世界の真理を知って立ち上がれる者は俺以外にいるのだろうか
第1話 「彼には神通力が無い」
生前の記憶がある、その様な人はいるだろうか。
別にそこにいた訳では無いのに、知らない記憶が頭の中にあるのが彼だった。
そのお陰で生まれた時から、周囲を認識しており何かをすることや喋ることさえ出来た。
その彼が初めに認識したこと、それは記憶にある世界とは違うことだった。
周りにいる人達が呼ぶこの世界の名は元の世界と同じのもあれば違う名のもある。
つまり彼は沢山の世界の記憶があるのだ。
その記憶を元にすると、周りの人達が家族と呼ばれる者だと彼は理解した。
彼の父はアーク・サラディンと言う名だ。
絵本に出てくる英雄と同じ名だ。
いや英雄本人という方が正しいだろう。
アークは絵本に載るほどまでの事をしたのだから。
そして顔立ちは王子様の様に整っていて結婚した今でもモテている。
彼の母の名はパルム・サラディンと言う名だ。
まだ若いのに、王国一の魔術師である。
アークと同じく絵本に載るほどまでの人だ。
顔立ちはまさに絶世の美女という言葉しか言えない程の美しさだ。
まだ二人とも二十二歳ととても若い夫婦だ。
その歳で子供を産んだのだから周りは特に心配した様で、彼の周りには人が多かった様だ。
そして彼と呼ばれていた最後の一人、ハデス・サラディン。
黒髪の髪に紫の瞳を持ち、まさに初代勇者と同じ姿だった。
数々の世界の記憶を持ち生まれた時から理性のあった彼は、何者なのだろうか。
もしかしたら究極生命体以上かもしれない。
そんな彼の物語が、今始まるーー
◇◆◇◆◇◆
ここは、煉瓦で作られた大きな家。
僕の数々の世界の記憶から探ると、この様な場所を病院という。
完全に歩けたり喋れたりして自立することが出来る五歳になると身体検査が行われ、それは普通のではなく、神通力が何かを調べるための身体検査だ。
それは病院、それも大きな病院でしか出来ないので、僕は親に連れてこられて来ているのだった。
そもそも神通力とは、人が持っている特別な力だ。
物を動かす、音を消す、火を出す、雨を降らすなど種類は様々。
その代表的な種類は百ある。
これは神を口寄せする能力の神通力を持った人に神が宿り、言ったので間違い無い。
そして、代表的な種類は百だが細かく分けるとそれ以上にあり、ましてや一人一人が少しずつ能力が違うので一体何個あるかは分かっていない。
話は戻り、僕は両親ーーアークとパルムと一緒に待機室で座り診察の順番を待っていた。
普通は待機室などはなく、順番が来るまで、空いている場所で立ったりして待つのだが、僕の家は王国から......いや、世界中から感謝や尊敬なども含め、注目されている家なので、待機室で待たされているのだ。
最初はアークが「大丈夫です」と丁寧に断ったのだが、病院の必死な説得に負け僕たちの一家は待機室で待たせてもらっている。
「ハデス様。診察の準備が整いましたので付いてきてください。親御様もご一緒に」
僕の記憶によると、看護婦と呼ばれる職業の人が待機室に入ってきた。
物凄く丁寧な対応で、診察室と書かれた部屋まで案内された。
看護婦の方が部屋に入るドアを開け、中へと入ったので、それに続く様に僕が先頭でその後ろにアーク、パルムという順番で中へと入った。
中には男の人がいた。
その人の言う通りに僕は従い、身体検査は最後の一つを残し素早く終わった。
「では神通力を計測しますね」
そう言って、僕の前に出されたのは僕の顔より一回りは大きい青く輝く水晶だった。
この水晶は別名ーー神通力特定。
水晶の上に手を翳すと、ステータスプレートというのに、自分のステータスが浮かび上がる。
それに神通力が書かれてあり、自分の神通力が分かるのだ。
どいう仕組みで誰が作ったのかは不明で、更にはいつの時代に作られたかさえも判明していない。
ただ、一番この世界で生きているというハイエルフ王という人が生まれた時にはもうあったという事が分かっている。
「ここに手を翳して、十秒間そのままでいてください」
僕はその指示に従い水晶の上に手を翳した。
水晶は青く光り輝いた。
僕は色々な事が出来たり、色々な事を知っているが、まだ身体は子供だ。
目は水晶の眩しい光に耐えらえず、身体が強制的に閉ざした。
何も見えなくなった僕は外がどうなっているのか、そればかり考えていた。
「もう終わりましたよ」
少し遠いところから優しい声が僕の元まで聞こえた。
僕はすぐさま、目を開け周りを見渡した。
水晶はもう光り輝いておらず眩しいという感覚は無く、ただ単に綺麗な玉へと戻っていた。
男は手よりも小さい、僕の記憶を持ってでしてでも分からない素材で作られたカードを持っていた。
あれが、ステータスプレートだろうと僕は思い、それだけを見つめた。
男は少し黙り込み、何かを考えている素振りをして、こちらへ向いた。
アークとパルムは振り向いた男の顔が深刻な事に気付き姿勢を伸ばした。
