して――へ?」と、言う気が抜けた声が重なったからだ。
俺が魔法を発動させたことにきがついたのか、カウンター奥の方から、驚きを含んだ声色で「――ま、まさか!?」というコーク爺の声が聞こえてくる。
どうやら、ギルドマスターというのは伊達ではないらしい。
ただ、どうしてフィンデイカ村の北で反乱軍と行動を共にしていたのかは不明だ。
だが、今はそれよりも「魔法師なのか?」と、問いかけてくるライルの相手が先決。
「ああ。一応、魔法師なんかをしているが――」
俺は話しをしている途中で、コーク爺と受付嬢の女性に視線を向ける。
すると二人の表情からは、穏便に済ませてほしい! という気持ちが見え隠れてしていた。
いつも、勘違いされるが俺は基本的に平和主義者だ。
ただ、相手が攻撃を仕掛けてきたりするから戦いになり問題が置きるだけで……基本的に俺は人には迷惑は、少ししか掛けてないはず。
「とりあえずだ。お前たちみたいな雑魚に魔法は使わないから素手で相手してやるから、さっさとかかってこい!」
「魔法を使わないだと!? 魔法師の分際で!」
俺に馬鹿にされたと思ったのだろう。
ライルが両手で握り締めているブロードソードを左上段から袈裟斬りに振り下ろしてくるが、俺はその刃を素手で受け止めた。
「ば、ばかな……」
殺ったと思ったのだろう。
目の前で、自身の剣が、素手で掴まれているという現実が理解できていないのか振り下ろしたままの姿勢で男の体制が停まっている。
「手加減はしてやるから死ぬなよ?」
俺は、そのまま握り締めていたブロードソードを握り砕くと、ライルの腹を蹴りつけた。
男の体は床と水平に吹き飛び仲間を巻き込んでいくつかのテーブルを巻き込んでから壁にぶつかり止った。
「ふむ……、思ったより弱かったな」
もう少し力を抑えても良かったかもしれないな。
俺は扉を元の木製の扉に修復すると男達の下へと向かう。
「おい、起きろ!」
「――ひっ!?」
ライルは目を覚ました瞬間、また気絶した。
やれやれ――、これでは話が進まないな――。
「君は魔法師なのか?」
「ああ、そうだが――」
考えていると、コーク爺が俺の近くに来て話かけてきた。
「仕事を探している?」
「出来ればな……」
ただ、フィンデイカ村のクエスト内容を確認したが禄なものがない。
俺としては受けたくないんだが……受けないと金にならないからな。
「君にぴったりと仕事がある」
「俺に?」
「宿屋の娘ユリーシャという少女に魔法を教えてほしいのだ」
「……」
ユリーシャに俺が魔法を教える?
ふむ……。
宿屋の従業員として入るよりもいいかもしれないな。
「分かった。だが、俺は安くないぞ?」
「きちんとした対価は払おう。一日金貨3枚でどうだ?」
「ふむ……」
銀貨30枚分か――。
悪くはないな。
それにリネラスを働かせるよりも……情報収集をさせておいたほうがいいだろうな。
「分かった。そのユリーシャという少女に魔法を教えるという依頼受けよう」
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