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太陽王の剣〜命を懸けて、君と世界を守り抜く!〜

みりん

5 ステラの決意

『ステラ? はじめまして。君みたいなすごい踊り子に会ったのは初めてだよ。これからよろしくね』

 レオニスが、微笑んで握手をするため手を差し出す。

――からかわないで!

『からかう? 何故? 初対面の人にそんな悪ふざけしないよ。残念だな。君に仲良くする気がないなら、ここでお別れだ。さようなら』

 遠ざかるレオニスの背中を追おうとしても、踏み出す足は空回るばかりで一向に前に進めない。

 ――やだあ! 待って! 行かないでレオニス!



「待って!」

 ゴンっ!

「いたっ」

 思わず伸ばした手が、天井にぶち当たり、ステラは悶絶した。ゆっくりと起き上がり辺りを確認すると、自分は二段ベッドの2階で寝ていたことを思い出す。規則正しい三つの寝息が聞こえてくる。窓の外は暗いので、まだ夜中なのだろうとわかった。

 山賊団リベルタスのアジトへ着いたのは昨日の夕方頃。アルサスの訃報を受け、悲しみに暮れたリベルタスのメンバーは、しかし、ステラやエイブスら部外者にも暖かい食事を提供してくれて、寝床も用意してくれた。

 寝床として案内されたのは、普段レオニスとデンテと、もう一人、パウルという年下の団員が一緒に使っている部屋らしいのだが、二段ベッドが二台ある。パウルが偶然麓のインペデに降りていてベッドが空いていたことと、呪いがあるため、ステラを女部屋に通す訳にもいかず、部外者のエイブスとステラはレオニスとデンテと同じ部屋で就寝することとなったのだ。

(怖い夢見た――)

 碧い瞳に涙をためて、ステラは膝を抱えた。

(大丈夫。レオニスは継承者で、ステラには聖剣の御力が宿ってるらしいから、レオニスだけはステラのことを忘れないもん)

 しかし、今まで幾度となく繰り返してきた忘れられるという出来事が、ステラの不安を掻き立てた。

 ステラは、思い立って二段ベッドをそっと降りた。ステラが寝ていたベッドの1階では、レオニスが寝息をたてている。

 ステラは、眠るレオニスにそっと近づくと、その無防備な寝顔をじっと見つめた。

(初めてレオニスを見た時も思ったけど、やっぱりレオニスってどこか他の人と違う。光ってるというか、暖かいというか――レオニスが継承者だから? だから、聖剣の御力の宿ってるステラには、レオニスだけが特別に見えるの?)

 小首を傾げてレオニスを見つめていると、ふいに眠気が襲ってくる。ステラは、しかし、もっとレオニスを見ていたいと思った。

 ふとステラのイタズラ心がうずく。ステラはおもむろにレオニスのベッドに潜り込むと、その腕に自身の腕を絡めた。暖かい感触に忍び笑いをもらす。

(レオニス、起きたらびっくりするかなっ。また真っ赤になって怒るだろうなあ。えへへ。嫌がってるの、ちょっと可愛いよね)

 ひとしきり思い出し笑いでくすくすした後、ステラは溜息をついた。

(ずっと一緒にいたい――けど、それは出来ないってアルサスさんが言ってた。レオニスモテるんだって。まわりが放っとかないって。レオニス自身はどうなんだろう? 好きな人いるのかなあ……レオニスの言ってたラクーンさんはデンテのお母さんだったし……でもマラって子にはまだ会ってないなあ。どんな子なんだろう。もしかして、レオニスその子のこと好きだったりして……)

 答えの出ない問をぐるぐると考えながら、ステラは次第に眠りに落ちていった。

* * *

 ステラは騒がしい声で目を覚ます。

 抱きしめて眠りについたはずのレオニスの腕が腕の中から消えている。

「違うっ! この子はステラで、僕らの仲間だ!」

 半身を起こしたレオニスが、真っ赤になって怒鳴っている。

「レオニス、俺は見損なったぞ! こんな時にアジトに女連れ込むなんて!」

「まあいいじゃないですか。英雄色を好むと言いますし、こんな美少女なかなかお目にかかれませんよ。僕がレオニス様でも、据え膳食っちゃうなあ」

 デンテとエイブスが意味は分からないが聞き覚えのあるようなことを言っている。

「だから違うって言ってるだろっ! 僕は無実だ! ステラが勝手に!」

「レオニス様。嘘はいけませんよ。男にその気がなければできませんからね」

「だから、僕は何もしてないって言ってるだろ!?」

 はあはあと肩で息をしながら怒鳴るレオニスの剣幕に、ステラは小首を傾げて声をかけた。

「おはよう、レオニスー。何のお話? その気って何のこと?」

 振り返ってステラを見たレオニスは、固まって耳まで真っ赤に茹で上がる。その目線が一瞬ステラの顔より下を見た後、慌てて顔に戻されたことに、ステラは気付いたが、意味は分からなかった。

