お兄ちゃんがお母さんで、妹が甘えん坊なお話

ただのものかき

恥ずかしい…けど、なんか…嬉しい…

「んっ…ふあっ…」

涼羽の声が、その整然とした部屋の中に淡く響く。

恥じらいを思わず声にしてしまったかのような、そんな音が。

そんな声を漏らしてしまう自分に、さらに羞恥を覚えてしまう。

露にされてしまった胸に、二人の人物が、目いっぱい甘えるかのように吸い付いている。

一人は、涼羽の実の妹である羽月。
一人は、涼羽のクラスメイトである美鈴。

まさに母の胸に甘える幼子のように、涼羽の胸に顔を埋め…
ただひたすらに、その飾りを口に含み、吸い付く。

ただそれだけの行為。

なのに、感じてしまうのは、いいようのない幸福感。
なぜかは分からないが、口の中にほんのりと浸透する、どことない甘さ。

それらが、彼女達を夢中にする。

涼羽が羞恥に頬を染めるその姿が愛らしいこともあり。
もう、思うがままに本能に身をゆだね。
ひたすらに、涼羽の胸に顔を埋め、ひたすらに吸い付いている。

身体の中から暴発してしまいそうなほどの羞恥に襲われながらも、決して二人を跳ね除けるようなことをしない涼羽。

それどころか、自分の胸の奥から湧き上がってくるのは、慈愛。



――――こんな風に自分に甘えてきてくれる二人が、可愛い――――



――――もっと、二人を可愛がってあげたい――――



この行為をやめてほしいと思う、羞恥心に相反するかのように湧き上がる想い。
そんな想いが、涼羽の身体を無意識レベルで動かしてしまう。

涼羽の細腕が、自分の胸に吸い付いている二人の頭を、優しく撫でてしまう。

慈しむように。
可愛がるように。
甘やかすように。

ただ、そっと優しく、その髪を梳くように、なで続ける。

そんな涼羽の手の動きが、二人の心により幸福感をもたらす。

「ん…(お兄ちゃんのなでなで…えへへ…気持ちいい…幸せ…)」
「ん…(涼羽ちゃんが、なでなでしてくれてる…優しい…幸せ…)」

嬉しくて、たまらない。
愛おしくて、たまらない。
幸せすぎて、たまらない。

突き放そうとするどころか、こうして優しく自分達を受け入れ…
さらには、目いっぱいの慈愛と優しさで、包み込んでくれる…

そんな涼羽が、まさに女神のように思えてくる。
そんな涼羽が、まさに聖母のように思えてくる。

日頃から、涼羽のこの慈愛と優しさを独り占めしている羽月。
常日頃からの習慣となってしまっているこの行為。

しかし、羽月は一度たりとて飽きがきた、などということにはならず…
まして、やめてほしいなど、決して思うことすらない。

大好きで、大好きでたまらない。
優しくて、優しくてたまらない。

自分が与えてもらえなかった、母の愛情。
今は亡き母に代わって、それを与え続けてくれる、実の兄。
男なのに、こんなにもお母さんみたいで優しい、最愛の兄。

涼羽に甘え。
涼羽に抱きつき。
涼羽の胸に吸いつく。

全てが、羽月にはなくてはならない、必須のものとなってしまっている。

もう、これらは羽月の中では当然のものとなっており…
一日でも、それができないのは我慢できない。

休みの日、特に二人共予定のない日などは、羽月は一日中涼羽にべったりとしてしまっている。

涼羽が家事をしていれば、そのそばまで行き。
涼羽がのんびりとしていれば、すぐさまべったりと抱きつき。
涼羽が自分の部屋に行くと、すぐさま自分もそれについていってしまう。

さらには、涼羽にこの授乳と言える行為を求めてしまう。
一日一回は、必ず。

この慈愛と母性に満ち溢れた兄は、そのおねだりに毎回困った顔をしながらも…
決して拒むことなく、受け入れてくれる。

そして、優しく甘えさせてくれる。

決して妹である羽月を疎ましく思うことなどなく。
それでいて、きっちりと言い聞かせるべきことは言ってくれる。

そんな兄が、羽月は大好きでたまらない。

大好きで大好きで…
絶対に離れたくない。

もう来年は高校生にもなる羽月だが…
本気で兄とずっと一緒にいたい、などということを想ってしまっている。

そして、涼羽のクラスメイトである美鈴。

ふとしたことから、交流を持つようになったこのクラスメイト。
学校では、人付き合いを好まない涼羽に一線を引かれている感じだったけど…

ようやく、といった感じで来ることのできた、涼羽の家。

ここで、自分の知らない、いろいろな涼羽を見ることができた。

とろけるかのような甘い優しさと慈愛で、妹を可愛がる涼羽。
自分にべったりと抱きつかれて、思わず顔を赤らめてしまう涼羽。
そんな自分のことも、目いっぱい甘やかしてくれる涼羽。
自分に、優しく料理を教えてくれる涼羽。

