ノーリミットアビリティ

ノベルバユーザー202613

第45話 レインの過去

レインとアルトが通っていた幼年舎ではイジメがあった。

イジメていた少年はレイン達が住んでいた地域圏議会の議員だった。
それ故、学校への影響力もあり、教師もその少年には頭が上がらなかった。
少年は小さい頃から甘やかされて育ち、そしてそれが見てとれるような傲慢な態度で周りを見下していた。

レインとアルトがその少年と同クラスになったのは、幼年舎をあと二年で卒業というタイミングだった。
教室の中央で汚い笑い声をあげるその少年を不快に思いながらも、レインとアルトは平和な日々を送っていた。

だがしかし、その平和も長くは続かなかった。
レイン達のクラスにはイジメがあった。
そのことを早くに気づいたレインとアルトはそのイジメられていた子を自分の仲間内に引き入れ、守っていた。

それを気に入らなかった少年は、レインの知らないところで彼をいたぶり、そしてとうとう自殺に追い込んだ。

レインがそのことに気付いたのは、その子が自殺した後だった。

すぐに犯人に気付いたレインは、その少年を呼び出し半殺しにして病院送りにした。
取り巻き連中やその行動を見て見ぬ振りをした教師まで呼び出して『一方的』に半殺しにして病院送りにした。
当然、レインの事は問題になる……はずだったのだが、それほど事は大きくはならなかった。

その代わりに、圏議会議員の息子が人を殺したという誤報が流れたのだ。
それはレインとアルトが、ヘリオス国で最高の権力を持つヴァリエール家の養子であるシークや神憑の一族である癒雲木と同じ『VIPルーム』の同じ部屋にいることから、何となく事情は察せられるであろう。

初めから親の権力を使っていればこんなことにはならなかったのに、とレインは今尚自責の念に駆られていた。

そんな話をアルトから聞いたのは、レインと別れたすぐ後だった。

「普段はああいうちょっとおちゃらけて見えても、結構悩んでいるんだよ」
「……」

現在、シークの部屋3333号室にはアルトとシークしかいない。
レインはあれから部屋には戻ってきておらず、防蔓も何処かに行っている。

「この事は誰にも言わないでね。一応秘密なんだから」
「それはお前達の出自に関わることか?」
「……やっぱり君は勘がいいね。正解、とだけ言っておくよ」
「分かった。ならこれ以上は聞かん。だから最後に一つだけ教えてくれ」
「何だい?」
「何で俺にこの話を教えた?」
「んー、何でだろう?シークならレインを変えられるって思ったから、かな?」

疑問形になって頭を少し悩ましたアルト。

「いや、はっきり答えてくれる必要はねぇ。教えてくれてサンキューな」
「どういたしまして、じゃあ僕はレインを捜してくるよ」

そう言ってアルトも部屋を出て行った。
一人残されたシークは小さく呟く。

「そうか……やっぱりお前らは……」

アルトの言葉に何かしらの確証を得たシークは、天井を仰ぎ見た。

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