ノーリミットアビリティ

ノベルバユーザー202613

閑話 メイドへの命令

次の日ーー。

シークは昨日と同じようにテレビを観ていた。

「はははっ!」
「お前……テレビ見過ぎじゃないか?」
「あ、おおシャーリー、いたのか」
「三十分も前からずっと私はここにいた!というか玄関で応対したのはシーク自身だろう!?」

そしてその横には、何故かまた来たシャーリーが立っていた。
二日目ということで慣れたのか、少し頬を染めているものの昨日みたいな無茶な命令はしてこない。

「それもそうだな。で、今日は命令しろとか言ってこないのか?」
「め、命令というのは強制するものではないからな」
「そうだな。命令しろとか命令されたらもうわけ分からないからな」

どうやらシャーリーも昨日の一日で何かを学んできたらしい。

「そ、その通り!だから今日はお前から用を聞かれるまでこうして立っていることにしたのだ!」
「そうか……、わざわざレイン達にまで部屋を出て行かせてご苦労なことだ」
「なっ!?き、気付いていたのか?」
「今まで基本的に部屋にいた三人が、二日連続で三人とも用事があるなんておかしいにもほどがあんだろ」
「うっ……」

因みにその三人は、寮の最上階のテラスで奈落山と共にお茶会をしている。
能力で気付いていたのだが、シャーリーがこちらに近づいてきていることがわかり、待つことにしたのだ。

「まあそれはいいとして……あー、なんだ。昨日の件については俺も少し反省している。すまなかった」
「い、いや、別にお前が謝ることではない!私の方もよく知らずに怒ってすまなかった」

シークの思わぬ謝罪に、シャーリーも慌てて謝罪する。

(やっぱりお前はいい奴だな……)

などとシークを見直していたのもつかの間、シークはそんなシャーリーを見て、話を続ける。

「それでだ。昨日のことを反省して、お前の言うエッチな命令というものについて調べてきた」
「調べなくていい!お前、そこに食いつきすぎじゃないか!?」
「いや、気になるだろう?」

シャーリーのツッコミに、シークは肩をすくめながら答える。

「というわけで……シャーリーにメイドとして命じる!」
「なっ……、お前、本気か!」
「当たり前だ。まさか今になってやっぱなし、とか言わないだろうな?」

と、シークは挑発する。

「くっ、わ、分かった!私も超能力者だ。一度言った事は守ろう!さぁ、何でも命じるがいい!」

シャーリーは顔を真っ赤にしながらも、気丈に振る舞う。

「良い心構えだ。よし、では命じる!」

シークは立ち上がり、胸を張りながら宣言する。

「俺の肩を揉め!」
「……は?」

呆気にとられるシャーリーに対し、シークはしたり顔でまたソファーに腰掛ける。

「どうした?ご主人様の命令だぜ?肩を揉め」
「……なぁ、それがシークの調べたエッチな命令か?」
「ん?いや、メイドへのエッチな命令って検索して調べたんだが、出てこなかったぞ?」

ここは世界中の子どもが集まる学園である。
当然この学園から繋がる外部のサイトへは制限が掛かっており、成人指定のサイトなどに繋がるわけがないのだ。

「だからメイドへの命令で検索したらな、マッサージって出たんだ。だから肩でも揉んでもらおうかと思ってな」
「……」
「……?」

何故かシャーリーはがっくしと肩を落としていた。
しかし、暫くすると顔を上げ、その表情は笑顔になっていた。

「全く仕方のない奴だな!お前は!」
「……?」

よく分からない。だが、シャーリーの元気が出たのならばいいか。

そう思いながらシークの時間は過ぎていった。

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