世界の真理を知って立ち上がれる者は俺以外にいるのだろうか

つうばく

第7話 「彼がすべき事」

 僕の間抜けな声が部屋に響いた。
 思わず、口を防いだがそんなのはもう遅い。
 ホムラが少しは笑うのを耐えていたが、直ぐに耐えれなくなり吹き出した。
 それも「女の子なんだからもう少し抑えようよ」と僕に言われるぐらいまで。
 ホムラは「すまない、すまない」と余り反省が感じらえない声で謝った。

「まあ、許すけど......。さっきのは仕方ないでしょ。いきなり究極生命体アルティメットシインが滅ぶ......ある意味世界が終わる日を伝えられたら誰でもああなるからね」

「いや普通は知ったら、馬鹿にしたり、信じなかったりすると思うぞ。あんな間抜けな声が第一声なのはハデスぐらいだろう」

 馬鹿にされた僕が頬を膨らめせて、プンプンとして言った。
 ホムラはそれを赤ちゃんをなだめるように、頭を撫でてやった。
 それで許した僕を見て、まだまだ子供だな、と呟いたが、それは僕の耳まで届かなかった。
 それが幸運というのか、不運というのか。
 僕からしつこく質問攻めにあったのを考えると、最低でも幸運ではないだろう。

「それで、話を戻すけどなんで13年後に究極生命体アルティメットシインが死ぬの?」

「それはだな、究極生命体アルティメットシインという力は元々、私達ーー神の力なのだ。それを渡した。だが、渡しただけで、力の所有者はまだ私達だ。力を暴発させたり、力を操ったり、という事は出来る。この意味が分かるか?」

 僕の疑問にホムラが分かりやすく分かるように応えた。
 僕もそれを聞き、何故、起こるのかが分かった。
 顔がパァ〜と明るくなり、謎々の答えが分かった子供のような顔でホムラの方を向いた。

「力を操って......いや暴発させて殺すという事なの? それの準備期間として13年という事なの?」

「ああ、そうだ。本当ならば13年も掛からなかっただろうが、私が抜けたのに加えて、奴も抜けたからな」

「奴って?」

 僕がなんでも知りたがる子供のように聞く。
 普通はそれが当たり前なのだが、僕の場合は、数々の記憶を合わせると四桁以上はいくので、もう立派な大人だ。
 その僕が子供のように聞くので、とても珍しい行為という事は誰も気付いてはいない。
 そもそも、僕とホムラしかこの場にはいないので、それが普通なのだが、今は気にしないでおこう。

「奴とはーーゼウス。あの記憶の中にいた偉そうな老人だ」

 ホムラが僕の疑問に応えた。
 真ん中に居座って話を進めていた奴、それがゼウス。
 ホムラの言い方だと物凄く悪い奴に聞こえるが、実際はそんな事はない。
 周りの指示がしっかりできて、部下の名前など全て覚えていると、割といい奴だったりする。
 だが、それが裏目に出てあんな案を採用したと思うと、いい奴とは言い切れない。
 逆に悪い奴とも言い切れないが。

「言い方酷いよ。けど、あの人が抜けたら場が成り立たないんじゃないの? 仮にも創造主なんだし」

「いや、ハデスもあの話を聞いておったから分かるだろう。創造主は変わるのだよ。だから一様、副創造主がいたからそいつが今は創造主をやっているだろうがな。それでも、ゼウスと比べると劣る。だから、必要以上に時間が掛るのだよ」

 僕はヘェ〜と頷きながら、ジュースを飲んだ。
 先程から、大事な事ばかりを聴いているので、喉が渇いて仕方がないのだ。
 唾を飲み込んで、真剣に聞こうとすると、こうなるのだ。

「それで、本題に戻るが、これまでの話を聞いてもらったら何となくは予想がついていると思うが、どうする。世界を救うために一歩は、ある意味、人ではなくなれ言っている様なものだ。それでもやるか?」

 人ではなくなれ。
 それは、周りの人達とは違う者になれ。
 つまりは僕にホムラは神通力を捨てて、究極生命体アルティメットシインをやめろ。
 そう言っているのだ。

 これを選択すれば、周りから見放されるのは分かっている。
 だが、それが僕の目標の世界を救うためになるのなら、僕はーー

「分かった。じゃあ、どうやってやれば良い? それともホムラが消してくれるの?」

 即決で考えた、僕にホムラは余り驚きもしていなかった。
 まあ、昨日あんな事を言えば、裏切るとは夢にも思わないだろうから、僕を信じていたのは当たり前かも知れないが。
 それでも嬉しいのには変わりない。
 それだけ信用されているという事にでも言い表せられるからだ。

「ああ、それは私が消してやろう。もっとも、私が開発した魔法で人々につけられているのだから、私しかこれをなくす事は出来ないがな」

 開発した魔法で。
 という事は、ホムラが作った魔法をこんな事に使われたという事という訳なのである。
 それがどんなけ悔しかったかは僕には分からない。
 だけれでも、今はそれに頼るしかない。
 それしか方法が残されていないのだから。