「――っ! 知らないなら、知らないままで良い! わかったろ!? この子はまだ子供なんだ! ゲスな勘ぐりはやめてくれ! 今ちゃんと説明するからっ!」

 レオニスの必死の叫びに、ステラは頬を膨らませる。

「ひどい! ステラもう14歳だよ。子供じゃないもん!」

「子供じゃないなら、夜中に勝手に男のベッドに潜り込んだりするもんか! 次やったらただじゃおかないからな! いいからベッドから降りろっ!」

 眼光鋭く睨まれて、ステラは首をすくめた。

「はーい」

 大人しくベッドから這い出ると、レオニスはどっと疲れたように、頭を抑えた後、あっけにとられて見ているデンテと、興味深く観察するエイブスにステラの事情を話始めるのだった。

* * *

「なるほどなぁ。つまり、こいつに聖剣の御力が宿ってるって訳だな。ごめん、俺お前のこと覚えてないわ」

 デンテに謝られ、ステラは微笑んだ。

「いーよ! 慣れてるからっ! それより、ステラからも質問っ!」

「なんだよ?」

 デンテは首をかしげるとステラの言葉を待った。

「あのね、今麓のインペデって街に出かけているっていう『マラ』って誰? どんな子?」

 昨夜眠る前に考えていた疑問を、さっそく調査するステラ。

「どんな子って言われても……なあ?」

 デンテは首をかいてレオニスの顔を見た。

「マラは、僕とデンテと同じ15歳の女の子だよ。リベルタスでは彫金の仕事を主にしていて、君が盗んだ宝飾品も、マラが作ったものだ」

 レオニスが答えると、ステラは合間を開けずに次の質問をする。

「ステラが盗んだって、どれのこと!? もしかして、レオニスがずっとつけてる銀の羽の首飾りもそのマラが作ったの!?」

「ああ、これ? これは、そうだよ。ペンダントトップはマラが作ってくれた。紐の部分はデンテがなめしてくれたけど。これは二人の合作で、昔誕生日プレゼントにくれたんだ」

 レオニスが首飾りを見せながら答えてくれる。

「それをレオニスは肌身離さず持ってるの……」

「ん? いま何か言った?」

「ううん! 何でもない! それより、もっと教えて! マラがどんな子か分かるお話とかっ!」

 身を乗り出して聞くステラに、レオニスも首を傾げた。

「やけに食いつくね。なんでそんなにマラにこだわるの? 団員なら他にも沢山いるのに」

「ムステラのおっちゃんの話してやろうか!? 団長には劣るけど、あの人の伝説もかなりキテるぜ!? それか、パウルのやらかし話とか」

 身を乗り出したデンテに、ステラは慌てて首を振った。

 ステラはあくまでレオニスの好きな人を調査したいのであって、おじさんと子供の話が聞きたい訳ではないのだ。

「ステラさんは、どうしてマラさんのことが気になるのですか?」

 黙って聞いていたエイブスが助け舟を出してくれる。

「あのね、今亡者とかいっぱい出て危ないでしょ? それなのに、インペデまでお使いに行くなんてマラってすごい子だなーって思ったの。同じ女の子として! だから興味持ったのっ」

 苦しい言い訳を試みるが、デンテとレオニスは顔を見合わせるばかりだ。

「って言ってもな。マラはマラだ。説明することなんてねえぞ」

 大雑把なデンテ。レオニスは考え込むように腕を組んだ。

「うーん。確かにマラがインペデまでお使いに行ったっていうのは意外だったな。すごいと思う。マラは怖がりなところあるだろ?」

 言うと、デンテも頷いた。

「確かに。あいつお化けとか超苦手だったな。昔肝試しした時なんて、レオニスにしがみついて離れなかったよな」

「ああ、そんなこともあったっけ。まあ、でもあの時はデンテにもしがみついてなかったか? とにかく怖がりなんだよ。……まだ帰って来てないんだっけ。こんな話してたら、余計心配になってきた」

 しかし、レオニスの言葉はステラには入って来なかった。

(しがみついて……!? レオニス、やっぱりモテるんだ。マラが作った首飾りをずっとつけてるくらいだし、レオニスの好きな人って、やっぱりマラ!?)

 ステラは、デンテと思い出話を始めたレオニスの顔をじっと見つめた。

(どうしよう! レオニスがマラと結婚しちゃったら、ステラ一人ぼっちになっちゃう!?)

 ステラは、伏せた顔の下で密かに口の端を上げて怪しく笑う。

(ステラ決めた! レオニスとマラの邪魔をするっ! 結婚だめ、絶対!)

 ステラが物騒なことを決意した時、ふと窓の外がきらりと光ったのが目に映った。気になって目をこらすと、そこに金縁にエメラルドグリーンの美しい蝶が羽ばたいているのを見つけた。ステラは思わず駆け寄って、歓声を上げる。

「ねえ、見て見て、レオニス! 蝶ちょだよ! きれーっ!」

「なんだって!?」

 ステラを押しのけるように、レオニスとデンテが窓に駆け寄ってくる。勢いよく窓を開けるが、蝶は同じ場所をくるくると舞って逃げようとしない。

「これは、シルヴァ様の御使いだ――!」

「ええ!?」

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