母性と慈愛に満ちた、ふんわりと優しげな笑顔の涼羽。

正直、反則すぎた。

美鈴はアニメやラノベのオタクなどではないが、この日何度も、思わず言ってしまいそうだった。



――――どれだけ私を萌えさせれば、気が済むの!?――――



と。

周囲の異性が常に持っているであろう、自分に対する下心。
異性でありながら、そんなものをかけらも持っていなかった涼羽。

それどころか、お母さんみたいに諭そうとさえしてくれていた。

しかも、こんな美少女然とした容姿。

正直、同性と同じ感覚で接することができ、ものすごく安心感がある。

好き、なんかじゃ足りない。
大好き。

この想いが、際限なく膨れ上がる。

自分の知らない涼羽を見る度に、膨れ上がっていく。

そして、その涼羽が、妹と日常的にしてしまっているこの行為。
それも、見ることができた。
できてしまった。



――――幸せって、こんなところにあったんだ――――



日頃、周囲から頼られることの多い美鈴。
しかし、内心では、誰かに頼りたくて…
甘えたくて、たまらなかった。

誰か、自分を甘えさせてくれる人はいないのかな。

そんな矢先だった。
ちょっとしたきっかけから始まった、涼羽との交流は。

自分に頼ることがなく、むしろ自分の方が頼ってしまうことになっていた。

そして、この日この家で、これでもかというくらいに、このクラスメイトに甘えさせてもらうことができた。

いや、できている。

今吸っているのは、自分と違う性を持つ、それも同年代の男の子の胸。
なのに、自分が本当に赤ん坊になったような錯覚に陥ってしまう。

それほどに、この行為が心地よすぎて…
それほどに、この行為が幸せすぎて…

まるで、本当にお母さんに授乳をしてもらっているかのよう。

知ってしまった。

涼羽が、こんなにもお母さんだったなんて。
涼羽が、こんなにも母性と慈愛に満ち溢れていたなんて。

もう、抗えない。

こんな幸せなこと、自分もずっとしてほしい。

もう絶対、離したくない。

大好き。
大好き。
大好き。

男女の恋愛とは、違うかも知れない。
でも、それは問題じゃない。

重要なのは、自分がこのクラスメイトのことが好きなのか。
たった、それだけ。

それだけは、胸を張って言える。



――――柊 美鈴は、高宮 涼羽のことが大好きで大好きでたまらない、って――――



美鈴の中は、その確固たる想いでいっぱいになっている。
その想いが、美鈴の身体を突き動かす。

涼羽の胸に、より味わうかのように吸い付いていく。

「んんっ…」

涼羽の口から、吐息のような甘い声が漏れる。

吸われる度に、背筋をそっとなぞられるかのような刺激が走る。

その刺激が、より自分の感じる羞恥を大きくさせる。



――――でも、抗えない――――



――――この二人を、身体が勝手に包み込もうとしてしまう――――



涼羽の中に根付いている、その母性。
それが、どれほど羞恥に身を捩らせることになっても、二人を拒絶することを許してくれない。

自分に赤ん坊のようにべったりと甘え、胸に吸い付いてくるこの二人。

二人を拒絶するどころか、より優しく包み込んでしまう。

二人を優しく撫でる手が、止まらない。

クラスメイトである美鈴に、この光景を見られた時は、溶けてしまいそうなほどの恥ずかしさだった。

恥ずかしくて、恥ずかしくて。
消えてしまいたくなっていた。

頬が熱を帯びていくのが、自分でも分かってしまった。

それでも、妹である羽月は、この行為をやめてくれず。
あろうことか、クラスメイトである美鈴まで、この行為に及んできた。

恥ずかしい。
恥ずかしい。
恥ずかしい。

ぞくぞくとするほどの羞恥が、その身を焦がそうと襲い掛かってくる。
そんな羞恥に染められた顔を見られたくなくて、二人からそらしてしまっている。



――――でも、それでも――――



二人を拒むことなど、できなかった。

それどころか、羞恥に襲われながらも二人を受け入れ…
ただひたすらに、二人を甘やかしてしまっている。

妹である、羽月。
クラスメイトである、美鈴。

二人を甘やかすことそのもの。

それが、とても心地よくなってきている。

羞恥から顔をそらしながらも、視線をちらりと向けてみる。

二人の顔が、心底幸せそうになっている。



――――嬉しい――――



いいようのない喜びが、羞恥と相反するように膨れ上がっていく。
二人のそんな幸福感に満ちた顔。
それを、もっと見たくて。

二人を受け入れ。
二人を甘えさせてしまう。

それでも、恥ずかしさは変わらない。
二人の顔を、まともに見れないでいる。

でも、その手が、二人を可愛がっている。
可愛がってしまう。

妹、羽月のために受け入れ、始めたこの行為。
羽月は、心底嬉しそうに、心底幸せそうに、この行為を求めてくる。

まさか、それをクラスメイトに見られ…
そのクラスメイトにまで、同じ行為を求められるなんて、思ってもいなかったけど。

でも、それが恥ずかしくてたまらない反面…
なぜか、嬉しく思ってしまう。

「んん…(お兄ちゃん…)」
「んっ…(涼羽ちゃん…)」

ひたすら、赤ん坊のように涼羽の胸を吸い続ける二人。

「んっ…(…ふふ…)」

そんな二人が可愛くて、内心では微笑んでしまっている涼羽。

そのとろけるような甘い優しさに、二人はそのまま眠ってしまい…
涼羽も、その二人に続くように、その意識を夢の世界へと手放した。

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