僕でさえも男の顔を見て、覚悟を決めた。
数ある記憶からだと、こいう人の顔は深刻な事を言う顔と知っていたからだ。
「驚かないでください。まずはステータスプレートを見てください」
男が僕にステータスプレートを渡した。
僕はステータスプレートの項目をまじまじと見て、その上から覗き込む様な形でアークとパルムはステータスプレートを見た。
そこに表示されていたのは驚愕のステータスだった。
=====================================
《ハデス・サラディン》
種族 :人間 性別 :男 年齢 :5
職業 :無し 称号 :無し
レベル:1
魔力 :SS+
攻撃力:SS+
防御力:SS
俊敏力:SSS
知能 :SSS
魅了 :SS
器用 :SSS
運 :SS
≪スキル≫
≪神通力≫
====================================
「ステータスがこの歳で規格外......というよりもオールS越えという事に驚きですが、それよりも神通力を見てください」
「神通力ですか? 僕の神通力は......ない?」
アークとパルムは、自分達のステータスよりも僕が高い事に驚き、男の話が全く耳に入っておらず神通力の欄など見てもいなかったが、しっかりと話を聞いていた僕だけがステータスプレートの神通力の欄へと目をやった。
そこには、何も表示されていなかった。
「こんなことありえる筈はありません。神通力が無い人間などいないのですから。何かの不都合で表示されなかったと考えるのが一番ですが、水晶が間違えるなど聞いたことも無いですし......」
やっと男の話が聞こえたアークとパルムは直ぐにその話を聞く態勢に入り、話を聞こうとしたが、全く理解が出来ていなかった。
それもそうだろう。
自分の息子が意味不明なステータス、神通力が表示されていなかったら困惑するのは当たり前だと言える。
「水晶でも分からない能力だったから表示されなかったとかでは無いのですか? 過去にも新しい神通力が見つかる時はこの様な感じだった様ですし」
「そうかも知れません。ですがその場合は百ある内の何の属性かは表示される筈なんです。ですが、それも無い」
「となると、本格的に何も無い......という事ですか」
僕は下を向き落ち込んだ。
いや、それの振りというのだろうか。
何故なら......
ーー僕は何故こうなったのかを知っていたのだから
別にそこにいた訳では無いのに、知らない記憶が頭の中にあるのが彼だった。
そのお陰で生まれた時から、周囲を認識しており何かをすることや喋ることさえ出来た。
その彼が初めに認識したこと、それは記憶にある世界とは違うことだった。
周りにいる人達が呼ぶこの世界の名は元の世界と同じのもあれば違う名のもある。
つまり彼は沢山の世界の記憶があるのだ。
その記憶を元にすると、周りの人達が家族と呼ばれる者だと彼は理解した。
彼の父はアーク・サラディンと言う名だ。
絵本に出てくる英雄と同じ名だ。
いや英雄本人という方が正しいだろう。
アークは絵本に載るほどまでの事をしたのだから。
そして顔立ちは王子様の様に整っていて結婚した今でもモテている。
彼の母の名はパルム・サラディンと言う名だ。
まだ若いのに、王国一の魔術師である。
アークと同じく絵本に載るほどまでの人だ。
顔立ちはまさに絶世の美女という言葉しか言えない程の美しさだ。
まだ二人とも二十二歳ととても若い夫婦だ。
その歳で子供を産んだのだから周りは特に心配した様で、彼の周りには人が多かった様だ。
そして彼と呼ばれていた最後の一人、ハデス・サラディン。
黒髪の髪に紫の瞳を持ち、まさに初代勇者と同じ姿だった。
数々の世界の記憶を持ち生まれた時から理性のあった彼は、何者なのだろうか。
もしかしたら究極生命体以上かもしれない。
そんな彼の物語が、今始まるーー
◇◆◇◆◇◆
ここは、煉瓦で作られた大きな家。
僕の数々の世界の記憶から探ると、この様な場所を病院という。
完全に歩けたり喋れたりして自立することが出来る五歳になると身体検査が行われ、それは普通のではなく、神通力が何かを調べるための身体検査だ。
それは病院、それも大きな病院でしか出来ないので、僕は親に連れてこられて来ているのだった。
そもそも神通力とは、人が持っている特別な力だ。
物を動かす、音を消す、火を出す、雨を降らすなど種類は様々。
その代表的な種類は百ある。
これは神を口寄せする能力の神通力を持った人に神が宿り、言ったので間違い無い。
そして、代表的な種類は百だが細かく分けるとそれ以上にあり、ましてや一人一人が少しずつ能力が違うので一体何個あるかは分かっていない。
話は戻り、僕は両親ーーアークとパルムと一緒に待機室で座り診察の順番を待っていた。
普通は待機室などはなく、順番が来るまで、空いている場所で立ったりして待つのだが、僕の家は王国から......いや、世界中から感謝や尊敬なども含め、注目されている家なので、待機室で待たされているのだ。