「じゃあ、神通力を消す。......恥ずかしいから目を閉じてくれるか」

「目を? まあ分かった。できるだけ早くしてよ。目を閉じたままだと、緊張とてもするから。

 そう言いながらどうにか足をじたばたさせるのを堪えている僕に、ホムラは近付いた。
 そして、僕は唇に柔らかい何かが当たるのを感じた。
 それを、時間的には十秒間なのに、体感的には五分以上に僕は感じた。

「もう開けて良いぞ」

「うん......今のって......その、キ......だよね」

「言われると思い出すから、やめてくれ。それと、あれは、その......消すための行為だから。な。あと、ビッチとか思うなよ。今のが初めてなんだからな」

 僕も、初めての経験にあたふたしていたが、それ以上にホムラは焦っていた。
 そのせいで、聞いてもいない余計な事を喋っているが、全く気付いてもいないだろう。
 これを後で教えて良いとは全く思わないが。

「......ごほんっ。これが今のハデスのステータスだ。見てみろ」

 ホムラは手を上下に動かす不思議な動きをした。
 何かが起こるのだろうかと、僕が待ち構えているとそれは急に起きた。
 映像が映し出されたのだ。
 スクリーンも何も無いのに、そこには文字が書かれた映像が。

「これは、ウィンドウと呼ばれるものだ。ゲームで良くあるだろう。と言ってもハデスはまだ知らないか」

「ううん。知ってる。ステータス値とかが書かれてたり、アイテムしまったりするやつだろう」

「ああ、本当ならばステータスはステータスプレートでしか、見れないのだが神は別だ。これでステータスを見たり、アイテムをしまったり、出来る。まあ、神専用だから、普通の人は出来ないがな」

「そうなのか。欲しかったな」

「......まあ、ハデスにはあえてやる。仲間だしな」

 ホムラが顔を赤くさせて僕に言った。
 普段使わない、仲間とかそいう単語を言って恥ずかしかったのだろう。
 それはそうとして、そんな簡単に出来るのだろうか。
 神専用のを僕が使う事なんて。

「出来るぞ。心配するな。そもそも女神を止めた私が出来ているのだから、問題無い。ハデスも出来る筈だ」

「それもそうなのかな。まあ、試してみない事には無いか」

 僕はホムラに言われた通りに、やった。
 一回出来たとしても、もしかしたらまぐれかもしれない。
 なので、二回目。
 これもまぐれかも。
 三回目。
 この作業を繰り返していき、総合で、百回を切ったところで、止めた。
 遂に完璧にウィンドウを使えるようになったのだ。

 その達成感で今の僕は溢れ返っていた。
 だが、その瞬間は一瞬にして終わる。
 大事な事を思い出したから。











「っあ!? ステータス見て欲しくてウィンドウを開けたのだった。完全に忘れていたぞ。まあ、今からでも良いだろう。ステータスを見てみろ。神通力という欄は無い筈だ」

 僕は言われた通りに、ウィンドウからステータスを開けて見た。

 =====================================
 《ハデス・サラディン》
 種族 :正真正銘の人間  性別 :男  年齢 :3
 職業 :無し  称号 :世界の真実を知った者
 適正魔法 :次元魔法
 レベル:1
 魔力 :C
 攻撃力:C
 防御力:D
 俊敏力:D
 知能 :B
 魅了 :C
 器用 :E
 運  :E

≪スキル≫


 ====================================

 そこにあったステータスには間違いなく神通力は表示されていなかった。

「ハデス。まずの世界を救う一歩を言うぞ」

「うん。ホムラ、何でも言ってくれ。僕は出来ることは何でもする」

 胸を張って僕はそう応えた。
 それぐらい、何でもやりこなす自信があったから。
 だが、これがホムラがいう世界を救う一歩の最後まで続くのかは、僕はまだ知らない。

「まずは、稽古だ。最低でも全ステータス値がAを超えてもらうからな」

「全ステータスA超えぇ!?」

 僕がここまで驚いているのは、ステータスA超えと言えば、いわば化け物。
 そう呼ばれる人達のクラスだからだ。
 僕の父様ーーアークでも最高ステータスがA+なのだ。
 もっと言えば、アークのA+がこの世界で一番強い。
 昔はSを超える者もいたと聞くが、そんなのは災害とまでも呼ばれている。

 だが、ホムラはステータス値を全てそれにしろと言っているのだ。
 理論上では不可能。
 だが、ホムラは出来るという言葉しか持っていないと言わんばかりの顔をしている。
 それを可能にする策がホムラにはあるのだろう。

「稽古は、私と戦うことだ。時間で言えば、二年あげよう。その間に一回でも私を倒してみろ。そうすれば次のステップに進める。因みに私のステータスは最高でSSSだぞ」

 ホムラがそれを言い切る顔は、悪巧みを考えている子供の様な顔で、とても楽しそうだった。
 僕は全くもって違い、その真逆だったが。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品