ヤミ属性な回復担当
雪
やっぱり僕は、駄目だった。
都内のとある内科に、僕は勤めていた。なんてことはない、普通の医者だ。人を救いたいとか、医学に興味があるとか……誰かに言えるような動機もない。元から理系で、中でも人体とか病気とか、そういうのが得意だっただけ。成り行きで入った大学の医学部から、僕は医者になった。最初は、小児科が専門だった。でも僕は、どうやら子供がダメらしい。別に嫌いではないんだ。大人よりは、まだいい。でも泣かれるのが嫌だ。対処に困る。まあ、慣れたけど………
結果、僕は小児科から内科にチェンジした。子供が来ないわけではないが、専門かそうでないかではかなり違う。それでとりあえずは落ち着いた。恋愛にも人付き合いにもほとんど興味のなかった僕は、毎日アパートと通勤先の病院を行き来するだけ。後は、週一で精神科行ったかな?あぁ、途中で移動があったり、金が貯まってきて(使うことがなかったから)ちょっと高いマンションに移ったりはしたけど、本当に何の転機もない日々だった。それが数年続いて、大きな成功も失敗もしなかった僕はちょっと大きな病院に勤めるようになった。そこが僕の最後の職場だ。
医者の不養生とは、よく言ったものだ。過去にまぁ、色々あったせいで、僕はいくつか精神病を患っていた。リスカも、毎日のようにしていた。原因の分からない哀しみ、空虚、絶望感を、ずっと……そう、もうずっと長い間、感じてきた。そのうち心が麻痺してきて、張り付いた愛想笑いが取れなくなり、泣くことすらなくなった。昔は毎晩、家に帰ると自然と出てきたものだけど……人の体は不思議だ。…でも、今でもたまに、朝目が覚めると泣いていたりする。本当に、たまにだけど。何もかも、煩わしい。どうでもいい。どうにでもなれ。そんな風に、毎日を吐き捨てるように時を流してきた僕だけど……とうとう、限界が来てしまった。
廃ビルの屋上。ゆっくりと歩いて、フェンスを越え、縁に立つ。遺書?……家に置いてきたよ。
「生まれてきてごめんなさい。生きていてごめんなさい」
それだけ。僕が生まれてからずっと変えなかった信念というのは、それだけだ。
「でも……もう終わるからさ」
真っ黒な空。しんしんと降り積もる雪。頬を刺すような痛みを与える冷たい風は、僕の憂いをほんの僅かに和らげた。
「神様……」
神様なんて信じてはいない。仮にいるとして、それが何になると言うんだ。でも、僕はまるで祈るように呟いた。は、と自嘲の笑みが浮かぶが、気にしない。
「僕のことなんて救わないで……お願いだから、もう終わらせて」
僕は、最後の一歩を踏み出した。
都内のとある内科に、僕は勤めていた。なんてことはない、普通の医者だ。人を救いたいとか、医学に興味があるとか……誰かに言えるような動機もない。元から理系で、中でも人体とか病気とか、そういうのが得意だっただけ。成り行きで入った大学の医学部から、僕は医者になった。最初は、小児科が専門だった。でも僕は、どうやら子供がダメらしい。別に嫌いではないんだ。大人よりは、まだいい。でも泣かれるのが嫌だ。対処に困る。まあ、慣れたけど………
結果、僕は小児科から内科にチェンジした。子供が来ないわけではないが、専門かそうでないかではかなり違う。それでとりあえずは落ち着いた。恋愛にも人付き合いにもほとんど興味のなかった僕は、毎日アパートと通勤先の病院を行き来するだけ。後は、週一で精神科行ったかな?あぁ、途中で移動があったり、金が貯まってきて(使うことがなかったから)ちょっと高いマンションに移ったりはしたけど、本当に何の転機もない日々だった。それが数年続いて、大きな成功も失敗もしなかった僕はちょっと大きな病院に勤めるようになった。そこが僕の最後の職場だ。
医者の不養生とは、よく言ったものだ。過去にまぁ、色々あったせいで、僕はいくつか精神病を患っていた。リスカも、毎日のようにしていた。原因の分からない哀しみ、空虚、絶望感を、ずっと……そう、もうずっと長い間、感じてきた。そのうち心が麻痺してきて、張り付いた愛想笑いが取れなくなり、泣くことすらなくなった。昔は毎晩、家に帰ると自然と出てきたものだけど……人の体は不思議だ。…でも、今でもたまに、朝目が覚めると泣いていたりする。本当に、たまにだけど。何もかも、煩わしい。どうでもいい。どうにでもなれ。そんな風に、毎日を吐き捨てるように時を流してきた僕だけど……とうとう、限界が来てしまった。
廃ビルの屋上。ゆっくりと歩いて、フェンスを越え、縁に立つ。遺書?……家に置いてきたよ。
「生まれてきてごめんなさい。生きていてごめんなさい」
それだけ。僕が生まれてからずっと変えなかった信念というのは、それだけだ。
「でも……もう終わるからさ」
真っ黒な空。しんしんと降り積もる雪。頬を刺すような痛みを与える冷たい風は、僕の憂いをほんの僅かに和らげた。
「神様……」
神様なんて信じてはいない。仮にいるとして、それが何になると言うんだ。でも、僕はまるで祈るように呟いた。は、と自嘲の笑みが浮かぶが、気にしない。
「僕のことなんて救わないで……お願いだから、もう終わらせて」
僕は、最後の一歩を踏み出した。
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