聞こえない僕と見えない君の空想物語
12話 走っても追いつけない
風澄と安藤を学校に残したまま、僕は1人でつまらない道を歩いていた。
心を閉ざしたあの日の僕が、今の僕を見たらきっと驚くだろうな。
こんなにも、耳のことを考えずに接することが出来る人達と居れることがこんなにも幸せなことだと、ようやく気づいた。
だから、忘れていた。
僕の事をよく思わない奴がいたことを。
安藤ではない。安藤は風澄しか見えてない。
「おい、久しぶりじゃねーか」
僕らの前に3人組の男子高校生が立っていた。
幼さが抜け、大人びた顔になった中学の時の同級生だ。
何を隠そう、裏切られた昔の友人だ。
「最近は忙しくて会えなかったけど、元気だったか」
僕の肩に友樹という同級生の筋肉質の腕が回される。
「なー、篠原。俺ら部活でバイト出来なくてさー」
長身で、野球部の雅人が前に出て言ってきた。
「金、出せよ」
肩に回っていた筋肉質の腕が、僕の両脇に入り身動きを出来なくされる。
「篠原って細いよなー。パッと見は、女だよな。身長以外は」
今まで全く喋っていなかった色黒の海人がマジマジと僕の体を見る。
金をあさっている雅人が海人に言った。
「そういや、海人って‥‥ーーーー」
おもむろに僕に近づいてきた海人。
「ん、まぁな。‥‥‥‥ーーーーー」
ゾクッとするような笑顔で僕を見据えた。
口元に手を当てるな。唇が読めないじゃないか。
「だけど、今日はいい。と言うか今日は篠原にサンドバッグをお願いしたいんだよねー」
きた。これは今までと一緒だ。
無理やり路地に連れていかれ、いつものような暴力が始まる。
僕が彼らの暴力を受けるようになったのは、中学3年の秋からだ。
部活を引退し、受験勉強のストレスを声が出せない僕にぶつけたというわけだ。
最近、彼らに会わなかった為か彼らはために溜まったストレスを、僕に全てぶつけたようだ。
きっと今までの中で1番溜まっていたのだろう。
僕の体はもうボロボロだ。
「篠原、また今度」
雅人と友樹は笑顔で路地を出ていった。
「じゃあ、俺も行くよ。今度は2人でとかどうだ?」
嫌な笑顔を残し海人も去っていった。
残された僕は動くことが出来ず、ただ壁に寄りかかることしか出来ない。
すると、ポケットに入っていた携帯からバイブレーションが足を伝いLINEが来たことを伝えた。
「恵!風澄ちゃんに緊急事態だ!!」
時が止まった感じがした。
続けざまにまた、LINEがはいった。
「今まで風澄に黙ってたんだけど、風澄の事をストーカーしてる男子がいるの!今までは私がずっと居たし、最近は篠原くん達も居てくれてたから大丈夫だったんだけど。さっき風澄から"安藤"と一緒に帰ってるって連絡がきてどうしよう。"安藤"は頭に血が登ると危なくなるの。風澄に何かあったら」
急いで打ったのだろう。絢香は一気に送ってきた。
そして、ある言葉に目を奪われた。
"安藤"という名前。
考えるよりも早く僕は動いていた。
走って、走って、走った。
体が痛い。鉛のように重く、足が動かない。
どこに居るかなんて分からない。
ただ、考えながら走った。そして、ある事を思い出した。
携帯のGPS機能。大抵の人は切っているであろうこの機能。
実は数日前に、この機能を使って大規模な鬼ごっこを僕、春汰、風澄、絢香で街中でやったのだ。
まだ、風澄がこの機能を切ってないとしたら。
今はこの機能に賭けるしかない。
頼む、切ってないでくれ!お願いだ!
