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太陽王の剣〜命を懸けて、君と世界を守り抜く!〜

みりん

8 それぞれの朝

「どうしました!?」

 エイブスが鋭く問いかけると、デンテが叫んだ。

「シルヴァ様からお告げをもらった! もうすぐインペデの封印が解かれて、ケルベルスが復活しちまうんだ! 急いで行って、インペデ侯を止めないと!」

「なるほど、確かにインペデ侯ウッドはノクティス派の筆頭。やりかねませんね」

 エイブスが頷くと、ステラも勢い込んで尋ねた。

「ステラもインペデ侯を止めるの協力する! どうすればいい!?」

「うん。ケルベルスが復活してしまったら、聖剣サンクトルーメの力でしかそれを止めることは出来ないかもしれない。悪いけど、ステラ、君にも協力してもらう」

 レオニスに言われ、ステラは頷く。

「でも、まずはそうならないように、ケルベルス復活を未然に防ぎましょう。ケルベルス復活を阻止するためには、聖笛グローリアを手に入れ、ウッドに近づけさせないこと。これしかありません!」

 エイブスが言うと、レオニスも頷いた。

「聖具と御印を持つ者の血が封印を解く鍵なんですね。聖笛グローリアは、確かシルヴァ神のインペデ大神殿、巫女のアンジェ様が管理されているはずです」

「じゃあ、インペデ大神殿に行って、アンジェ様をお守りすれば、ケルベルス復活は阻止できるってことだな! そうと決まれば、早く行こう!」

 デンテが駆け出そうとした時、ラクーンの声がそれを止めた。

「ちょいとお待ち!」

 そして、デンテとレオニスにふかした芋を投げてよこした。

「それ食べてからお行き!」

「母ちゃん! そんな場合じゃ!」

 デンテが呆れて言うが、ラクーンは譲らない。

「いいから! お腹減ってちゃ力出ないよ! 長丁場になるんだ! 食べてからじゃないと行かせないからね! ほら、レオニス、あんたも食べる!」

「~~っ!」

 デンテとレオニスは、そのあまりの形相にビビり、急いで芋を平らげた。そんな二人にラクーンは台所の奥から持ってきたソーセージとチーズの固まりも押し付ける。二人はそれを渡された水で流し込み、3分で全部飲み込む。

「おい、お前らもデンテ達と一緒に山を降りろ。俺も一緒に行きたいが、この足じゃな。足でまといになる。その代わり、アジトここの防衛は任せろ!」

 部屋の奥からムステラが呼びかけると、さっきまでリュートを弾いていたルーパスを筆頭に10名のたくましいリベルタスの男達が頷いた。

「気をつけるんだよ!」

「マラとパウルを頼んだ! 誰一人、死んだら許さねえぞ!」

 ラクーンとムステラに見送られ、レオニス、デンテ、ステラ、エイブスの四人と団員達は駆け出した。

 アジトの扉を開け、外に出た瞬間、エイブスが叫ぶ。

「掴まって下さい!」

 レオニスと、デンテ、ステラはお互いに手をつなぎ、横一列に並ぶと、四人は燐光をまといふわりと宙に浮かび上がる。

「すみません! 定員オーバーです! 私たちは先に行きます!」

 エイブスが言うと、何事かと把握した団員達のブーイングの声が沸く。しかし、四人はエイブスの飛行魔法でもう空の上だ。

「ごめん皆! インペデで待ってる!」

 デンテが叫ぶと、レオニスも叫んだ。

「マラとパウルのことは任せて下さい!」

「ばいばーい!」

 ステラが繋いでない方の片手を大きく降る頃には、その声はもう団員たちにはかすかに聞き取れるかという程の遠く小さなものになっていた。

* * *

 インペデ侯爵ウッド・シルヴァ・ラセルタ・ウイレンティアが、朝の日課のブランデーの入った熱い紅茶を侍従から受け取った時、部屋の隅の影が蠢いた。気配を察して振り向いたウッドの前には、烏の濡れ羽色の豊かな巻き毛をした少女がふんぞり返るようにして立っていた。引き締まった太ももの覗く短い裾のドレスを見やり、内心では毒づきながらも、ウッドは右足を引き、左手で目立ち始めた腹を押さえ、うやうやしくお辞儀をした。

「お久しぶりでございます、モア様」

 しかし、モアはそれを鼻で笑う。

「ノクティス様がいないからって、そうあからさまにガッカリした態度をとらないでよ、ウッド。それとも、お楽しみの最中だったかしら?」

 モアがそう言いながらちらりと見やると、ウッドの侍従の少年が顔を赤らめた。ウッドは苦笑いすると、侍従を下がらせ、モアに向き直った。

「はは。からかわないで下さいよ。それよりも、じきじきのお目見えということは、ついにこの時が来たのでございますね」

 ウッドが熱を込めて言うと、闇の女神モアは初めてその怪しくも美しい顔に笑みを浮かべた。

「ええ。ついにやったわ。お父様が復活した今、地上はノクティス様のものよ。けど、馬鹿な人間はなかなかレクス信仰をやめないでしょう。だから、思い知らせてやるのよ。あたし達の力を!」

 そして、ウッドを鋭く睨みつける。

「ラクス公はもう封印を解いたわよ。次はあんたの番。開封の手はずは覚えているでしょうね?」

 対するウッドは、動じることなく頭を下げた。

「っは。勿論でございます」

「ならいいわ。今日中に儀式を済ませなさい。夜にはケルベルスを引き取りに来るわ。成功したら、あんたをインフェロス公爵に叙爵してあげる」

「インフェロスでございますか?」

 ウッドが戸惑い問いかけると、モアは鷹揚おうように頷いた。

「ええ、そうよ。インフェロスは冥界の森の地名。あんたをそこの領主にしてあげるって言ってるの」

「っは。有り難き幸せ」

 ウッドは再び頭を下げる。それは臣下の礼をとるというよりは、歯をむきだして笑う野心に満ちた顔を、頭を伏せることで隠す意味合いの方が大きい。神とは言え小娘は気に食わないと思いながらも、このモアにウッドが従うのは、心酔するノクティスに従う同士だからではなく、こういう取引が上手いところがあるからだ。

 そのことは、モアも十分理解していた。だから、白髪の混じり始めた亜麻色の髪を見つめながら、モアは釘を刺す。

「でも、失敗したら、命はないと思いなさい! ノクティス様とお父様が治める国に、無能はいらないわ!」

「っは。このウッド、なんとしてもケルベルスを蘇らせてご覧にいれましょう」

 ウッドには自信があった。6日前、死の神オルクスの封印が解かれ、自領のインペデにも亡者が沸くようになった。それを把握した瞬間から、ウッドは密かに軍の準備を進めていた。言うことを聞かないシルヴァ神の巫女アンジェを殺し、聖笛グローリアを奪い取るための準備を。

 その声色を確認すると、モアは頷いた。

「期待してるわよ」

 そして、来た時と同じように、闇の中にとぷりと交わり、姿を消した。

 ウッドはそれを見送ると、間を置かず声を上げた。

「誰かそこにいるか! アジリスを呼べ! 作戦を決行する!」

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