【書籍化作品】無名の最強魔法師
姉妹の思い出(1)
「ユウマ……」
リネラスはベッドの上で横になったまま、弱々しく俺に語りかけてくるが、その表情は赤みが差していて、体は健康そうに見える。
「どうした?」
「私、ずいぶんと迷惑かけちゃた?」
「ああ、かなり迷惑をかけられた気がする、だから早く体をよくしろよ?」
「うん……」
彼女は、俺の言葉を聞くと安心したように目を閉じて規則正しい寝息を立て始めた。
俺は、そんなリネラスを見て少しだけ安堵の溜息をつく。
「ユウマさん、ありがとうございました。娘を助けて頂きまして、本当にありがとうございました」
リネラスの手を握っていたリンスタットは、俺に向けて頭を深々と頭を下げてくる。
そんな彼女の姿を見て、俺は、彼女の祖父やエリンフィートが隠していることを話すことを止めた。
今更、話したところで一度、起きて終わってしまった事は変えようも無いし、余計な混乱を招くだけと言うことが分かってしまったから。
だから、今更、話を蒸し返しても仕方が無い。
何故なら話を蒸し返したところで、結局のところはリネラスの祖父とエリンフィートが起こしたことには変わりないし、そこにどんな理由があったとは言え、結果はもう出てしまっているのだから。
「別に、俺は自分が助けたいと思ったから、動いたに過ぎない。それに――」
俺はチラリとエリンフィートの方へと視線を向けた。
彼女は、俺の視線を真っ向から受け止めると微笑んできたが、その目は俺の内心を測るような印象を受ける。
「お礼なら、そこに座っているお前らの族長にいうんだな」
実際のところ、エリンフィートがアドバイスをしてくれなかったら、深層心理世界を攻略できたかと言うとあやしいところだろう。
だが……。
素直にエリンフィートに礼を述べるのも癪に障るんだよな……。
「あ、あの! ユウマさん!」
「――ん? どうした?」
もう用事は終わったと思い部屋と出ようとしたところでリンスタットに話しかけられたこともあり振り返る。
するとリンスタットは一呼吸置いたあと。
「……娘とようやく向き合えた気がします。ユウマさん、ありがとうございます」
――と、俺に笑顔で語りかけてきた。
彼女からの謝罪を含んだ言葉を受けないと堂々巡りになる気がする。
恐らく、この行動こそがリンスタットのケジメのつけ方なのだろう。
俺は彼女の言葉を受け入れるように頷く。
すると彼女もホッとした表情を俺に見せてきた。
「何かあったらすぐに呼んでくれ」
「わかりました」
リンスタットに一言、言葉をかけてから俺は室内を出た。
部屋を出て通路を歩き食堂兼酒場に足を踏み入れると、ずっと起きて待っていたのかユリカが「ユウマさん!? リネラスさんは? どうなりましたか?」と話しかけてきた。
「ああ、リネラスなら、もう大丈夫だ。今は、エルフの族長やリンスタットが見ているからもう大丈夫だろう。皆には心配をかけたな」
「そんなことありません! 私達は仲間ですから!」
「そうか……」
彼女の仲間と言う言葉が少しだけ胸に痛みを感じさせた。
どうして、イノンは俺たちを裏切ったのか? 何一つ言わずに分かれてしまった。
何度聞いても、彼女は謝罪の言葉ばかりで何一つ話してくれようとしなかった。
「はぁ……もう終わったことなのにな……」
いつまでもウジウジと悩むなんて俺らしくない。
俺は酒場となっている食堂の椅子に座り辺りを見渡してあることに気がついた。
「ユリカ、アリアとセレンの姿が見えないな?」
「二人ならユウマさんの隣のお部屋で寝ています」
ユリカの言葉を聞きながら建物の窓ガラスから外を見ると夜の帳が深い。
きっと、かなり遅い時間なのだろう。
「お二人とも疲れてるようでしたので、もうグッスリと寝ていますよ?」
「だよな……」
正直、妹もセレンも殆ど同じ年齢だしお子様だから夜はすぐに寝てしまう。
妹なんて日が沈んだら1時間以内にはと俺に抱きついて寝てくる。
そのくらい夜に弱い。
それは、どうやら俺が旅に出てからも変わってはいなかったようだ。
「何か問題でも?」
俺の様子にユリカが気になったのか問いかけてくる。
「ああ、エルフガーデンを攻めてきている連中を知っているよな?」
「はい、妹さんの使い魔であるスライムさんに、国王と王女が率いる軍隊の侵攻を止めるように伝えたときのお話でしたら聞いていましたけど……」
「その話だが―ー。問題は、どこまで軍勢が近づいてきているのか。そして、どのくらいの規模なのかと知りたかったんだ」
「そういうことでしたか……」
「ああ、さすがにスライムと話せる人間とかは居ないからな……」
「ですが、妹さんのスライムさんは、もうかなり離れているのでは? 話も出来ないのでは?」
「たしかに……」
妹がスライムと直接会話しているのを聞いたことはあった。
まあ、スライムの話声は分からないから一方通行ではあったが……。
「はぁー……」
俺はつい溜息が出てしまう。
今のリネラスに、イノンがユリーシャと内通していたことを何と説明していいか、それが分からなくて困る。
でも説明しないわけにはいかないんだよな……。
