聞こえない僕と見えない君の空想物語
20話 複雑な感情の逃がし方
「風澄ちゃん!!」
お昼休み、授業が終わってからすぐに壊れるくらいの勢いで開いたB組の扉。
「佐山?」
呼ばれた私より先に返事をするのは、私の前に座る親友の絢香。
「佐山くん、どうしたの?」
佐山くんの教室は、D組で二つ隣の教室だ。そこからダッシュしてきたのだろう。
「はっ...はぁ...恵が起きた...」
息を切らしながら、告げられたのは嬉しいような、少し複雑な感情を私与えた。
廊下は走っては行けません、と叫ぶ先生の声を後ろで感じながらもスピードを緩めず階段を3人で一気に駆け下りる。
2階にある職員室まで、世界記録を取れるレベルで疾走した。
入る手前で、校長先生を捕まえることに成功していた佐山くんは外出許可の申請を頼み込んでいる。その佐山くんにやっと追いつく、私と絢香も申請に加勢する。
職員室前でかなりの声で、それも3人で頭を下げながら校長先生に迫っているのだから、何事かと数人の先生方がぞろぞろと出てくる。
「ちょ、ちょっと何してるの?」
ナイスタイミングで、B組の担任が出来てきたので私と絢香で頼み込んだ。
「先生!篠原くんが目を覚ましたの!だからお願いします、行かせてください」
普段、大きな声を出さない私がこんなに声を出したのは、高校初かもしれない。
「とりあえず、落ち着け宮村」
「お願い、岩ちゃん。行かせてください」
岩ちゃんこと、岩崎先生に二人で頭を下げた。
「早退ということで、行かせてあげましょうか」
頭上から降ってきた声は、岩ちゃんではなく校長先生の声だった。
「校長先生!」
ありきたりなツッコミをするのは岩ちゃん含め、3名の先生。
「今回だけだよ。さぁ早く準備して行きなさい」
「「「ありがとうございます!」」」
急いで頭を下げながら、ドタバタと廊下を走っていった。
クラスの友人達にろくに説明もせず、教室を廊下を飛び出した。私は迷いながら、必死に足を動かした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「校長先生!これは、責任問題に問われますよ。教育委員会にどう説明をすれば...」
生徒指導の三沢先生が、校長先生に噛み付く。
「僕は、学校で大事な会議がある時に妻が危篤状態だって連絡を受けたんだ。でも、いろんな学校の校長先生がいらっしゃってたから抜けるわけにはいかないと思ってね。会議が終わった時にはもう遅かったよ」
今回は、そういう状況じゃないけど僕みたいな思いはして欲しくないから。
「それにね、篠原くんのことは前々から気にかけていたんだ。いつも中庭の花壇で一人で本を読んでいたのは印象的だった」
彼に、笑わない印象を僕は抱いてしまった。
でも、最近はあの子達に囲まれて楽しそうに笑っていた彼を見たとき、拠り所が見つかったんだなと。
「心配してくれる人がいるのは、いい事だよ」
窓の外の、葉が落ちきった寒そうな木をそっと見つめた。
お昼休み、授業が終わってからすぐに壊れるくらいの勢いで開いたB組の扉。
「佐山?」
呼ばれた私より先に返事をするのは、私の前に座る親友の絢香。
「佐山くん、どうしたの?」
佐山くんの教室は、D組で二つ隣の教室だ。そこからダッシュしてきたのだろう。
「はっ...はぁ...恵が起きた...」
息を切らしながら、告げられたのは嬉しいような、少し複雑な感情を私与えた。
廊下は走っては行けません、と叫ぶ先生の声を後ろで感じながらもスピードを緩めず階段を3人で一気に駆け下りる。
2階にある職員室まで、世界記録を取れるレベルで疾走した。
入る手前で、校長先生を捕まえることに成功していた佐山くんは外出許可の申請を頼み込んでいる。その佐山くんにやっと追いつく、私と絢香も申請に加勢する。
職員室前でかなりの声で、それも3人で頭を下げながら校長先生に迫っているのだから、何事かと数人の先生方がぞろぞろと出てくる。
「ちょ、ちょっと何してるの?」
ナイスタイミングで、B組の担任が出来てきたので私と絢香で頼み込んだ。
「先生!篠原くんが目を覚ましたの!だからお願いします、行かせてください」
普段、大きな声を出さない私がこんなに声を出したのは、高校初かもしれない。
「とりあえず、落ち着け宮村」
「お願い、岩ちゃん。行かせてください」
岩ちゃんこと、岩崎先生に二人で頭を下げた。
「早退ということで、行かせてあげましょうか」
頭上から降ってきた声は、岩ちゃんではなく校長先生の声だった。
「校長先生!」
ありきたりなツッコミをするのは岩ちゃん含め、3名の先生。
「今回だけだよ。さぁ早く準備して行きなさい」
「「「ありがとうございます!」」」
急いで頭を下げながら、ドタバタと廊下を走っていった。
クラスの友人達にろくに説明もせず、教室を廊下を飛び出した。私は迷いながら、必死に足を動かした。
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「校長先生!これは、責任問題に問われますよ。教育委員会にどう説明をすれば...」
生徒指導の三沢先生が、校長先生に噛み付く。
「僕は、学校で大事な会議がある時に妻が危篤状態だって連絡を受けたんだ。でも、いろんな学校の校長先生がいらっしゃってたから抜けるわけにはいかないと思ってね。会議が終わった時にはもう遅かったよ」
今回は、そういう状況じゃないけど僕みたいな思いはして欲しくないから。
「それにね、篠原くんのことは前々から気にかけていたんだ。いつも中庭の花壇で一人で本を読んでいたのは印象的だった」
彼に、笑わない印象を僕は抱いてしまった。
でも、最近はあの子達に囲まれて楽しそうに笑っていた彼を見たとき、拠り所が見つかったんだなと。
「心配してくれる人がいるのは、いい事だよ」
窓の外の、葉が落ちきった寒そうな木をそっと見つめた。
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