聞こえない僕と見えない君の空想物語
1話 夕焼けの空は赤く染まりながら藍になる
僕の耳は中2の夏から聞こえない。
中途失聴者。それが、僕の病名。
補聴器を付ければ音を拾えるが、自分の声は聞こえない。
喋ろうと思えば、喋れる。
だが、音量が調節できない。
自分の声が調節できない不安が大きくて、僕はいつしか喋らなくなった。
普段、会話をする時は相手の唇を読んで手話や携帯を使って会話をする。
僕はいつしか塞ぎ込み、本だけが僕の世界を彩った。本は、耳が聞こえなくても楽しめる。
高校1年の秋、僕は君に出会う。
君に出会って僕の人生が大きく変わった。
夕方、5時過ぎ空がオレンジに染まり、小学生は家に帰る。駅のホーム、僕はいつものように本を読みながら電車を待つ。伸びて耳にかかる色素の薄い髪、雪のように白い肌、ブレザーの高校制服に濃い緑色のカーディガンを羽織っている。どこから見ても普通の高校1年生、耳の補聴器を除けば。
補聴器を通して、電車到着の音が聞こえる。
電車に乗って約20分、4駅。それまでの間、お気に入りの本を読む。それがいつも、だった。
いつもの場所、一番後ろの車両だけにある二人がけ席が僕の席。座ろうと思ったら、いきなり腕を叩かれた。
びっくりした。いつも僕に話しかける人などいないから。
「あの、これ落としましたよ…」
僕とは対象に黒く綺麗なセミロングの髪、身長は178cmの僕よりもだいぶ小さい。
彼女が僕に差し出しているのは、いつも僕が使っているしおりだ。
「ありがとう」こういう時に声が出せたらなと、心から思った。
片手を立て、『ありがとう』のポーズをすると、彼女は少し不思議がりながら、
「どういたしまして」
と、いった。
これが君とのファーストコンタクトだった。
数日後、学校が終わり靴箱で靴を履き替えていると、また腕が叩かれた。振り向くと、あの時しおりを拾ってくれた彼女がいた。
「同じ学校だったんですね」
笑顔で唇を動かした。
だけど、僕は微笑んで頷くだけ。
成り行きで一緒に帰ることになったのだが、困ったことに僕は喋れない。彼女はその事を知らない。
考えながら彼女の横を歩いていると、腕を軽くつつかれ横を向く。
「私の話し、つまらないですか?」
彼女は悲しそうな顔でそう、唇を動かした。
聞こえなかった。困らせてしまった。
僕は携帯を取り出し、文面を打ち補聴器と一緒に見せる。
「ごめん、僕は耳が聞こえないんだ。無視していたわけじゃないよ」
彼女の顔が一瞬かたまる。この顔、何度も見てきた。その後にどういう表情になるのかも知ってる。
だけど、その後の彼女の表情は予想外だった。
確かに、かたまった表情をしたはずだった。しかし彼女はすぐに笑顔になった。
「気づかなくてすみません。実は私、隠してた事があって」
一呼吸おいてから、彼女は唇を動かした。
「私、色が見えないんです」
中途失聴者。それが、僕の病名。
補聴器を付ければ音を拾えるが、自分の声は聞こえない。
喋ろうと思えば、喋れる。
だが、音量が調節できない。
自分の声が調節できない不安が大きくて、僕はいつしか喋らなくなった。
普段、会話をする時は相手の唇を読んで手話や携帯を使って会話をする。
僕はいつしか塞ぎ込み、本だけが僕の世界を彩った。本は、耳が聞こえなくても楽しめる。
高校1年の秋、僕は君に出会う。
君に出会って僕の人生が大きく変わった。
夕方、5時過ぎ空がオレンジに染まり、小学生は家に帰る。駅のホーム、僕はいつものように本を読みながら電車を待つ。伸びて耳にかかる色素の薄い髪、雪のように白い肌、ブレザーの高校制服に濃い緑色のカーディガンを羽織っている。どこから見ても普通の高校1年生、耳の補聴器を除けば。
補聴器を通して、電車到着の音が聞こえる。
電車に乗って約20分、4駅。それまでの間、お気に入りの本を読む。それがいつも、だった。
いつもの場所、一番後ろの車両だけにある二人がけ席が僕の席。座ろうと思ったら、いきなり腕を叩かれた。
びっくりした。いつも僕に話しかける人などいないから。
「あの、これ落としましたよ…」
僕とは対象に黒く綺麗なセミロングの髪、身長は178cmの僕よりもだいぶ小さい。
彼女が僕に差し出しているのは、いつも僕が使っているしおりだ。
「ありがとう」こういう時に声が出せたらなと、心から思った。
片手を立て、『ありがとう』のポーズをすると、彼女は少し不思議がりながら、
「どういたしまして」
と、いった。
これが君とのファーストコンタクトだった。
数日後、学校が終わり靴箱で靴を履き替えていると、また腕が叩かれた。振り向くと、あの時しおりを拾ってくれた彼女がいた。
「同じ学校だったんですね」
笑顔で唇を動かした。
だけど、僕は微笑んで頷くだけ。
成り行きで一緒に帰ることになったのだが、困ったことに僕は喋れない。彼女はその事を知らない。
考えながら彼女の横を歩いていると、腕を軽くつつかれ横を向く。
「私の話し、つまらないですか?」
彼女は悲しそうな顔でそう、唇を動かした。
聞こえなかった。困らせてしまった。
僕は携帯を取り出し、文面を打ち補聴器と一緒に見せる。
「ごめん、僕は耳が聞こえないんだ。無視していたわけじゃないよ」
彼女の顔が一瞬かたまる。この顔、何度も見てきた。その後にどういう表情になるのかも知ってる。
だけど、その後の彼女の表情は予想外だった。
確かに、かたまった表情をしたはずだった。しかし彼女はすぐに笑顔になった。
「気づかなくてすみません。実は私、隠してた事があって」
一呼吸おいてから、彼女は唇を動かした。
「私、色が見えないんです」
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