リネラスはベッドの上で横になったまま、弱々しく俺に語りかけてくるが、その表情は赤みが差していて、体は健康そうに見える。
「どうした?」
「私、ずいぶんと迷惑かけちゃた?」
「ああ、かなり迷惑をかけられた気がする、だから早く体をよくしろよ?」
「うん……」
彼女は、俺の言葉を聞くと安心したように目を閉じて規則正しい寝息を立て始めた。
俺は、そんなリネラスを見て少しだけ安堵の溜息をつく。
「ユウマさん、ありがとうございました。娘を助けて頂きまして、本当にありがとうございました」
リネラスの手を握っていたリンスタットは、俺に向けて頭を深々と頭を下げてくる。
そんな彼女の姿を見て、俺は、彼女の祖父やエリンフィートが隠していることを話すことを止めた。
今更、話したところで一度、起きて終わってしまった事は変えようも無いし、余計な混乱を招くだけと言うことが分かってしまったから。
だから、今更、話を蒸し返しても仕方が無い。
何故なら話を蒸し返したところで、結局のところはリネラスの祖父とエリンフィートが起こしたことには変わりないし、そこにどんな理由があったとは言え、結果はもう出てしまっているのだから。
「別に、俺は自分が助けたいと思ったから、動いたに過ぎない。それに――」
俺はチラリとエリンフィートの方へと視線を向けた。
彼女は、俺の視線を真っ向から受け止めると微笑んできたが、その目は俺の内心を測るような印象を受ける。
「お礼なら、そこに座っているお前らの族長にいうんだな」
実際のところ、エリンフィートがアドバイスをしてくれなかったら、深層心理世界を攻略できたかと言うとあやしいところだろう。
だが……。
素直にエリンフィートに礼を述べるのも癪に障るんだよな……。
「あ、あの! ユウマさん!」
「――ん? どうした?」
もう用事は終わったと思い部屋と出ようとしたところでリンスタットに話しかけられたこともあり振り返る。
するとリンスタットは一呼吸置いたあと。
「……娘とようやく向き合えた気がします。ユウマさん、ありがとうございます」
――と、俺に笑顔で語りかけてきた。
彼女からの謝罪を含んだ言葉を受けないと堂々巡りになる気がする。
恐らく、この行動こそがリンスタットのケジメのつけ方なのだろう。
俺は彼女の言葉を受け入れるように頷く。
すると彼女もホッとした表情を俺に見せてきた。
「何かあったらすぐに呼んでくれ」
「わかりました」
リンスタットに一言、言葉をかけてから俺は室内を出た。
部屋を出て通路を歩き食堂兼酒場に足を踏み入れると、ずっと起きて待っていたのかユリカが「ユウマさん!? リネラスさんは? どうなりましたか?」と話しかけてきた。
「ああ、リネラスなら、もう大丈夫だ。今は、エルフの族長やリンスタットが見ているからもう大丈夫だろう。皆には心配をかけたな」
「そんなことありません! 私達は仲間ですから!」
「そうか……」
彼女の仲間と言う言葉が少しだけ胸に痛みを感じさせた。
どうして、イノンは俺たちを裏切ったのか? 何一つ言わずに分かれてしまった。
何度聞いても、彼女は謝罪の言葉ばかりで何一つ話してくれようとしなかった。
「はぁ……もう終わったことなのにな……」
いつまでもウジウジと悩むなんて俺らしくない。
俺は酒場となっている食堂の椅子に座り辺りを見渡してあることに気がついた。
「ユリカ、アリアとセレンの姿が見えないな?」
「二人ならユウマさんの隣のお部屋で寝ています」
ユリカの言葉を聞きながら建物の窓ガラスから外を見ると夜の帳が深い。
きっと、かなり遅い時間なのだろう。
「お二人とも疲れてるようでしたので、もうグッスリと寝ていますよ?」
「だよな……」
正直、妹もセレンも殆ど同じ年齢だしお子様だから夜はすぐに寝てしまう。
妹なんて日が沈んだら1時間以内にはと俺に抱きついて寝てくる。
そのくらい夜に弱い。
それは、どうやら俺が旅に出てからも変わってはいなかったようだ。
「何か問題でも?」
俺の様子にユリカが気になったのか問いかけてくる。
「ああ、エルフガーデンを攻めてきている連中を知っているよな?」
「はい、妹さんの使い魔であるスライムさんに、国王と王女が率いる軍隊の侵攻を止めるように伝えたときのお話でしたら聞いていましたけど……」
「その話だが―ー。問題は、どこまで軍勢が近づいてきているのか。そして、どのくらいの規模なのかと知りたかったんだ」
「そういうことでしたか……」
「ああ、さすがにスライムと話せる人間とかは居ないからな……」
「ですが、妹さんのスライムさんは、もうかなり離れているのでは? 話も出来ないのでは?」
「たしかに……」
妹がスライムと直接会話しているのを聞いたことはあった。
まあ、スライムの話声は分からないから一方通行ではあったが……。
「はぁー……」
俺はつい溜息が出てしまう。
今のリネラスに、イノンがユリーシャと内通していたことを何と説明していいか、それが分からなくて困る。
でも説明しないわけにはいかないんだよな……。
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コメント
氷見 涼
伏線の引き方が露骨すぎ