アプリを開き、起動を待つ。
あった。まだ、切っていなかった。
ここからは近い!走れ、僕の足が壊れても。
風澄は絶対に傷つけさせない。
こうなる原因を作ったのは僕だ。あの時、止めていればこうはならなかった。
僕が風澄と帰っていればこんなことにはならなかった。
GPSは路地に入ってそこから動かない。
嫌な予感しかしない。無事でいてくれ。
路地につき、暗がりに目を凝らすと僕と同じ制服を着ている男が女の子の上に馬乗りになっている。
乗っている男はもちろん安藤だろう。
そして、乗られている女の子は‥‥風澄だ。
「っ‥‥!お前!」
無我夢中だった。体が痛いのなんか分からないくらい頭が麻痺していたのだろう。それほど、頭にきた。
あらかた、殴りそこからは風澄の手を取ってこの場から逃げ去った。
強引に繋いだ風澄の手がゆっくりと握り返した感じがした。
心を閉ざしたあの日の僕が、今の僕を見たらきっと驚くだろうな。
こんなにも、耳のことを考えずに接することが出来る人達と居れることがこんなにも幸せなことだと、ようやく気づいた。
だから、忘れていた。
僕の事をよく思わない奴がいたことを。
安藤ではない。安藤は風澄しか見えてない。
「おい、久しぶりじゃねーか」
僕らの前に3人組の男子高校生が立っていた。
幼さが抜け、大人びた顔になった中学の時の同級生だ。
何を隠そう、裏切られた昔の友人だ。
「最近は忙しくて会えなかったけど、元気だったか」
僕の肩に友樹という同級生の筋肉質の腕が回される。
「なー、篠原。俺ら部活でバイト出来なくてさー」
長身で、野球部の雅人が前に出て言ってきた。
「金、出せよ」
肩に回っていた筋肉質の腕が、僕の両脇に入り身動きを出来なくされる。
「篠原って細いよなー。パッと見は、女だよな。身長以外は」
今まで全く喋っていなかった色黒の海人がマジマジと僕の体を見る。
金をあさっている雅人が海人に言った。
「そういや、海人って‥‥ーーーー」
おもむろに僕に近づいてきた海人。
「ん、まぁな。‥‥‥‥ーーーーー」
ゾクッとするような笑顔で僕を見据えた。
口元に手を当てるな。唇が読めないじゃないか。
「だけど、今日はいい。と言うか今日は篠原にサンドバッグをお願いしたいんだよねー」
きた。これは今までと一緒だ。
無理やり路地に連れていかれ、いつものような暴力が始まる。
僕が彼らの暴力を受けるようになったのは、中学3年の秋からだ。
部活を引退し、受験勉強のストレスを声が出せない僕にぶつけたというわけだ。
最近、彼らに会わなかった為か彼らはために溜まったストレスを、僕に全てぶつけたようだ。
きっと今までの中で1番溜まっていたのだろう。
僕の体はもうボロボロだ。
「篠原、また今度」
雅人と友樹は笑顔で路地を出ていった。
「じゃあ、俺も行くよ。今度は2人でとかどうだ?」
嫌な笑顔を残し海人も去っていった。
残された僕は動くことが出来ず、ただ壁に寄りかかることしか出来ない。
すると、ポケットに入っていた携帯からバイブレーションが足を伝いLINEが来たことを伝えた。
「恵!風澄ちゃんに緊急事態だ!!」
時が止まった感じがした。
続けざまにまた、LINEがはいった。
「今まで風澄に黙ってたんだけど、風澄の事をストーカーしてる男子がいるの!今までは私がずっと居たし、最近は篠原くん達も居てくれてたから大丈夫だったんだけど。さっき風澄から"安藤"と一緒に帰ってるって連絡がきてどうしよう。"安藤"は頭に血が登ると危なくなるの。風澄に何かあったら」
急いで打ったのだろう。絢香は一気に送ってきた。
そして、ある言葉に目を奪われた。
"安藤"という名前。
考えるよりも早く僕は動いていた。
走って、走って、走った。
体が痛い。鉛のように重く、足が動かない。
どこに居るかなんて分からない。
ただ、考えながら走った。そして、ある事を思い出した。
携帯のGPS機能。大抵の人は切っているであろうこの機能。
実は数日前に、この機能を使って大規模な鬼ごっこを僕、春汰、風澄、絢香で街中でやったのだ。
まだ、風澄がこの機能を切ってないとしたら。
今はこの機能に賭けるしかない。
頼む、切ってないでくれ!お願いだ!
アプリを開き、起動を待つ。
あった。まだ、切っていなかった。
ここからは近い!走れ、僕の足が壊れても。
風澄は絶対に傷つけさせない。
こうなる原因を作ったのは僕だ。あの時、止めていればこうはならなかった。
僕が風澄と帰っていればこんなことにはならなかった。
GPSは路地に入ってそこから動かない。
嫌な予感しかしない。無事でいてくれ。
路地につき、暗がりに目を凝らすと僕と同じ制服を着ている男が女の子の上に馬乗りになっている。
乗っている男はもちろん安藤だろう。
そして、乗られている女の子は‥‥風澄だ。
「っ‥‥!お前!」
無我夢中だった。体が痛いのなんか分からないくらい頭が麻痺していたのだろう。それほど、頭にきた。
あらかた、殴りそこからは風澄の手を取ってこの場から逃げ去った。
強引に繋いだ風澄の手がゆっくりと握り返した感じがした。
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