【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

新たなるギルド職員!(後編)

「ユリカさん?」

 セレンは、ジッとユリカを見た後に、ユリカに近づいていく。
 するとユリカが屈むと目線をセレンと同じくらいに合わせてから抱きしめた。

「リネラスさん! 誰の子供なんですか? すごくかわいいですね!」

 セレンは、セイレスの妹と言う事もあり、紫色の髪に白い肌、長い耳と整った目鼻とハイレベルな美幼女エルフ。
 セイレスもリネラスと同じくらいの身長なのに、上から下まで絶壁なリネラスと違って、おっと……リネラスが睨んできてるから、これ以上は止めておくかな。

「ユリカ、その子はセレンって言って貴女よりもギルドで働いた期間は長いからね」
「私よりも!?」

 慌てて、ユリカは俺へ視線を向けてくる。
 俺に話しを振られても困るんだが……。

「たしかに長いかもな……」

 それでもせいぜい2~3週間程度だと思うが、長いと言えば長いと言えるだろう。
 まぁその程度で先輩と言えるかどうかの定義は置いておくとして、ユリカが「セレンちゃん先輩でいいんですか?」と、表情を緩めてる。

「えっとセレンは、貴女の先輩にあたります。セレン! きちんと冒険者ギルド職員の心構えは覚えてる?」
「冒険者職員の心構え……うーんと…・…元気があれば何でも出来る?」

 セレンの疑問系の答えに、リネラスが何度も頷きながらセレンの頭を撫でている。
 俺はそれを見て、リネラス2号が出来たらどうしようと思っていたところに。

「おかえりなさい、ユウマさんにリネラスさん。問題は解決できたんですね?」

 俺達が話していると、移動式冒険者ギルド宿屋のホールに入ってきたイノンが話しかけてきた。
 俺は、イノンに「新しく冒険者ギルド職員になったユリカだ」と伝えると、イノンは少し驚いた顔をしたあと「イノンです。よろしくお願いします」と礼義正しく挨拶をしている。

「イノンは、中庭の掃除をしていたのか?」
「はい、掃除を行っていました」

 どうやら、イノンはリネラスが爆発させた中庭の掃除をしていたらしい。

「それじゃ、後は俺とリネラスが全部やっておくから休んでてくれ」
「はい!それよりそちらの方は?」

 俺の言葉に頷きながらイノンは、俺の隣に立っている女性を見ている。

「ユウマさんの新しい愛人ですか?」
「違うから」

 イノンの言葉に、俺とリネラスが同時に答えた。

「イノン、この子の名前はユリカっていうの。『移動式冒険者ギルド宿屋』で、新しく増設したアイテム買取所の担当をしてもらおうと思ってるの」

 リネラスの言葉にイノンが首をかしげる。

「そうなんですか? でも鑑定の特技を持ってないと勤まらないって聞いたことがありますけど?」

 イノンに突っ込まれたリネラスは頷きながら言葉を紡ぐ。

「それは大丈夫、ユリカは花屋だから」

「そういうことですか。花屋さんなら大丈夫ですね」

 花屋なら大丈夫? 訳がわからん。
 どうして花屋なのにアイテム買取担当が勤まるんだ?

「リネラスさん、ユウマさんがすごく不思議そうな顔をしてますよ?」 

 え?俺だけがおかしいのか?
 もしかして一般常識だったりするのか?

「ユウマ、この大陸は危険な植物が一杯いるから、どれが大丈夫でどれが危険かは鑑定の特技持ちでないと瞬時に判断がつかないの」
「つまり、花屋をしてる時点で鑑定を持ってることは確定ってことなのか?」

 俺の言葉にリネラスは頷く。
 なるほどな……。

「ユウマさん、リネラスさん、それではユリカさんの新しい御部屋は、私の隣の部屋が空いてますので、そこでいいですか?」
「そうね!」

 リネラスはイノンの言葉に頷いている。

「それじゃ私は、ユリカさんを御部屋まで案内してきますね」
「あ、ユリカこれ」

 イノンと共に部屋に行こうとするのをリネラスは止めると四次元イルカリュックサックを、ユリカに投げて渡す。

「その中ににユリカの荷物が入ってるからきちんとだしてあげてね!」

 リネラスの言葉に頷いた二人は部屋の方へ向かっていき。

「なあ、リネラス。お前もしかして最初からユリカさんを勧誘するつもりだったのか?」
「そのつもりはなかったんだけど……でも流れでこんな感じに……」
「そうか、それならいいんだ。それと、ダンジョンコアを持って帰ってきたけどどうするんだ?」

 俺の言葉にリネラスはニコリと笑う。

「ギルド内にダンジョンを作るの」
「は?」

 リネラスの言葉を聞いた俺は一瞬、こいつは何を言ってるんだろう?と思ってしまう。


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