最初はアークが「大丈夫です」と丁寧に断ったのだが、病院の必死な説得に負け僕たちの一家は待機室で待たせてもらっている。
「ハデス様。診察の準備が整いましたので付いてきてください。親御様もご一緒に」
僕の記憶によると、看護婦と呼ばれる職業の人が待機室に入ってきた。
物凄く丁寧な対応で、診察室と書かれた部屋まで案内された。
看護婦の方が部屋に入るドアを開け、中へと入ったので、それに続く様に僕が先頭でその後ろにアーク、パルムという順番で中へと入った。
中には男の人がいた。
その人の言う通りに僕は従い、身体検査は最後の一つを残し素早く終わった。
「では神通力を計測しますね」
そう言って、僕の前に出されたのは僕の顔より一回りは大きい青く輝く水晶だった。
この水晶は別名ーー神通力特定。
水晶の上に手を翳すと、ステータスプレートというのに、自分のステータスが浮かび上がる。
それに神通力が書かれてあり、自分の神通力が分かるのだ。
どいう仕組みで誰が作ったのかは不明で、更にはいつの時代に作られたかさえも判明していない。
ただ、一番この世界で生きているというハイエルフ王という人が生まれた時にはもうあったという事が分かっている。
「ここに手を翳して、十秒間そのままでいてください」
僕はその指示に従い水晶の上に手を翳した。
水晶は青く光り輝いた。
僕は色々な事が出来たり、色々な事を知っているが、まだ身体は子供だ。
目は水晶の眩しい光に耐えらえず、身体が強制的に閉ざした。
何も見えなくなった僕は外がどうなっているのか、そればかり考えていた。
「もう終わりましたよ」
少し遠いところから優しい声が僕の元まで聞こえた。
僕はすぐさま、目を開け周りを見渡した。
水晶はもう光り輝いておらず眩しいという感覚は無く、ただ単に綺麗な玉へと戻っていた。
男は手よりも小さい、僕の記憶を持ってでしてでも分からない素材で作られたカードを持っていた。
あれが、ステータスプレートだろうと僕は思い、それだけを見つめた。
男は少し黙り込み、何かを考えている素振りをして、こちらへ向いた。
アークとパルムは振り向いた男の顔が深刻な事に気付き姿勢を伸ばした。
僕でさえも男の顔を見て、覚悟を決めた。
数ある記憶からだと、こいう人の顔は深刻な事を言う顔と知っていたからだ。
「驚かないでください。まずはステータスプレートを見てください」
男が僕にステータスプレートを渡した。
僕はステータスプレートの項目をまじまじと見て、その上から覗き込む様な形でアークとパルムはステータスプレートを見た。
そこに表示されていたのは驚愕のステータスだった。
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《ハデス・サラディン》
種族 :人間 性別 :男 年齢 :5
職業 :無し 称号 :無し
レベル:1
魔力 :SS+
攻撃力:SS+
防御力:SS
俊敏力:SSS
知能 :SSS
魅了 :SS
器用 :SSS
運 :SS
≪スキル≫
≪神通力≫
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「ステータスがこの歳で規格外......というよりもオールS越えという事に驚きですが、それよりも神通力を見てください」
「神通力ですか? 僕の神通力は......ない?」
アークとパルムは、自分達のステータスよりも僕が高い事に驚き、男の話が全く耳に入っておらず神通力の欄など見てもいなかったが、しっかりと話を聞いていた僕だけがステータスプレートの神通力の欄へと目をやった。
そこには、何も表示されていなかった。
「こんなことありえる筈はありません。神通力が無い人間などいないのですから。何かの不都合で表示されなかったと考えるのが一番ですが、水晶が間違えるなど聞いたことも無いですし......」
やっと男の話が聞こえたアークとパルムは直ぐにその話を聞く態勢に入り、話を聞こうとしたが、全く理解が出来ていなかった。
それもそうだろう。
自分の息子が意味不明なステータス、神通力が表示されていなかったら困惑するのは当たり前だと言える。
「水晶でも分からない能力だったから表示されなかったとかでは無いのですか? 過去にも新しい神通力が見つかる時はこの様な感じだった様ですし」
「そうかも知れません。ですがその場合は百ある内の何の属性かは表示される筈なんです。ですが、それも無い」
「となると、本格的に何も無い......という事ですか」
僕は下を向き落ち込んだ。
いや、それの振りというのだろうか。
何故なら......
ーー僕は何故こうなったのかを知っていたのだから
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